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美しき運命の傷痕

美しき運命の傷痕 (2005年/フランス=イタリア=ベルギー=日本)

監督・脚色:ダニス・ タノヴィッチ
原案:クシシュトフ・キェシロフスキ
   クシシュトフ・ピェシェヴィチ
脚本:クシシュトフ・ピェシェヴィチ


出 演   エマニュエル・ベアール(長女ソフィ)
      カリン・ヴィアール(次女セリーヌ)
      マリー・ジラン(三女のアンヌ)
      キャロル・ブーケ(母親)
      ジャック・ペラン(大学教授のフレデリック)
      ジャック・ガンブラン(ソフィの夫、ピエール)
      ギョーム・カネ(セバスチャン)
      ジャン・ロシュフォール(ルイ)
      ミキ・マノイロヴィッチ



22年前に起こった不幸な出来事で父親を失った
3姉妹は今では別々に自分達の人生を送っていた。
しかし、それぞれに悩みを抱えている身。
長女ソフィは夫の浮気を疑い、夫を調べ始める。
次女は恋人のいない孤独な日々を送りながら時折母親を見舞っている。
三女は友人の父親で大学教授でもある男と不倫の関係。しかし最近別れ話を切り出され、困惑している。
そして、彼女たちの母親にも秘密が・。
父親と母親との間にはどんな出来事が起こったのか・・。


感想

クシシュトフ・ キェシロフスキ・・。彼が最後に遺した「天国」「地獄」「煉獄」三部作。第一章「天国」は
「ヘヴン」 と題してトム・ティクヴァが映画化。
それに続いて今回第二章「地獄」をダニス・ タノヴィッチが
映画化しました。

久々のフランス映画鑑賞でしたが
やっぱりいいですね。味わい深い・・。
いつも思うのですが何といってもラストなんですよね。
余韻を残すようなちょっと心に引っ掛かりを残すような
印象深いものが多くありません?これも
同様でした。いやはや、女性って怖い&強い・・と
感じた一本でしたね。子どもを産み育てる性って
どんな運命にも屈しないだけの力というものを潜在的に持っている
のね・・・ってあらためて感じましたね。それと
感情的な生き物だということもしみじみと・・・笑

主人公達が女性ばかりということでどのお話も
観る者が(特に女性ですが・・)私ならば・・・きっとこうするわ・・とか、あの気持ちはよくわかるわ・・などと実に感情移入
しやすいものでしたね。
3姉妹の恋愛がらみの話が身近にありそうだわ・・というのも
原因の一つだと思いますけどね。

そうですね・・・姉妹の中では長女のお話が面白かったですね。
面白いというと変ね・・笑。浮気確定を知った後の妻の態度というものが、とても興味深く感じとれたといった方がいいかしらね。
なにせ、行動が大胆よね。ストーカーまがいでもあるし。
私なら、浮気を知る・・夫を問い詰め、なじり→すぐに突き放す・・・となるんだけれど(そんなに簡単でいいのか・・笑 本当のところ
その手の経験なしなのでわからないが・・)
この物語の長女ベアールさんは、まずは、わたしのことは愛していないの?、私に魅力はもうないの?っと、自分の魅力をアピールするんですよね。それも泣き叫んですがりつくわけではなく、
冷静さ崩さないで、迫っていき、相手を圧倒させる
エネルギーを与えるんですよね。
それがとても怖かったわ。
浮気をしているのを知ってもまだ夫を好きだから簡単には
諦めきれないんでしょうね。ある種、プライド、意地もあるのかな。
まだ戻ってくるんじゃないの?っていう思いは当然ありますよね。
裸で夫のベットに入り込む姿なんていじらしくて、胸が苦しくなりましたよ。だ・け・ど・一旦、事がはっきりしたからには(夫とはこれで
おしまいと腹をくくったのでしょうね・・・)
気持ちの切り替えが早い、早い・・・。まあ、恐ろしいほど、きっぱり夫を寄せつかない意志の強さをみせるんですよね。
寄るな触るな・・・って感じでね。
その別れまでの心理描写が実にお見事。
さすがに・・ベアールさんがうまい、うまい、いや、怖い・・笑
色気もあってとっても魅力的な女性に映っているのになぜに
あの夫は別の女性に目移りするのかね~
美しさプラス、与えられる愛の重さに夫側としては
息苦しく、耐え切れなかったのかもしれないよね。

最後に出て行く夫を窓辺から見送るベアールさんが
観葉植物の葉、バリバリへし折っている姿は、
印象的。派手にものを投げつけるより、インパクト大だと私はみたね・・・。

ともかく、もしかしたら明日はわが身か・・・という
やや恐ろしさを秘めたエピソードが良かったです・・・笑
いや浮気はしていないよ・・誰も。

続いて3女のアンヌね。
浮気相手が、大学教授というのはいいとして、
かなりお年を召していたのにはビックリ。
これは、父親を幼い時期に亡くしているというトラウマが
彼女の恋愛観に関係しているのは明らかですよね。
でも友達のお父さんはダメですよね。
友情にひびが入るからね。好きな人からの電話を待つ彼女は
とっても初々しくて可愛かったですね。それゆえ、娘と同じくらいの子に手を出す大学教授の方を恨んでしまいますわ。

そして最後に次女セリーヌ。
恋愛に臆病な彼女。これも幼少の時にみた父親の姿が
トラウマになっているんですよね。
彼女に接触してきた謎の男は
てっきり、恋愛対象人物だと思っていたのですが
違いましたね。物語の鍵を握っていた人物・・、
気づきもしませんでしたよ。
セリーヌが勘違いしてしまうのも無理ないわ・・・と同情してしまいましたよ。でもあの勘違いは、笑って済まされないことですよね。
実にもの哀しい・・。だからこそ、彼女には、一番に幸せに
なって欲しいわ・・とせつに感じましたわ。
車掌さん、ファイト!!

結局、邦題どおり、
3姉妹の人生に大きな影響を及ぼしていたのは
父親の存在。父と母との出来事が傷痕として姉妹の心に残り、
それが彼女たちのその後の人生を大きく左右していったといえますよねそれでも・・美しいと表現されることの意味。

どんな運命でも受け入れることこそに
意義があるのかしらね。
すべてを明らかにした後、
あの姉妹は母親をまじえて
いい関係を作り上げていくように思います。
様々な痛みを経験したゆえ、結びつきもより
強くなるかもしれませんね。
やっぱり女性は強いわ。

父親の秘密が最後に暴かれるというミステリータッチな展開なので
そちらも見所です。
ちょっと驚きの秘密ではありました。


冒頭は万華鏡をイメージした映像で
そこに映し出されるのはカッコウのひな・・。
この先の物語を象徴するようなオープニングで非常に引き付けられました。落とされるのも運命であり、拾われるのも運命なんだよね・・・。



img_20060326T141002687.jpg

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阿修羅のごとく~『美しき運命の傷痕』

 ポーランドの巨匠、故・クシシュトフ・キェシロフスキの遺した三部作『天国』『地獄』『煉獄』のうち、『地獄』を映画化した作品。『天国』は『ヘヴン』として、ドイツの俊英トム・ティクヴァが映画化している。本作の原題

美しき運命の傷痕

美しき運命の傷痕ダニス・タノヴィッチ エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール ハピネット・ピクチャーズ 2006-09-29by G-Toolsファーストシーン、母親に連れられた少女がどこか構内のドアを開け放つ。そこには全裸の少年と向かい合った中年男性の姿があった。...

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これは

べアールが見事でしたね、ほんと!
色々あったけれど最後は毅然とした態度で…。やっぱり大好きな女優さんです。

>落とされるのも運命であり、拾われるのも運命なんだよね・・・。

なるほど。それが美しいと形容されるにはあまりにも過酷ではありましたが、万華鏡のようにくるくる変わる世界観を表したようなオープニングはたしかに印象深かったです。

リュカさんへ

ベアールいいですよね。
あの色気・分けて欲しいです。
万華鏡のオープニングは見事でしたよね。
あれで、引き込まれた・・という
感じです。
最初の場面が・・ああいう風な展開に
つながっているとは想像もしていなかったわ・・ミステリアスな構成も良かった
ですよね。

みみこさま、こんにちは。TBさせていただきました。
この映画、劇場でご覧になったのですね。
女の強さと怖さを感じる作品、ホント同感です。
三女の不倫相手が初めのほう誰だかわからないじゃないですか?
長女の夫だったらどうしようと思ってしまいましたわ(笑)
そういう姉妹間のドロドロを描いた映画じゃなくてよかったと思いました。
『煉獄』も映画化されるのでしょうか?期待してしまいますね。
ではでは、またお邪魔します~。

おはようございます~
TB・コメントありがとうございます。
この間ヘブンのレビューがUPされていたのでこちらもご覧になるのかしら・・・と思っておりました。
女性の色々な面を観る事ができる映画でしたよね。
まさに主役は女・・・。
三女の不倫相手・・・そうそう!!!わからなかったですよね。長女の夫・・・おお~~これまた
泥沼化しそうですね・・・・笑
そうですね・・これ以上ドロドロしてしまったら
おなか一杯になってしまいますものね。
残りの映画化気になりますよね
あとで感想拝見しにいきます~~

みみこさま、おはようございます。
雨、雨、雨ですね・・。
台風、あまり激しくありませんように。。

ところでこの作品、みみこさま映画館で鑑賞されたのですね!
私もようやく見ることができました。
面白かったです~。
>私なら、浮気を知る・・夫を問い詰め、なじり→すぐに突き放す・・・
うふふふ。私もまさにそうです(たぶん>笑)
なじり倒したら、ひゅーっと冷めて突き放してしまいそうです。
夫婦で子供がいても、男と女の部分が強いのね・・と感心してしまいました。
運命がどう展開しようと、女はどこまでも順応していくような度量というか、したたかさがあるのでしょうか・・。

ところで、今日はまたバトンをお持ちしてしまいました。
差し支えなければ、ぜひよろしくお願いします。
ではでは、素敵な連休をお過ごしくださいませ♪

武田さんへ

おはようございます~
レス遅くなりごめんなさい。
台風は大丈夫でしたか。
連休中、お天気がイマイチで
外出どころではありませんでしたね。
だからといって、お家でゆっくりできるわけでもなく、悶々としながら過ごしておりました。
↑の映画ご覧になられたのですね・・。
ジャック・ガンブラン様出演ですものね・・。
私は女の勢いに押されて
男達の観察を怠っていたように思います。
ベアールの奥様でも浮気はしてしまうのですね・・。男は目移りしやすいのかしら・・。
今回はこういった役でしたけれど、
素敵さは健在のガンブランでしたよね・・。
あとで感想拝見しに伺いますね。

バトン・・了解しました・・。
お時間かかるかもしれませんが、
お待ちくださいね。

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