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ゆれる   著  西川美和

ゆれる    著  西川美和


東京でカメラマンとして活躍する弟。
実家とは長い間疎遠になっていたが
母親の一周忌に久しぶりに帰郷する。
実家は家業のガソリンスタンドを父親と兄が経営している。
性格が違う兄と弟。
そして実家のスタンドでは幼馴染の智恵子も働いていた。
智恵子と弟は東京に出る前に関係があった2人だ。
そんな3人が、蓮美渓谷へと出かけ、そこである事件が
起こる・・・。


感想  今年の邦画はこの「ゆれる」が一番の話題作
でしたよね。映画を観た方の評価も高く、
私も是非とも観たいと思っていた一本でしたが
時間がとれず断念・・。
ということで・・・本の方を先に読んでみました。

あ~~~やっぱり映画が観たかった・・。
本を読んだ方がいるとしても
映画→原作本というパターンがきっと多いでしょうね。

映画を観ていない自分でも
頭の中に描かれるのは、弟=オダギリージョーさん 兄=香川さん
の図式です。
そういうイメージで本を読んでいたのですが
まったくといって違和感は感じませんでした。
まさに、適役であると本を読みながらも
感じていました。
香川さんに関しては「故郷の香り」の演技が
印象的でしたので、そんな雰囲気をかもし出して
いたのかな・・。これはもう観て見ないことにはわかりませんね。

本は登場人物それぞれの独白という
カタチで進められます。

  第一章   早川猛のかたり
  第二章   川端智恵子のかたり
  第三章   早川勇のかたり
  第四章   早川修のかたり
  第五章   早川猛のかたり
  第六章   早川稔のかたり
  第七章   早川猛のかたり
  第八章   岡島洋平のかたり

 早川稔と早川猛が兄弟です。
 智恵子が問題の女性。
 早川勇はこの兄弟の父親。早川修は勇の兄。
 この修は稔の弁護士でもあります。
 つまり身内である方が弁護をかってでるのです。
 最後の岡島洋平は稔のところで働く従業員ですね。


人間関係はそう複雑ではありません。
語りも↑のように同じ人物が何度も出てきますので
とくに混乱はしません。

同じ出来事でも
それを感じる人物が違うことで
とらえ方が色々です。
人の心はその人自身しかわからないものです。
当たり前のことですが
こうやって、見せ付けられると
人間のもつ心の複雑さを思い知らされます。

ゆれる・・・という題名が示すとおり
全ての人の心が、相手の言葉&行動を受け、
揺らいでいきます。

とにかく心理描写が見事です。
裁判過程における証言内容も
実に読み応えがあります。
検察も弁護士も私などが思いつかない質問で
被告をせめていくのですね。
これは、プライベートさえも赤裸々にするような
感じで、質問された方はたまったものではないと
思います。

兄弟だからこそ、
踏み込めない一線もあったのだろうと
思います。
自分の殻を破りきれない兄。
生真面目で親にいい子とレッテルを貼られた兄にとっては
自由奔放に生きる弟はどのように映っていたのでしょうか。
1人閉鎖的な田舎で暮らし、
このまま・・・埋没することへの恐れを
どこかで感じていたのでしょうか。
成功をおさめた弟を誇らしげに思う一方で
どこか妬ましい気持ちがなかったのでしょうか・・・。
そして弟の方も・・・
いつも自分を守ってくれた兄に対して、
尊敬の念の他に別の感情が渦巻いていたのではないでしょうか。

性格が違う物同士といえども
持っている感情は同じであろうと
思います。それがストレートに表面に出る人と
うまく埋没させて取り繕ってしまえる人がいるだけの違いかも
しれません。

文章を読みながら、その状況はリアルに伝わってきます。
それぞれの心の揺れも・・・明確に・・。
感情が行き違いになっているだけと信じたい・・

後半で幼少の頃に撮った八ミリビデオを観る場面が
あるのですが・・そこはなんともせつない思いに
なりますね。
映像で観たら泣いていたかも・・。

すれちがった心の修復は
難しいかもしれません・・。兄弟という関係が
ときに重く感じられるときもあろうかと思います
でも
ラストに一途の望みをかけたいと
思わずにはいられません。
兄弟だから・・きっとわかりあえると信じたい・・・


兄はあれからどうするのでしょうか・・。

バスはあれからどこに向ったのでしょうか・・

それからの物語は
読み手が想像する世界でしかありません。


余韻がいつまでも残りますね・・。


本としても素晴らしかったです。

映画が早く見たいな~~




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「ゆれる」5つ★でした ネタバレ

完全にやられました、この映画「ゆれる」には。こういう主要な人間2人の心理を深く洞察えぐる系の映画や小説がそもそも大好きなんです。一杯人が出てくる映画じゃなくて、断然こういう映画がツボ。もうあちこち胸が痛くて締

西川美和 「ゆれる」

ゆれる西川 美和 (2006/06)ポプラ社 この商品の詳細を見る<あらすじ>東京でカメラマンとして活躍する弟。実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。対照的な兄弟、だが二人は互いを尊敬していた、あの事件が起こるまで

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みみこさま、こんばんは。
わ、「ゆれる」ですね!
私も映画見たくて見たくて、終わってしまってショックでした。
原作も手にとっては、やめ、また手にとっては・・という感じで未読のままです。
>心理描写が見事
なのですか。うーん、やはり読みたい・・。
でも、「上海の伯爵夫人」のスチール写真の帯がついていたので(あれ?原作?)と思って購入した「わたしたちが孤児だったころ」が途中なので、そちらを読み終わってから・・・
ゆれる・・というタイトルは、そのものズバリという感じですね。

武田さんへ

こんばんは。
DVDは来年だとか・・
とっても観たかった一本だったので
先に本を読んでしまいました。
余計・・映画が気になりますわ・・。
そうですね・・・原作って手をだしたくなるけれど、
・ちょっと我慢したほうがいいときもありますよね。
未読の方が映画が新鮮に感じますものね。
DVDになった折にはご一緒にチェックしましょうね♪
わたしたちが孤児だったころ・・・
おお~~コレを読んでいらっしゃるのですね。
こちらも評価高い作品ですよね。
また感想お聞かせくださいね
楽しみにしています。

こんにちは

こんにちは。
年末年始に入りすっかりネットから縁遠くなっており
お返事が遅くなりすみません!
コメント&TB有難うございました。
せっかくTBしていただいたのにうまく反映されなかったようですので私の方からTBさせていただきますね。

今後つり橋をわたる度にこの物語を思い出し
ゆらりと橋の上で揺れてしまいそうな気がします。
それくらい揺さぶられる作品でしたね。DVDが楽しみです。

Spicaさんへ


こんにちは。こちらこそ、コメント残してくださり
ありがとうございます。
この作品読んだ方がまわりにあまりいなかったので
見つけたときにはとってもうれしかったです。
TB反映されていないのですね。あとでトライしてみます。
つり橋・・印象的でしたよね。
私も似たような風景に出会うたびにこの物語を
思い出すような気がします。
DVDも是非チェックしてみたいですよね・・。

みみこさま、こんばんは♪
すみません、しつこくお邪魔しております。

やっとこの映画を見ることができました。
で、落ち着いてさきほどみみこさまの原作の感想を拝見しまして・・

私の心はゆれだしました~
ラスト、やっぱり希望があったんだろうかと・・。
ゆらゆらゆらゆら・・
私、根性が歪んでいるような気が^^;(いやん)
本のほうはこういう展開になっているのですね。
従業員の語りがすごく読みたくなってきました。
明日は図書館にいってまいります。
(追伸:「わたしたちが孤児だったころ」、ちょうど真中で止まったままです。主人公がとっても二枚目独白文体で突き放してくるので、ちょっといじけてしまいました・・)←どこまでもダメな私・・

武田さんへ

こんばんは。
コメントありがとうございます。覗いてくださって
うれしいです♪
映画鑑賞されたのですね。
うらやましい・・。こちらは上映終ってしまいました。
たぶん、本のほうは映画で出番が少なかった人の
心情が細かく書かれているのだと思います。
でもやっぱりこれは映画もあわせてみないと
相乗効果が出ませんよね。
ビデオ鑑賞を首を長くして待ちます~~
わたしたちが孤児だったころ←難しい文体なのでしょか。
私は洋書が苦手なので手を出すのが恐いですね~~
でもなにか、挑戦しなくては・・・
あとでお邪魔します~~今から用事なので
あの・・遅くなります。ごめんね~~~~

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みみこさん~今日読んだわ! ほんと、みみこさんの言うとおりでした☆小説では、智恵子のことが、すごーく解って、お得感?映画では、彼女の背景(家を出てった父や、お母さんとのこと、猛君との学生時代のことなど)出てこなかったの。そうかぁ~そうだったんだ!って、かなり智恵子のこと、小説読んだことで、知ることが出来て有意義だったわ。
で、そうかー!!!彼女、なかなかの策略的行動をしていたのねー。ここも小説読んで、解ったことだったの。映画だけでは、解らなかった。
色々な場所で、映画では解らなかった部分が見えて、凄く楽しく読めました。
みみこさ~ん、映画見たら、またお話しようね!!!

latifaさんへ


こちらにもありがとう。
読みましたか。読みやすいですよね。
整理されていて。
智恵子のこと・・本当よくわかりますよね。
そんなこと考えていたのか・・・って。
でもこれって・・女性ならわかるわかるの
考えだったりしますよね。男性絡むと
きっとこうなのよ・・って。
映画ではわりと地味な扱いなのかしら。
メインはあの兄弟だものね。
私も早く映画みたいです。
待っていてね・・。
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