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善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ    (2006  ドイツ)

DAS LEBEN DER ANDEREN
THE LIVES OF OTHERS



監督: フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
製作: クイリン・ベルク
マックス・ヴィーデマン
脚本: フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
撮影: ハーゲン・ボグダンスキー
衣装: ガブリエル・ビンダー
編集: パトリシア・ロンメル
音楽: ガブリエル・ヤレド
ステファン・ムーシャ
出演: ウルリッヒ・ミューエ   (ヴィースラー大尉)
マルティナ・ゲデック   (クリスタ=マリア・ジーラント)
セバスチャン・コッホ   (ゲオルク・ドライマン)
ウルリッヒ・トゥクール  ( ブルビッツ部長)
トマス・ティーマ
ハンス=ウーヴェ・バウアー
フォルカー・クライネル
マティアス・ブレンナー


 1984年、壁崩壊前の東ベルリン。
国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は真面目で優秀な男。
ある日彼は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンと恋人の舞台女優クリスタを監視するように命じられる。
さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられる。
真面目に職務に勤めるヴィースラーだったが、
ドライマンたちの、音楽や文学の世界・互いに深く愛し合う姿を
を知り、心に変化が生じてくる。
とくに、ドライマンがピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”という曲を耳にした時・・
ヴィースラーの心は激しく揺さぶられてしまう・・・。


感想  あちこちから評判の高さがきこえていたこの作品。
やっと鑑賞できました。
社会派のヒューマンストーリで、見応えがありました。
終始重苦しい雰囲気でしたが
事の成り行きが気になり、一気に観てしまいました。
素晴らしい作品でしたね。
何より、このような形で(監視される者&監視するものという、相対する関係・・)
旧東ドイツ国家のあり様を描いた作品というのは今までなかったという点で
高い評価を与えたいですね。

一方的な方向だけでなく、多面的な方向から描く作品っていうのは
惹きつけられるものがあります。



盗聴していたヴィースラーを変えていったもの・・
それは、思想の自由、愛の深さ・・という
人間が人間らしく生きていくための基本的なもの。


ドライマンに接すことで
自分の中に眠っていた本来の自分が目を覚ましたということでしょう。
本人は気づかなくとも、
その基盤になるものは、ドライマンに接する前から
持ちえていたのかもしれませんね・・・。

題名になる音楽。
ドライマンが奏でるソナタの音色によって
彼の心がさらにさらに変化していったといえますが
そこは、やや控えめな演出だったと思います。
ここだ・・・という盛り上げ方もされていませんでした。

でもこの控えめな感じが、私は良かったと思います。

淡々とした中に思いが凝縮しているように感じたのですから・・。

主人公は寡黙ですべての思いをうちに秘めた人物像でありましたけれど、
彼の視線や些細な行動の中から
彼の心情の変化は充分理解できました。
とっても魅力的に感じましたね。
先日の映画で(4分間のピアニスト)で、気持ちがわからないという表現を
したわけですけれど、この作品の主人公については
そうは思わなかったかな・・・・・。


人間って愚かな行動を時にするものだけれど、
それを軌道修正する能力もまた同時に持ち合わせているんですよね。
だからやり直しというか方向転換が誰でもいつでもできるわけです。


でもその勇気って、並々ならぬものですよね。
自分の生き方を変えてしまうわけですから・・・。

また、相手に、影響を与えることができる
人生を歩んできたという、ドライマンも
人間として魅力ある人物ですよね。


自分の人生を振り返って(ちょうどそんな時期でもあったんだろうね・・・・)
自分にないものを相手が持っていると知ったとき。
どうしようもない虚無感が押し寄せてきたのではないでしょうか。
何よりもヴィースラーは自分の孤独感を再確認し
今までの人生に無意味さを感じ取ってしまったのではないでしょうか。

それが結果的に自分の行いの是非まで
考えるに及んだに違いありません。



ラスト・・・素晴らしかったです。
ドライマン、ヴィースラーともに
人間の大きさを感じた一瞬でした。
これ以上の表現はもうないのではないかと思えるくらいの
言葉でしたね・・。



今年一番のラストでしたかね・・・。


善き人のためのソナタ
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善き人のためのソナタ

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No title

みみこ様

ご無沙汰してます。おお、とうとうご覧になったのですね。
ラストが秀逸なのですが、変に盛り上げたりしないんですよね。本当にこんな自分の信念に忠実な、声なき人々の力が働いていたんだろうって思わせてくれるんです。
後から後から感動が新たに押し寄せて来て、帰りのバスの中でも電車の中でも人目も憚らず泣いてしまったはた迷惑なわたくしでした^^;。

四郎さんへ

こんにちは~
お久しぶりです。
ご紹介していただいたこの作品
ようやく観ました。
って、11月のはじめに観ていたんですけれど今頃・・・UPです。
おっしゃるとおりラスト・・・
素晴らしかったですね。
ああいうセリフ・・いえませんね・・。映画館で観たらさらに感動が
深まったでしょうね。
いい映画は時間が立つほど気持ちが
揺さぶられるんですよね。
また素敵な作品教えてくださいね・・♪

こんばんは♪

みみこさま、お邪魔いたします~。
あっという間に師走ですね。
今年の最終?映画、何をご覧になられたのでしょう♪

と、こちらの映画・・
>今年一番のラストでしたかね・・・。
ほんまに(うわ・・・)となったのを思い出しました。あのラスト・・
そして思い切り救われてしまいました。
監督さん、お若いのにすごい理性的で品のある映画作りをされる方ですね。
>淡々とした中に思いが凝縮しているように感じたのですから・・。
ほんまですよねぇ。深い思い・・。

武田さんへ

こんにちは。
もう12月ですね。
仕事に家事にお忙しい時期ではないでしょうか・・
私も掃除をしなくちゃあ・・。
今年最終は(と思うけど・・)
「ある愛の風景」です。武田さんは
予定に入っているかしら・・・。

で・・↑の作品。
監督さんてお若いのですね。これからが期待できますよね。あのラストは、素晴らしかったですわ。
納得の受賞作品ですよね。
やっぱり映画館で観たかったわ・・というのが本音です・。

関東近郊の皆さま

池袋の新文芸坐にて、12月16日・17日「善き人のためのソナタ」が上映されます。
http://www.shin-bungeiza.com/schedule.html

四郎さんへ

いい作品が再上映されると
うれしいですよね。
情報ありがとうございます。

いい作品でしたネ

おひさしぶりです!
これは年内に見ることができて嬉しかった作品です!

あのラストは本当に心に残りました

Dさんへ

こんにちは~
私もこれ見たのが最近
だったのですが、
噂どおり素晴らしい作品でしたわ。
本当、年内鑑賞できてよかったです。
ラストがこの作品の
評価をぐ~~んと
高めてくれたように思いますわ
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