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痺れる   著  沼田 まほかる

痺れる   著  沼田 まほかる


9つの短編集。
「林檎曼陀羅」,「レイピスト」,「ヤモリ」,「沼毛虫」,「テンガロンハット」,「TAKO」,
「普通じゃない」,「クモキリソウ」,「エトワール」の9編。



感想



年末に読みました・・・記憶が薄くなる前に簡単な感想UP。
沼田作品、今度は短編に挑戦。
カラーとしては、同じです。いろんなお話がありましたが
すべてにおいて気持ちがざわざわして落ち着かなくなるような読後感。
なんだか気持ちが悪いのよね。
痺れるか・・・・、まあ、面白い題をつけたものです。



印象的なものをいくつか。
ストーカーみたいにしつこい男が登場する「テンガロンハット」
こんなにしつこい奴ってうんざり。
周りの空気読めないのかな。
でもその強引さが、魅力でもあるのか・・
なぜ、テンガロンハット・・なのか。このオチには笑えた。


「林檎曼陀羅」も面白かったな。
語り手の話を自分の中で映像化していったら・・
そりゃ・・・あ、気味悪いよ。おばあさん・・・ぐちゃってなっちゃったの・・・よね。
いや~~~、それ想像しちゃあいけない、いけないと思っていたけど、
文章につられて、どんどん世界が広がってしまっていたわ。
怖い。
語り手自身の心理状態の不安定さも、不気味だったわ。


あと
「TAKO」
幼いないときに妙な体験すると、成長の過程になんらかの影響はあるだろうね。
しかし、あのおじさんどういうつもりだったんだろう。
エロっぽいというか、なまなましいというか・・・
主人公の気持ちには全然寄り添えないんだけれど、
見てはいけないものをみてしまったという・・・そんな心境に陥るよ。
最後にあの痴漢の正体がわかるけど・・・。
残念というか、ある意味笑ってしまえるというか、モノ悲しいというか。
・・・主人公の思い込みすぎだったね。



その他にも
不倫相手の奥さんを意識し出す主人公とか
レイプされたことを付き合っている男に話す主人公とか
道に迷った青年を家に住まわせる主人公とか・・・


ちょっと普段の生活では経験しないような世界ばかりだったような・・・・。



9つも読んだらさすがにお腹いっぱいなので・・・笑
しばらく、違うものにいこうかな・・・。








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彼女がその名を知らない鳥たち  著   沼田まほかる

彼女がその名を知らない鳥たち  著   沼田まほかる




八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子。
しかし、ひょんなことから今は、十五歳上の男・陣治と暮らし始めている。
陣治は、下品で、貧相で、地位もお金もない男。
十和子は、そんな彼に激しい嫌悪感を感じている。
そんなある日、十和子は、
「黒崎が行方不明だ」と知らされる。








感想


中盤ぐらいまで、延々と十和子が
同居人、十五歳年上の男・陣治の下劣さを述べるんですね。
その表現の仕方が実になまなましくて
げんなり・・・泣。
かりにも一緒に住んでいる身(そんなに嫌なら離れればいいのに)なのに
これでもか、これでもかと、嫌悪をあらわにし、そのまま言葉にしてしまう十和子。
陣治はとにかく
言われっぱなしなんですよね。
絶対怒ったりしない。
十和子、どうしたんだ~~って
うろうろしている・・・。そりゃあ、うざったくはなるけれど。
自分の同居人としてこういう風貌だったらどうだろう・・・
いちいち、チェック入れられていたらどうだろう・・・と
考えると、・・・やっぱり嫌かもしれない・・・。食事のしかたや
日常生活においての振る舞いも
けっして好感もてるものには感じなかったしね。
でも、客観的な立場でこの2人を観ていたら
女も女だしな・・・と思う所もあって
陣治が可哀想に思えてきてしまう。
そんなにも、見下さなくってもと・・・
彼に、同情心湧いてくるときもありました。


というように、中盤までは大きな展開もなく
あまり面白い物語とは感じなかったし、読むのもきついな・・・(だって、気分良くない表現ばかりだからね)
って思っていました。
物語が動き出すのは
十和子の元恋人、黒崎が
失踪していた・・・という事実が判明したあたりからかな。
そこら辺からは、
面白く読んでいけたように思います。



十和子には
かつて好きだった人がいて(これが、黒崎という男)
そのイメージが、別れた今も残っている分、
傍にいる陣治のことを、見比べていたんですね。
じゃあ、その黒崎って男、
どれほどの人?と思っていたら
物語の途中で正体が判明。
とんでもない、やつだった・・・・笑
それを今まで思っていたって?十和子が?
どうしようもないんじゃないの・・彼女・・・
そう思わない?
となるわけです。


十和子は
黒崎の失踪に陣治はなんらかの関係があると思い始めます。
もしかしたら・・・
彼が殺してしまっているのかも。
自分のことを思うあまり
かつての恋人を殺したんではないかと・・・・推測するんですね。

そんなことを考える中
十和子は、ある男と情事を楽しむようにもなっていました。
黒崎を思い、陣治を蔑む生活の中で
出会ったのが
某デパートの文具売り場に勤めている
水島という男です。
これがまた・・・口先ばかりのどうしようもない男。
黒崎でまんまとだまされたという過去があるにも
かかわらず
十和子は、水島に溺れていくんです。

もしかしたら・・・
陣治は、黒崎に続いて
この水島にも、害を与えるのではないか・・・
いらだつ、十和子・・

さあ~~~どうなるということで
ミステリータッチのお話になっています。

やはり恋愛小説でもあったのでは・・・と最後は思わせるのです。
ラストは・・・自己犠牲愛とでも
言いますか。


とにかく
十和子がダメでしょう。
同じ女性として
どうして、そんなに男に熱を入れるのか、それもたいしたことのない男、
見かけだけの男に・・・それほどまでに・・・と
思わずにはいられません。
いらいらするんですよね。
対して陣治に、
なぜ十和子にそれほどまでの
愛情をそそぐのか・・・それほどの
女性でもないのにと
疑問が湧いてきます。

男と女の関係は
理屈では説明できないってことでしょうか。
ダメ女への
モテない男の一途の愛とでも
なるのでしょうか。


せつないというより・・・
女にも対しても
男に対しても
いらだちを感じるような物語でした。


あ・・・ミステリーも入っていますので
犯人というものは
存在しています。
もしかしたら〇〇〇じゃないのかな・・・というのは
わかる人にはわかると思います。
強引さはありますが・・・



彼女が名前を知らなおphoto_3

ユリゴコロ    著  沼田  まほかる

ユリゴコロ    著  沼田  まほかる



偶然、押し入れの中から出てきた
ノート。その中に書かれている内容は、本当のことなのか。
誰が書いたのか。





感想


初読みの作者さん。よく新聞の書評で聞かれる題名なので手に取りました。
秘密めいたノートの存在。
手に取った主人公、亮介同様、読んでいる私も
ミステリー的な内容にどんどん惹かれていきました。
しかし、内容はけっして心地よいものではなく・・
次々に人を殺してしまう・・・そんな悲しい運命を背負っている女性と、
その彼女と繋がりをもってしまう男の話でした。


亮介は、それが自分の親ではないかと推測してみるんですね。
そもそも
亮介には、幼いころ感じた疑問があるのです。
母親が入れ違ってしまったのではないかということ・・・。


後半で
ノートの秘密が、きちんと説明されているので
うやむや感はありません。


ユリゴコロは・・・
ノートの書き手である女性が
よりどころ・・・という医者の言葉を聞き間違えたことから出来上がった言葉なのですが
異様なインパクトをもって心に響いてきます。



現在、亮介が抱えている問題も
絡めながら
意外な展開になっており、
最後まで飽きずに読むことができました。


社会的には許されないことをしてきた
ノートの書き手。
普通だったら、その人に対して不愉快な感想をもつに違いないのに
読み進めていくうちに
そういう気持ちが薄れていってしまう不思議な存在でありました。
意外なラストには・・・やはり衝撃を覚えずにはいられなかったです。
心が揺さぶられるっていうのかな・・・。
こういった着地点に
物語をもっていったのね・・・と
感心すらしました。



親としての姿だけでなく
女として、男として、なによりも一人の人間としての
親を知ることができるということは
子どもとしては
どこか、
こそばゆい気もするな・・・とも感じました。
が・・親の立場からしてみれば
知らしておきたい
部分であるのかもしれませんよね。
まして死も近い身ならね。


現実味としては薄いのですが
一種のファンタジーとして受け入れました。
ミステリーというより、
ラブストーリーという部分が強かったですね。

別の作品にも挑戦してみたいです。


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