記憶の渚にて  著  白石一文

記憶の渚にて    著  白石一文


国際的に著名な作家だった兄が謎の死を遂げた。
古賀純一は兄の遺品の中から謎の遺書と『ターナーの心』と題された随筆を発見する。我が家の歴史を綴ったその文章は、記憶とは大きく食い違うデタラメばかり。偽装された文章は兄の死となにか繋がりがあるのか? 兄の死の真相に迫る古賀を待つ、謎、謎、謎――。
日本からイギリスへ。海を跨ぎ、150年の時を越える一族の記憶に導かれ、すべての謎が一つの像を結ぶとき、予想だにしない圧巻のラストが立ち現れる!

この不確かな世界を生き抜く力となる、最新傑作長篇。

<amazonより>

感想


好きな作家さんなので必ず新作読んでいます。
今回は長編。
第一部で意外な展開に。

人物関係が複雑なので確認しながら読んでいました。
いろいろな題材が絡んでいくので
理解していくのは難しかったかな。
私としては
面白いという内容ではなかったけれど。
新興宗教がらみでは、自分が思っていた内容とはちょっと違った感じがしていたので
入り込むのはちょっと大変でした。
しかし、白石さんならではの着眼点はすごいな==-と思いました。
これだけのつながりをもたせる
物語を作ることが出来るのは、
この著者しかいないだろうな・・・・・きっと。
自分の世界観はしっかり作品に反映しているものね、毎回。

次作も読みます
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ここは私たちのいない場所   著  白石一文

ここは私たちのいない場所    著  白石一文



芹澤は大手食品メーカーの役員。順風満帆な会社員人生を送ってきたが、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は鴫原珠美という元部下と再会し、関係を持つ。それは珠美の策略であったのだが、彼女と会う時間は、諦観していた芹澤の人生に色をもたらし始めた。

アマゾンよりあらすじ引用





感想


白石さんの
いつもの作風です。
哲学的な・・・いつもの感じ
初期に読んだような。

好きな人は好き。
ダメな人はダメでしょうね。

きっと。

死ぬ時って
やっぱり、
ココに書かれていたような感じで
そして
逝ってしまうんだろうな・・・
それを一番感じました。

この手の本を読むと
鬱になりそう・・
なんかね・・・運命とか死ぬこととか、生きることとか、まあ、いろいろ考えちゃうからね。
暗くなるんだよね。
でも読むかな・・・・今後も。

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光のない海    著  白石一文

光のない海    著  白石一文



社長に就任して10年目を迎える50歳の高梨修一郎。
彼は名刺の整理をしている最中
みずがめの販売員の女性の名刺にふと目をとめる。
かつてその人を介して購入したボトル。
いまは割れてしまい、もう一度購入したいという思いがわきあがってきた。
早速
彼女に連絡を取ると・・・。



感想


今回の白石さんの作品、良かった・・好きだな~~
いつものような高学歴で鼻持ちならないキャラだったとか
性描写激しく、ちょっとひくよね・・・という
パターンでなかったことが
まず良かった(笑)

主人公に寄り添いたくなる感じ。
孤独感がわかるような気がするのよね。
そして主人公の歩んできた人生にも興味がわいてくるの。
海でいなくなった妹の話。
自分を支えてくれた先代の女性社長との関係。
ボトル販売員とその師匠との関係。
会社社宅の管理人夫婦の秘密。


ストーリーは、
淡々としているようで
いろいろな事実が小出しになっていくので
ミステリー感覚も味わえてあきさせなかったわ。

白石さんのお話の中には
縁・・・
人と人との縁が良く描かれていて・・・。
また
科学では説明できない摩訶不思議なものもでてくるの。
今回
それは飛ぶ蛇。
私もユーチューブでみてみたいな。

題名の光のない海も
意味深なのよね。
妹は
ひきつけられるほどの
魅力的な光を
海でみつけてしまったのかな。
どんなものなのだろう。
知りたいような永遠に知りたくないような気もしています。

良い作品だな・・・これ



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神秘   著  白石一文

神秘   著  白石一文


すい臓がんの宣告を受けた菊池は
20年前に取材で出会った女性を探す決心をする。


感想

主人公である大手出版社の役員を勤める「菊池」(離婚をしている)は、東日本大震災が起こった年の夏、末期のすい臓がんの宣告を受ける。そのため、20年前、電話取材で知った手かざしで人の不幸を直すという、「山下やよい」を
探すことにする。このやよいという人物は
不思議な力をもっていると知っていたからだ

なんとも
不思議な話ではあるけれど
どこか説得力があると思えるのは
私だけ・・・・・か・・・笑

中盤までは
人探し。
その過程で、主人公の日々のつぶやきのようなものは
つらつらと描かれていきます。

観た映画
読んだ本・・・
様々な事柄が、なるほど・・・・と素直に受け入れてしまうのは
やっぱり、作者の本が好きなせいか。


後半は
運命の繋がり、縁です。
人物関係が
複雑に絡み合うので
正直、メモしないとわからないくらい・・・
ものすごく
繋がっています…みな・・笑。

赤い服を着た男
が表紙の絵ですが
この男
神戸のとある駅で(住吉駅)
突然飛び降りていなくなった男だそうで・・・
実際の話。


⇒ネットで、新快速飛び降り事件と検索すると出てくるのよね。
<2002年7月2日午前10時45分頃、当該駅ホームにて、約100km/hで通過中の新快速電車から赤い服を着た若い男がホームに飛び降り、その勢いからホーム端の鉄製フェンスに激突するも、何事も無かったように歩いて立ち去るという、単なる危険行為以上の不可解な事件が発生した。>←この事件。


最後まで読んで
ほ~~~~そういうことか、とうなずきました。
不死身の男です。この赤い服の男。
この男が主人公とどうかかわっているのか。



もし私が死を身近に感じたら
この本を読みたくなるかもしれないな・・・と
思いました。

読み応えあり
白石さん好きなら是非==

小料理屋もでてきて
今回も
お料理もおいしそう・・

しんぴpg

彼が通る不思議なコースを私も    著  白石一文

彼が通る不思議なコースを私も    著  白石一文



不思議な出会いをした2人。
彼女の人生は林太郎との出会いで大きく変わる



感想

白石さんはいつも
生きる事の意味、死ぬことの意味について
哲学的なことを主人公に述べさせる⇒というか作者の考えそのもの・・だと思うが
ことが多くて
今回も根底にはそういうものが一貫して流れているんだけど
新たな挑戦として教育問題にも踏み込んできたな・・・・という印象の作品。


男女関係のドロドロや
濃厚の性描写などは影をひそめ
林太郎の教育への情熱を一番に感じる作品に仕上がっていて
いるので、
そちらに興味がある人は読んでみる価値があるんじゃあないのかなと思います。

とはいうものの、
林太郎のもつ不思議な能力⇒人の寿命が予知できる
という要素と
この林太郎と出会い、結婚する彼女と様々なエピソードも加わるので
話の内容としては盛りだくさん。
不思議な能力は
ところどころにでてくるけれど、現実離れしてついていけない…と思うほど
ひどいものではなく、
逆にそういうこともあるだろうね・・・と納得できる要素となっているので
それほど、違和感はないはず(と思う・・・笑)

出だしはこう・・・

友人がビルから飛び降りようとしている現場で、
霧子はこの椿林太郎という不思議な男と出会う。

同級生によると
彼は秀才と呼ばれる男で
教職にこだわって、大学進学をしたという・・・
出会った
当初、彼は小学校の教師。

とくに彼は学習に落ち着きのないような子供に
力を入れているようだった。

過去を聞くと彼もまた
学習能力に障害を持っていた時期があったとのこと。
だからなのか・・・
全ての子供に・・・
平等に教育を受けさせてあげたいという思いが強い。
また、親の都合で満足な教育状況が整っていない子どもにも
救いの手を差し伸べようとしていた。

こんな感じの流れなので
ついていけない内容ではないでしょう・・・・
むしろ興味ひかれるでしょう~~~

林太郎は
またいろんなことを言っていました。

人は死ぬことは逃れられないが
だからといって
不幸な死を迎えてはならない・・・
自分は人生生きてよかったと思って死んで行って欲しいということなんだろうね。
そして
人が生きる気持ちをもつためには
つまり自殺とかしないで
生き続けて行くためには
まずは
自分自身を大好きだと思うことだと言うんですよね
夢や希望があるから
生き続けるんだ・・・ということではなく
自分が一番好きだという気持ちが
あれば
その大好きな自分を失わないために
とにかく生きよう…という気持ちにつながるんだという主張。

今回もガツンときます

そして
死は終わりではないと…言い放つ林太郎。

後半になると
林太郎は
教師をやめ
塾を開き
人望も勝ち取り
やがては議員に・・・と
トントン拍子で出世して、出来過ぎ感はありますが
それも大目にみましょう・・・

その彼に寄り添うように人生をおくる霧子。

相手によって霧子の人生も大きく変わります。


ラストは
え・・・そういうこと・・なの?
とある意味
驚かされます。

ネタバレ


つまり
夢だったのね・・・という感じで。
でも
拍子抜けはしなく
それでも
こういう人生をみせてくれてありがとうと思える作品

霧子は
実際
どんな人生を歩んでいくのかな

かれgはとおつ994


快挙    著  白石一文

快挙    著  白石一文




月島の路地裏であなたを見つけた・・・・
これこそが私の人生の快挙





感想

一人称で淡々と描かれるとある夫婦の物語。
白石さんの近年の作品の中では
読みやすく受け入れやすい作品じゃあないのかな。
理屈っぽさもなく
性描写もそこまで過激じゃあなく
料理蘊蓄も控えめで
全体的にいつもの白石色は薄め。
それゆえ、人によっても物足りなさも感じるだろうけれど
私は
こういう物語も好きでした。

出会いから結婚まで、
十数年が語られていくわけだけど
並行して当時の社会状況
阪神大震災や神戸の酒鬼薔薇事件など・・が織り込まれていくという形。
そうそう
こういった
その時その時の社会状況を綴っていくのは
白石さんの作品にはよくみうけられるので
その部分の色はちゃんと出ているのよね。


夫婦の数だけ
いろんな歴史があるだろうし
この物語以上に波乱万丈な人生を送っている人は
多いはず。
白石さんがこの作品に込めたメッセージをコメントしていた
記事も読んだ上でこの本を手に取ると
いろんな思いがわいてくるわ・・・
自分の場合にも置き換えて
考えたくなるよね。

ちなみに
物語の中で
奥さん、みすみさんのお父さんが浮気をしていたっていう事実がわかるわけだけど
その相手は従妹の雪江なんだよね
その現場を娘のみすみにみられるわけ。
そこはちょっとショック。いくら亡き奥さんに似ているからって
親戚内で色恋沙汰になっちゃあまずいよね。
「人間の心の中には魔物が棲んどる」・・・
って主人公の俊彦にお父さんは言っていたけどさぁ~~~。
みすみや
俊彦も同じだ…心当たりがあるだろ・・・っていう意味合いだったんだろ
うね。
まあ・・・長い人生
ふらふらすることはあるけど、やっぱり魔物には打ち勝たなきゃ・・・。


いろいろあっての夫婦だど、納得して
やっぱり早々と結論は出さない方がいいよね。
といっても、
ケースバイケースもあるけどね。



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火口のふたり    著  白石一文

火口のふたり    著  白石一文


震災、原発事故から三年。
離婚し、会社をやめ起業したものの、倒産の危機にみまわれた賢治。
従妹である直子の結婚式に出席するために、東京から、生まれ故郷である福岡へ。
直子とは以前愛し合った仲。
そんな直子と再び再会。
直子の結婚相手は、陸上自衛官3佐の北野という幹部自衛官だが
直子が本当に相手を愛しているかどうかは・・わからない。
ただ子どもを欲しいという思いから結婚を考えた感じだ。
そんな直子が賢治に言う。
もう一度あの時に戻ってみないかと・・。








感想


新年早々の一冊は白石さんの新作。
前作「幻影の星」に続き、震災の影響が大きく関わっている作品。
ただし、かなりエロいです。
行為は変態チックです。
表紙も刺激的。
もちろん、テーマはエロだけではないです。
後半の出来事がメインでしょう。
ただ、
この濃密な愛と後半の出来事が
すんなり結びつき、生きるということがどういうことかまで
考えられるかどうか。
読者がこの流れについていくのかどうかは微妙な感じもします。




主人公の賢ちゃんがつくる
お料理は美味しそうでした。ハンバーガ食べたいな。
お料理描写と性描写は、いつも印象に残るんですよね。


導入部分
いとこの結婚式のために久々に故郷、福岡に戻った主人公。
再会したいとこ直子は以前関係があったのです。
思いだす過去。
ここまでは、普通に読むことができるのですが
想い出の写真、直子の写真が出てきて・・・
それがどういう被写体かわかったときは、
主人公に向ける目が変わってくるとおもいます。
私が女だから余計そう思うのかもしれませんが
どうもマニアックな感じの恋愛になると引きます。
濃密と言えば濃密でしょうが。
いとこ同士という、近親同士の恋愛は許容範囲としても
なぜ、こんな激しさと言うか、特殊というか(そうでもないのか・・・)
マニアックな絡みが必然であるのかは、理解できませんね。



先の見えない未来。
確かに今は、一歩先、どうなるかわかならい世の中ではあります。
表題にもなっている火口・・・。
それは富士山のことなんですが
その富士山にまつわる、大事件が
唐突に感じます。
もちろん、3佐と結婚を考えるという時点で
こういう大事件への伏線は張られていたのだと思いますが
その出来事を
この2人がどう受け止めるかについては
これでいいのかという思いも感じます。
自然現象なので2人がどうするわけにもいかないとは
思いますが
だからといって、2人が愛慾に溺れて
生きているということとはこういうことだ・・みたいな
対応のみだとしたら
なんだかな・・・という思いも感じます。
自分たちは遠い地で黙ってこの事態を見つめている・・・
だからどうなのか。
なんだか悶々としませんかね。
直子が
賢ちゃんが求めたから、あんなシチュエーションでの行為を受け入れたという
告白も、なんだかな・・・・と思いました。



昔の作品が懐かしいです。

窪美澄さんの書評もありますので
それを読んで手に取る人もいるかもしれませんよね。
でも
白石さんの作品としては
もっといい作品があるのにな・・・と思います。



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幻影の星    著  白石 一文

幻影の星    著  白石 一文



奇妙な体験をした2人の男女のお話。

(あらすじは感想にも・・)



感想  




 震災後に書かれた作品。当初は自然をテーマにした作品を・・・と思っていたそうですが
震災を経験し、そのテーマで書くことをやめてしまったとか。
<「自然との親和性」どころじゃなかった。>といっておりました(インタビュー読みました)

その結果、被災地にご本人が行き、そこで感じたことをそのまま小説にということで
こういった作品が仕上がったそうです。

1月に観た園監督の映画もそうですが、
今だから発信したい・・・・という思いが書き手&作り手にはあるのかもしれませんね。



で・・・小説ですが、初読みだとやはり厳しいかも。
こういう作品書く人だからとわかっていれば、素直に受け止められる(理解できるとはまた別)
かもしれませんが、そうでないと、なんなの・・・・と、投げ出してしまいそうになるかも
しれませんね。

結局のところ、ストーリーとしては、面白い・・・という話ではないと思うし。
冒頭に、SFチックな事件が起こり、その件をめぐっていろいろ話は繋がっていくけど
最終的に、その謎が解明されていき、すっきりするという風にはなっていないのよね。
もちろん、過去作品読んでいれば
単なるミステリーで終わるわけはないだろうなと察しがつくので
まあ・・・こんな感じでもありでしょ・・・・と納得できるけどね。




物語だけど
物語ではないような・・・そういう小説。

作者の感じていることを、そのまま、主人公がかわりに語っているという・・・そういう世界観。
そして、語っていることが、正直、小難しい。
平易な言葉で表現されているものの、読み手が、考えて、突き詰めていこうとすると
ちょっと、苦しくなるような感じ。
哲学的な語りが・・・これもみよがしに、沢山。あと引用文献等も多し。
でも、個人的にはそういう部分は好きなので
私はついていきました・・・・・★

今回の主人公はエリートではなく
専門学校卒で某会社に引き抜かれ、東京で契約社員からの出発。母親は若い男性と結婚しているので
故郷(長崎)へはあまり帰っていない。
付き合っている人は会社の同僚。彼女は結婚経験があるのだが、セックス恐怖症とかで、正式なセックスは
していない関係(妙な感じ…笑)
そんな彼の元にある日、母親から電話がある。
彼の名前の入ったバーバリーの青いコートが届けられたと。
地元に帰ってきているのかと・・・。
彼は最近帰っていないのに、なぜ自分のコートが長崎にあるのか。
第一、その青いコートは今手元にあるのに・・・・???。もう一人の自分がいるのか


一方、諫早で会社員をしながら夜はスナックで働く女性も登場し、同じような経験をする。
携帯電話がある場所でみつかるのである。本物とコピーの2つの携帯が手元にある。
どうして・・・・。
この女性は、ある社長と不倫関係にもある。またこの社長が変態で、まあ・・いろいろ彼女に迫る…笑。
(どうしてこう、白石さんの作品は、いわゆる、正統派でない性描写になるのか、そこのところは
いまだ、解せないな・・・女性的にはうん?)

最終、同じような奇妙な体験をした2人は再会しあうという話の流れになっています。


さて、引用文献多しの部分ですが。
よく作者の作品にはそういったもの出てくるんですが毎回
私は、調べたりするんですよね。
そういった本があるのか・・映像があるのか・・・ってね。
今回も「世界平和はナマコとともに」という東工大の本川達雄さんの作品が引き合いに出されていたので
調べてみました。面白そうです・・・・ね。

また、隕石の話。NHKスペシャルで巨大隕石が追突した映像とかね。
たしかに、こういうものみると、感じるものがいろいろ出てくると思うな・・・。


梅枝母智夫の「どうせ絶滅の星」という文章も面白かったので、食い入るように読んでしまったしね・
(これは架空でしょう・・ふざけた名前だし・・・・笑)
他にも、
いろいろ理屈っぽいことが書かれていてやっぱり、
好みがわかれるかな・・・というところ。


死ぬことの意味・・
生きることの意味。
そういうこと沢山読みますと気が滅入ることもあります。
159~60ページあたりで、死について延々と語ってあり
そこの部分は複雑な心境で読みました。
<死こそがすべてなのだ。人は生きて生きて生きるのでなく、
死んで死んで死ぬ。人は生きることを運命づけられた存在ではなく、死ぬことを運命づけられた存在なのだ。>
(159)

<時間の罠にかかった僕たちは、生を言祝ぐあまり、死の偉大さ、死の真実の意味、死の底深さや美しさをすっかり忘れてしまっている。死という永遠こそが束の間の生を約束してくれていること、死こそが生の
母体であることを僕たちはいつの間にか見失ってしまっているのだ。>

思わず考え込んでしまうでしょ?いろいろ思い巡らせるのは私だけか・・・・笑
こういうところは落ち込むようなことでなく
本来のありようを知り
逆に、生の意味を考えさせるのではないか・・・そういう風に思いました。


<時間の存在さえ否定できれば僕たちは死によって
また生まれる前の世界へ帰ることができるのだ・・・>
(95)

この箇所も印象的でしたね。

この小説のキーワードは、イリュージョン。
現実って自分が思っているものがすべてだとは限らないかも・・・とさえ
思えてきてしまいますね。
今が幻影なら、どこかでまた死んだ人がいる世界があるのかもしれないとか・・・
ルルドも
再び登場したし・・・・。
まあ・・・哲学的なことは
答えの出ないものですからね。どう考えても良いということで。



毎度毎度、白石作品ではそうやって、考え抜いているので
今回も興味深かったです。





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翼    著   白石  一文

翼    著   白石  一文



田宮里江子はキャリアウーマン。
仕事途中に具合が悪くなり、職場近くのクリニックで
長谷川岳志と再会した。
岳志は医師で、里江子の親友・聖子の夫でもあった。
夫婦には二人の子どもがいる。
彼とはある思い出があった。
里江子が学生時代、聖子から恋人として紹介された岳志。当時里江子は21岳志は27だ。
初対面の翌日、里江子は岳志から
「僕と結婚してください」「今日聖子とは別れます」と明言される。
あまりにも唐突で驚く里江子。
「きみと僕とだったら別れる別れないの喧嘩には絶対にならない。一目見た瞬間にそう感じたんだ」・・
聖子との関係も考え、里江子は何の応えもせず、そのまま・・・
もちろん、2人、岳志と里江子は深い付き合いもなく、そのまま別れ。
岳志は聖子と予定通り結婚。
結婚した二人は渡米。
就職した里江子は仕事で忙しくしていた。
そんな2人の久しぶりの再会。
あのころとまったく変わっていなかった岳志。
それどころか、ボクの相手はあなただと
確信を深めたと言われてしまう。




感想

白石さんの新作。テーマ競作小説。
6人の作家たちが「死様」をテーマにして書いています。



男女の結びつきが描かれていますが
その中でもちゃんとテーマである死・・・そこから発展して
どう我々は生きていくべきかまでが問いかけられて
今回もずど~~んと心に響く小説になっていました。

男女がでてきますが、
恋愛にありがちな、濃いめのラブシーンはありません。

縁や運命・・・に重点を置いて
男女の結びつきを考えているみたいです。


そういうのもありかと…思わせるだけの説得力はあります。


自分の直観を信じて生きたい・・・・


それが生きていくうえでの
エネルギーになるのかもしれません。



色々な人物が出てくるのですが
当然万人が共感できる考えばかりをもっているわけではありません。
私だって、
この彼氏、岳志の考え方にやっぱり戸惑うこともあると感じたし
田宮里江子の弟伸也の元奥さんの考え→子供について
など、う~んと思うことはありました。


ただ、これだけ、自分の生き方、選択に自信を持って
他者に意見できるだけの、人物がうらやましく感じます。



今回も小説良かったです。
ありきたりではなくまさに白石さん独自の視点で考えさせられました。


小説の中に出てくる
徳岡孝夫の「妻の肖像」という本も興味深かったです。

そして一番印象に残った部分を
自分なりに書きだしてみました。原文通りでなくまとめた感じで。


田宮里江子には元上司、城山という方がいた。
尊敬していた人物だがある日突然会社をやめ、そのことは江里子の疑問でもあった。
会社の坂巻とうまくいかないのは、里江子が城山の息のかかった
部下だったということに理由があるのか。そもそも城山と坂巻はどういう関係があるのか
(それは小説の中で明らかになるが・・・)


田宮里江子は城山が会社を辞める前に2人で
バーで過ごした時に、交わした会話を思い出していた。


城山が言う
「人は死んだらどうなるか」
「完全な無」と答える江里子。
彼女は死は「記憶の消滅」と思っていた。
さらに・・
人の死は関係者全員の死をもって完全な無になる、という。

つまり、
自分が完全に死ぬためには自分のことを知っている人が死に絶える必要がある。
つまり自分は自分と、自分の関係者全員がなくなった瞬間に完全に死んでしまうのだ。
それが完全な無であるのだ。


自分という人間が存在したことを誰一人覚えていなくなったらそれこそ自分が生まれてきたことが
まるまるなかったことになってしまう。
だから自分が生きた証を残すため、日記や本や、銅像などを飾って
完全な無に飲み込ま輝るのを避けたいからではないか。

自分のことを最も深く理解できるのは決して自分自身とは限らない。
だとすると自分という人間を最大限に把握している別の人がいて、もしもその人が消滅すれば
「自分というデータ」のまさに中枢部分が失われることになる。

それは自分自身の死よりもさらに致命的な死とはいえないだろうか?


バーでの会話にしては重いです。


そしていつもながら小説にこうやって、生と死を絡めてくるところは
興味深いです。


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砂の上のあなた   著  白石 一文

砂の上のあなた   著  白石 一文




亡くなった父親には愛人がいた。
美佐子のもとに鎌田浩之という男から突然連絡がきた。
自分の母親と君の父親は愛し合っていて、両者亡くなった今、遺骨を一緒にさせてほしいという・・
それぞれの願いだったということだが・・・。




感想


白石さんの直木賞受賞後の作品。
前回に比べると、哲学的な要素が、かなり色濃く出ており、好き嫌いもわかれると思いますが
今回も、面白く読むことができて満足。
もちろん、いつも思っていることですが、共感できた・・・という意味では全然ありません。
そういうものの考え方もありなのね・・・と、いつもはっと・・してしまう・・
そして、そうしたことで得られる満足感が素晴らしいということです。


ちょっと「私という運命について」を思わせる展開。主人公は女性ですしね。

父親に愛人がいた・・という衝撃的な事実からこの物語は始まりますが、
それはあくまでも、きっかけにしかなく・・・
どんどんと、予期せない方向に物語は発展していきます。


根底にあるのは
なぜ、私たちはここに存在しているのか、どう生きるのか・・
そして、死と生と・・男と・女と・・・
延々と続く、奇妙な縁・・
そんなようなことだとは思うのですが、
なかなか難しい・・・・笑

作者の作品を読んでいるといつも
こういうセリフを、物語の登場人物に言わせたいがために
こういう物語を作ったのではないかと思うことがたびたびあります。
言わんとしているテーマ性を必ず用意したうえで、物語が進んでいくんですよね。
そのテーマがかなり考えさせる、重さをもったものばかり。


単なる恋愛小説にはなっていない・・・のよね。



今回は
後半にむけて登場人物がかなり多くなって厄介です。
相関図を描いて観た方がよいかもしれないと思ったほど・・



主人公は美砂子。父親は周一郎。(この父親東大出だったかな・・・相変わらず優秀です・)
その父親は、長年妻のほかに、東条紘子という女性と付き合っていた(つまり愛人)
実は周一郎、若いころ一度結婚していたそうだ。
その時の妻の名は、由紀江。しかし、妻、由紀江はお産時に亡くなってしまう。同時に子も一緒に。
周一郎はその後、美砂子の母親と結婚し、美砂子のほかに2人の娘を授かったということだが
過去に死んだ妻子のことが長年気になっていたようだ。
そんなときに、偶然出会ったのが、東条紘子という女性。お店を経営しているママさんだが
死んだ昔の妻にそっくりだというのが、付き合い始めた経緯みたいだった。


そしてある日、その東条紘子が母親だったという男、鎌田浩之という男性から美砂子のもとに連絡が入る。
父親周一郎の骨と自分の母親の骨と一緒にしてほしいと。

不審がっている美砂子だったが、夫、直志の相談すると、特に問題ではないんじゃないかと。
双方の希望ならばかなえてやっていいんじゃないのか・・という。
実は悩まなくてはならない問題は、自分たち夫婦の方に存在していたのだ。
美砂子と直志は子供がいない夫婦だった。美砂子は父、周一郎が亡くなった後、無性に子供が欲しくなり
直志と試みるが、なかなか良い結果が得られないでいた。
欲しいのに得られない・・・、そのことで夫婦関係にも微妙な空気が流れだしていたのだ。
そんな思いもあり、
鎌田浩之という男と遺骨のことで話し合いを続けていくうちに、男と女の関係を結んでしまうことに・・・。


あれ~~~じゃあ、結局、不倫話なの?ということに思えるかもしれないけど、
そうじゃないのよね。


父親、周一郎にかかわる背景だけでもものすごく、↑字数を使ったけれども
まだまだ、美砂子の過去・・・鎌田浩之の過去・・そして正体。
夫、直志が隠していた真実・・・
まあ・・・とにかく、ものすごく意外なことが、ザクザクでてくるんですよね。


さらに、繋がりです。縁です。美砂子にかかわっている人々が、皆、奇妙な縁で結ばれているという事実。
ここはもう、実際問題として、やりすぎではとおもうほど、偶然のつながりが
あります。
ただ、こうまでして強引につなげているのは、
言いたいことが明白であるからなんだろうな・・・と思います。



この小説では
子供のついての考え方が語られるのですが、ここが興味深いところ。




美砂子が子供を欲することに、意欲を燃やしていることに対して、
遺骨のことが縁で知り合い、のちに男女の関係を結んでしまう
鎌田浩之はこういうんです。

「どうして子供なんて産みたいの?」
子供なんて作らない方が良い。誰一人親にならない方がいい」と

それってどういうこと?と思いますよね?勝手にそんな無責任なことをいって。
しかし、彼には彼の考え方があるんです。
どういうことかというと。


そもそも、子供を欲しがるということは、命を誕生させたいという思いからだと。
人は誕生と死を一体だと思い込んでいる。
自分が死に絶えたあとも生き続ける若い命を誕生させたいという思いから、子供を産みたいと
欲している。
しかし、死と誕生はまったく別のものである。
俺たちのこの人生そのものが無限に繰り返される「誕生」なのだから。
人間という種の決定的な後進性っていうのは人生の価値に対する客観的な視点を持ちえるだけの頭脳を
せっかく与えられ、しかも自分の命の終わりである死についてもそれなりの
自覚を生前からもつことができるにもかかわらず、いまだ生殖・繁殖という未開で動物的な衝動を抑制できないということ(P、92から、だいたいの内容)

なんだ・・・そうです。鎌田浩之は美砂子のことを理屈っぽいといっていたけれど、鎌田の方が
かなり理屈っぽいですよね。

正直、こういう考え方を言われても、ピンときません。
誕生と死・・・確かに一つの繋がりとして、私も、みているところがあるからです。
子供に幾分かの期待と、夢をかける・・
そうやって供を産み、育てているところが多いにあるからです。
そもそも、子を持っている人と、持っていない人では
この小説のある子どもに関する部分については
感想が大いに違ってくるでしょうね。


最終、
美砂子は子供について
大きな決断をします。鎌田浩之を巻き込んで。
これ・・、納得できる決断ではないです。
好きな人の子供を持つ・・小難しい考えのもとではなく、
単純だけれど、率直な感情を、大切にしていった方がよいと思うんですよね。
もちろん、子供ができないということの、苦しみがどれほどのものかは
実感できないので、立場としては、美砂子と違いますが
だからといって
この美砂子の決断には、はいはい・・そうですよねと、
すぐさま、繋がっていかないと思うわ。


まあ・・・いろいろ思うところもありの小説でした。


相変わらず、美味しそうな料理もたくさん出てきます。

白身魚のカルパッチョ、
カリフラワーとハムのいためもの、
大皿にもられたペンネ
一番印象的なのが
ピーナッツバターでいためた、ペンネですよ。


料理もそうですが
女性の体の微妙な変化も
明白に描いていて
作者が男性とは思えないのも素晴らしいですね。


sunanoueno.jpg
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