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道    著  白石一文

道     著  白石 一文


男は、どん詰まりの場所にいた。
二年半前の大学生だった娘の交通事故死。そこから精神の変調を来たし、二度の自殺未遂の隘路から抜け出せない妻。
あれを試すしかないのか‐‐。

かつて、高校受験に失敗した直後、失意のうちに目にした「道」というタイトルの一枚の絵。そして、そのあとに訪れた名状しがたい不思議な出来事。

40年ぶりにその絵を目にした男は、気が付けば、交通事故が愛娘に起こる直前の三軒茶屋の交差点にいた。

<アマゾンより、あらずじを引用>



感想


542ページ。結構のボリュームです。
構想10年ってすごいな~~

白石さんの本で、SFものは、読むのが初めてなので、楽しみでした。
もしもあのとき・・・というのは
誰でも考えてしまうものなので、タイムリープものという設定だけで、興味深かったです。

その時代時代に起こる出来事もきちんと、描かれていて
数年たって読んだら、あ~~あの時こういう出来事が起こっていたのねという
懐かしさも感じるのかな。

主人公は唐沢功一郎
娘、美雨が事故死してしまってから、妻の渚は鬱。
義理の妹の碧と一緒に暮らしながら看病していたのだが、ある日、渚は自殺未遂をしてしまい・・・。
美雨が、事故に合わないように、できないかと考え、功一郎はタイムリープ。
そもそも功一郎は過去に一度時間を遡るという経験があったからなんですよね
つまり二度目。

その過去に戻るという行為を行うのに
ニコラ・ド・スタールが描いた「道」というタイトルの一枚の絵が、かかわっているというわけ。→知らなかったので
今回その絵はじっくりみてみましたよ・

この絵を見つめながら、描かれているもう一つの道をみつめる・・・



この手の話は、あまり突っ込んでしまうと、もやもや感がでてしまうので
あ~~絵を見て時間が戻ったのねと素直に理解し
あとは、お話の中に入り込んで楽しむものがち・・・という感じかな~~


ただ、終盤になって
前の前の世界とか、前の世界ではどうのこうの・・・と結構ややこしくなるので厳しかったです。
単純に2つの世界の問題ではないゆえ、頭が混乱してしまうところはありました
(ただ単に私の理解力が薄いだけかもしれないけど)


あと、美雨の替りの事故にあって、ぎりぎりたすかった女の子
霧戸ツムギ。
元能面坂46のメンバーという、設定でした・・・面白い~~

小松菜奈の 『恋は雨上がりのように』という映画も引用されていて。
娘、美雨の恋愛がこの映画のような展開ということで。

とにかく白石さんの作品は
でてくる料理がおいしそう(いろんな場所で、食事するシーンがあるけど紹介される料理が素敵)
主人公もしくは、奥さん・・・が高学歴。確か、主人公は、九州の大学でなく東京の、某国立大学出身という設定。
主人公は、女性にもてるし、仕事もできる(離婚歴があり・・・確か出世頭だったね)

と、ムムム・・という設定なんですけど、そこは好きです(笑)

今の自分がいるのとは違う世界が存在して(パラレルワールド、ね)
何かの力で、飛んで行くことができるのなら
もはや、死も何も、怖くなくなるのかなって思いながら不思議な世界を味わいました。
どこかでもう一人の自分は生きている
もしくは、愛する人はこの世界にはいないけど、他の世界では幸せに暮らしている
そう思えることは
幸せだなって思いました




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(アマゾンより引用)
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一億円のさようなら   著  白石一文

一億円のさようなら   著  白石一文



加能鉄平は妻・夏代の驚きの秘密を知る。今から30年前、夏代は伯母の巨額の遺産を相続、そしてそれは今日まで手つかずのまま無利息口座に預けられているというのだ。結婚して20年。なぜ妻はひた隠しにしていたのか。
そこから日常が静かに狂いはじめていく。もう誰も信じられない――。鉄平はひとつの決断をする。人生を取り戻すための大きな決断を。
夫婦とは?お金とは?仕事とは? 今を生き抜く大人達に贈る、極上の娯楽小説!

(amazonより引用)


感想

ページ数が多いのですが
わりと、さくさく読めます
白石作品、好きでよく読むのですが、初期の作品のほうが好きかな

まず
現実的に
妻に一億円の財産が転がり込んできた・・・という設定が
ピンとこないかな・・・という印象
まだ
宝くじのほうが、身近に感じますけど・・(笑)
でも
実際、こんな重大な秘密を一人抱え込んでいた妻に、その時点で見る目がかわってきてしまうかな・
お金問題だからねえ。わだかまりは大きくなる。
そして妻には付き合っていた男が結婚前にいたでしょ。
わけありの奥さんだった。そんな出発からして、なんかいやね~~って思っていたし。
子供との関係も、薄い感じでなんだか・・・。

舞台が
金沢に移ってからは
街の紹介みたいな部分もあるので、土地勘がある人にとっては興味深いかな。
私も金沢は2年前にいっているので、ああ~~あのあたりねとは、感じることができたので
その点では面白かったです。
車選びのシーンも、面白かったし、お店をだすまでの、なんだかんだも・・・あきずに読むことができました。
相変わらず、料理の描写は、細かくっておいしそうに感じる・・・


ラスト・・
奥さんって、いろんな意味で、やり手って…思いました(笑)

え~~と、「火口のふたり」映画化になりましたね。
凪のお暇の・・・あの彼女が→(黒木さんではないよ、足立さんの子)
・・、主演ということで、へ~~~と思いながら、予告編みました
劇場にはいけないけど、いや、見に行く勇気がないけど(笑)
体当たりみたいだし・・・


記憶の渚にて  著  白石一文

記憶の渚にて    著  白石一文


国際的に著名な作家だった兄が謎の死を遂げた。
古賀純一は兄の遺品の中から謎の遺書と『ターナーの心』と題された随筆を発見する。我が家の歴史を綴ったその文章は、記憶とは大きく食い違うデタラメばかり。偽装された文章は兄の死となにか繋がりがあるのか? 兄の死の真相に迫る古賀を待つ、謎、謎、謎――。
日本からイギリスへ。海を跨ぎ、150年の時を越える一族の記憶に導かれ、すべての謎が一つの像を結ぶとき、予想だにしない圧巻のラストが立ち現れる!

この不確かな世界を生き抜く力となる、最新傑作長篇。

<amazonより>

感想


好きな作家さんなので必ず新作読んでいます。
今回は長編。
第一部で意外な展開に。

人物関係が複雑なので確認しながら読んでいました。
いろいろな題材が絡んでいくので
理解していくのは難しかったかな。
私としては
面白いという内容ではなかったけれど。
新興宗教がらみでは、自分が思っていた内容とはちょっと違った感じがしていたので
入り込むのはちょっと大変でした。
しかし、白石さんならではの着眼点はすごいな==-と思いました。
これだけのつながりをもたせる
物語を作ることが出来るのは、
この著者しかいないだろうな・・・・・きっと。
自分の世界観はしっかり作品に反映しているものね、毎回。

次作も読みます
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ここは私たちのいない場所   著  白石一文

ここは私たちのいない場所    著  白石一文



芹澤は大手食品メーカーの役員。順風満帆な会社員人生を送ってきたが、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は鴫原珠美という元部下と再会し、関係を持つ。それは珠美の策略であったのだが、彼女と会う時間は、諦観していた芹澤の人生に色をもたらし始めた。

アマゾンよりあらすじ引用





感想


白石さんの
いつもの作風です。
哲学的な・・・いつもの感じ
初期に読んだような。

好きな人は好き。
ダメな人はダメでしょうね。

きっと。

死ぬ時って
やっぱり、
ココに書かれていたような感じで
そして
逝ってしまうんだろうな・・・
それを一番感じました。

この手の本を読むと
鬱になりそう・・
なんかね・・・運命とか死ぬこととか、生きることとか、まあ、いろいろ考えちゃうからね。
暗くなるんだよね。
でも読むかな・・・・今後も。

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光のない海    著  白石一文

光のない海    著  白石一文



社長に就任して10年目を迎える50歳の高梨修一郎。
彼は名刺の整理をしている最中
みずがめの販売員の女性の名刺にふと目をとめる。
かつてその人を介して購入したボトル。
いまは割れてしまい、もう一度購入したいという思いがわきあがってきた。
早速
彼女に連絡を取ると・・・。



感想


今回の白石さんの作品、良かった・・好きだな~~
いつものような高学歴で鼻持ちならないキャラだったとか
性描写激しく、ちょっとひくよね・・・という
パターンでなかったことが
まず良かった(笑)

主人公に寄り添いたくなる感じ。
孤独感がわかるような気がするのよね。
そして主人公の歩んできた人生にも興味がわいてくるの。
海でいなくなった妹の話。
自分を支えてくれた先代の女性社長との関係。
ボトル販売員とその師匠との関係。
会社社宅の管理人夫婦の秘密。


ストーリーは、
淡々としているようで
いろいろな事実が小出しになっていくので
ミステリー感覚も味わえてあきさせなかったわ。

白石さんのお話の中には
縁・・・
人と人との縁が良く描かれていて・・・。
また
科学では説明できない摩訶不思議なものもでてくるの。
今回
それは飛ぶ蛇。
私もユーチューブでみてみたいな。

題名の光のない海も
意味深なのよね。
妹は
ひきつけられるほどの
魅力的な光を
海でみつけてしまったのかな。
どんなものなのだろう。
知りたいような永遠に知りたくないような気もしています。

良い作品だな・・・これ



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神秘   著  白石一文

神秘   著  白石一文


すい臓がんの宣告を受けた菊池は
20年前に取材で出会った女性を探す決心をする。


感想

主人公である大手出版社の役員を勤める「菊池」(離婚をしている)は、東日本大震災が起こった年の夏、末期のすい臓がんの宣告を受ける。そのため、20年前、電話取材で知った手かざしで人の不幸を直すという、「山下やよい」を
探すことにする。このやよいという人物は
不思議な力をもっていると知っていたからだ

なんとも
不思議な話ではあるけれど
どこか説得力があると思えるのは
私だけ・・・・・か・・・笑

中盤までは
人探し。
その過程で、主人公の日々のつぶやきのようなものは
つらつらと描かれていきます。

観た映画
読んだ本・・・
様々な事柄が、なるほど・・・・と素直に受け入れてしまうのは
やっぱり、作者の本が好きなせいか。


後半は
運命の繋がり、縁です。
人物関係が
複雑に絡み合うので
正直、メモしないとわからないくらい・・・
ものすごく
繋がっています…みな・・笑。

赤い服を着た男
が表紙の絵ですが
この男
神戸のとある駅で(住吉駅)
突然飛び降りていなくなった男だそうで・・・
実際の話。


⇒ネットで、新快速飛び降り事件と検索すると出てくるのよね。
<2002年7月2日午前10時45分頃、当該駅ホームにて、約100km/hで通過中の新快速電車から赤い服を着た若い男がホームに飛び降り、その勢いからホーム端の鉄製フェンスに激突するも、何事も無かったように歩いて立ち去るという、単なる危険行為以上の不可解な事件が発生した。>←この事件。


最後まで読んで
ほ~~~~そういうことか、とうなずきました。
不死身の男です。この赤い服の男。
この男が主人公とどうかかわっているのか。



もし私が死を身近に感じたら
この本を読みたくなるかもしれないな・・・と
思いました。

読み応えあり
白石さん好きなら是非==

小料理屋もでてきて
今回も
お料理もおいしそう・・

しんぴpg

彼が通る不思議なコースを私も    著  白石一文

彼が通る不思議なコースを私も    著  白石一文



不思議な出会いをした2人。
彼女の人生は林太郎との出会いで大きく変わる



感想

白石さんはいつも
生きる事の意味、死ぬことの意味について
哲学的なことを主人公に述べさせる⇒というか作者の考えそのもの・・だと思うが
ことが多くて
今回も根底にはそういうものが一貫して流れているんだけど
新たな挑戦として教育問題にも踏み込んできたな・・・・という印象の作品。


男女関係のドロドロや
濃厚の性描写などは影をひそめ
林太郎の教育への情熱を一番に感じる作品に仕上がっていて
いるので、
そちらに興味がある人は読んでみる価値があるんじゃあないのかなと思います。

とはいうものの、
林太郎のもつ不思議な能力⇒人の寿命が予知できる
という要素と
この林太郎と出会い、結婚する彼女と様々なエピソードも加わるので
話の内容としては盛りだくさん。
不思議な能力は
ところどころにでてくるけれど、現実離れしてついていけない…と思うほど
ひどいものではなく、
逆にそういうこともあるだろうね・・・と納得できる要素となっているので
それほど、違和感はないはず(と思う・・・笑)

出だしはこう・・・

友人がビルから飛び降りようとしている現場で、
霧子はこの椿林太郎という不思議な男と出会う。

同級生によると
彼は秀才と呼ばれる男で
教職にこだわって、大学進学をしたという・・・
出会った
当初、彼は小学校の教師。

とくに彼は学習に落ち着きのないような子供に
力を入れているようだった。

過去を聞くと彼もまた
学習能力に障害を持っていた時期があったとのこと。
だからなのか・・・
全ての子供に・・・
平等に教育を受けさせてあげたいという思いが強い。
また、親の都合で満足な教育状況が整っていない子どもにも
救いの手を差し伸べようとしていた。

こんな感じの流れなので
ついていけない内容ではないでしょう・・・・
むしろ興味ひかれるでしょう~~~

林太郎は
またいろんなことを言っていました。

人は死ぬことは逃れられないが
だからといって
不幸な死を迎えてはならない・・・
自分は人生生きてよかったと思って死んで行って欲しいということなんだろうね。
そして
人が生きる気持ちをもつためには
つまり自殺とかしないで
生き続けて行くためには
まずは
自分自身を大好きだと思うことだと言うんですよね
夢や希望があるから
生き続けるんだ・・・ということではなく
自分が一番好きだという気持ちが
あれば
その大好きな自分を失わないために
とにかく生きよう…という気持ちにつながるんだという主張。

今回もガツンときます

そして
死は終わりではないと…言い放つ林太郎。

後半になると
林太郎は
教師をやめ
塾を開き
人望も勝ち取り
やがては議員に・・・と
トントン拍子で出世して、出来過ぎ感はありますが
それも大目にみましょう・・・

その彼に寄り添うように人生をおくる霧子。

相手によって霧子の人生も大きく変わります。


ラストは
え・・・そういうこと・・なの?
とある意味
驚かされます。

ネタバレ


つまり
夢だったのね・・・という感じで。
でも
拍子抜けはしなく
それでも
こういう人生をみせてくれてありがとうと思える作品

霧子は
実際
どんな人生を歩んでいくのかな

かれgはとおつ994


快挙    著  白石一文

快挙    著  白石一文




月島の路地裏であなたを見つけた・・・・
これこそが私の人生の快挙





感想

一人称で淡々と描かれるとある夫婦の物語。
白石さんの近年の作品の中では
読みやすく受け入れやすい作品じゃあないのかな。
理屈っぽさもなく
性描写もそこまで過激じゃあなく
料理蘊蓄も控えめで
全体的にいつもの白石色は薄め。
それゆえ、人によっても物足りなさも感じるだろうけれど
私は
こういう物語も好きでした。

出会いから結婚まで、
十数年が語られていくわけだけど
並行して当時の社会状況
阪神大震災や神戸の酒鬼薔薇事件など・・が織り込まれていくという形。
そうそう
こういった
その時その時の社会状況を綴っていくのは
白石さんの作品にはよくみうけられるので
その部分の色はちゃんと出ているのよね。


夫婦の数だけ
いろんな歴史があるだろうし
この物語以上に波乱万丈な人生を送っている人は
多いはず。
白石さんがこの作品に込めたメッセージをコメントしていた
記事も読んだ上でこの本を手に取ると
いろんな思いがわいてくるわ・・・
自分の場合にも置き換えて
考えたくなるよね。

ちなみに
物語の中で
奥さん、みすみさんのお父さんが浮気をしていたっていう事実がわかるわけだけど
その相手は従妹の雪江なんだよね
その現場を娘のみすみにみられるわけ。
そこはちょっとショック。いくら亡き奥さんに似ているからって
親戚内で色恋沙汰になっちゃあまずいよね。
「人間の心の中には魔物が棲んどる」・・・
って主人公の俊彦にお父さんは言っていたけどさぁ~~~。
みすみや
俊彦も同じだ…心当たりがあるだろ・・・っていう意味合いだったんだろ
うね。
まあ・・・長い人生
ふらふらすることはあるけど、やっぱり魔物には打ち勝たなきゃ・・・。


いろいろあっての夫婦だど、納得して
やっぱり早々と結論は出さない方がいいよね。
といっても、
ケースバイケースもあるけどね。



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火口のふたり    著  白石一文

火口のふたり    著  白石一文


震災、原発事故から三年。
離婚し、会社をやめ起業したものの、倒産の危機にみまわれた賢治。
従妹である直子の結婚式に出席するために、東京から、生まれ故郷である福岡へ。
直子とは以前愛し合った仲。
そんな直子と再び再会。
直子の結婚相手は、陸上自衛官3佐の北野という幹部自衛官だが
直子が本当に相手を愛しているかどうかは・・わからない。
ただ子どもを欲しいという思いから結婚を考えた感じだ。
そんな直子が賢治に言う。
もう一度あの時に戻ってみないかと・・。








感想


新年早々の一冊は白石さんの新作。
前作「幻影の星」に続き、震災の影響が大きく関わっている作品。
ただし、かなりエロいです。
行為は変態チックです。
表紙も刺激的。
もちろん、テーマはエロだけではないです。
後半の出来事がメインでしょう。
ただ、
この濃密な愛と後半の出来事が
すんなり結びつき、生きるということがどういうことかまで
考えられるかどうか。
読者がこの流れについていくのかどうかは微妙な感じもします。




主人公の賢ちゃんがつくる
お料理は美味しそうでした。ハンバーガ食べたいな。
お料理描写と性描写は、いつも印象に残るんですよね。


導入部分
いとこの結婚式のために久々に故郷、福岡に戻った主人公。
再会したいとこ直子は以前関係があったのです。
思いだす過去。
ここまでは、普通に読むことができるのですが
想い出の写真、直子の写真が出てきて・・・
それがどういう被写体かわかったときは、
主人公に向ける目が変わってくるとおもいます。
私が女だから余計そう思うのかもしれませんが
どうもマニアックな感じの恋愛になると引きます。
濃密と言えば濃密でしょうが。
いとこ同士という、近親同士の恋愛は許容範囲としても
なぜ、こんな激しさと言うか、特殊というか(そうでもないのか・・・)
マニアックな絡みが必然であるのかは、理解できませんね。



先の見えない未来。
確かに今は、一歩先、どうなるかわかならい世の中ではあります。
表題にもなっている火口・・・。
それは富士山のことなんですが
その富士山にまつわる、大事件が
唐突に感じます。
もちろん、3佐と結婚を考えるという時点で
こういう大事件への伏線は張られていたのだと思いますが
その出来事を
この2人がどう受け止めるかについては
これでいいのかという思いも感じます。
自然現象なので2人がどうするわけにもいかないとは
思いますが
だからといって、2人が愛慾に溺れて
生きているということとはこういうことだ・・みたいな
対応のみだとしたら
なんだかな・・・という思いも感じます。
自分たちは遠い地で黙ってこの事態を見つめている・・・
だからどうなのか。
なんだか悶々としませんかね。
直子が
賢ちゃんが求めたから、あんなシチュエーションでの行為を受け入れたという
告白も、なんだかな・・・・と思いました。



昔の作品が懐かしいです。

窪美澄さんの書評もありますので
それを読んで手に取る人もいるかもしれませんよね。
でも
白石さんの作品としては
もっといい作品があるのにな・・・と思います。



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幻影の星    著  白石 一文

幻影の星    著  白石 一文



奇妙な体験をした2人の男女のお話。

(あらすじは感想にも・・)



感想  




 震災後に書かれた作品。当初は自然をテーマにした作品を・・・と思っていたそうですが
震災を経験し、そのテーマで書くことをやめてしまったとか。
<「自然との親和性」どころじゃなかった。>といっておりました(インタビュー読みました)

その結果、被災地にご本人が行き、そこで感じたことをそのまま小説にということで
こういった作品が仕上がったそうです。

1月に観た園監督の映画もそうですが、
今だから発信したい・・・・という思いが書き手&作り手にはあるのかもしれませんね。



で・・・小説ですが、初読みだとやはり厳しいかも。
こういう作品書く人だからとわかっていれば、素直に受け止められる(理解できるとはまた別)
かもしれませんが、そうでないと、なんなの・・・・と、投げ出してしまいそうになるかも
しれませんね。

結局のところ、ストーリーとしては、面白い・・・という話ではないと思うし。
冒頭に、SFチックな事件が起こり、その件をめぐっていろいろ話は繋がっていくけど
最終的に、その謎が解明されていき、すっきりするという風にはなっていないのよね。
もちろん、過去作品読んでいれば
単なるミステリーで終わるわけはないだろうなと察しがつくので
まあ・・・こんな感じでもありでしょ・・・・と納得できるけどね。




物語だけど
物語ではないような・・・そういう小説。

作者の感じていることを、そのまま、主人公がかわりに語っているという・・・そういう世界観。
そして、語っていることが、正直、小難しい。
平易な言葉で表現されているものの、読み手が、考えて、突き詰めていこうとすると
ちょっと、苦しくなるような感じ。
哲学的な語りが・・・これもみよがしに、沢山。あと引用文献等も多し。
でも、個人的にはそういう部分は好きなので
私はついていきました・・・・・★

今回の主人公はエリートではなく
専門学校卒で某会社に引き抜かれ、東京で契約社員からの出発。母親は若い男性と結婚しているので
故郷(長崎)へはあまり帰っていない。
付き合っている人は会社の同僚。彼女は結婚経験があるのだが、セックス恐怖症とかで、正式なセックスは
していない関係(妙な感じ…笑)
そんな彼の元にある日、母親から電話がある。
彼の名前の入ったバーバリーの青いコートが届けられたと。
地元に帰ってきているのかと・・・。
彼は最近帰っていないのに、なぜ自分のコートが長崎にあるのか。
第一、その青いコートは今手元にあるのに・・・・???。もう一人の自分がいるのか


一方、諫早で会社員をしながら夜はスナックで働く女性も登場し、同じような経験をする。
携帯電話がある場所でみつかるのである。本物とコピーの2つの携帯が手元にある。
どうして・・・・。
この女性は、ある社長と不倫関係にもある。またこの社長が変態で、まあ・・いろいろ彼女に迫る…笑。
(どうしてこう、白石さんの作品は、いわゆる、正統派でない性描写になるのか、そこのところは
いまだ、解せないな・・・女性的にはうん?)

最終、同じような奇妙な体験をした2人は再会しあうという話の流れになっています。


さて、引用文献多しの部分ですが。
よく作者の作品にはそういったもの出てくるんですが毎回
私は、調べたりするんですよね。
そういった本があるのか・・映像があるのか・・・ってね。
今回も「世界平和はナマコとともに」という東工大の本川達雄さんの作品が引き合いに出されていたので
調べてみました。面白そうです・・・・ね。

また、隕石の話。NHKスペシャルで巨大隕石が追突した映像とかね。
たしかに、こういうものみると、感じるものがいろいろ出てくると思うな・・・。


梅枝母智夫の「どうせ絶滅の星」という文章も面白かったので、食い入るように読んでしまったしね・
(これは架空でしょう・・ふざけた名前だし・・・・笑)
他にも、
いろいろ理屈っぽいことが書かれていてやっぱり、
好みがわかれるかな・・・というところ。


死ぬことの意味・・
生きることの意味。
そういうこと沢山読みますと気が滅入ることもあります。
159~60ページあたりで、死について延々と語ってあり
そこの部分は複雑な心境で読みました。
<死こそがすべてなのだ。人は生きて生きて生きるのでなく、
死んで死んで死ぬ。人は生きることを運命づけられた存在ではなく、死ぬことを運命づけられた存在なのだ。>
(159)

<時間の罠にかかった僕たちは、生を言祝ぐあまり、死の偉大さ、死の真実の意味、死の底深さや美しさをすっかり忘れてしまっている。死という永遠こそが束の間の生を約束してくれていること、死こそが生の
母体であることを僕たちはいつの間にか見失ってしまっているのだ。>

思わず考え込んでしまうでしょ?いろいろ思い巡らせるのは私だけか・・・・笑
こういうところは落ち込むようなことでなく
本来のありようを知り
逆に、生の意味を考えさせるのではないか・・・そういう風に思いました。


<時間の存在さえ否定できれば僕たちは死によって
また生まれる前の世界へ帰ることができるのだ・・・>
(95)

この箇所も印象的でしたね。

この小説のキーワードは、イリュージョン。
現実って自分が思っているものがすべてだとは限らないかも・・・とさえ
思えてきてしまいますね。
今が幻影なら、どこかでまた死んだ人がいる世界があるのかもしれないとか・・・
ルルドも
再び登場したし・・・・。
まあ・・・哲学的なことは
答えの出ないものですからね。どう考えても良いということで。



毎度毎度、白石作品ではそうやって、考え抜いているので
今回も興味深かったです。





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  • Author:みみこ
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