ランプコントロール   著  大崎 善生

ランプコントロール    著  大崎  善生


27歳でドイツ出向を命ぜられた、大手出版社勤務の直人。
学生時代から付き合っていた恋人・理沙は広島に病気の父親がいるため
一緒に行くことを拒んだ。そのため2人は別れることに。
やがて直人はドイツでステファニーと新たな出会いをする。





感想



大崎さんの新刊。今回は「アジアンタムブルー」を思い起こさせるような恋愛小説。
正統派ですね。



失った恋に悩む主人公。
忘れられない恋人の影。


大崎さんならではの小道具の使い方が相変わらず効果的に物語を彩っています。

音楽でいえば今回は、
シンディローパーの
<タイム・アフタータイム>
エリック・クラプトン<Change the World>

その他、
クロスワードパズル
観葉植物のライムポトス
ブレーメンの音楽隊のお話





などなど。


過去の恋愛小説同様、同じ感じのものが多いのですが
それが、よい意味合いをもっていて、やはり素敵だと思います。

もちろん、印象的なセリフも多いです。

ただ
今回は
正直、前半のドイツでの生活風景がとても面白かったゆえ、
後半、日本に帰ってきてからの
展開にはがっかり感がありました。


そういう方向に展開してしまったら、嫌だな・・・という思いが
まんまと当たってしまったということです。


前半のドイツでの生活。
傷心の主人公を待っていたのは
個性的な共同生活をすることになる仲間たち。
そして、同じように恋人との関係に行き詰まっていたステファニーとの出会い、新しい恋の予感を感じる。
ゆっくりとした時間の中で
2人が、徐々に歩みを近づけていく様がとても微笑ましかったです。



後半は
別れた(と認識していた)恋人・・・・
のその後が分かるお話です。



日本に戻ってきてからは
ちょっとドラマチック過ぎる感があり・・・・。
もちろん、ドイツでの生活&恋人という部分においても
夢物語的なところもありますけど、読んでいて外国生活そのものが興味深かった分、
気にならなかったのです。
が・・・後半に別れた恋人理沙の現状が
感動路線に持っていかせようという意図はないにしろ
そういう方向を感じさせるようになっているみたいで、
嫌でした。

映画「レナードの朝」を思い起こさせるようなところもあります。
レナードの朝自体は素敵な映画なんですけど・・・ね。
こういう流れの中で出てくると違うかな・・・って。




確かに別れた直後、そういう事態に恋人が陥ってしまうこともあるかもしれません。
悩む主人公の気持ちもわかりますが・・・
現実的に広島から久里浜まで
3年間の移動が可能なのかどうか。
また、病人の理沙が美しすぎて、綺麗過ぎて・・・。

ちょっと・・・冷めた目でみてしまいました。



いい話ではあるんですよ。美しい恋愛小説。
泣くまでには至らなかったかな。

ちなみに、性描写は生生しかったです・・・。


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Railway   Stories    著  大崎善生

Railway   Stories    著   大崎善生



列車に乗り
過去を旅する・・・

ノスタルジックな香りのする
10篇の短編集。


夏の雫 
橋または島々の喪失 
失われた鳥たちの夢 
不完全な円 
もしその歌が、たとえようもなく悲しいのなら
フランスの自由に、どのくらい僕らは、追いつけたのか?
さようなら、僕のスウィニー
虚無の紐 
キャラメルの箱 
確かな海と不確かな空 



感想   


すべてのお話に列車が絡んでいます。
その列車に乗りながら、記憶は遠い過去に・・・

そので繰り広げられるのは
家族の話であったり、恋人の話であったり
友人の話であったり・・


私小説っぽい部分もあり(私生活とダブるような設定もあり・・)
架空の話でもあったりと、
その境目はよくわからないのですが、
ふとした瞬間に過去のある出来事を思い浮かべてしまうときは誰でもあるはず・・。

そんな甘酸っぱいような、痛いような胸の苦しみを
物語を読みながら自分も思い出してしまうような
そんな物語ばかりでした。


とりわけ、
最終のお話、
「確かな海と不確かな空」が心に残りました。


つらい禁煙生活は読んでいてもその苦しさが目に見えるようでしたし
父親への主人公の思いは
自分と自分の親への思いとも重なるようで
ちょっとウルウルしてしまいました。


大崎さんは
過去をいとおしくいつも描きますね。
男性ならでは・・・と思います。
女性はたぶん、過ぎ去った男性をそれほど、美化したりしないような気もする・・・わ。
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存在という名のダンス  上・下   著  大崎善生

存在という名のダンス   上・下  著  大崎善生




舞台は北海道。
厳しいルールに縛られ世間から隔離された
梟の森・・で暮らしていた少年宗太は
危篤の父親に会うために脱走。
やがて、悪の組織と戦うことになる。



感想   

大崎さんの新刊。
今までとはまた違った作風で驚きました。
恋愛小説が多かったのですよね・・・
でも、今回はファンタジーなんですもの!!



独特の世界観でなかなか面白かったです。
主人公の少年が父親に会うために舞台になる
北海道を転々としていくというはじまりから、
映画でいえばロードムービーっぽくなっていくのかなと勝手に思っておりました。
(上巻には地図もでております。参考にしながら読む進めていくことができます)
旅先で、さまざまな出会いがあって、少年が人間的に成長していくのかしら・・・・という
方向性を想像しておりました。


しかし、物語は違った方向に。

少年がいた施設から追手が迫ってくるのです。
少年は単なる脱走者ではなかったのですよね。
その父親も実はこの施設とは大いにかかわりがあって・・・・。

秘密が次第に明らかにされていく中で、
驚くような事実がたくさんでてきます。


ファンタジー小説なので、
独特の言葉も当然、出てきます。
とても不思議な世界観としかいえないのですが、
追うもの、追われるものということで、
終始緊張感が漂い
また悪の組織の非情さや、
宗太の見方になってくれるものたちの存在など
興味ある題材がいろいろ盛り込まれておりました。


存在という名のダンス。


題名にもありますが、
この言葉には深い意味があります。

ゲルミナンド・ヘステのノートにある言葉。


そもそも、ゲルミナンド・ヘステというのは何か
説明しなければなりませんよね~~。


そうなると、難しいです。読んでみて~~としか言えません。


宗太の父親には倒さなければいけない敵がいるのです。
そのことを宗太は知ることとなります。
自分の存在意義も知ることとなります。

敵であるその男・・。

その男は700年以上も前に忽然と現れ、憎悪をもって世界を支配しようとしてきたのです。
はじまりはドイツのハーメルンから。
有名なハーメルンの笛吹き男の伝説からはじまっているのです。
男は
130人もの子供を連れてドイツのハーメルンから姿を消しました。
そしていくつかの悲劇を繰り返したあと、戦後の岩見沢に姿を現したのです。

それが、宗太が戦うべき敵.


そして、戦士であるヨムロウとは・・・




ルビーという小鳥ちゃんや
美和という病弱な少女。
この存在も面白いです。



美和が、何者だったのかがわかる最後は
少しウルウルとします。


不思議な・・・不思議なお話だったな・・・。



時折出てくる
北海道のヒグマ

怖いですね・・・・

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ディスカスの飼い方    著  大崎 善生

ディスカスの飼い方     著  大崎  善生

ディスカスを理解することは
宇宙を理解することと同じ。

会社を辞め、熱帯魚のディスカスの飼育に没頭す涼一。
だが、恋人の由真は、そんな彼に別れを切り出す。



感想   大崎さんの新作です。恋愛小説ということですが
本書のほとんどがディスカス熱帯魚の繁殖方法についての述べられいますので、
恋愛にありがちなドラマチックな部分を期待していると
え~~って思うことはあるんじゃあないのかな。
実は私もこれほど、
ディスカスばかりにページが割かれているとは、思いもしませんでした・・・笑
しかし、恋愛はちゃんと絡んではおりますよ。
リアルタイムでなく
追憶の記憶でしかありませんが。


ディスカスを知ることは宇宙を知ることと同じという主人公。
う~~ん、そういわれても、ディスカスを飼った事がないので
最初はピンとくるものがありませんでした。
でも、読んでいくとなるほど・・・・と納得できる部分もあるのです。
ただ、だからといって同じような世界に飛び込み、確かめてみようという気にはまったく思えず。
そう考える人がいても、それはそれでいいのではないかと・・。
そういう突き放したような納得の仕方でした。

これはディスカスだから、どこか神秘的な部分も感じられますが
かなり特異な世界に没頭していたのであれば、もしかしたら引いてしまったかもしれません。
そういえば、主人公はディスカスの前に
オムレツづくりに没頭していたんですよね。
なにか一つにこだわりだすと、
とことん突き詰めてしまわないといられない性分なんでしょうね。

他人事ごとならば、素晴らしい趣味ですね・・・と思わなくもありませんが
これが、自分の彼だったとしたら、ちょっと大変と思ってしまったことでしょう。
だから彼の恋人に、心底、同情してしまいました。

6年前の恋人として登場するのが由真です。

彼女の気持ちが手にとるようにわかってしまうわ。
女性なら当然の心理ですもの。
私と魚どっちが・・・と問い詰めるのって、無理ないし。ブリーダーとして会社もやめ
生きていくといわれたら困惑してしまうし・・。


男はそもそもロマンチストだと思うけれど、
時々は現実をみてくれないと、女性としては寂しい限りです。

彼のせいで彼女に不幸が襲ったのだということはけっして無いのだから
いつまでもいつまでも、引きずっている彼に
苛立ちさえ感じました。
都合よく、彼女を美化しているんじゃあないかと。

彼女はあの時点で決断したわけです。
そしてそうさせたのは、彼の優柔不断さに他ならないのではないのかな・・・と。
どういう結果が待ち受けているのかは想像できたのに
彼は承知でディスカスの世界を選択したのです。


ただ、後悔しても始まらないってわかっていても
後悔してしまうのが人間かもしれませんね。


熱帯魚繁栄に、ポポンS、パンスト、ホルマリン、膣炎の薬と、
意外な物が必要だと知り、ちょっとお勉強になりました。
また、ハイコ・ブレハのくだりがとても面白く、
最後まで興味深く読めたのは良かったです。

時折出てきた少年は、
過去をつなぐ人物ということでしょうか。



特定のものにのめり込んでいる人にとっては
その世界は自分にとってかけがいのないものと言い切ることができるでしょう。
でも、何の興味もない場合、それを理解しろというのは
やはり無理なこと。
相手が好きだから、私も歩み寄ろうと思っていても
同じ割合で熱意を示すのはなかなかね。
好きの程度にも幅がありますし・・


ディスカスにすこしでも興味あるのならば
嵌るかもしれない世界ではあります。
でも私のようにそれに興味はなくても、
その深い飼育方法に時折感嘆が漏れてしまう
そんな内容ではありました。



ディスカス

スワンソング   著  大崎善生

スワンソング   著  大崎善生


25歳の主人公良ちゃんと由香は交際も3年。
同じ職場の同僚同士。
結婚も考える中だ。
そこにアルバイトで入ってきた21歳の由布子。
良ちゃんの心は揺れる・・




感想   暗いです。すご~~~く。
これは女性と男性とでは感想が違ってくるのではないかな・・・
女性としては
結構・・意見あり!!の状態ではありますね・・話の流れに・・・。
そもそも
私は、男性主人公に共感もてないお話って
意外に好んで読む傾向にありがちなんです。
男性が書く恋愛劇って好きなんですよ。
自己陶酔型である男性主人公が登場した場合、それに反発を感じながら読み進めていくのが
実は快感だったりします・・・笑

だからこの小説も好きか嫌いかといったら、話的には
あまり好きじゃないものではありますが、
描かれる文章においての死のとらえ方とかに
共感もてる部分も確かにあるので(それは大崎さんの一連の作品において
共通すること)読まなかった方がよかったな~~とマイナス的な
感じはまったくしませんでした。


この3人の関係はよくあるもの。
だけど、その後始末というか・・
終りの部分はきっちりしてあげない男=良ちゃんに
すべての原因があるように思います。

優しすぎる男というのはある意味・・・すごく残酷でもあるんですよね。


由香と別れる理由も
わからないとか・・・ごまかさないで、好きな人ができたとはっきりいってあげればいいのに。
たとえそういう気持ちじゃあなくても(好きな人が出来たということ・・・)理由は漠然としたままだと相手が納得できないのは当然だと思うよ。
それをね

「理由なんかないさ。もしかしたらそれが唯一の理由かもしれない」
なんて気障なこと言われたら・・
ふざけないでよ・・・といってしまいそうだな・・・笑
はっきりいって、そんな男ならこだわらないでこっちらかさっさと別れてしまうと
思うのよね・・・。

はっきり別れを切り出してくれれば
そのときはショックでも女性は立ち直りが早いから
絶対大丈夫なんだって!!・・・笑

この物語のように由香はものすごく引きずって、仕事も手が付かず
私生活も乱れに乱れるって
そんな女性って実際いるのかしら。仕事バリバリな女性なのに
男一人のために身をほろぼすなんて、女側からみたら信じられません。
そんなに女って弱くないような気がするし.

ちょっとひねた見方で申し訳ないけど、
男がね、これほど(身を滅ぼすほど・・)俺を好きになってくれる
女だったと言いたい→自慢・うぬぼれにさえ、とらえることができそうで
嫌だわ~~~笑


またアルバイトの女性由布子。
これが結婚前まで清い関係でいたいという・・・・いまどき
珍しい女性・・・。
良ちゃんは由香とは結構セックスもしていた中なのに
そんな初々しい由布子を前に自分を抑えることができるのかい・・・笑
と心配をもしたのですが、繊細で純朴な優しい彼女だからこそ
守ってあげたいという意識が強くなったみたいです・・・良ちゃん。
由布子もまた由香同様、精神的なバランスを崩していくのですが
これも良ちゃんのせいで・・・あります・・。

後半は
どんなに由布子が自分を思ってくれていたかということが
わかりますが
これもどこか「俺って2人にここまで思われていたんだよ・・・」という
自慢に聞こえる・・そんな私(ひねた見方ですかね)
絶対・・由布子みたいな女性もいないって!!
結婚して子を産んでまで
別れた彼を思う・・・それはそれでありかと思うけれど
もっとさばさばしているような気がする・・・割りきっているってこと。

まあ・・・あれだけ自分の面倒をみてくれたから
思いが深いっていうのはあるけれど、もとはといえば良ちゃんが
原因なわけだし、当然の行動でもあるよね。

そして由布子の子につけたその名前が・・・
・う~~~ん。
う~~~ん。
理解できないな。


「別れるということはこの3年間の付き合いを否定すること。
私を否定すること。そして良ちゃん自身の生き方を否定することなのよ。」

由香さん↑のように言っておりましたけれど、
でも当然なのだからそうだよ・・・って言えばいい・・・良ちゃん。
綺麗ごとの別れなんてないんだから・・・。

コインランドリーでであった
少女との会話の中で
出てくるアルマジェミア。

ポルトガル語で双子の魂。

ブラジルの言い伝えで
「人間は生まれる前は
男女が一対。双子の男女だったはずが生まれるときに
離れ離れになってしまう。
人は一生のうちの多くの時間を費やしてその双子の片割れを探すの
上手く巡りあえば双子の魂は合体する。
それが完全な恋」


こんな話を交わすのだけど、いい話だったわ・・。
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ の映画のよう・・・・。


結構登場人物たちに対してはひどいこといっておりますが
こうやって、素敵なエピソードが入り込んでいるので
大崎さんの本は今後もやっぱり読んでしまう・・・・・でしょう。
できれば明るい話がいいですけどね。

スワンソング

タペストリーホワイト 著  大崎善生

タペストリーホワイト 著  大崎善生


明日もあなたは私を愛してくれているのでしょうか?


姉希枝子の部屋に残された手紙。
遠藤というその人は姉にどんな影響を及ぼしたのだろうか。
高校を卒業して東京に行った姉は
やがて内ゲバの犠牲になって死んでしまう。
何故姉は死ななくてはいけなかったのか・・真相を突き止めるため
妹洋子も続いて上京する・・・。



感想  大崎さんの本・・4冊目です。
今回の主人公は女性。女性の心理を男性が・・・というカタチですが
違和感もなくすんなりと入り込める
文章でした。もともと透明感があって優しい文体なので
女性の主人公でも合うのでしょうね。
舞台は70年代学園闘争。

自由と解放を求めることが・結果
人が人を殺めることになってしまうなんて
なんとも悲しすぎる現実です。
学園闘争というものを、あまり実感として感じられないない私でしたので、その点では悔しい思いをしました。(たぶん、その時代の流れを
経験したものにとってはリアルに感じてしまうのでは・・・・)
彼らの主張やそれらを引き起こすべきエネルギーというものを、
どうも理解できない自分がいるのですよね。
(この学園闘争については・・・昔高野悦子さんの「二十歳の原点」を読んで興味を覚えた時期があるのですが、やはり、客観的にしか
みることしかできなかったです。)
むしろ、この物語では
背景は何にしろ、
最愛の人の死を乗り越え、再生していくという主人公の生き方に
共感できるものが多く、読んでよかったと心から
思える作品となりました。
生きるうえで経験すべき出来事・・人の死を受け入れる・・ということを、優しい、温かい言葉で語りかけてくれるので
本当に心地よかったです。
この手のテーマは何度読んでもいいです。
大崎さんの本はやっぱり好きだな・・・。
つむぎだす言葉の数々が
なにか宝石のように輝いて見えるときがあります。
けっして、美しいお話ではなく、
悲惨でグロくて、もし映像でみせつけられたらきっと
目を覆ってしまう場面になってしまうだろうに・・
読んでいる文章からは嫌な印象を受けないことが
不思議でした。


姉だけでなく、恋人までも同じような出来事で
亡くしてしまったら。
その心の傷は、想像するだけでもつらいことです。
そして、その後彼女がとった行動。
さらに胸が詰まる思いでもありました。
痛すぎて・・せつなすぎて・・
抱きしめてあげたいくらい。
そんなに傷つかなくても
自分を犠牲にしなくてもいいじゃない?
あなたこそ・・幸せになってほしいのに・・。
そんな心の声が聞こえるかのように物語が次第に
希望がもてる展開になっていたことにホッとしたのも
事実です。
あのまま・・沈んでいくばかりでは気持ちに行き場がなくなって
しまいますもの。
人生をまっすぐに生きていっている人間には幸せになってもらいたいですものね。

<一枚の大きなタペストリーを織り上げていくこと。
生きるということはそれに近いものなのかもしれない。
一本、一本の糸が縦横に絡まりあい、何らかの模様となっていく。
絵柄に大きな役割を果たす色もあれば、小さなアクセントであるが
なくてはならない糸もある。そして、中にはないほうがいいという
糸も絡まっている。>  本文より・・

ああ・・そうだわ・・・と、こういった文章を読むたびに
心が洗われる思いを感じます。

もうこれ以上生きられないと思っても
生きるチャンスを与えられている限り
人は生き続けなくてはならないと思います。生かされている
幸せを感じるべきだと思います。

洋子が一つ新しい命を産み出すことができたとき、
命の尊さをより実感できたのではないかと思いました。
ここで・・姉が出産を助ける場面がありますが・・
ジワジワジワ~ときてしまいましたよ。
姉は洋子の心の中に存在しているのですよね。
見守ってくれていたのですよね。

キャロル・キングの歌を
それぞれのキーワードにして物語が展開されていました。

 Will you Love me tomorrow

You've got a friend

It's too late

Tapestry

題名からはピンと来なかったのですが、検索して聞いてみたら
あ・・知っている!!曲もありました。
曲を聴きながらまた読んで見たい気がしました。





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優しい子よ   著・・大崎善生

優しい子よ    著  大崎 善生

「優しい子よ」、「故郷」他、全4編からなる短編集。




感想   大崎さんの作品は恋愛小説を2作しか読んでいなかった
のですが、短編はもっと素敵よ・・という声を
聞き、早速読んでみました。

全4編から構成される作品集。
なかでも表題作である
「優しい子よ」は涙無しでは
読めないような・・そんな作品でした。

これを無感情のまま
読むことは、普通人間としてはできないんじゃないかな・・と
思います。少年の文章が
無垢であればあるほど、
涙腺刺激されます。
これが小説でなく、実体験に基づいている
ということが、より、感情移入しやすくしているのではないかな
と思います。作者と奥様との関係が
どんなものかも感じることができ、小説では味わえなかった
作者の内面に触れることができたのも良かったです。

作者の人柄が
そのまま、文章にでてくる作品でしたものね。



続いて、「故郷」・・・という
作者と仕事上の関係があったプロデューサー
の晩年についての
短編があるのですが
そちらもよかったです。


この本は生と死が隣合わさったような
構成になっていますが、
自分でも色々考えることができて
大変有意義な時間を過ごせたような気がします。

彼の描く、死と生の物語が
とても気に入っているということだと思います。

教えてくださった真紅さん
ありがとうございました。

P.S・・・新刊「タペストリーホワイト」・・表紙も
素敵ですよね。早く読みたいな~~♪
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アジアンタムブルー

アジアンタムブルー   著 大崎善生

最愛の人葉子が亡くなってから・・
僕はいつもデパートの屋上で空を見つめる。
彼女を亡くした喪失感から抜け出せるのは
いつの日か・・・。思い出すのは自分自身の過去。
そこにはいくつもの死の影が隠されていた・・

感想   パイロット・フィッシュの文体に惹かれて
こちらの作品にも手を出しました。
結論から言うと・・私はこちらの作品の方が好きです。
最愛の人を看取る・・・主人公。
彼の中には、死というものが大きくのしかかっていきます。
世界中で愛を叫ぶ~を思い起こさせる内容ですが・・私はそちらの方を
まったく読んでいないので、この手の内容としては新鮮な気持で
読むことができました。

前半は主人公が送ってきた人生を振り返るお話。
その中で、どんな人物と出合って、どういった生き様、死に様を
目にしていたかが描かれます。もちろん、その中には最愛の人
葉子との出会いも、描かれていくわけです。
後半は葉子との最後の日々・・ニースでの生活がメイン。
つまり尊厳死ともいうべき、納得のいく死を迎えてあげる・・
という2人だけの世界が描かれます。

パイロット~を読むとわかりますが、ほとんど続編かと思える
キャラの設定です。アダルト雑誌の編集者、名前までもが
同じ、人間関係も一部重複しますが、まったくの別ストーリーと
なっています。
単純に、何故そこまで、SM雑誌とか、アダルト関係のお仕事に
拘るのか・・・それも2本続けて・・・ちょっとわからないところでもありますが。性的なお仕事といえども、そこに携わっている
女性達はただエロさだけを求めているというわけではないって
ことかしら。彼女らも、それにかかわる人間も特別視される
人々ではなく・・疑問や悩みをもつ、なんら変わりのない人間として
描きたかったのかしら。また死ということがテーマゆえ、
生きる実感として一番感じるのが・・・性だという意味での
対比かしら。そんなことを悶々と感じながら読み進めて
いきました。


彼が葉子を失ってから行き続けるデパートというのが
吉祥寺。そもそも中央線沿線には非常に馴染みがあるので、
すんなりその世界に入っていけました。懐かしいのよ。
彼が出会う女性・・・美術部の先輩にしろ、夫を失った女性にしろ・・
とても印象的ですよね。彼になんらかの影響を及ぼして
挙句の果て、風のように去っていく・・・・・。
まさに・・・人生色々って感じ。

お仕事柄、当然アダルト世界の描写が多いけれど、
そんなの気になりませんでした。

一番気に入っているのはね・・・彼の死生観。
死というものを・・・どのように考えていたのか・・・
また失ってしまった人の喪失感をどのように自分の中で
処理していったか・・・その描写に非常に惹かれました。

私は・・死がどんなものか幼少の頃から非常に興味があり、
いつも考えても理解できないものとして感じていました。
ここは主人子が中学生の頃悩んだ・・・と書いてある部分と
同じ心境だったんですよね。
そして主人公はあるコラムを読むことで、精神的な安定を
覚えます。
引用されるのは一編のコラム
<中国の古い言い伝え。千年に一度空から天女が降りてきて、
三千畳敷きの岩を羽衣で一掃きする。そしてその岩が摩擦してなくなるまでの時間を永遠という。
宇宙が無限である意味はただ一つ。膨張をつづけているというに
他ならない。>
今まで、漠然としか見えてこない永遠というものが、少しだけ正体を見せてくれた内容です。言葉にするとこういう意味合いなんだな。
そしてそこから発展して、直接的に死の意味はわからなくても、
永遠の意味を知ることで、死のイメージから、マイナス的なものを
排除できたような気がします。永遠がある限り、死は恐れるだけの
ものではないと・・・。それで終りではないような気がしたから。
う~~~ん、説明しづらいのですけれど、
目先だけでのことでなく、大きな時間間隔で物事を考えると
気持が楽になるっていうことかな。


痛みを感じたことがあり、生きることに不安を感じた時には
ちょっと手をとってみてほしい本だと思いました。

描かれる世界に入っていけない人には、
ダメかもしれませんけどね・・
私は好きでした。

後半の葉子の死については、かなり綺麗な感じの描かれ方です。
ほとんど理想的な死かな。周りの人々も皆温かいし。
ある意味、そういう境地に陥ることができる、状況が
うらやましかったです。もっと、現実は厳しいだろうしね。

優しい人であり続ければ、死ぬことは怖くないといった葉子。
希望に満ちたラストが心地良かったですね。

題名のアジアンタム・・・は本を読む中で確認してみてくださいね。
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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

パイロットフィッシュ

パイロットフィッシュ  著者  大崎善生

吉川英治文学新人賞受賞作。

かつての恋人由希子から19年ぶりに電話がかかってきた。
アダルト雑誌の編集長の山崎は
過去の記憶を思い起こしていた・・・。
現代と過去が入り混じり,
様々な思いにとらわれる山崎。
昔の恋人由希子と再会はあるのだろうか・・・。


感想  
 読みやすいです・・
先日読んだ本が、難解だった分、これはサクサク読めました。
たぶん、早い人なら一日でOKでしょう。
これを読みながら、村上春樹の「ノルウェーの森」を
思い起こしておりました。あちらは確か主人公が37ぐらい?
こちらは41でしたかね。似たような世代ですよね。
ちなみに・・私はノルウェーが好きです。
当時(80年代ね)発売された赤・緑表紙のハードカバーの
本をいまだ持っておりますが、たま~に読みたくなる本でも
あります。
話がそれましたが・・このパイロットフィッシュ。
まず、書き出しと、本の題名の意味合いが、なかなか良いですね。
書き出し・・
「人は一度巡りあった人と二度と別れることはできない。
なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも
記憶とともに現在をいきているからである」
人生折り返し点に差し掛かった人間なら、この言葉の意味が
痛いほど染み入ると思います。
いくつかの死に立会い、いくつかの恋に出会い、そのたびに、
苦しさやつらさを感じ取ってきた人ならば、記憶というものが
いかに簡単に捨てきれないものであるのかが実感として
よくわかると思うのです。
記憶というのは不思議な物で、覚えていないと思っていても
それは体内の深い部分に眠っていて気づかないだけ。きっかけが
あればいつでもそれはふつふつと湧き出てきて
くるものです。

そして
パイロットフィッシュ・・・水槽を設置するときに、一番最初に
いれる魚のことを称していい、水槽内を健全にするためだけに
使われる悲しい運命の魚だそう。
この言葉が、語られるストーリーに、絡んでくるのが
とっても面白かったです。
個々のエピソードが魅力的なんですよね。
生きることの難しさ、死んでいくもののつらさ・・
よくわかりますね。

文体は、心に優しく響くような、じつに透明感あふれる
もので、読み心地も良いです。

41歳の山崎に魅力を感じることろはなかったですが、
それは私個人がこういうタイプの男が好きではないと
思っただけのこと。でもほとんどの男性なら
こういう男に共感もてるのかもしれませんね。

山崎は、結局、いい女性達に恵まれたのだと
思います。
すべてやさしい女性だったのではなかったかな。
彼が癒しているようにも思えるけれど、結局は
自分自身も癒されていたでしょう。
お互い、良くも悪くも影響し合ってきた関係。

若い時の彼は流されるまま・・・。
彼の将来への方向性を導いてくれたのが由希子だったのかも
しれませんね。
それゆえ、彼の裏切りが私は許せなかったです。
若さってそんなものって思わなくもないけれど、
展開が唐突に感じた部分でもありました。由希子との別れの
原因でもあるし・・もう少し、描写が欲しかったです。

思えば、40過ぎてから出会う若い恋人七海とも、
唐突の出会いですよね。
もて過ぎる彼に嫉妬している部分も
あるのかもしれませんね。

女性側からみると、ここで・・そういう気持ち、決断はしないよな
と思うところもありました。
私は、昔の知り合いに、コンタクトをとって、あの頃・・どうよ・・と
いうのがどうも苦手なもので、由希子の気持ちには
一部共感できないものがあったということです。

ただ後にはひけないということを・・登った梯子の下を見ないという
表現がなぜか好きです。

アジアンタムブルーも読んでみたいです。この本の中にも
アジアンタム出てくるんですよね~~。
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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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