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クローバー

クローバー   著   島本理生

華子と、冬冶は双子。
でも内面はまったく違うタイプ。
華子はちょっとわがままで強引。恋人もとっかえひかっえ。わが道を行くタイプ。
冬治は慎重派で逃げ腰タイプ。
そんな華子の前に猛烈アタックの熊野(本名・細野)が出現。
一方の冬冶にも、同じ理系大学に通っている、雪村さんから
アタックを受けて戸惑い気味。
2人のその後はどうなるのか。




感想    前作島本さんの「あなたの呼吸が止まるまで」を読んだばかりというのもあったので
同じ路線かな・・・と思ったら
全く違う作風にまず驚かされれました。
明るいじゃない・?・・・・笑
沢山読んでいるわけではないけれど、なんとなく作品に暗いイメージが
付きまとっていたからね。


キャラがそれぞれに際立っていて(わりと個性的な人ばかり)
イメージがしやすいところが非常に読みやすかったです。
また理系大学の学生
双子の姉、弟という関係
それぞれの彼氏・彼女と
非常にオーソドックスな設定が、
身近に感じやすい分、安心して読むことができたかな・・。
双子の男女というのは、想像するのが楽しいですよね。
性格が違っていても、姉弟の絆の強さを感じますね。
姉に振り回されぱなしの冬治だったけれど、
どこかその立場を楽しんでいるところあるんじゃないかな・・・って思いました。
こんな姉弟関係ってうらやましい・・・。


この冬治に恋心示すのが雪村さん。
ちょっと変わった女の子なんですよね・
ファッションも独特な感じみたいでしたし・・・、
食べこぼししちゃうなんて、
なんかね・・・・。おとぼけちゃん・・・笑

この雪村さんは冬治に思いが届かないと知ると
変身~~~するわけですが、
この変身は
実にドラマチックでした。
女性って変わるときは一気にいくのね・・・。
思わず、笑ってしまったりもしたのですが、
その辺の女心は理解できるところおおあり。
冬治との恋愛には
共感できる部分が沢山ありました。
胸キュンは久しぶりでした・・・。


冬治が雪村さんと付き合っはじめて・・・・。
あるとき、
彼女が父親の病気で、ナーバスになっているときがあるのですが、
冬治、平気で、前の合コン彼女とお食事に行ってしまうんですよね。

冬治の
一本芯が通っていない様がなんともいらだたしいというか。
いや・・自分が彼女だったら絶対嫌だな・・・
悪気がないから彼女に報告するわけだけど
配慮なさすぎだし。
雪村さんは、ドーナツ買いをさせて、冬治の誠実さ、一生懸命さを試していたような
感じだったけど、
私は・・・それだけじゃあ・・すまないと思うけどね。こういう男嫌なのよ・・笑
ここはドラマなら、盛り上がり部分かも。

私は冬治だったら、もっとグイグイ派のほうがいいと思うけど。
雪村さんはまだおとなしい方だよね。
いかにも理系女って感じをかもし出しているけど
私はもっと振り回しちゃっていいと思うのよ・・・・笑


楽しい作品で
サクサク読めました。
でも最後の冬治の結論には納得がいかないかな。
お父さんだって安易に決めるなっていったのに・・・。
一本筋を通せって感じだけどね・・・笑

クローバー

あなたの呼吸が止まるまで  著  島本理生

あなたの呼吸が止まるまで  著  島本理生


島本さん2作目。
ナラタージュと同じような展開か・・・と思わせて
実は・・・・ほ~~~~そうきたか。。。でした。
読後感には爽やかさはなく、
ただ、寂しさとせつなさとつらい思いが・・・残った作品。
個人的には
こういった素材は、あまり好きではないかも。


主人公は十二歳の小学6年生。
作文調の文体で・・・こみがげてきました・・、ぶつかりました・・・届きました・・と
すべて、です、ます・・系で書かれています。
そこからは、彼女の、主人公の几帳面な
性格さを伺うことができます。
また
丁寧に自分の気持を述べていくという
かたちでもあるので、この主人公、十二歳の少女に
読み手の気持ちが寄り添っていくことができます。
これはもしかしたら
自分の母親的な気持ちが入り込んでしまっていたからかもしれません。
彼女の悲しみ、寂しさを
どうにかして、救ってあげることはできないかという
気持ちです。



大人っぽい態度をとっていても、
所詮子どもなんだから。
だれかが温かく包んであげないと。


主人公の野々宮朔の父親は
舞踏家。けっしてお金にはならない仕事を
自分の信念のもと続けている。
それが自分の生き方だと思っている。
しかし、家庭生活はそう簡単なものにはいかなく、
夢を追いもとめることだけでは暮らしていけない。
妻は、家を出て行ってしまう。
いまや父と娘のふたりだけの家庭。
父親は、ふだんから帰りが遅くなりがち。
舞踏仲間と付き合いがあるからだ。
彼女は
必然的に、普通の子どもより大人びた感じになってしまう。
大人の世界とかかわることが多くなっているからだ。
父親の影響で物事の考え方も、その年齢の子どもと違ってきている。
でもやっぱり・・・子どもであるに違いないのだ。


そんな彼女の生活を
彼女の言葉で
語っていく小説。


自分の意志を明確にしめす個性的な鹿山さん。
優等生で彼女が好意をもっている田島くん。
彼らとかかわる学校生活も
同時進行で描かれていくのです。



そして、予期せぬ出来事が朔に
起こってしまうのです。
ある種、暴力という名の行為。



彼女の復讐は、
彼女が精一杯できる
行動の表れではあるけれど、
逆に彼女の心の傷を大きくしないかと
不安もよぎってしまう・・・。
その勇気はまぎれもなく大きなものだけれど
勇気ある行為はまた幼いゆえの正義感から来るものであるに違いないのだから。


だからといってどうしていいのかはわからないし、
そのままでいいわけではないけれど。


私が一番イヤなのは
佐倉さんの行為そのものというよりも(まあ、それも不快だが)
恋愛感情が未熟な相手に対して、
まだなにもわからない少女に対して、
うまく丸め込むようなものの言い方・・・が非常にイヤでした。
自分の都合のいい風に
導いていく、大人のいやらしさ、汚れた考え=欲望が、
子どもの純粋な文章(実際には作者の文体なのだけれど)
で表現した時、
それは、何倍にもいやらしく感じます。


ところで、この作品で
象徴的に出てくるのが映画の「シベールの日曜日」
残念ながら未見ですが
内容は知っております。
ナラタージュでもそうでしたが
映画の引用が多いですよね。

ラストの描写が個人的には
好きです。大地に爪を立てる描写・・・。
少女の思いがこめられた文章でしたから・・・



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ナラタージュ    著  島本理生

ナラタージュ    著  島本理生

大学二年の春、片思いし続けていた高校時代の世界史の
教師、葉山先生から電話がかかってくる。
演劇部の手伝いをして欲しい・・・
泉は、先生への思いを甦らせる・・
卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密までも。

感想  
工藤泉・・大学2年
小野玲二・・上に同じく
山田志緒・・上に同じく
黒川博文・・上に同じく
塚本柚子・・泉の母校の高校3年
新堂慶・・・上に同じく
そして葉山先生・・・。

なぜか・・書き出してみたくなりました。
ストレートな恋愛小説。
久しぶりです。気持ちがはるか彼方に
タイムスリップしたようでした。甘い思いも、ドキドキ感も
切ない思いもあったな・・・・って。
帯についている文章は・・
「一生に一度しかめぐり会えない究極の恋」
魂を焼く尽くすほどの恋。封印したはずのあの痛みをよみがえらせてしまう小説ー小川洋子ー
激しい恋なのでしょうか・・・。ちょっぴり期待しながら
手にとりました。


綺麗な透明な文章でした。主人公の心理描写は
とても丁寧で、読みながらその映像が脳裏に浮かんでくるようでした。
先生と生徒の恋愛ということで、
禁断の恋・・激しい恋・・波乱の恋・・・?と
かなり起伏のある展開を想像していたのですが思ったより
淡々と静かなうちに秘めた思い・・・なのね・・という印象でした。

映像が浮かんでくると書いたように、
私の中では、害虫・・という映画が思い起こされ(あちらは中学生
でしたが)主人公と先生の絡みにおいては宮崎あおいちゃんと田辺さん(映画の中ではあまり詳しく描かれてはいないし、・・本とは年齢もだいぶ違いますけど・・・)のイメージが出来上がっておりました。
あおいちゃんのような透明な人物像を想像していたという
ことです。

主人公の泉が葉山先生に惹かれた理由はね・・
なんとなくわかります。やっぱり、家庭環境、父親の
存在薄の状況じゃあなかったのかな。
一見うまくいっているような
親子関係にみえますが、どこか踏み込んで付き合っていない気がしま
した。人を好きになるのには理由なんかない・・・ていうのは
もっともだけれど、やや特異な形であれば。。。思春期の場合
自分に必要であるものを求めたくなる傾向にあるのではないかな・・。

自分が一番困難なときに救い出してくれた人を好きになる・・っていうのは当然だし、だからこそ、自分のために尽くしてくれた人に
何かをしてあげたいという気持ちにもなるはずです。
泉は葉山先生の自分を包み込んでくれる温かさに、居心地の良さを
感じたし、同時に、自分こそが彼を一番に包み込んであげたいという
思いが生じたんですよね。


女性が持つ母性的な気持ちの現れでもあるんじゃあないかなって。
もちろん、それが愛だといってもいいのかもしれないけれど。
相手を思い思いやるのが出発なのだから。

実は私・・泉の今の婚約者こそ、本来の愛を知っている方だと
思います。だってあの包容力は凄いでしょう。
全てを理解して彼女を受け止めているんですよ。

一方の葉山先生。実は私は・・・教師としての資質の点では評価しているけれど、男性としてみた場合、優しいだけで人を傷つけている
やや偽善者ぶったところがある人だと思います。
優柔不断ではないでしょうか。
自分の恋に酔っている部分がないでしょうか。

妻を母を傷つけ、年下の教え子にも心の痛みを与えるほどの
残酷さを与えてしまう彼。
泉は彼は悪くはないんだから・・・・って擁護していますが
それは愛しているからこそ・・いえることで、客観的に見えれば、ずるい人でしょう・・。
自分だけが彼をわかってあげられるという思いもまた
恋を燃え上がらせる要因になること。だから葉山先生のような
キャラは必要なのかもしれません。が・・私はダメ。
自分はいい人ではないよ・・・と
自分から告白しておいて、
あまりそのことを意識していないように感じます。
そんな俺でもいいのか・・・といって、逆に
相手を惹きつける手段として使っているような気が
してならないのです。

私から見れば・・・30代の大人の男性の一番ずるいところをだしている人だと思いますね。それは私が、もう若くないからそう思うのだと
思います。純粋な目で男を見ていないのかも・・・笑

逆に泉が、小野君と付き合うことにずるさを感じている人も
いるだろうけれど、私はそうは思いませんでした。
好きな人を忘れようとするにしろ、なににしろ、
小野君と付き合うことで新たな道を見つけようとしたのだから
その選択には間違いはなかったと思います。
すぐさま・・長野の実家について行くと言う行動には
驚きもしましたけどね。意外と後先考えない泉なのね。
熱い思いから出発した付き合いもあるけれど、徐徐に親密になっていこうという思いからの付き合いも当然ありでしょう。
そして小野君の嫉妬、束縛、・・・
当然でしょう。
小野君は真面目でしたからね・・・笑  泉を奪われたくないという
思いがかえって彼女を遠ざけさせてしまったのでしょう。
若いとき・・・あるある・・・て感じでしょう?
どうでしょう・・・男性の読者の感想は。
やや小野君にあまいね ・・・笑

葉山先生は結婚もして、一家の主まで経験した方にしては
子供じみたところがありますね。
分別があってもよろしいかと思うのですが。
既婚男性には厳しいですか・・・・笑

<君にあげるものはこれしかない・・・>という葉山先生。
う~~~ん、私からみたら、男の心の声が聞こえてきそうです。
私なら、だまされるのかしら・・・って引きますが
やっぱり愛は勝つのですよね・・。


<きっと子供だったから愛とは違うとかじゃあなくって、
子供だったから、愛しているってことに
気づかなかったんだよ>

映画「 愛人・・ラマン」主人公と同じような心境ですね。

本当に大事なものは失ってからも
その人の人生にずっと染みつくんですよね。


<きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ>

私はこの小説中で↑のセリフを発することができる
そんな彼氏と出会うことができる泉が、やっぱり幸せだと
思います。婚約者の彼が一番素敵な男性に思えるな・・・。


で・・・ラストのところで明らかになる葉山先生の
こと。

私は、葉山先生・・・いやだ・・・ってさらにさらに思いました。
男の方がやっぱり、ロマに酔いすぎのような気がします。
ただそれを受けての泉の反応には好感もてました。

失った恋を受けてそれでも前に進もうとする強さ。
切ない恋をそのままの形で保存しておこうという
気持ちの整理の仕方に・・・共感がもてましたね。

ちなみに
ナラタージュ・・・とは。
映画などで主人公が回想の形で
過去の出来事を物語ること・・。
私も過去の恋は思い出しますが、けっしてそれを
現実の時間枠に引っ張ってこないように、心がけますね。
若いうちはバランスが取りにくいのですが
年を重ねるごとに、上手に穏やかな気持ちで回想できますね。

それにしてもこの作品、
映画のお話がよく出てきましたね。


葉山先生はエリセが好きで「エル・スール」を好んでいるのです。
泉に「存在の耐えられない軽さ」を薦めることから
きっとその作品も好きなのでしょう。
ちなみに妻は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が好きだそうです。


映画もあわせてみるといいかとも思います。
エリセが好きなんだ・・・葉山先生・・・どうしよう趣味が合う・・笑

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