症例A  著  多島斗志之

症例A  著  多島斗志之

精神科医、榊は前任者沢村医師の自殺によって、
17歳の少女・亜左美を担当することになった。
沢村医師の診断では彼女は精神分裂病。しかし、榊は
ふに落ちない点を感じ、診断と治療を決めかねていた。
そんな時、職場にいる女性臨床心理士である広瀬という女性に
亜左美は「解離性同一性障害」であるのではないかと
指摘される。いわゆる、多重人格だ。
榊はもともとその診断に不信感をもっていた。
榊の態度をみて、広瀬は、1人の医師に会うよう進言する。
そして、衝撃の事実が知らされる…。



感想  宝島社の「このミステリーがすごい」2001年度版
の国内第9位の作品です。
テーマはずばり、解離性同一性障害。
よく映画でも見かけますね。多重人格。起こった事件はすべて当事者の
精神的疾患からくるものだったとか、映画自体が、自身の妄想だったとか、みるものを驚愕させる事実としてこの
解離性同一性障害という病名が出てくることがありますね。
この物語も、ミステリーということで、やはりサイコものの雰囲気を
期待していたのですが、ちょっと違いました。
いい意味で裏切られたという感じでしょうか。
むしろ、新鮮な内容に感じましたね。

興味本位的な部分で扱われがちな問題ですが、この物語では
とっても真面目に取り組んでいる姿勢を感じるのです。
そこが好感もてましたね。
綿密な調査の結果でしょうか(本の最後にある参考文献の数がすごい)
この解離性同一性障害だけでなく、分裂病、その他精神的な病に関して、詳細な解説が述べられています。
実際の医師が記したかのようで、ものすごく、勉強になりましたね。
まあ、精神的な病に興味があるかたが、読めばの話で、
そうでないかたには、なんの面白みもない文章に感じるのでしょうが。
特に印象に残っているのは
ガリヴァー旅行記のガリヴァーが分裂患者ではないかという説。
作者のスウィフト自身が精神を病んでいたということから
小説にその分裂病の症状が表れるではないかといった内容でした。
いや・・・面白いですね。精神科のお医者さんの見解は。
そんなわけで、私的には興味深い話、エピソードが多かったのが
印象的でした。

ところで、この本、ミステリーという分類なんですよ。
今までの↑の感じですと、単なる医学書的な本のイメージを
もってしまいませんか。
いやいや、ちゃんと、ミステリーになってはいるのですよ。
ただ、地味ですね・・笑。
ミステリーとしては結末はなんだ~~みたいな
印象は、感じます。
その部分はあまり期待しない方がいいと思います。多重人格で、ミステリーとなっていても、別に沢山の人が殺されるわけでもなく、複雑な謎解きなどはまったくありませんからね。

もう一つ大事なこと。実は2つの話(精神病院の話と博物館のお話)
が同時進行していく構成になっていてミステリー的な部分は両方の話に入っているのです。
精神病院でのお話では、亜左美は本当に解離性なのか。
沢村医師は本当に自殺なのか。この2点がポイント。
博物館が舞台のお話では、博物館にある青銅の狛犬が贋作ではないかという謎。
そして、この一見関連性がないようにみえる2つの話が最後に
リンクしてくといった、話の運びになるのです。
でもこの2つの話がつながっていたという事実については
別に驚くほどのことではありません。ごくごく自然なかたちであるので
納得できてしまいます。
前にも書いたようにとりたてて驚くべき結末にはなっていおりませんね。
なにより、一番驚いたのは広瀬にかかわる秘密ではないでしょうか。
これは唐突だったので正直おどろきましたね。
え~~~そうだったの・・って。
ここはかなりくどくどしい説明になっているので、
人によっては読みづらく感じるかもしれませんが、私はのめりこんで
読んでしまいましたね。


意外にラストは○○小説へと変化していきます。
これはそのようにとらえてもいいのですよね。
ミステリーという言葉にあまり惑わされないで
過度な期待をもたなければ、楽しめる作品だと思いました。

ちなみに、私は普通の人です・・・・笑
なんだか読んでいるうちに、自分も感覚が麻痺していくような気に
なってしまうのがちょっと怖かったです。
ほら・・正常とかそうでないとかの境目って判断しにくいじゃない?
当てはまるかなと思えばそう思えてくるし・・ね。
でも・・・私・・・まともですので・・あしからず・・・笑
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