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月の満ち欠け

月の満ち欠け   著  佐藤正午


新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

<amazonnよりあらすじ抜粋>

感想

佐藤さんの直木賞受賞作。
毎回新作は読んでいるのですが、佐藤さんの作品って
凝った作りなので、なかなか感想を書きづらい感じはします。過去の感想を観ても
内容に漠然としかふれていないので、どんな内容だったか、忘れていることも多く・・・(笑)、
今回自分の覚書として
本から、メモ書きのように、抜粋をいくつかしてみました。
あくまでも私の覚書です。背景がネタバレなので、読む予定の人はスルーで。

まずは感想。

舞台は、東京駅のカフェ。
初老の男と小学生の女の子、母親。3人の会話。小山内瑠璃の親友だった緑坂ゆい、るい親子と小山内堅、ね。


そこから過去の話に遡っていきます。

今までの作品より入り込みやすいテーマではあると思いましたが
時系列が行きつ戻りつで
さらに、複数の人間が登場してくるので、整理しながら(紙にでも書く?)読んでいくことが必要には
なると思います。
さらに、テーマが、輪廻転生なので、そこも整理しながらでないと、誰が誰なの?と思うことになると
思います。
要は、瑠璃という女性が様々な女性に生まれ変わり
最愛の男性を追い続けるという話。
思い半ばで死んでしまったので、絶対生まれ変わりたい・・・・という気持ちが強いわけなんですね。
そして何度も生まれ変わるということは、
生まれ変わっても思いを告げることなく、短命に終わってしまうということなのです。
ここだけ聞けば、愛のために、なんとも純なお話なのねと思いますけど。
ネックは、不倫から始まる恋愛なのです。ここは好みはわかれるかな。私はべつにそれでもよいですが。
さらに、生まれ変わった子供、ある年齢までは、普通の子どもと同じように育つのですが
ある時期になると、元キャラの瑠璃が、精神というか人格というか、そういうものを、乗っ取ってしまうという設定。
いままでの自分はどこにいったのか、消滅なのか、悶々とするところではありました。自分は誰なのか
考えてしまいますよね。最初から、瑠璃の本領発揮ならよいけれど、途中で目覚めるってわけなんだもの
家族は驚くし、なんだか、寂しい気持ちになりますよね。

まあ、そういう部分で
もやもやとすることはありますけれど、会話文がとっても興味深いので、
嫌いな本にはならないのです。
瑠璃、頑張ったねと言いたくなります。映画の引用が多いのも映画ファンとしてはうれしいところ。

どちらかというと男性の方が気もちが入り込みやすいかな。追いかけてきてくれるのですから、ね。
そして結果として、初老の男性と、若い女性の組み合わせという形にはなるので
傍で観ていると、ロリっぽい雰囲気になるわけですもの。そこはね・・・・女性陣としては
ぞぞぞと感じますかねエ。

ラストの衝撃。
もしそうなら、う~~~ん、主人公と義理娘はどうなるんでしょうか
心配です。「秘密」みたいですね

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<<私の覚書用>>

★東京ステーションホテル2階
三角を待つ。
母娘親子と、男一人。
男、小山内堅(つよし)  60代。
 
★小山内  青森八戸市生まれ
東京の私大、阿佐ヶ谷アパートで4年
石油元売りの企業就職⇒四ツ谷にある東京支社
大学時代の阿佐ヶ谷アパートから小平にある独身寮へ
4年目に九州に転勤
福岡支社で5年
妻、藤宮梢
2学年後輩、八戸高校出身
出会いは
八戸をでて大学時代、サークルで
藤宮は女子大
映画デート⇒タクシードライバー鑑賞
藤宮が就職し、やがて小山内の勤務の福岡へ
そこで結婚、出産
生まれた一人娘
瑠璃

娘とともに千葉へ引っ越し、市原勤務
やがて東京本社へ勤務、
住まいはそのまま千葉稲毛の社宅


瑠璃7歳の時異変⇒高熱
アキラ君の存在をほのめかし、昔の歌を歌い
デュポンのライターに詳しい
高田馬場レンタル屋に行きたがった

瑠璃、梢
瑠璃が高校卒業時に2人とも車の事故で亡くなる

瑠璃の書いた絵、瑠璃は美術部員

★荒谷清美中学生の娘、親子。
今、小山内と暮らす女、60代のこの男と暮らす。


★三角と小山内
15年前、小山内の当時の赴任先仙台、3月
葬式時に、三角典子の弟三角哲彦
と出会う。
その時は会話なし
さらに15年後
荒谷清美の娘(みずき)の導きで再び三角哲彦と再会
三角哲彦、小山内の自宅の訪れる

三角典子、今は結婚しで札幌在住
典子は15年前に死んだ妻、梢の中高友人
三角哲彦は小山内の8年後輩。


三角哲彦は昔、小山内の娘瑠璃と話したことがある
仙台から東京の三角に会うために車で出掛けたときに
親子2人は事故にあったのだ

★三角哲彦の過去
八戸生まれ
高校まで地元で東京の私大をでて大手建設会社
彼は大学卒業に5年かかっている。
その間、アルバイト先高田馬場で知り合った女性と、不倫関係になる。
彼女の名は、正木瑠璃(27)
「瑠璃も玻璃も照らせば光る」の瑠璃
バイト仲間は彼女をアンナカリーナに例えた。
彼女は、地下鉄の電車にひかれて死亡

三角哲彦は数年後
小山内にあう。
38歳まで独身の三角。
40過ぎに見合い結婚
小山内の娘、瑠璃は仙台から三角に電話をかけている。高校生時ね。
15年前の2月、三角の姉の親友(瑠璃の母親=小山内の妻ね=旧姓、藤宮梢)と、娘、瑠璃。
卒業したら仙台の自宅から東京にいきたい。三角に会いたいと、瑠璃はそのときの電話で話している。
三角38歳の時だった。
正木瑠璃の死からは18年たつ。
つまり三角は今、56歳か。確か小山内の8歳年下だものね。

そして三角、小山内と対面。


★正木竜之介。正木瑠璃の夫。
小山内より5年早く生まれる。
千葉船橋生まれ。
大手工務店就職。
喫煙具専門店に勤める
奈良岡瑠璃と出会い、結婚。
子作りに励むが子供はできず、夫婦すれ違い。
夫にアグネス・ラム似の愛人ができる。

妻瑠璃は、三角と不倫していた人妻。
つまり、正木の妻と同一人物
その後
地下鉄の事故で死亡。
それをきかっけに、正木は落ちぶれる・・・

正木、船橋の実家に戻り、再就職。(当初の職場は、落ちぶれたときにやめていた)
58歳の、正木。
その新たな勤め先の年下社長に娘がいる。名前は、希美。
希美が7歳の時高熱。それ以来、希美の雰囲気は変わる。

希美の母親。仙台の事故をニュースで見る(小山内梢と瑠璃、親子の交通事故ね)
小山内瑠璃が稲毛の小学校にいたとき、担任だったのが、社長の奥さん。
正木が、その小学校の修繕工事にいっていたとき
小山内瑠璃と正木は出会っている。瑠璃9歳ぐらい?

正木瑠璃地下鉄事故死亡⇒小山内瑠璃誕生、やがて18歳で交通事故死⇒希美誕生、正木に連れられ東京に行く途中に
死亡⇒緑坂ゆいの娘、るい

希美は45歳の三角明彦に会いたいがために
正木とドライブ。名古屋にいる三角に会うため?
8年前の事件は、船橋女児誘拐事件とされ、正木は刑務所に。


そのころ、小山内
荒谷清美、みずき親子と出会う


8月のお盆過ぎ緑坂ゆい小山内の自宅を訪れる。
三角の訪問から1か月

実は
生まれ変わりは
瑠璃だけではない
小山内の妻、梢も生まれ変わっているのでは。
それは
今一緒にいる
義理娘、みずきであろうか・・・


三角哲彦が八戸の小山内家を訪ねた日の1ヶ月後。
6月。
三角に会いに行く緑坂ゆいの娘るい(もとは瑠璃)、7歳。ラスト・・へ・・

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鳩の撃退法  上下  著  佐藤正午

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久々の佐藤作品

ファンは喜ぶわ

非常に凝ったつくりになっているので
妙なつぼがあります。

直木賞作家の津田のキャラいい・・

中野またいってみたいな~~


題名からは想像できない話の展開。

あの女優さん名を使ったクラブ、実にマニアックだよね
映画も少しでてきたけど
古い映画で、未見が多かったのは残念。

上巻の最後の方は
奥さんとの情事が結構濃厚ででてきたけど・・・

ホットカー-ペット上もなかなか良いものかいな・・・


感想に全然なっていないね。

本の方はこんな感想で勘弁。

ダンスホール    著   佐藤  正午

ダンスホール    著   佐藤  正午



四年前、小説家である「私」の身に
災難がふりかかる。
まわりの人間は、気の病というが、本人には災難としか言いようがなかった。
ある日、原稿に向かって仕事をしかけると、不規則な動悸。
小説書きの仕事が困難になった。
十年前に結婚していた私だがこのことがきかっけで妻と離婚。
単身者向けマンションに入居した私。
馴染みのバーで、東京から来たという男と居合わせる。
ダンスホールで働いている女を探しているのだ・・・
と、店主に語る男。
「私」は、
昔の知り合いからある物を受け取るように言われ、その受け渡しの連絡を待っていた。
そして、すぐ近くで発砲事件が起こり・・。



 


感想

テーマ競作小説「死様」の 佐藤正午 作品。


あらすじを書いていてもいまだよくわからない感じ・・・笑
もちろん、
何もない状態で小説を読んだので
さらにわからない状態がひどかったです。


このめんどくさい内容を読み解くのを面白いと感じれば
楽しく読み通せると思いますが
なんだろう・・なんだろうと・・
わからない状態でず~~といづづけると最後までそのままで
きっと苦痛に感じると思います。

私がそうでした。

佐藤さんの作品はいくつも読んでいるし
まあ・・・こういう作風だと知っているわけだけど、
今回はあまり内容がしっくりこなかったな。
白石さんの方が面白かったからかな。
死様がテーマにしては
う~~ん、しっくりこなかった部分が多しです。


登場人物は二人で、
小説家の「わたし」と
九州にやってきた「男」この
男は妻の離婚届をもってきたのだ。
妻の付き合っている男の離婚届。

大筋だけは何度でも書けるんだけどね。



まあ・・・読んでみてくださいな♪

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正午派    著  佐藤正午

正午派  著 佐藤正午


佐藤さん
デビュー25周年を記念して刊行された本




感想


書き下ろしも含め、
佐藤さんの作品がいっぱい・・・。
年表もあるので、どういう年代にどういう本を発行しているのかも
一目でわかります。

幻となった原作映画脚本「Y]も
完全収録されていました。
なぜ、映画化されなかったのだろうね。
今読みなおしても、面白いです。
やっぱり、映画「バタフライ・エフェクト」です。

デビュー前の秘蔵写真や
自宅のスナップもあります。
文章を読みながらその作家の素顔が徐々に見えてきますよ。

ファンでなくとも
楽しめるはず。
これをきかっけに他の作品読んでみようという気持ちになります。


という私も、正直、未読が多いです。
最近のは読んでいるんだけれどね。


徐々に読んでいきたいです。

身の上話    著   佐藤正午

身の上話    著   佐藤正午



物語は語り手の妻、ミチルの身の上話から始まる。
23歳の古川ミチル・・彼女は「土手の柳は風まかせ」みたいなところがある
あぶなっかしい女性。
田舎町で書店勤務。付き合っている男性は2歳年上、上林久太郎。
しかし書店に出入りする東京の大手出版社、社員、豊増一樹という男とも
交際をし始める。いわゆる二股である。
その事実を打ち明けていたのは同僚の初山さんのみ。
ある日、ミチルは書店の昼休みに、仕事場を抜けて歯医者に行こうとしていた。
実は出張に来ている豊増さんが東京に帰るということで密かに空港まで見送ろうという
企みもあったのである。
そんなこととは知らずに、同僚の立石さんと沢田主任は、ついでに・・・ということで
サマージャンボ宝くじのお使いを彼女に頼んできた。
空港との間を往復するシャトルバスのバスターミナル場で早速宝くじを買い
豊増を、快く見送ってあげようと思ったミチルだが・・・。
豊増の、ほんの一言から、ミチルの気がかわり、一緒にバスへ。そしてそのまま
羽田行きの飛行機に便乗。彼女は東京へと旅立ってしまう・・・
ミチルの波乱の人生がそこから始まる・・・




感想     佐藤さんの新作。
「5」・「アンダーリポート」と読んできましたが、
今回の新作は、他の2作よりも、読みやすい作品であると思います。
佐藤さんの作品を初めて読む方でも
絶対面白く感じるはずです。
話のテンポが速く、予想もしない状況に物語が進んでいくので
ページを読む手が押さえられませんね。
もう、先が知りたくて知りたくて、たまらなくなるような内容なんですよね。
「ジャンプ」のような失踪ものではありますが、
描かれている世界は違っております。


ジャンルわけとしては難しいところでしょうか。
恋人を追って東京へというと、アバンチュール的な恋愛話を想像しがちですが
そんな甘い世界ではありません。
何気なく、描かれている出来事があとあとになって大きな出来事へと発展していくのです。
まず、宝くじ。
ただのお使いごとだからと、思ってはいけません。
購入時に枚数を間違えてしまった・・・・ちっぽけな出来事だと読み飛ばしてはいけません。
すべてに意味があるのです。

東京でお金に困ってきたミチルを救ったのは
この宝くじです。
なんと、2億円の当りくじだと判明・・
2億ですよ、2億・・・★
それから物語は思ってもみない方向に転がりだします。
ここで、高額当選者だけがもらうことのできる
本というのが紹介されます。
「その日から読む本」です。
知る人ぞ知る本なんだそうです。こんな本あるんですね。興味深かったです。




東京でのミチルは、豊増さんだけを頼っていたわけではありません。
所詮奥さんのいる身の豊増さんなので、全面的に頼るわけにはいかないのです。
とりあえず、幼なじみで東京にいる竹井輝夫とアポをとり、同居人として
転がり込みます。そして竹井君の恋人、高倉さんと、新に知り合いにもなるのです。


登場人物は皆、
個性的な分、読みながら、読み手の中で、生き生きと姿を現してきます。
細かな部分でいえば、現実味を伴わない
行動をする人物もいたり(フライパンで●●ってちょっとコメディぽいよね)、
出来事もあったりするわけですが
そういった部分が気にならなくなるほど、起こりゆる状況ののインパクトが
大きいのです。

唯一いい人だと思えるのは初山さんだけでしょうか。
とんでもない行動を起こすミチルを、最後まで
見守っているのですから。
もちろん、このミチルは、共感もてる子ではありません。
むしろ反発でしょうね。
優柔不断な生き方、仕事や恋人ついての甘さも、正直いら・・ときます。
しかし、
それでも事の成り行きが知りたくて、そんなミチルの行く末を、もういいや~~~~と
放り出すことはできなかったのです。


そして、一番気になるのは
実はミチルの身の上を語る・・・あなた。
そう、語り手である、あなた・・・なのです。
冒頭の感じから、ミチルの夫であるのはすぐ推測できます。

しかし、待てど暮らせどなかなか、このミチルの夫となる人物はなかなか登場しません。
もしかして、すでに登場してきた人物が夫であるのか・・・そういう企みのある
小説かと思うのですが、
そうではないのです。
最後に、ようやく、登場なのです。
でも、じゃあ、この夫は何故ミチルのことを語る必要があるのでしょう・・・


誰に向かってミチルの身の上話をするのでしょう。
そして、この身の上話の
意味するところは・・



最後の最後で、う~ん、なるほどと納得。

ちなみに、ミステリーでもありますが、
本格ミステリーではありませんので、そういう方面の期待はしない方がいいかと。


心憎い小説だったな・・と思わずにはいられない印象をもつと思います。
それと、濃縮の小説です。中身は濃いです。


楽しんでくださいね。そうそう、ところどころで
あと一日という意味合いの時に、「今日いちんち・・」という表記をしていました。
一日の意味を強調しているんでしょうか。こうひらがなで書かれると
しっかり目に焼きつきますよね。

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↑表紙は後ろ姿のミチルを連想させる女の子。
でもちゃんと裏表紙には、真正面の姿です。
これも面白いです。

アンダーリポート 著  佐藤正午

アンダーリポート 著  佐藤正午


警察事務官、古堀徹のところに
ある日、大学生になった村里ちあきが訪ねてくる。
彼女は昔彼が住んでいた部屋の隣人の娘であった。
同時に15年前の殺人事件の被害者の家族でもあった。
ちあきは、母が15年前の事件に関して
なにか隠しているのではないかと、話す。
ちあきの来訪をきっかけに、古堀は
15年前の日記を読み返し、真相を突き止めようとするが・・・。


     

感想   「5」に続いての佐藤正午さんの作品。
こうやってみると結構読んでいる方かな・・・・・佐藤作品。

これは・・・好みが分かれる作品だと思いますね。
一度でも佐藤作品を読んでいて、その語りくちに馴染みがあるならば
OKでしょうが、初めてだとちょっと戸惑うかも。
また、ミステリーということですが、そこにあまり期待感を持ちすぎると失敗するかも・・
そんな印象を持ちました。

ミステリーというと、やっぱり・・オチとか・・・謎とかそのあたりに
焦点がいってしまうと思いますが、その部分で言えば
弱いと思うんですよね。あ・・・と驚くような展開ではないと思います。
トリックとしてみれば、ドラマでもよく使われていますし、
(本の中でも出てきますが)ヒッチコックの映画でも使われているトリックなので
よくみる形ではあるでしょう。
また、それを実行するに際しての流れに関しても、
現実的にみて、どうかな・・・と思う部分も感じます。
一種の賭けみたいなところがありますからね・・・
信頼関係の上で成り立つトリックですよ。
お互い様・・・というところからくるのですよ。
う~~ん、体許してまで・・そこまでやる心境ってどうなんだろう・・・・・・・という
疑問も感じます。それは追い詰められた状況に陥ったことのない人間だから
感じてしまうのかもしれません。
(ネタバレしないようにしているので微妙な言い回しですが・・)

物語では血路をひらく・・・・という表現をよくつかっていました。
まさに、そのためには何でもできるってことなのでしょうね。
物事を違う方向に導くためには
やっぱり、やってしまうものなのでしょうね・・・・
ふ~~~ため息です。



この物語は、トリックを楽しむことよりも、
そこに行くつくまでの、
もったいぶった語り口・・・
一体、ここでのこの文章の会話は誰なのかに始まり、
簡単には事件にも、真実にもたどり着けない構成のうまさを
味わうべきなのだと思います。

そして主人公の、どこか空気の読めない、鈍感さ・・
自分勝手さ・・・笑。
それが嫌だな・・・と思いつつも、ちょっと理屈っぽい感じが癖になりそうで
やっぱり最後まで語りについていってしまいます。


また、小道具・・
匂いと記憶の使い方がとっても面白く
魅力的になっていると思います。
記憶に関しては作者の作品にはよく出てきますよね・・・。


お話は
すっきり・・・・というわけでもないと思います。
事件は結局うやむやになってしまう感じではあります。
主人公は何のためにここまでするのか
どうしたかったのか・・・・なんて思うこともあります。
彼にとっては真犯人が誰であれ、なんのメリットもないわけですからね。
事件当事者にしてみれば
すでに終ってしまった出来事なんですからね。
でも、、振り返ってみたい事柄って誰でもありますからね。
たとえ自分に直接は関係なくても。
まあ、当事者にしてみれば、余計なことを・・・ですけど・・笑


主人公は非常にまめな男でした。
詳細に様々な出来事を日記に書いております・・凄いです・・・笑
一度結婚はしていますが、離婚して今は独身です。
その事件が起こったとき・・つまり15年前は
同じ職場の同僚でもある彼女=美由紀がいたのですが、
いろいろあって別れてしまったのです。

主人公=古堀は、よく美由紀のおばに、
あなたは血の巡りの悪い人ね・・・と言われていましたが、
それは読者の私たちも十分感じることでした。
付き合っている女性がいても、平気で、隣家の人妻を家に招きいれ
時にはその娘の世話まで快くしてやります。
面倒見の良い男といえば、聞こえはいいのですが
恋人にしてみれば、なんと女心を知らない鈍感なヤツということになりますね。


冒頭がこの物語の結末です。
そこに行き着くまでの過程がその後の物語で語られます。
つまり、最終章を読み
再び冒頭にかえってくることで、初めてこの物語は完結するのです。



ここで、古堀が語る一つの面白い話をしましょう。

ある青年が図書館で初めて会った女性に恋をしたそうです。
青年はその夜のうちにラブレターを書いて、翌日その図書館に出向きますが
会えません。その翌日も、そのまた翌日も出向きますが会えず。
実は彼女は青年に出会った次の日引っ越してしまったのです。
それから40年後。
彼女とまた同じ図書館で再会し、ラブレターを渡すことが出来ました。

たった一度しか出会っていない彼女が、40年後どうしてその人だ
わかったのか。
それは匂いだそうです。
香水でわかったそうです。
嗅覚は味覚より鋭いのです。



この物語のキーワードはまさに、匂いです。
好きな匂いは忘れられないのですよね~~~
嵌れば面白い物語だと思います。





アンダーリポート

5

5   著  佐藤正午


結婚八年目。
記念日にもらったチケットでバリ島に訪れた中志郎と真智子夫婦。
いまや倦怠期を迎えたこの夫婦。
夫、中志郎は、妻に欲情もなにも感じない日々を送っている。
一方の妻はどうか。彼女もまた、素の自分をさらけ出し
愛を語るの忘れてしまっているようだ。
そんな中志郎の、前に
手袋をした奇妙な女が現れる
そしてその女とエレベータの中である事がおきる・・。
その後、中志郎に異変が生じる・・。



感想  佐藤正午・・・7年ぶりの新作長編です。
単純な恋愛小説とはちょっと違うような・・一風変わった小説です。

とにかく普通の小説とは違います。
今まで読んだどの小説とも違います。
なんていったらいいか・・
読む人をきっと選ぶような作品です。
でも面白いですね・・・。
ただ、女性向きではあまりないかもしれませんね。
作品の主人公は中志郎とは別にもう一人います。
中志郎の妻と浮気している
作家である男性=津田慎一です。
この2人の話が入り混じって、ストーリーが進んでいくのですが
作家のほうがですね・・・。
女性の敵のような人物なんですよ・・笑
出会い系にはまり、次々に新しい女性と関係を結びます。
誠意なんて言葉は知らないでしょうね。
マイペースで自己中。
ここがたぶん、女性なら許せない・・
こんなやつ、実際身近に居たら、殴り倒したくなりますよ。
でもでも憎めないところがあるのです。
・・なぜって
私の知り合いではないから・・・笑
いえいえ・・そうじゃなく
やっぱり彼の語りが魅力的だから。
飄々としたところが面白いキャラなんですよ。

言いたいことをストレートにいわず、
押し問答のような会話は
妙な違和感を感じるのでが
読んでいると次第に心地よくなります。
不思議です。

回りくどい書き方をしているし、
過去・現代と日付が行きつ戻りつで
誰と話しているのかわかりづらい部分も多いのですが
読む楽しさを味わえる・・そんなお話です。
登場人物の女性も
ハンドルネームを使うので
妙なものが多いです。

「必ず冷めるもののことをスープと呼び
愛と呼ぶ」

胸がキュンとする最初に記憶は
ペット・・猫である・・。


私は登場してくる女性が「ほえ」という返答する
ところがツボ
した。

ちょっと変わった恋愛小説ですが
やっぱり、愛を描いていることには
変わりありません。
超能力という胡散臭いものも出てきますが
それも愛を語るための
ものとして受け入れるといいでしょう。

スープが冷めるのは自然なこと。
冷めないスープなど
存在しない・・
そこまで言い切る潔さが
なんだかすごいな・・って思いましたね。
愛は移ろうものなのね・・・・。

題名の5。
手と手を指と指と合わせることからきていますね。
そのあとは読んでからのお楽しみです。

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Y     著  佐藤正午

Y
著  佐藤正午

ある晩秋間文夫のもとにかかってきた一本の奇妙な電話。
北川健と名乗るその男。
かつて親友だったという。
秋間はまったく記憶にない。
その男=北川は秋間に秘書を通じて、
貸金庫に預けられていた一枚のフロッピー・ディスクと
五百万の現金を渡す。
どういうことなのか。
フロッピーの中の物語を読めば
すべてがわかるという北川の言葉。
秋間は半信半疑ながらもその物語を読むのだが
そのうち、そこに描かれている彼=北川の「人生」に
引き込まれていってしまう。


感想  「ジャンプ」を読んだ時から
気になっていた「Y」を読みました。

タイムトラベルものです。
面白かったです。
一目ぼれした相手は電車の中で出あった女性。
先日UPした「天使の卵」と同じような
エピソードですが、普通の恋愛には
なっていきません。
そこからがすべての始まりです。
恋愛劇というより、その女性を介しての
友情物語としてみてもいいかな・・・・という印象でした。


最近の映画でいうと
「バタフライ・エフェクト」&「ある日どこかで」を
あわせた感じですね。


主人公は、記憶にない高校の同級生からの
突然電話で、
「君とは親友だったんだ」といわれて
戸惑います。
まったく覚えがないのに一方的に
言われてしまったら、不信感持ちますよね。
私・・・ストーカーだと思いましたよ・・・笑

親友だと訴える謎の男=北川

の綴る物語は、
奇妙なもの。
でも、興味をそそられる魅力的なものでした。


<43歳の人間=北川が25歳にもどって、1人の女性を
救おうとする>という物語

もし、あの時
こうしていたら・・・今はこんなはずではなかった・・・


と誰でも時には思うこともあるはず。
でも過去の出来事&選択は
変えられないとわかっているから
皆後ろを振り向かず進んでいくのですよね。


ところがこのお話の北川は
それを実行できてしまうのです。

ただただ、好意を寄せていた彼女を助ける
ためだけに行ったタイムトラベル。
結果、二度の人生を送ることになるのです。


1人の人の人生を変えるということは
周りの人の人生も変えるということ・・。


ですから以前は友達だった秋間と北川の関係も
1人の女性の運命を変えたことで
変わってしまったということなんですよね。

秋間本人は、もちろん知らないことだけれど、
北川自身の中には過去に戻る前に歩んできた人生と
戻ってきてから再度歩んできた人生と
2つが存在するわけ。大変に苦しいことでも
ありますよね。何も知らない未来があるから
楽しいっていうこともあるよね。
同じ時間が2度続くのって
どうなんだろう・・。



結局、過去に戻ったからといって
すべてがうまくいくとは
限らないということ。

得る物もあり失う物もある・・。


途中、これは何度目の人生だったっけ・・と
考えることもあったのですが、それは
厄介なことではなく、
楽しみの一つになっていきました。
一度目の人生と
二度目の人生で、
彼らを取り巻く人々の立場が違ってくるのが
面白いです。


最後はどのように落ち着くのか。
それが知りたくて
一気に読んでしまいました。

助けようとした彼女の
本当の姿は・・・


女は外見だけでは判断できない
ものを持ち合わせているのですよね。
これこそ、深く付き合ってみなければ
わかりません。

せつない恋愛が描かれているのかと
思いきや・・・


最後の最後まで
面白さは続いていました。

北川の好意をもっていた
彼女は・・・実に現実的な人間でしたね。


追記   電車事故が描かれます。
小説を離れ
複雑な思いも感じてしまいました。

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