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ヘヴンリー・ブルー  著  村山由佳

ヘヴンリー・ブルー   著  村山由佳



「天使の卵」
「天使の梯子」のサイドストーリー。
梯子の主人公夏姫の視点で
2つの物語の経過が語られます・・。



感想  「天使の卵」「天使の梯子」を読んだのなら
読んでみてもいいかなという作品ですね。
とくにこれだけが・・どうのという感想は
ありませんが・・。
恋愛における痛み、苦しみ、喜びが
さらにリアルに描かれているので
女性向けだと思います。

2つの作品の中で使われた
印象的なセリフに補足がかかっているような状態。
あのセリフの裏にはこんな心情が
隠されているのね・・・という思いも
感じますが
私はそこまで丁寧にしてもらわなくても
想像できる楽しさも残しておいた方が
いいんじゃないの・・・な~~んて
思ってしまいました。

確かに切ないことは切ないけれど
さすがに3作も読むと
トーンダウンします。

文章は簡潔で短いので
さらりと読めますね。
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天使の梯子  著  村山由佳

天使の梯子   著  村山由佳


天使の梯子の、主人公は慎一
彼は年上の女性夏姫と恋に落ちます。
彼女は8歳年上で、学生のときの先生。
夏姫には誰にもいえない過去があった・・
頻繁に携帯で電話する相手は・・
恋人なのか。
慎一の気持ちは不安で一杯になる・・・。



感想   天使の卵の続編がこの天使の梯子。
卵から、10年近くたって出版された作品ですが、
内容もそのまま・・・10年後という設定でした。
前作を知らなくても
理解できるストーリになっています。
でも、初めて読んだ人と
前作を読んでいてその続編であると意識して読んだ人とでは
感想が多少違ってくるのではないかな・・とは
思いました。
天使の卵に思い入れがある人は
10年経った歩太と夏姫・・・その2人がぐ~~んと
成長していたことを知り、
うれしい気持ちになるのではないかな。
前作では、夏姫の
人物像がよくわからなかったのですが
今回は、色々な面が見えて、こんな人だったのね・・・という
驚きがありました。
すごく素敵な人じゃあないですか・・。
卵のときはあまり感じなかったことですが、
春妃に劣らず、繊細な感じですね。
姉妹ってタイプが違ったりするものですが、ほぼ
同じイメージですね。

今回も、前回同様綺麗な文章でした。


心にうけた痛みを
人はどのようにして再生していけばいいのか。

整理をつけるまでに
こんなにも長い年月が
かかってしまうなんて。

愛している思いが深いほど
その傷を癒すのに年月はかかるのかなと思います。


登場人物の心情が丁寧に描かれていて
私は好感もてましたね。

私は、卵より、好きかもしれませんこのお話。
卵は直球勝負の
純な恋愛だったので、今の年齢には
ちょっと気恥ずかしすぎた部分があったのかも
しれませんね。また、年上女性&年下男性の恋愛
構図がピンと来なかった部分もあったのかもしれません。
もちろん、この梯子も
同じような恋愛図だったけれど、
それだけのお話ではなかったのが
私にはよかったのかもしれません。
「天使の梯子」は
喪失感を乗り越え、
そこから再生することが
テーマ。
たしかにこのような作品は
もうイヤ・・・というほど読んでいるのですが
それぞれに特徴があり
共感できる部分が色々と多いので
やっぱりひきつけられてしまいます。
年齢的に、経験が多くなった分、
喪失感の意味がわかるのかも
しれません。

読後はけっして悲しい気持ちにはなりません。
むしろ、強くなれる感じ。

皆それぞれ、
苦しみ克服しようとあえぎながら
生きています。
終盤の
3人がそろって、本音をぶつかり合う姿が
とても印象的でした。

道は開かれたな・・・という感じ。

心が優しくなれる作品は
好きです。

慎一は
昔の歩太と同じ存在ですが
こちらの方がやや、幼い感じもします。
親や祖母への対応や、恋人夏姫への対応にも
まだまだ自分自身を抑えきれず
ストレートな感情をぶつけてしまう若さゆえの幼さを
感じます。

姉(春妃)と同じ恋愛をする夏姫。
慎一と夏姫の出会いから、恋愛関係に陥る過程は
早いな・・と思わずにはいられなかったし、
姉と同じような恋愛をするものだろうか・・、
ややご都合主義的な部分ではないかと
気になるところはあったものの、
慎一の育ってきた家庭&祖母との関係が
とても興味深く、
中盤から終盤にかけては
一気に読みきってしまった作品でした。

おばあちゃん&おじいちゃんにまつわる
お話はどうも弱いです。
家族愛と言うのかな・・・そういう部分も
感じ取れてよかったです。


夏姫は自分のせいで姉、春妃が不幸になってと思い込んでいます。
慎一も自分のせいで祖母が死を迎えたと
悔やんでいます。
そして歩太もまた、自分の若さゆえに
愛する人を幸せに出来なかったと悔いでいるのです。

痛いな・・・みんな。


皆が悔やみながら生きていかなければ
ならない現実。

でも悔やみながらでは
前に進んではいけないんだよね。

後悔する出来事は誰にでもあるけれど、
でも後悔したところで、何もいいことはないのではないだろうか・・
だって、逝ってしまった人たちは
残された人たちにそんな思いを感じさせることを
望んではいなかったのだろうから。
でもそうは思っていても
実際には思うようにできないのが
人間の心だよね。

夏姫が好きだと言う宮沢賢治の「告別」

印象的だったので、引用。
  

宮沢賢治「告別」

  途中省略・・

もしもおまえが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもうようになるそのとき
おまえに無数の影と光りの像があらわれる
おまえはそれを音にするのだ
みんなが町で暮したり
一日あそんでいるときに
おまえはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまえは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌うのだ
もし楽器がなかったら
いゝかおまえはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光りでできたパイプオルガンを弾くがいゝ


誰のせいでもない・・そう思おうとしても
やっぱり自分が原因じゃあないかと
責めてしまう人たち。
その人その人の死はすでに生を受けたときから
運命付けられているものだと思うけれど、
もしあの時自分がもっと優しく接していたら
その人を失うことはなかったのに・・・・・・・という
思いって誰もが感じてしまうことかもしれない。


失った人はけっして戻っては来ない。
でも・・・その思い出だけは色あせることはないはず。



それを乗り越える物語。

出口のない悩みは、生きている限り誰もが一度は抱くもの。
これらの悩みを解決するのは、簡単ではないけれど、
どこかで誰かに
その思いを激しくぶつけたのなら
この3人のように
きっと新しい出発ができるはずだと
思うな・・・


夏姫も歩太も理想的な姿に成長していました。
立派過ぎるのではないか・・・
と思う部分はあったけれど、それでも
心の響くものは大きかったので
私は素敵な作品として
読みました。


テレビ化はどうなのかな・・・。

あのテレビ版の慎一はイメージが違う気がするのだが・・。


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天使の卵  エンジェルス・エッグ 

天使の卵  
エンジェルス・エッグ  著  村山由佳


19歳の歩太は、美大志望の予備校生。
ある日駅で出会った8歳年上の美しい女性・・春妃に一目惚れする。
歩太の父は、長年精神を病んでおり病院に入院している。
後日、偶然、病院で春妃と出会った歩太は驚く。
彼女は精神科医で最近この病院にやってきて
父の担当にもなったそうだ。
話す機会がつれ、ますます気持ちが高まる歩太。
さらに、驚くべき事実が。
歩太の高校時のガールフレンド・夏姫の姉でもあったのだ。
それでも気持ちは止められない。
春妃にふさわしい男になれるか悩みながらも
思いを告げる・・


感想   村山由佳さんの小説は
「きみのためにできること」をかなり前に読みました。
読みやすい文章ですが、それっきり・・・彼女の
本は読んでいなかったかな。
「きみのため~」は映画化にもなりましたよね。
主演は柏原崇。(彼・・好きだったの・・)
あのときはあまり評判にならなかったようですが、(私は観たのよね・・彼主役だったから・・でも映画はイマイチ)
今回、村山作品がまた映画化されるということで
まずは、本を読んでみることにしました。

この本は村山さんのデビュー作で、「小説すばる」新人賞受賞作です。
当時評判になった本だそうで、ファンも多いみたいです。
当時は自分がちょうど忙しい時期で、全然チェックしていませんでした。


爽やかな恋愛小説でした。
たぶん・・十代の頃に読んだら、嵌ってしまったかも
しれませんが、すでにこの手の作品を読み過ぎてしまっている私としては、特別な意味合いの作品とまではいきませんでした。
普通です。
今年は、アジアンタムブルー、ナラタージュ、クローズド・ノートと
従来にないくらい恋愛小説を読んだ年ですね。
純粋な恋愛小説って、ちょっと恥ずかしくなる部分も
あるのですが、気持ちがまっさらになっていくような
こともあって、たまに読むと、いいですよね・・。

この作品は
女性が男性側の心理を書いた小説。
そういう意味では男の心理描写を丁寧に書いていることに
驚きを感じます。男性像も、女性から見て
嫌みな感じはしませんでした。もちろん、女性も.
男性の読者の方が、共感しやすいのではないかな・・。
女性としては、歩太君のガールフレンド夏姫や、
お姉さんの春妃の気持ちのほうを考えてしまうのですが、
あまり詳細には出てきませんので、推測するのみ・・。
2人の女性は
姉妹ですが恋のライバルですよね。
それにしては、あまりにも、いい人・・素敵な人・・だったので
(妹夏姫にしてみれば、簡単には許せないと思うのに)
意外とあっさりと描きすぎかなと思いました。
もちろん、これが、純粋な恋愛では
不可欠なことなのかもしれませんが、
やっぱり、ドロリンコな世界を知ってしまっている
自分としてはやや物足りなさも感じます。

できれば、恋する2人だけの世界だけでなく
彼らを取り巻く周りの方々の
エピソードをもっと読みたかった気がしました。

年上の女性との恋愛経験がある方ならば
その気持ち・・わかる・・・と共感度深まるのかしら。
年下の男性に言い寄られたことはないし・・・笑
あ・・・あったか・・・笑
やっぱり女性としては最初は戸惑いますよね。
年下の子は、単なる憧れと思っているのではないかと
その気持ち疑ってしまいますね・・。

歩太は受け入れられない気持ちをもてあまし、
彼女にふさわしい男性になろうと
懸命に努力しようとするでしょ。
そういう健気なところがあるから
好きな女性ができたといって、昔の彼女を振っても
どこか憎めなく感じてしまいます。
正直であるから・・・。


10年後に「天使の梯子」
今年「ヘヴンリー・ブルー 「天使の卵」アナザーストーリー 」
がでました。
続けて読むつもりです。ちなみに「天使の梯子」はドラマにも
なるそうです。

映画化されるようですが
配役はいかがでしょう・・(私は映画はたぶん観ないかな・・)
小西さんはいい感じですよね・
見た方の映画の感想もお聞きしたいです。
こういう作品の映画化多いですよね・・。


ところで、ラストですが、
私は・・・
う~~ん微妙です。
せつないとは思いますが
あまりにも
唐突な出来事だったので
少々驚いてしまったという気持ちのほうが強かったです。
そういう風な物語だったのか・・・・と
いう思い。どれもこれも似たようなのねという印象は
あります。
悲しい物語にするにはこれしかない・・という
そんな切り札を出されてしまったような気がします。
ちょっと終り方は
好みではなかったかな。



主人公歩太の恋する女性夏妃が
電車の中で読んでいた本・・

ハインライン「夏への扉」
実はこの本が一番興味がありました。(有名なのですよね)
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