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ひとがた流し    著  北村薫

ひとがた流し   著  北村薫


アナウンサーの石川千波は亭主も子どももいない、独身。
同居人は飼い猫ギンジロー。
作家の水沢牧子、一人娘はさき。
写真家の妻となった日高美々。旦那は日高類、娘は玲
3人は高校からの幼なじみ。
牧子と美々は離婚経験者だ。
千波は朝のニュース番組のメインキャスターを任されることになったのだがその矢先、病院の検査で、ある病気に罹っていることが判明。
それを境に3人のに日常もまた少しずつ変化していく・・。



感想  北村作品は昔「スキップ」「ターン」「リセット 」を読んだきり。久々です。

淡々とした日常を綴ったストーリー。
主人公3人は共に青春時代を同じ場所で送ったメンバー。
それから様々な出来事がお互いに起こったけれど、
切れず離れず、40代になっても
いまだよい関係が続いているのです。

会話からはじまる物語、それも呼び名だったので、
人物関係を整理するのに戸惑ったけれど、
わかりはじめると、その世界にすんなり入り込めました。
居心地はいいですよね。
とくに、嫌だと思うキャラクターもいませんでしたし
なにより、主人公が女3人で、年代的にもかぶる部分が
あったので感情移入しやすかったです。

こういう関係、憧れます。子どもたちともそれぞれの恋人&ご主人たちともいい関係を築いていましたからね。
現実にはまだまだ・・・、こんなに深く互いの
家庭に踏み込むまでの人間関係は築けていないのでうらやましいです。
色々な問題がありますからね。

人生の折り返し点になって
青春時代を語れる友が傍にいるのはいいですよね。

皆・・幸せ者だと思いました。

後半で展開されるのは不治の病に
侵される千波のこと。
悲しいお話になりますが、涙がこぼれるような深い
感情までは湧いてはきませんでした。
悲しくなかったというのではなく、
静かにその事実を受け止めたという感じです。
しんみりとした気分でしたね。
リアルな描写もないし、
死生観を語るような文章もなく、
ただ、そのことにかかわっていく人々が描かれるだけ。
でもそういった何気ない
描写がかえって心には残るのかもしれません。

死を迎える人がいる・・そういった劇的な部分だけを
取り上げて語るのではなく
それ以前に、人と人がつながって、生きていることの素晴らしさを
感じて欲しいのでは
ないか・・と思いました。


第6章まである物語。
それぞれの章の最後では必ず、次の章に渡されるものが出てきます。
讃岐うどんだったり・・クッキーだったり・・
そして手紙だったり。

日高美々の娘玲の出生の秘密や
スズキさん=イチョウヤ良秋(これはファミレスで呼ばれたら目立つので偽名使いたくなりますよね)の千波さんへの恋心、
牧子さんが作ったー月の砂漠をさーばさばと・・さばのー味噌煮が
ゆーきました~~~♪の歌エピソードなどなど。
心が温かくなるお話がいくつか織り込まれておりました。
どれも印象的でしたね。


 「本当に小さな、次の日になったら忘れちゃうようなことだよね。
でも、そんなちっぽけな思い出が、どういうわけか、いつまでも残っていたりする。小さなことの積み重ねが、生きていくってことだよね。
そういう記憶のかけらみたいなものを共有するのが、要するに
共に生きたってことだよね・・・」(本文より)


何気ない出来事でも
何年後には、大切な思い出になっているはずです。
語ることのできる思い出を作り上げるために
生きているのかもしれませんよね。

人生、一人じゃない・・・と思えるのは
幸せなこと。
周りにいる家族&友達を大切にしたい気持ちがしました。

いい本でしたね。

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