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刑事弁護人   著  薬丸 岳

刑事弁護人   著  薬丸 岳


ある事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西と弁護にあ たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。


(アマゾンより、あらすじ、画像、引用)

感想

新作のたびに必ず読んでいる薬丸さん作品。
今回は、かなりの長編だったけど、一気読み・・・。面白かった~~。本当にグイグイ、引っ張っていくよ・・。

出演者がかなり多いので、時々、頭の中で、整理しながら読むこともあったけど
ストーリーはわかりやすいので(図式としては、シンプル…弁護士と被告との話なので)
楽しみながらの読書でした。
とにかく、真相を知りたい・・・・の思いよ・・・(笑)

被告人は垂水涼香。警察官。
事件は彼女が夫のいる身で、ホストに通い、そのホストを殺害したという。
刑事事件を弁護する、刑事弁護人として、この事件を担当するのは
持月凛子と、西大輔・
持月凛子は、同じく刑事弁護人の父親を、ある事件で亡くしている。加害者の弁護をしていた父親は、被害者の母親に
刺されたのだ。憎い、犯人の弁護をするなんて許さないという思いが動機。
そんな身内の過去があるにもかかわらず、凛子は、迷いながらも、同じ刑事弁護人として、仕事を始めている
西大輔は、実は元刑事。彼が刑事時代に受け持った事件がきかっけで、弁護士と職業をかえる。
まあ、結構、いろいろと過去がある・・・のよね、西さんには・・・。

そんな彼らが、弁護をしはじめるのだが
どうも、腑に落ちない点が多く
垂水涼香の、真実はどこにあるの~~~か、

構想17年ということで、事件に対する弁護人、検察との警察の思惑など、
読んでいるこちらも、興味深く感じることが多々あったかな。
勉強になりました。

少しネタバレ

被告人垂水涼香は、過去に、息子を亡くしている。
その息子は、ベビーシッターに預けた後に亡くなっているという。
実はそのベビーシッターが、この、ホストの男だった!!
つまり、単なる、ホスト遊びゆえの、事件ではなく、
何らかの、目的があって、彼女は、ホストに近づいたということが判明するわけです。
このホスト、思春期のときに、幼児に対していろいろ犯罪がらみのことを起こしていたみたい。
とまあ、結構、深堀していくと、いろんな事実がでてくるわけだけど、
息子の死に関して。
警察沙汰にならなかったのは不思議だし、医者も自然死と、判断したんだろうか
と、腑に落ちないところもあったりもするかな。
あと、垂水涼香がね、

実に用意周到。ホストのマンションを訪れるまえにも、証拠のためにと、
スーパーの店員に時間をきいたり、その声を録音していたりと、
実に、計算高く。
ここまで、いろいろ考えていたのか・・・という思いは感じました。
あと、ラストのラスト

以下、ほぼネタバレですが・・未読の人は読まないでね


ホストの親がね、感情的になって、垂水涼香を襲って・・・。
だから今度は、主人公・・・このホストの親の弁護に・・というのは
え~~~~そうなの?それはちょっと・・・と、余計なことではと思いました。
それが、刑事弁護人の仕事なんだ・・・ということはわかるけど、
そこまでひっぱらなくても・・という個人的な思いでした


面白かったけど、いろいろ絡みあっているので
少したつと、細かい部分は忘れてしまいそうな感じです・・(笑)

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ブレイクニュース   著  薬丸 岳

ブレイクニュース   著  薬丸 岳


ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると以外な過去が見えてきて……。
デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新な社会派小説。

<アマゾンより、あらすじ、画像,引用>

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感想


薬丸さんの作品はず~~~と、追い続けているので、これも、手に取った次第。
ブレイクニュースで取り上げていく、題材が、いくつかの短編となっているので、とっても読みやすいです。
さくさく・・・いきます。
が、そこがかえって、重い題材の割には、掘り下げが、軽くないかい・・と感じられるので(短編なので致し方ない)
不満に思ってしまう部分でもあるかな・・・って思いました。
面白いことは面白いけど・・・意外とあっさりというか。いや~~~この問題の本質、そんな簡単なことで
うまく収拾できるのか?って疑問に思ってしまうんですよね。だって、根深いと思うもん・・・。

8050問題
痴漢事件
パパ活
ヘイト問題
ネットの悪口
医療過誤・・

そういった題材だったかな。

ほとんど、どこかのニュースで過去、観たような事件。

全編を通して、この問題を野依美鈴という、女性が取り上げて発信をしていく。
そしてこの女性はなぜ、こんなことをするのか?というのは
最後の短編・・・医療過誤の題材のストーリーで明らかになってくるという・・・展開。

この野依美鈴に関する秘密。
最後の章だけではもったいないよね。
そもそも、それだけで一本の長めのお話になると思うし。
詰め込み感は、あったけれど、それでも
考えさせられながら読み終えることはできました。

でね・・・今はやりのユーチューブ。
ネットで顔出しや、情報を公表しちゃう。
やっぱり怖いよね・・・ネットは永遠に残るから
映像も文字もね。
今風な道具だとは思うけれど、やっぱり怖いね・・・
そういった犯罪もどんどん出てくると思うと、時代って変わっていくんだなあと
年よりじみた感想ももってしまいました・・・・
ついていかないとなあ・・・時代に(笑)

告解   著  薬丸  岳

告解   著  薬丸  岳




飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔―。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。

<アマゾンよりあらすじ引用>


感想

  薬丸さん  作品。
テーマは何度も描かれてきた贖罪について。

今回は、飲酒運転の末のひき逃げの加害者と被害者家族。
サクサクと読めます。細かい部分で???というところはありましたけれど、
スピード感あふれるストーリーで、先が気になるような構成はさすがです。


加害者側からの視点がメインではあるものの
被害者側の視点もきちんと描かれていてバランスはよかったかと思います
映画、「友罪」における、佐藤浩市パートを
広げていった感じのストーリーですね。
被害者の旦那さん、高齢の旦那さんの復讐劇と思わせておいて
実は復讐という形にはしなかったところ。
想像もつかずなるほど・・・と思いましたけれど、実際にそんな簡単に、被害者側の家族が
心を整理できるのかな、と思います。
お酒飲んでのひき逃げ。まして、嘘をついているわけだったし。(ぶつかったのもしらないし、信号も落ち度はないと
つかまったときに、言っていた)

被害者は法輪君子
夫は法輪二三九⇒この老人、認知症でもある
加害者は籬(まがき)翔太
彼女は栗山綾香⇒彼女に会いに行くために翔太はお酒飲んで車、運転したのね。
さらにこの時彼女は翔太の子供を妊娠していた

幼少期に死んだ長女文子(法輪君子、法輪二三九、夫妻の子供)は、もっと違う死に方?旦那さん(二三九ね)
殺しちゃった?とまで思いました
かなり思わせぶりだったから。
戦争の影響で、ヒロポンをうっていたとか。そこまで話が広がっていたのか。そこはわからなかったわ

認知症の老人が家を借りるの?とか
籬(まがき)翔太が介護の職についてグループホームに勤めるエピソードで、入居者に感謝されるあたりは
いやいや、そんな感謝できるレベルの人はグループホームには入っていないよ・・とか
突っ込むことろもありましたけれど、いろんな話を入れ込んで読みやすくしているなと、そこは感心。

テーマは興味深いところではありましたけれど、
なかなか被害者としては納得はできないでしょうという、感想にはなってしまうかなあ。

ガーディアン

ガーディアン   著   薬丸  岳

<あらすじ>

アマゾンより引用

匿名生徒による自警団「ガーディアン」が治安を守る中学校に赴任した秋葉は
、問題が少なく安堵する。ガーディアンのメンバーは、問題のある生徒らに「制裁」を行っていた。
相次ぐ長期欠席を怪しんだ秋葉が生徒の身を案じるが、同僚は激務に疲弊し事なかれ主義だ。
秋葉が学校の秘密に気づくと、少年少女は一変し、天国から地獄に叩き落とされる。

感想

薬丸さんの新作だったので楽しみにしていました。
教育現場が舞台って初かも。

期待が大きかったのもありますけど
私的にはもうちょっと盛り上がるかなと思っていましたが
そうでもなかったので、残念でした。
ページ数も多いのですがサクサク読めます。
相変わらずひきつけられます。

登場人物が多いのでちょっと混乱する感じですね
名前や苗字がいろいろでてきますので。
人物整理できるように、トップの紹介などあるとよかったです。
そういう構成の本、ありますものね~~

また後半
教師陣が立派すぎないかと思うところも・・・。
校長にしろ他の教師にしろ。
夏目刑事が出てきたのは、ファンとしてはうれしかったです。

最後の卒業式の生徒のスピーチも
これも、優等生すぎるかな。

学校は難しい場所ですよね。
本読みながらいろいろ考えちゃいました。


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Aではないきみと   著  薬丸  岳

Aではないきみと   著  薬丸  岳


内容(「BOOK」データベースより)

勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。元妻が引き取った息子の翼が死体遺棄容疑で逮捕されたという。しかし翼は弁護士に何も話さない。吉永は少年法十条に保護者自らが弁護士に代わって話を聞ける『付添人制度』があることを知る。生活が混乱を極めるなか真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る。



感想   


薬丸さんはこういう作品を書くと本当に上手い。
色々考えさせられました。

加害者側を主人公にするというのは
作品としては難しいと思うんですよね。

作品は主人公(加害者の父)に肩入れするわけでもなく
心情を丁寧に描いていて
読む側に
考える部分を大いに与えてくれたように思います。

親は
被害者になる可能性もあるけど
加害者になる可能性もある。


もし加害者になったら・・・

読みながら
考えたくない
考えたくない・・・という思いが・・・・。

少年事件の裁判のあり方もよくわかって
勉強になりました


後半
罪を償って社会にでてきた少年。

彼が
加害者の所に挨拶に行く場面で
新たな真実がわかり驚き。
そして
胸を痛めました。


どんな理由があるにしろ
人の命は奪ってはいけない・・
当たり前なのに
なぜわからない人もいるのだろう。

今年の収穫であった
一冊だと思います。
子どもさんのいる親御さん、もしくは子供たち自身にも
読んで欲しい一冊。


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誓約     著  薬丸岳

誓約    著  薬丸岳

 

レストランバーのバーテンダー、向井のもとに
一通の手紙がくる。
「あの男たちは刑務所から出ています」
復讐をしろと手紙は要求する
それは15年前に一人の女性と約束したこと。
自分が生まれ変わるための
費用を出す代わりに女性は
娘を殺した犯人を殺して欲しいと頼んできたのだ。

感想


薬丸さんの本は
とにかく、先が知りたい・・・知りたい・・・という思いがわいてきて
必ず
一気読みをしちゃいますね。
読者を引き込んでいくところが上手なのよね。

テーマはいつも犯罪がらみのものなんだけどね。

向井を追い詰める
張本人は誰なのか。
レストランバーの共同経営者の落合?
バーテンダー見習いの青年?
昔の仲間?
やくざ連中か?

向井は
根っからの悪党ではない感じだし
⇒だけど過去の行いはひどいよね
手紙を送った犯人の事情も
わかるような気がする・・・
⇒気持ちはわかるが長い間心にとめていて
向井と付き合っていたというのもどういう心境か

ラストに向けて
衝撃的な事実がわかってくるの。

これにはビックリ
○○は息子だった・・・

突っ込みどころもあるけれど
やはり
スピード感あって
はらはらもした
面白い小説でした
最後は向井にとっては救いのある結末


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神の子   著  薬丸  岳

神の子   著  薬丸  岳



感想


上下巻の長編ですが
一気に読めます。
さすが安定の薬丸さん。
今年はこれが一番面白かったかもしれないな~~~~・

まるでドラマを観ているような
興味深い展開。
現実的には、どうよ・・・と思うものの
物語としては
格段に面白いんだよね。

人間がもつ普通の感情を忘れてしまった主人公が
周りの人々の影響で次第と変わっていく姿が
心地よいです。

親に愛されなかった子どもだったけれど
周りの影響によってきちんと生きていくことは
できるんだ

間違った道に進んでしまったとしても
軌道修正はできるんだ・・・

とにかく
読んでみて~~

この小説
映画やドラマになったら面白いと思うな・

ラスト
影の大物重要人物は
病に侵されていて
主人公との戦いについては
意外とあっさり感ではあったかな
もっとひと波乱あるかと・・・

あと大学時代の同期の女性が
影の人物と繋がっていたのには驚き~~~

盛りだくさんで読みごたえありました♪


刑事の約束    著  薬丸  岳

刑事の約束    著  薬丸  岳



刑事のまなざし』に続く、夏目シリーズ短編集第二弾!
「無縁」(「小説現代」2012年12月号)
「不惑」(『デッド・オア・アライヴ』)
「被疑者死亡」(「小説現代」2013年8月号)
「終の住処」(「小説現代」2014年1月号)
「刑事の約束」(書き下ろし)


感想

今回の
夏目刑事の活躍
どのお話もすべて良かったです。
短いお話の中に
重いドラマが含まれていました。


薬丸さんの作品には
いつもドラマがありますよね
人間がしっかり描かれているというか。
犯罪者とか被害者というくくりだけでなく
事件の背後に見え隠れする
真実をしっかり描いてくれるので
そういう姿勢が好きです。
そうはいっても、重くて、考えさせるもの多いんですけどね。


最終章の
「刑事の約束」は
まなざしで
描かれている
「オムライス」の少年のその後の話です。
夏目さんの娘のその後も描かれます。
娘さんの状況に進展がみえたのは素直にうれしかったのですが
その後に待ち受ける現実は
いろいろ大変だと思います。
オムライスの少年の心の叫びもつらかったですね。
でも
読後感は
悪くありませんでした
希望を感じるからかな

「終の住処」も
親子の情愛に
胸がつまりました
認知症になっても
桐のタンスを愛するおばあさんの姿に
うるうるきます。
いつまでたっても親は親であるんだな・・・。

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椎名桔平主演で
『刑事のまなざし』はドラマ化されたみたいだけど
みていないんですよね
残念



その鏡は嘘をつく   著  薬丸 岳

その鏡は嘘をつく   著  薬丸 岳


とある医師が、鏡に囲まれた部屋で自殺した。
痴漢の容疑がかけられていたその医師は、それが原因で自殺したのではないかと
言われていた。
しかし、取り調べにあたった検事、志藤清正は、彼が自殺する人間ではないと考える。
現場をみても、納得いかないことばかりであった。

一方、医学部受験を控えた一人の青年が失踪し、彼を探すいとこの少女が警察に依頼を求めてきた。
東池袋署の刑事・夏目信人は、彼が
ある騒ぎに関連していると推測し、捜査を始める。
医師の自殺に
この青年が大きく関係していた。





感想


「刑事のまなざし」の夏目さんが再び~~。

私、読む前まで知らなかったのですが
この作品、夏目刑事が活躍する作品の続編だったんですね。


とはいうものの
主人公は
夏目刑事だけでないのですよね。

志藤検事という人も登場してきて
2方面からとある事件をアプローチしていくという構成。


とにかく
登場人物も
多く、場面場面の切り替わりも早いので
図式でも書き
整理して読み進めていった方が良いかもしれませんね。



痴漢容疑をかけられた医師。
被害者とされた少女は
今は花屋に勤めている。
実は彼女は昔医師を目指していて・・・
失踪した青年に頼まれて、嘘の証言をしていた・・。


この医者を殺したのは
この青年か・・・と
単純な感じではなく
もう一人重要な人物が登場。

さあ、誰でしょう~~


最後の最後に真相が
わかるので
読み進めていくしかないという感じです。

動機ですよね。
犯人はわりと分かるんですけど
動機の部分は
なかなか
推測できないんじゃあないのかな。


鏡の部屋で
男女が連れ込まれて
動物も?
な~~んという事柄が続いていくと
てっきり
怪しい関係か・・・なんて
想像してしまう自分が恥ずかしいです…笑



この医者の過去にやっていた
行為ですね。
もちろんとんでもないことですが
言い分きくと、そうか・・・と複雑な心境になるところ。


もちろん、
犯人の動機も
そうか・・・・と複雑な心境。
もちろん、医学部志望の青年の行為も
複雑な心境になるのよね



夏目さんの存在は最後にクローズUPされた感じかな。
彼の過去をしると
どういう心境で刑事をしているのかな・・・って
思いも、わいてきて
物語に深みを与えますね。

前作の「刑事のまなざし」の方が
より夏目さんのつらさは、伝わってきますが・・・・


薬丸さん
いつも
読み応えある物語が多いですね

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友罪   著  薬丸  岳

友罪   著  薬丸  岳


町工場に同期入社した
益田と鈴木。
当初人付き合いが悪い鈴木だったがしだいに益田には心を開き始める。
また事務員の藤沢美代子は、過去の男にゆすられている現場で鈴木に助けられたことから
彼に対して好意を持ち始める。
そんなある日
益田は、元恋人のアナウンサー・清美から
13年前におきた黒蛇神事件についての話を聞く。
それがきかっけで
当時起きた残忍な少年犯罪を調べていく益田は
その事件の犯人である「青柳」が、同僚の鈴木なのではないか?と思い始めるのだが・・・。








感想


薬丸さんの新作。
社会派の作品の多い薬丸さんですが
今回のテーマは「親友が犯罪者であると知ったらあなたはどうするか・・・」という
非常に興味深いテーマ。

この犯罪だけど
これが、某事件を連想させるもの。
本では黒蛇神事件として扱われているけれど
読んでいると、ああ・・実際に起きたあの神戸の事件のことだと誰もがピンとくるのよね。
少年だった犯人は
いつかは社会に出て
普通に生活するんだろうな・・・っていうことは
当時からわかっていたことだから
こういった物語が作られるのは
不思議ではなかったけれど実際目にすると驚いてしまうよね。
今までこういった題材のものを読んだことがなかったので
正直、どういう展開になっていくのかというのは
興味深いところではあったかな。
でも
テーマとして難しいから書く人も手を出しにくいってところがあったんじゃあないのかな・・・・って思うのよね
どういう風にまとめるかというか、
迷いどころではあると思うので果敢にも挑戦した薬丸さんは凄いと思うな~~~。



どうして犯人がこんなことを起こしてしまったのか・・・そういう
加害者の心の闇に迫るような形で物語を作り上げるっていう手法もあるけど
今回は
犯罪の動機付けの部分はばっさり排除して
上にあげたテーマだけに絞っているところが
良かったと思うの。
焦点が絞られているっていうか。
この犯罪に動機付けすると、やはり納得いかない、理解できない部分が多くなると
思うけど(普通理解できる思考ではないと思うから)
こういう風に身近にいる人が
犯罪者だったらどうする・・・という部分だけなら
非常に入り込みやすいと思うのよね。


で・・・やっぱり
読み始めてすぐに思ったのは(そもそも、テーマ性を知っていたので
この鈴木は、元犯罪者だとわかっていた)私は無理だろうな・・・・っていうこと。
出会ったときは、過去を知らなくて、波長が合っていい人だって感じたとしても
過去のことがわかれば、一歩引きたくなる心情っていうのは
誰もが感じると思うんだよね。いやいや、やつは今はいい人だから、変わらず付き合うよ・・・って
即答できる人は稀だと思うよ。ましてこの場合、犯罪が犯罪で・・・・。
犯罪の種類でわけ隔てするわけじゃあないけれど、
所謂猟奇殺人で、何の罪もない人を、無残な状態で殺したという
センセーショナルなことをしでかしたとしたら
その人と付き合うことが、怖いって思ってしまうのは致し方ないと思うわ。
少年だからどうの・・・ということではまったくないと思うしね。
被害者の心のうちも考えると
年月もたっていることだしとか
社会復帰を目指しているから・・・とか
そういう部分を頭にいれていても
容易にその人自身を受け入れられることはないと思うんだよね。
まして、友として・・なんて
到底無理。
それが世間一般の意見だと思うよ。

人を殺めた人と付き合う・・・・・、
神じゃあないし、自分としてはやっぱり無理な次元だと思っているの。

ただ、小説を読んでいくと
鈴木という人物を極力普通に描いているので(といっても影がある変わりものって感じではあるが)
なんとなく、いい人とまではいかないけれど
そんな酷いことを起こした人には見えないように感じていき
それがそのまま、迷いの気持ちへと変化していってしまう部分があるのよね。
あくまでも小説の中だけなんだという思いが湧いてきて
鈴木がそんな大それた犯罪を犯すような人には思えないので、鈴木の気持に寄り添ってみたくなる
部分も出てきたりする、一瞬ね。
美代子への対応の仕方だけみれば、正義感あふれるいい人じゃないかと思えるし
美代子側からみれば、あんなにも悲惨な過去があるにも関わらず、守ってくれる鈴木は
いい人にほかならないと思えるのよ。
でもそういう美代子を守れる強さというのも
鈴木の過去があってこそ、というのも皮肉ではあるんだけどね。



鈴木の過去を知ったら
付き合えないだろう、
無理だろうな・・という最初の気持は根底にありながらも
時折
気持が、揺れたりもする・・・・
そういう部分を
引き起こすだけのものがこの物語には
あったと思うな~~~
迷い迷いの答えの出ない
問題を突き付けられたような感じ。
でも根底には
がっしりと
罪を犯した人を受け入れるだけのキャパは自分にはないなっていう
思いが居座っているけどね。


鈴木の周辺にいる、益田の心境然り、
恋人美代子の心境しかり
保護監察の女性の心境しかり・・・・という風に、すべての人の気持が
痛いほどわかる・・・・。
もちろん、鈴木と一緒に働いていた
同僚たちの言い分もなるほどと思ったし
益田の元同僚のジャーナリストの心境も
当然一理ありと思えたりと
終始、うなづくことばかりあったような気がしたわ。



小説に出てくる
鈴木の
周りの人物設定は実に
詳細で
よく練られた小説。



終わり方としては
絶望的な感じではなく
精一杯の誠意を感じる形。
益田が自分を納得できる形で
気持を落ち着かせることができたってことは
これからの益田の人生においては良かったと思っています。
鈴木は
ある日突然
いなくなり
小説の中では最後まで出てこないわけで
その後は気になるところ。
でも
急に懺悔になるとか
罪を償って生きるとか
いう展開だったら
出来すぎかなって思うところもあったので
(というか、そんな単純な結末では片付けられないよね・・)
その後をぼかしたこの終わり方は最善だったのかもしれないよね。
ただ
鈴木がこの益田の記事を読む機会があって欲しいと
なんとなく願う・・・
たぶん、そう思う人って
何人かいるはずだと思うのよね・・・
そういう感情を鈴木に対して
感じてしまった・・・・
そういう自分がいるってことが
不思議でもあったかもしれないな・・・




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