静人日記   著  天童 荒太 

静人日記   著  天童 荒太 


 直木賞受賞作『悼む人』の主人公・坂築静人が綴った日記



感想   「悼む人」の主人公静人。

小説を読んだあとに、こちらを読んだ方がいいと思います。
淡々と悼むという行為が続くだけなので初めてだと
一体なんなんだろう・・・と思ってしまうのではないでしょうか。


小説では、静人の家族構成もわかりますし、
家族の思いというのもわかりますので、これをうけて
こちらを読まないとやはりついていけないのではと思ってしまいます。


この小説というのかな・・・
日記でしかありませんので、本当に淡々と事実だけが綴られるんですよね。
どこどこで誰が死んだので悼むという行為を行ったということ・・・



延々と・・・・。
正直、読んでいてぐったり・・という部分もありました。
毎回、毎回、死んだ人が出てくるんですから

あとがきに
天童さんの思いが表れています。


自分が静人になって、日記を書き続けてきたということ。


来る日も来る日も、
静人の感覚で毎日過ごしていたということでしょうか。


その姿に敬意を示します。





小説で受けた静人の印象がこの「静人日記」を読んで
変わってきたとは思いません。小説で厳しいこと書いた私はやっぱり
同じような思いしかわきませんでした。

死を悼む・・・という行為に、感情を一切入れないということ。
どちらが悪くてどちらがいいとか・・・・。死んだ経緯に対して
感情を示さないのですよね。ただ、死んだ人が誰に愛され、誰に大切にされてきたのかを
心にとめるのみ。

この日記の中で、たとえば、パチンコに熱中するあまり、子どもを車に置き去りにして
死なせてしまった夫婦というのがでてきましたっけ。その際も、そんな親は親失格だと責めるのではなく
ただただ子どもの死だけを悼んでいるんですよね。でも、人間ならば、いろんな感情がどこで
渦巻くでしょ?親に対しても厳しいこと言いたくなるでしょ?
そういうところ排除しての悼みに・・・
やはりう~~んと思うところありましたし
ところどころで、悼む行為に対して、矛盾をつく人がいたりしますと
そちらの人たちに同意してしまう自分もいました。


ラストに向けて
静人がある女性と係わり合いをもちます。
何度か同じ人がでてきます。

そこが物語性を感じましたが
あとはただ、淡々・・・・。



ページ数以上に長く感じられた本でした。
ただ人の死について
何か考えなくてはいけないな・・と思うようにはなりました。






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悼む人      著  天童荒太

悼む人      著  天童荒太


坂築静人は、新聞の死亡記事を見て
その人が亡くなった場所を訪れている。
その人が、誰を愛し、愛されたかを自分の胸に刻み、その人の存在を忘れないようにする・・・・
「悼む」という行為をし続けていた。
週刊誌の記者、蒔野は、そんな静人に北海道ではじめて出会い、
非常に興味をもつ。
なんのために彼はそんな行為をするのかと感じた
蒔野は彼の家族に接触をはかろうとする。
一方、静人は、旅をする中で、一人の女性と出会う。
夫殺しの罪で刑務所に入っていた女・・・奈義倖世。
出所したばかりの彼女は偶然であった静人の行為に興味惹かれ、一緒に旅をすることになる。
そんな頃、静人の母、坂築巡子は末期癌の宣告を受けていた。
家を離れた静人のことを思いながら、病魔と闘うことを決心するのだが・・・



感想   物語の中心には「悼む人」と呼ばれる坂築静人が
いるのですが、彼にかかわる様々な人物たち(夫を殺した女・彼を取材する雑誌記者・
彼の家族・母・妹・夫・・・など)のエピソードも散りばめられ、
重厚な物語となっておりました。各章ごとに、先ほどあげた人物たちが
主人公となっているのです。
この作品は2009年第140回 直木賞受賞作。(感想書き上げるまで知りませんでした・・・・)
天童さんといえば、永遠の仔。それと、最近では包帯クラブを読んだかな。
どれも考えさせられるお話でした。特に永遠の仔は印象に残りますからね。

あとがきを読んで、この作品にかける作者の思いを知りました。
その思いの強さに内容以上に感動を覚えたところはあるかな・・・・。

まず、誰もが感じると思うことは
やっぱりこの静人の存在。
死者が出た現場を訪ねまわる彼・・・
そして、毎回、左膝を地につけて、頭上に上げた右手を胸へ運ぶ。
「いたませていただきました」・・・・・。
誰もがなんのために?と問いかけ、それは新興宗教か、なにかの儲け話か、と
疑いの目を向ける・・・もっともだと感じました。
彼の行為の出発点が
母親の巡子が語る場面にあります。
彼がどういう幼少時代を送り就職してから
どのようにして今のような道に進んで行ったか・・・。
また彼自身の口からも、本の後半で、同行する奈義倖世の質問に答える形で
自分がどういう気持でこのような行為を行っているのかということが
語られます。
詳しくといっていいほど書かれている、その背景ですが
それを素直に、そうか・・・そういう理由なら仕方がないよね・・・とは思えないところが
あります。
人の死について、彼と似たような思いを感じたからといって
同じように、生活も家族も捨て、悼むというその行為のためだけに生きることは
普通できないと思うからです。むしろ、そういう人が実際いるの・・・と疑います
。宗教的・・たとえばお坊さんとか・・・そのような行為を行っている人はもちろん
いらっしゃるとは思いますけれど、それと静人の行為とはまた違った意味を
もっているでしょう。病死の方はそこには含まれず
あくまでも、事件事故の死者を求めているようにも思いますし。
理解できないのなら、いっそう病気と思ってくださいとも書いてありましたけれど
そんな一言で済まされても、読んでいる身としては悶々としてしまいます。
そもそも、人間って、お利口さんばかりではありません。
完璧な人間ってないし・・。
人間って、どこか自分勝手で
誰かを妬んだり、憎んだり、多少なりとも、負の部分ってもっていると思うのです。
でも、この静人は、生まれは普通人と思えるのに(普通の子供だということ)途中から聖人のような扱われ方をしていきます。果たして、神でもない、人間が神と同じような行為ができるのでしょうか。
そもそも、静人の悼むという行為には、数々の矛盾が生じています。
作品の中でも雑誌記者が問いかけていますが、
自分に都合いいよう、解釈しているのではないかと。方法もやりかたも
自分が満足するだけではないのかと・・・。
それでも静人は確信をもっていいと言い切ります。
それはそれで、本人が納得できるのならいいと認めますが、それを
美化しすぎてしまっている、作品の全体の空気に、イマイチ違和感を感じます。
さらに、後半で、一緒に旅する女性・・奈義倖世に心揺さぶられ
結果、関係をもってしまう静人。
う~~ん、そんな静人にますます、違和感を感じてしまうのは
心が淀んでいるのでしょうか、私・・・・笑
人の死について・・・私は私なりに思うところがあります。
それが、私の思うところとあわず、結果、共感できないことが多かったです。

静人が後半で話す「ぼくはね、甲水さん、奈義さん・・・ときどき思うんです。
そう・・・・ぼくは・・・・自殺をする代わりに、他人の死を悼むようになったのかもしれないなって」
「自分が死ぬ代わりに、他人の死を経験することに溺れていったのかもしれないんです」
(本文・・380ページ)

この個所にはさらなる違和感。
自殺をする代わりに悼むという言葉は、死んでいったもの(そのほとんどが無念の死だと
思われる)にたいして、どうなんでしょう。
じゃあ、君が死んで、この今死んでいる俺を生き返らせてくれよ・・・とまで
言いたくもなるし。自殺したいなんていう思いを感じている人に
死者の気持ちがわかるのでしょうか。
死んだ人に対しての感情は持たないようですが、
死んだ人は、その背景&心の声も聞いて欲しいと持っているんじゃないでしょうかね。


長々と静人の行為に対して書いてしまいましたけれど
他のエピソードについては不信感もつことなく
素直に響いてきたものもありました。



特に彼の母親の話。
死・・そのもののとらえ方については、心に響いてくるものが
たくさんありました。
それゆえ、こういう家族たちを悲しませている
静人に対してよけい、文句が多くでてきちゃうんですよね。

夫殺しの女性の話の中では、そもそも
この夫が、妻に自分を殺させようとさせる行為自体に
理解できないものを感じました。
彼(夫)の考え方には、ついていけないです。
妻…奈義倖世は不幸でしか他ならないと思います。


ラストの母親の死への道は
読んでいてつらかったです。
子供の誕生と自分の死。

なによりその場面が一番印象的です。
生命の神秘を感じたラストでもありました。
どう生きて、どう自分で決着つけるのか・・・
そこが一番重くのしかかりました。
静人・・・・、従兄のホームページをみても、
それでも母の異変に気付かないあなた。
病気なんてしそうもない母親だ・・・と言い切るあなた。
そういう彼の姿を思い浮かべながら
最後の箇所を読み進めると
悲しくてしょうがありませんでした。
お母さんはきっと待っていたのでしょうに・・・・。
亡くなってから悼んでも・・遅いのでは。

そんな感想をもった本でした。

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包帯クラブ   著  天童荒太

包帯クラブ   著  天童荒太


傷ついた箇所に包帯を巻くこと。
傷を癒す目的で作られたクラブ。
でも、ある事件がきっかけでクラブの行く末が危うくなる・・。



感想   お友達のサイトで面白そうな本だと思い
借りてきました。
意外だったのが、小さめの本だったこと。
天童さんというとあの厚くて、重く、痛い「永遠の仔」のイメージが
あるので、この本も同じかしらと思っていましたが
まったく違いましたね。

薄くて読みやすいのですが・・・・時間がかかりました・・・笑
う~~~ん、
いい話だと思うのですが取立てって、先が読みたい・・という
強いものが湧いてこなかったかな。
そうか・・そうか・・の程度。


映画化になるということでそちらのページも観てみました。
映画のほうは面白いかもしれないな・・・。
あだ名で呼び合う箇所が多いので
不慣れが自分は入りづらかったです。

ちょっとファンタジックな物語ですよね。
現実的じゃないような・・・。
メッセージはよくわかるのですが、なぜか、入っていけない自分が
いました。
どうして・・?  YA小説は好きなのですが
今回はどうものれません。
テーマが重い分、期待感があったのかもしれませんね。
登場人物すべてにおいて、好きな人物がいなかったのも
原因です。
それぞれに個性がある人物たちなのだけれど
なぜか顔が見えてこないというか・・・
あくまでも物語のテーマとして扱われるための性格付けという感じが
強くして、その各々の人物の人間性が見えにくかったように
思います。表現しにくいのですが・・・
奥まで突っ込んだ描写がなかったので物足りなく
感じていました。
だから彼らの悩みも
こちらまで響いてくるものがなかったように思いましたね。
苦悩が感じられないのですよね。
全体的にさらりと感じるところが合わなかったのかも。


というものの・・いいところも沢山ありましたよ。


例えば、
<こんなことが傷?と首をかしげたくなるものもあったけれど
きっと当人しか感じとれない痛みでもあるから>

そんな言葉に、ハッとすることもありました。

10代の頃の悩みは
今思えば・・どうしてあんなに悩んでいたのかな・・って
思うようなことも沢山ありますよね。
今では解決法もいくつか用意できるくらいの
人間になっているけれど、
若い頃って・・周りが見えない分
解決策もあまり浮かばなかったりもしますよね。


だからどうしていいかわからず、心が痛くなる・・

それを、癒してくれる誰かが居るということは
とても心強いことだと思うし、たとえ、解決策がなかったとしても
大丈夫よ・・と優しく声かけてくれる誰かがいるのは
ありがたいことだと思います。

その役目を包帯が、してくれる・・
それって実はうれしいことかもしれませんよね。


ただ、あまりにも綺麗ごと過ぎて
どこかで反発も感じていたのも事実。

進学グループにいるテンポだったかな。
作品の後半で
彼女が包帯を巻くという行為に対してグループの皆に
意見を述べるところがあるのですが、

「たとえ誰かの気持ちが軽くなったとしても
そのときだけの幻想としか思えないし、それを見て喜ぶのも
ただの自己満足じゃない?」


このセリフに思わず
そうだよね・・・と同感する自分もいたわけですよ。
それは・・私みたいに人生半分ぐらい生きてしまっていると
色んなことを知ってしまうわけで
たとえそれが意味ある行為であるとわかっていても
ひねたように考えてしまう習性が身についてしまうのですよね。

自分がすでに大人になりすぎているのかも
しれないな・・って思うのですよ。
もちろん、年齢に関係なくもっと純粋にものを観ることができる人間が読めば違った感想を持てると思うのです。
例えば・・この物語の主人公たちと同年代の方が
読めば、もっと感動もするでしょう。



ワラ・・ディノ・・タンシオ・・・ギモ・・・テンポ・・リスキと
・・・沢山のカタカナが並びました。
うまくあだ名をつけたものですね・・。



根本的なものは何一つ変わらないかもしれないけれど
それでも何かしないよりはいいんじゃないの・・


そういう発想を持たないとダメなんだよね・・。

残念ながら感動したか・・というと
そういうところまでは行き着かなかった自分が
ちょっと悲しいです。


他人の手を借りずに自分たちの手で
傷を癒していこうという姿勢はすごくいいことだと思います。
同じ年代のもの同士が
協力しあうということ

その価値の大切さを再確認した
自分です。

映画化は楽しみです♪


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