壁の男   著  貫井 徳郎

壁の男   著  貫井徳郎

あらすじ

ある北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。
その、決して上手ではないが、鮮やかで力強い絵を描き続けている寡黙な男、
伊苅(いかり)に、ノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが……。
彼はなぜ、笑われても笑われても、絵を描き続けるのか?

寂れかけた地方の集落を舞台に、孤独な男の半生と隠された真実が、
抑制された硬質な語り口で、伏せたカードをめくるように明らかにされていく。
ラストには、言いようのない衝撃と感動が待ち受ける傑作長篇。


(amazonnより引用)

感想

第一章はそれほどでもなかったのですが
二章からは一気読み

面白かったです。
そして中盤は泣きました。
病気ものだったので。


この物語は構成が非常にうまいと思いました。
町中に絵を描く男に興味をもった
ノンフィクションライターが彼 (伊苅)を取材にくる。
どういう人物か。
なぜ絵を書き続けるのか。

ノンフィクションライターは結局のところ、 伊苅(壁に絵を描く主人公)のことについて
細かい部分はわからないのです。
取材相手に話をきいても真実を聞き出すことが出来ないから

しかし、文章の中で
伊苅が、真実を独白しているので
読み手には、本当のことが知れわたる・・・


世間一般には公にはならない
この男の半生を
読者だけが知りえることが出来るという、贅沢感
そこが魅力的でした。

そしてその半生は
激動のもので、


妻との出会い
子供の出生の秘密
母親との関係

とてもとても
深い人生を送ってきた 伊苅

ラストの章で
なぜ
彼が絵を描き続けるのか
おぼろげながらもわかるような気がします。

泣けました。

貫井さんの今作は
ミステリーではないものの
やはり構成はミステリー的なつくりで
とても魅力的。
久々でしたが
堪能しました


題名がかなり地味ですけれど
是非手に取って読んでほしい作品です
期待を裏切らないと思います。

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私に似た人   著  貫井徳郎

私に似た人   著  貫井徳郎

「小口テロ」と呼ばれる
テロが世間を騒がせる・・・


感想

直木賞候補作だった作品。
社会派の作品なので考えさせられること多かったです。

テロというと、
強大な組織があって、メッセージを訴えるという趣旨のもと
行動を起こす・・・というイメージですが
この小説で言われる
小口テロ・・・とは
個人個人が、勝手に起こすテロでその個人たちは
とくに繋がりがないの。
今ある社会への不満が、テロという形で反映されているのよね。
なんだかおかしいよね~~
何がテロよ。
やっぱり、
関係ない人を自分の都合で殺すのは、理解できないよ。
この小口テロの意味合い
まったく理解できなかった・・・・な。


自分勝手に
自分の都合の良いように
社会への不満をこういう形で爆発させる人って
実際いるよね・・。
世の中でときどき起こる無差別な殺傷事件の
理由は、自己中心的なものだものね。

絶対、勝手。
自分も死んじゃうのだからって、関係ない人を巻き込むなんて
考えられないよ。

各章ごと
人物の視点が変わり
事件の背景を浮き彫りにしていく構成。

前に読んだ
同作者の『乱反射』に似た感じ。


この小説では
インターネットの書き込みが良く出てくるのよね。
見知らず人とのチャット。
そこで得る様々な情報。
心の中に抱えている不満が
こういったバーチャルの世界で
一気に背中を押されるっていう構図は
この先、あるかもしれないよね。
怖いです。

いろいろな人が
出てくるんだけど
< 息子の進学を心配する母親>
この母親の
自分たちが選ばれた人間だ・・みたいな振る舞い、
他人を見下した態度が
カチンときますね。

私に似た人・・・
これってどういう意味だろうと
考えたとき
ハッとします・・。

この本の中の誰かに
自分も似ているのでは…と考えてしまうと・・・
やっぱり怖い・・。

困っている人を見て見ぬの人・・・
その中に自分は含まれないかと・・・
傍観者になやすい
日本人の姿を浮き彫りにしているような感じ。

でも
実際
正義感をもって、世の中で暮らすのって
色んな意味で
難しいです。


わたしににた

新月譚   著  貫井徳郎

新月譚   著  貫井徳郎




文壇において
高い評価をもらっている咲良怜花だったが、
8年前に突然絶筆。
若い編集者は
現在57歳になった咲良怜花のもとへ
再び書いてもらいたいがために
訪問をはかる。
そこで彼女は絶筆の理由を語りたいという・・
外見も実力も兼ね備えた怜花がなぜ、絶筆したのか-。




感想


直木賞候補にもなった本作。

貫井さんの作品をかなり読んでいるので
今回のこの話は意外だな・・・という印象でした。
まったく予備知識なしに読んだので
てっきり、ミステリーものかと思っていたのですが、バリバリの恋愛ものでした。
一人の女性の生き様ってところでしょうかね。


分厚い作品ですが
一気に読めると思います。
あまり小難しい内容ではないので。



作家
咲良怜花。
本名は後藤和子という名だ。
彼女は21歳のときに出会ったひと周り年上の男性、木之内徹との恋によって
人生を変えられた。

まず、この木之内徹という男について。
どうでしょう。
これだけ不誠実で、浮気な
男なのに、そのたびに、許してしまう。
それだけ、他の魅力があるということですよね。
私もこういう男に出会いたかったものですね。
観てみたいんですよ。どれほど凄いのかって。
好奇心。
でも、出会ってもなびかないと思いますね。
まず、これほどひどい浮気されたら、きっぱり離れるな~~・・・自分は。
好きになったらそんなことできないと言われればそれまでだけど
意外と冷静になれる方なので・・・・・笑
和子のように21という年齢だったら
年上の男性に気持ちが向くというのもわからないわけではないけどね。
和子ってそもそもコンプレックスのかたまりみたいだったから
最初にそれを取っ払って、認めてくれた
男として
なんとなく、木之内にしがみつくようになったんじゃあないのかな。
それにしても、
付き合い年月長いので
どこかで、軌道修正してもらいたかったものですが。

友達に木之内をとられた時点で
すっぱり忘れることだったと思いますよ。
そのあと作家になって
いろいろな出会いがあったじゃない?
同僚の作家さんとか
編集者の人とかね。
その人たちと新しい恋に進むべきだったんだと思いますね。


彼女の作品は
途中、作風が変わります。
今まで平凡でしかなかった作品が
ぐ~~~と良くなって
情念の塊みたいな作品を次々に生み出していきます。

それに関して・・。
てっきり、ミステリーものだと思っていたので
この作風の変化はどこかに謎があるのかと思っていましたが(例えば本当に別人だったとか)
そんなことはなく・・・。
男がらみでした。
そこまで一人の男によって作風が変わってしまうのか
正直疑いたくもなるんですけど、
そこまでの威力が恋にはあると思うしかないですよね。


ラスト・・・
木之内は再婚し
とうとう子供までできます。
そしてその子供は難病でお金がいることに・・・
木之内は怜花に借金を頼むのですが
そのときに、初めて、妻も愛人怜花の存在を知っていたと知らされることになる・・


つまり妻公認の愛人だったんですね。
怜花ショックでしょうね。
奥さんはどういう心境で2人をみていたんでしょうね。
結局、妻の座が強いと感じていたんでしょう。



男の貫井さんが
ここまで女性の恋愛心情を描いたというのは
さすがだな・・・と思いました。

最後についついオチを探してしまったのが
私の良くないところでした。
あの編集者に過去を語る理由についても
もう少し説得力があった方が良かったかも。
ただ似ているだけっていうのではなく。


私はてっきり
木之内の親族か何かかと思ったのですが違っていました。


小説を書きあげる過程や
賞を獲得するまでの心境
編集者との関係など、
実体験を思わせる部分も多少あるのかな・・・と思いながら
読んでいました。


一人の男にしがみついてしまう人生もまた
ありかもしれないな・・・・
これは当人にしかわからない思いでもあるだろうから
とやかく言えないしね。
幸せだったのかもしれないしさ・・・。
人が人を思うことに理由などないんだというのを
ひしひし感じる本でした。
しんげつたん2908

灰色の虹      著   貫井徳郎

灰色の虹      著   貫井徳郎





身に覚えのない殺人犯としてある日突然逮捕された江木雅文。
由梨恵という恋人もでき、幸せの絶頂だった彼は一気に奈落の底へと落とされた。
無実を訴えても誰も信用してくれない。
結局、実刑をくらうことに・・・。
その日から、彼の生活は一転。家族も恋人も全て失ってしまった。
自分の人生を滅茶苦茶にされた思いから彼は恨みを覚えて。
そして、彼の事件を担当した刑事、検事、弁護士……と次々と殺されいく。
犯人は江木なのか。




感想



貫井さんの新作。
読み応えありました。冤罪の恐ろしさがひしひしと伝わってくる物語。
周防監督の「それでもボクはやってない」という映画を同時に思い出しました(痴漢の冤罪)が、
こちらはその映画よりもひどい状況。
殺人の罪ですからね。
刑事の必要なまでの尋問。
誘導質問のようなものもいくつか。
疑わしいければ、罰せよです。
なにか釈然としないものがわいてきます。
状況証拠しかなく、唯一の強力なものが自白。
しかしその自白も、追い詰めて、追い詰めて、その中で無理やり言わされてしまったという形です。
刑事伊佐山の強引さに憤りです。
昔かたぎの刑事さんなんですよね。その強引さが良い面に働くことがあるかもしれません。
刑事ならではの勘も大切にしなくてはいけないと思います。
でも、主人公に対してのやりかたは
どうにも、不自然。
無理やりだよと思わずにはいられません。

裁判官そして弁護士。
それぞれが、自分たちの仕事を一生懸命にこなしていたのかもしれません。
それでも、裁判官も弁護士も、一人の人間。
人にはいえない、秘密ももっているだろうし、
仕事の中で間違いもおかしているのかもしれません。


唯一の証言者。
あまりにも曖昧な証言に腹が立ちます。
人間の記憶のなんて不確かなこと。
人の一生を左右するような重要な証言を
軽い気持ちで行ってしまうことへの情けなさ。
有名になりたい、好奇心を満足させたいという身勝手さ。
もう・・・イライラします。


貫井さんの「乱反射」同じく、ほんの些細なことの積み重ねが
一人の人間を、不幸な状況に陥らせてしまった・・・
そう取れますが・・・、
それだけで簡単にかたずけられない問題ですよね。
なにせ、主人公は人生滅茶苦茶にされたんだもの。


彼の家族の不幸が一番つらかったです。
出所しても白い目でみられてしまう彼。
そして
やっと心を開くことができた恋人にまで・・・・。
どんなにつらかったでしょう。
生き地獄ですよね。
その中で母親の最後まで諦めない強い気持ちに心打たれました。


事件の関係者を
殺したのは本当に彼なのか。
最後に意外な結末が訪れます。


最終章は・・・
ちょっとウルウルしますね。
これから先、明るい未来があるであろう・・・2人を予感できる内容。
しかし待ち受ける現実は、悲惨そのものだと読者は知っているわけですから。


悲しい物語でした。


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明日の空   著  貫井 徳郎

明日の空   著  貫井 徳郎




両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美.
高校3年生で
初めて日本へ。
クラスメイトとも馴染、素敵な男の子、飛鳥部君とも良い仲に。
しかし、2人きりのデートを試みるたびに
変な出来事が起こる・・



感想



貫井さんの、青春ミステリーかな。
こういうジャンルは珍しいかも。
私がいつも読んでいる貫井作品は、重厚なものが多いから。



物語は第一章・・・栄美の高校生活。

第二章・・・六本木で外国人に声をかける、男の子と
黒人のアンディの友情物語

第三章・・・栄美の大学生活


と、構成されます。

第一章、第二章で疑問に感じたことが第三章で、すっかり解決するっていうことかな。


そうだったんだ・・・・という意外な展開ではあります。
ポイントは
第2章の、主人公が一体誰か
どういうかかわりがあるのか・・・かな。



私は、てっきり、飛鳥部君と思っていたけど…笑・・・これはミスリードね。



第一章の小金井志郎君、こんなに重要な人物だとは思いもしなかったです。



ラストの真相がわかる場面では
確かに
驚きはあるのですが、ちょっと強引すぎる部分も感じます。
それは無理なのでは・・・と思うことも。
そこまでするかな・・・とか。
でも、
明日の空・・・という題名に結びつくと思うのですが
小金井君が
明日の天気について、述べる個所なんかは
ちょっと感動も覚えたりします。
気軽に読める作品になっていると思います。
ちょっと悲しいけどね。



明日の空

乱反射    著  貫井徳朗

乱反射    著  貫井徳朗



幼い命が奪われた。
街路樹の木の下敷きになって。
果たしてそれは、防ぐことができなかったのか。
それとも人災か・・。
様々な人間たちのエゴの果てに起きた悲劇。





感想

第63回、日本推理作家協会賞受賞作です。
(たしか、このあとの作品「後悔と真実の色」は山本周五郎賞を受賞していますよね。貫井さんすごい)
この、乱反射に関しては
このときの、選考委員の北村薫さんの言葉にも惹かれました。
だからより読む気になったというのもあるかな・・。

ちなみに、
この第63回の候補作品には
佐藤 正午さんの「身の上話」や
湊 かなえさんの「贖罪」も入っていました!!




日常の些細な不道徳心が
一人の幼児の命を奪ってしまった。
モラルの欠如ゆえの悲劇です。


そういう話です。


映画で言えば、バタフライエフェクトのようです。


モラルが欠如していたからといって、
悲劇が、必ずしも起きるのかといえば、そう言い切れないところもあると思います。
反対に、品行方正な生活を皆がしていたとしても、
悲劇は起きるかもしれませんね・・・。
そういう考えをすると
それぞれ、この事件にかかわった人たちを
一方的に責めることもできないないのかな・・・と思ってしまう自分もいます。
こんな不道徳な人たちがいるからだ!!と
憤っても、結局、じゃあ、自分は?と振り返ってみたとき
思い当たる部分がまったくないとは、いえませんよね・・
一回ぐらい・・いいじゃないか・・・。
この程度なら・・
心当たりある人もいるかもしれません。


しかし、この物語で
いくらなんでも・・・これはひどいおこないでしょ・・・と思う人もいます。

車庫入れ、途中放棄は・・・いくらなんでもひどくありませんか?


お話の具体的な内容に





この物語は-44という章から、スタートです。
事件が起きる前までをマイナスの章で表記。
事件が起きたそのときの章をゼロとしています。


一人の幼児の死にいたるまでには様々な人々の生活模様が語られるのですが
なにしろ、登場人物が多いので
整理していくのが大変です。
とっかえ、ひっかえ・・順不同で登場してきます。


病院の待ち時間を避けるため、風邪程度で夜間救急を利用する大学生。

定年を迎えた老人、暇つぶしに犬の散歩を毎朝するようになるが、持病の腰痛のため
飼い犬のフンを放置しつづける。

生活に余裕がある主婦、周囲に認められたいがために
環境保全運動を行う。

クルマの運転が苦手な女性。大きなクルマに買い換えた途端、ますます車庫入れが苦手に。
ついに路上でクルマ放棄してしまう・・。

もめごとが嫌いな公務員。ほどほどに仕事をしようとするが、
プライドの高さだけは十分ある。

潔癖症な造園土木の作業員。病気ゆえ、自分の仕事をやり残してしまう。


そして・・・・自宅のゴミをパーキングエリアのゴミ箱に捨てる彼・・。


一見、
幼児の死には関係がないような出来事に見受けられますが
そういう人たちの身勝手な行動の積み重ねが
悲劇につながってしまうという、
考えていくと、本当に恐ろしくなるような話なのです。


こうやって物事を突き詰めて考えると
生きていること自体は偶然の賜物でありますよね。
一歩間違えれば、どこで運命変わっていくのか、わからないもの。


どんでん返しはありません。
ミステリーとして読むとちょっと系統は違うと感じるかも。


責任の所在がどこにあるのか・・・
納得できない遺族の気持ちもよくわかります。
反対に
すぐに、それは私の責任がある・・といいだせない人たちの
気持ちもなんとなく、わかります。

自分の胸に手を当てて・・・
誰かに迷惑をかけていないか・・・
そんなことを
ふと思ってしまうようなお話でした。


日常に潜む怖さを感じますよね。


あ・・・クルマの運転を放棄する女性がとくに腹立たしいと↑で
書きましたが
樹の伐採を反対する、リッチな主婦の方々。
こちらも、少々、むかむか・・しましたね。
私はそういう暇つぶしでおしゃべりして、良く考えもしない行動をとる、主婦が嫌いだわ・・・・。


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後悔と真実の色    著  貫井 徳郎

後悔と真実の色    著  貫井 徳郎




若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人魔が社会を震えさせていた。
彼は「指蒐集家」と自分を呼び、ネットを使って警察を翻弄させる。
そんな中、警察たちは、捜査に一心に取り組むが・・・。
捜査一課のエース、西條輝司はある出来事をきかっけに運命が変わってしまう。





感想    貫井さんの新作。

前半は警察内部の足の引っ張り合い。登場人物が多く人間関係を整理していくのが大変でした。
捜査一課の警備補、西條は名探偵と呼ばれるほど、優秀で、見かけも良い・・。
その西條に劣等感を抱くゆえ、憎悪を感じる、機動捜査隊の警部補、綿引。
西條に情報を流してくれる単純男、同僚山根こと、トム。
西條と捜査でペアーを組むのが巡査の大崎。
綿引とペアーを組むのが金森巡査部長。
他にもマスコミと仲が良く、女好きの村越や野田係長・・・などなど。

多くの人間が様々な思惑をもちながら事件を捜査していく過程が面白いです。


前半はこの刑事達の群像劇のようで特に誰といって焦点をあてていないのですが
後半は西條刑事が物語の核になります。


西條刑事は本当に可哀想な運命をたどってしまうんです。
彼は妻と子もいますが家庭は冷え切っていて愛人がいる身。
彼に原因があるといえばそうですが
奥さんがあまり理解がないのでは・・・と思ってしまうかな。
もう少し刑事の彼を理解してあげれば、こんな冷え切った家庭にはならなかったはず。


この西條を憎むのが綿引という刑事なのですが
劣等感ゆえの憎悪のようです。
西條刑事は見た目よしで、優秀ですからね。
対する綿引は出世もせず、奥さんが交通事故で子どもは障害を持つ身。
生活も厳しく、なにごともスマートにこなす、西條がうらやましくてしかたがないようです。
そんなに妬まなくても・・憎まなくても・・と思わなくもないのですが・・
決定的に何か事件があったわけでもなく、ただただ虫が好かないというだけで
憎まれたら西條も可哀想。




警察内の人間模様も注目ですが、もちろん、ミステリー的要素でもある犯人探しも
なかなか面白かったです。
多くの感想でも聞かれるように、だいたいの犯人がわかるんですよね。
(私でもわかった・・・)
伏線もちょっとはられていますし。
でも一つ疑問な部分があったので、そこが知りたいためにやっぱり最後まで読み、
そうきたのね・・・・そういうトリックだったのね・・・と知ることで
初めてスッキリ感を覚えました。


動機については、そんなことで、犯罪に手を染めるの?と思わなくもないですが、
もともと心の中に願望というか、モヤモヤ感があって
なにかの拍子にスイッチが入ってしまったのかな・・・と考えるのと
納得できなくもないのかなと今になってみれば思いますね。
人間てそういうところありますし。



悲惨な運命をたどる西條は読んでいていていたたまれなかったのですが
最後のホームレスとの心の触れ合いには
なにかホッとするものも感じました。



政治家の話は完全にミスリードだったのですね。
捜査もあらゆる可能性を考えないといけないので大変。


時間を忘れ、のめり込んで読んでしまう本でした。
ミステリー本はこうでないとね。

あ・・・・題名からはちょっと想像できないお話でもありますよね。
しみじみ考えればなるほどと思いますが。
ブルーの装丁もお話の流れからいうとちょっと違うかも・・・と感じましたけど・・・笑
真実の色ということでしょか。でも中身はブルーではなかったからな~~









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夜想   著  貫井徳朗

夜想   著  貫井徳朗



事故で妻と娘を亡くした雪籐。
暗闇の中にいる彼を支えているのは
カウンセリングの北条先生と時折現れる亡き妻のアドバイス。
しかし悲しみが癒されることはなく
存在意義に疑問も感じ、生きる希望が湧かずにいた。
そんな時、定期券を拾ってくれた女性が
自分を見て涙する。
「シンクロしてしまった」と言う彼女。
彼女=天美遥は持ち物に触れるとその人の
心が見えるという。
今はアルバイト先の喫茶店で時々人から相談を受けるという
ボランティアをしていた。
自分を初めて理解してくれた人がいる・・
雪籐は遥を支持していこうと決意する・・



感想  「慟哭」から14年たっての作品。
扱っているテーマは同じ新興宗教。
今年になってから「慟哭」を読んだので今だ記憶は
新しい自分。同じ路線を想像させ、読む前からどんより~~とした気分でした。  でも今は読んでよかった・・・という気持ち。
どんより~~した気分にはなりません。グイグイ引っ張ていく
力が文体にあり一気読みでした。
途中、途中で重めな展開もありましたが
後味は良かったです。

「慟哭」は
最初に宗教があり、その中へ
自らが突入していく主人公・・という流れであったのに対して
こちらは中から=宗教を立ち上げる過程を・・
順を追って描いていく作品でした。

この雪藤がかかわる組織を
宗教といういい方で表現していいのかどうかは
わからないけれど、客観的に見れば
そういう認識でとらえられてしまうのは致し方ないでしょうね・・。
人を救うという目的をかかげているのですから。
そして人の拠り所となっているのですから・・・。

どうしても胡散臭い印象をもたれてしまう新興宗教。
金銭関係が絡んでもめたり
一般的な物事の判断が尋常を超えてしまったりするのを聞くと
どうしても、身構えてしまいますよね。


世の中には他人には計り知れない
苦しみを背負っていく人は
たくさんいて・・・。

何かにすがりたいという気持ちは
当然でてくるはず。

だから雪籐がのめりこんでいく気持ちは
わからなくはないです。


それは宗教がいいとは悪いとかという問題とは
別なところですよ・・。

彼が救いを求めている姿は痛々しいゆえ、
その行動が納得できてしまうのです。
自分だったらどうなっていくんだろう・・・って。


この物語の中で、指導者とされる
天美遥は、そういう宗教組織を人一倍嫌う人物像として
描かれます。ここは新鮮。
悪巧みがあるわけではないのですよね。

純粋に自分の能力を人助けに役立てたいと願っている女性なのです。

もちろん、主人公の雪籐も最初はそうであったはずです。
彼女を巷にいる教祖というようなものの・・・位置づけにしたくないと
いう思い・・


でもことはそんな簡単なことではすまされません。
組織となれば金も要るし
人が集まれば摩擦も生じる・・

すべては彼女のためだと言い聞かし、
どんどん深みにはまっていく雪藤。

こうやって一個の団体、集合体が
湧き上がっていくのかも
しれないですね。
生々しい・・。

ミステリータッチで描かれており
ところどころ・・
そういうことだったんだ・・・という衝撃的な事実が発覚していき
ミステリーとしても楽しめます。

同時進行で
語られる
夫に死なれてから女で一つで娘を育ててきた子安嘉子の
娘探しの件も
上手い具合に
遥たちの団体「コフリット」に絡んできます。

さすがに、上手い展開です。


途中から会の運営に携わる
笠置は、悪者であるという意識しか持たず、
絶対雪籐たちを混乱に陥れると思っておりましたが
彼は彼なりの心に葛藤を秘めていたんだな・・・って
わかることが驚きでした。



「悲しみっていうのは絶対乗越えなきゃ
いけないものなのか。。。
どうしても乗越えられない悲しみだってあるんですよ。
だったら無理に乗越え必要はない。」

笠置さんがこんなこというとは思っても見なかったな・・・




「悲しみが一生消えないほどに心に食い込んでしまったなら
悲しみとともに生きていくしかありません・
救われたいと願っているうちは、けっして苦しみから
逃げることはできないのです。
自分を救うのは自分自身しかいません。」


雪藤の言葉は、苦しみ、悩んだものだからこそ
いえる言葉ではなかったでしょうか。
心がボロボロになるまで苦しんだあげくに
たどり着いたものが
前向きな人生の選択だったことに
ホット胸をなでおろします。



      自分を救うのは自分しかない・・


これがこの物語の言わんとすることだったのかな・・・と
思います。



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慟哭   著  貫井徳朗

慟哭     著・・・貫井徳朗




感想・・貫井さんのデビュー作です。
私は、「空白の叫び」に続いての2作目です。

あまり情報を入れずに読んだので
最後の展開には、素直に驚きを感じました。
当時話題作にもなってというのも大いに頷けます。
実に良くできた物語構成になっているので・・・感心もしました。
たぶん、この物語の読みどころは、衝撃の結末ということにも
なるのでしょうが、
私が一番、興味深く感じたのは描かれている新興宗教の
部分でありました。
どのようにして、人は嵌っていくのか・・・。
心に大きな痛みを抱えている人にとっては
何か拠り所になるものを見つけたいという欲求は
当然のことだと思います。
それがどういった実態のものか・・・
冷静な判断を出来るのは、健全な精神を持ち続けているときだけかもしれません。

皆がみな・・・そうだ・・・・正しいと思える価値観の中に
身をゆだねていれば、自分も染まってしまうのは
時間の問題かもしれませんね。
自分の中に欠落した部分があればなおさら・・・。

考えさせられます。
宗教をルポした記者の言葉も、真実味があって
読み応えありました。


もちろん、物語は宗教云々のことだけではありません。

もう一つの事柄。
幼児誘拐殺人事件についてです。

簡単に内容を説明しますと・・

新興宗教に嵌る松本という男のお話と
幼児誘拐事件を担当するエリートコースを走る佐伯警視査一課長の
話が交互に語られます。
佐伯は妻の父親が警視庁長官、自分も相当の地位のあるものの隠し子ということで、様々な嫉妬、中傷に苦しめられます。
家庭的な温かさを知らずに生きてきた男です。
一方の松本は心に暗い影を落とした男。
その心の傷を癒すために、新興宗教に救いを求めて行くのです。
その2人の人生がある事件をきかっけにどうかかわっていくのか。


先日は映画でゾディアックを見、その警察にゲームをしかけるような態度に恐ろしさを感じたばかりですが
この物語も同じような展開で、思わず、こんな物語ばかり続けて
触れてしまう自分に悲しくなったりもしました。
最終的な結末も
すべてがすっきり・・・という形ではない、映画と同じような
ものでした。
物語は重いです。
そういえば、「闇の底」も幼児が犯罪の対象でした。
こんな事件ばかりでは、気分も沈みますが・・・、
現実ではもっとひどいことも日常で起こっていますよね。
一体、どんな世の中になっているのか・・。


読み終ったあと、
慟哭という意味をあらためて
考えてしまいます。
そして、ゲンナリします・・。
本当に人間はそんなことできるのでしょうか・・・。



人の心は・・・どうやったら救われるのか・・。


あまり細か述べると
読書の楽しみが半減しますので
やめますが、
一気に読める作品です。


「夜想」も予約しているので手に入るのを
楽しみにしています。たぶん、重いとは思いますが
それだけ、集中力を保つことができ
ると期待しております。


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空白の叫び   下  貫井徳朗

空白の叫び   下  貫井徳朗


少年院でであった3人。
出所してからそれぞれの別の生活空間で
過ごしていたが・・、
彼らの更生への道は険しかった。
様々ないやがらせ、思うように行かない現実・・
やがて彼らの心には新たな闇が生まれてくる。
3人は再び連絡を取り合い、
ある事件を起こそうと企む・・・。


感想   さて・・・下巻の展開。
少々、現実離れしているところも感じられましたが
こちらも一気読みできるパワーをもった作品となって
おりました。

上巻から気づいていましたが
3人のキャラたちは(特に2人・・)かなり
一般年齢より大人びた考えをもっております。
それが正しいかどうかというよりも、
一本筋が通っているということですよね。
一番年相応に感じるのは
神原でしょう・・。
でも、この神原こそが一番の悪人として描かれているところが
やりきれないところかもしれません。
彼の考え方ですね・・
ただただ自分の都合のいい風に、自分勝手にしか
事をとらえないところが、腹立しく感じるのです。
自分を正当化する・・
自分に不利益なことをすぐに排除する・・
どっちつかずに優柔不断・・・
自分のプラスになる方にしかつかない・・
つまり・・根本的に人を信じない・・

何故・・彼はこうなってしまったのでしょうね。
罪を犯す前は、そんなこと・・微塵も感じ得なかったのに。
院での生活がそうさせたのか・・
いや・・そもそも、根っこの部分でそういう気質が
あったのか・・。
少年院出、3人中では一番家庭環境に同情の余地がありました。
殺人理由も・・・理解できると言い切るまではいかなくても
多少は、くみとってあげたい感情もあります。
だからこそ、その後の彼・・(少年院を出てから・・)
の姿にはただただ幻滅を覚えるだけでした。
恐いと思いましたよ・・
こういう一見心根が優しいと思える子が
変貌していくと・・・。
家庭環境?・・院生活・・?その後の社会環境・・・?
多少なりとも因果関係があるにしろ・・
最終的な部分では、
持って生まれたものの力・・・が関係しているのではないか。。
・・と思ってしまう自分ですね。


ミステリータッチで謎が謎を呼ぶ展開は
面白いです。
色んな人物達がこの3人にかかわり
様々なドラマが展開されるのです。
殺人という目に見える大きな罪以外にも
社会の中には沢山の悪が潜んでいます。
でも・・すべて3人の起こした罪が
出発点であるように感じます。
罪を犯さなければ、その後の人生でこれほどまでに
つらい現実が襲ってきたりはしなかったのだから・・。

興味深い展開ですと、ただストーリーを追うだけに集中してしまい
肝心なものに目を向けないでお終いにしてしまう
ところがありがちですよね。この物語もそんなところが
あるのですが
やはり、テーマがテーマなだけに
きちんと、・・なぜ罪を犯すのか・・・か
なぜ、再犯してしまうのか・・というところを
押さえていきたいですね。

後半、久野の罪を問いただす理恵の父親。
重い言葉が続きます・・。被害者側の気持ちが一番如実に感じる
文章で心が痛みますね。
神原の幼馴染の佳津音の気持ち。最後まで純粋に
彼を信じていましたね。彼の本質も知らずに・・
哀れにも感じてしまいました。

久野を最後まで苦しめた瘴気・・・

瘴気・・・て何?<熱病を起こさせるという山川の毒気>だとか。
毒気・・・ね・・。
どうして心に住み着いてしまうのか・・
もっていても、上手に処理できる人も
いるのに・・。残念な結果ですね。

ともかく・・この3人は当然の報いを受けます。
その点では後味が悪いということはありませんが
ただ・・やっぱり・・
この手の話はどんより・・感を覚えてしまいますね。

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