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私のなかの彼女 著  角田光代

私のなかの彼女 著  角田光代



大学生の和歌は
恋人である仙太郎と付き合っている。
将来はとくに考えていなかったが
彼の、就職してみたら・・・の一言で
幼児教育の出版社に就職。


そんなとき和歌
は、実家の蔵で、自分の祖母が書いたらしい本を発見。
祖母は醜女といわれ、パッとした容姿ではなかったようだが
小説の才能があったようだ。
しかし、その小説はかなり独特。
和歌は祖母の過去を
調べながら
自分もまた
小説をかいてみようかと・・・思うようになる





感想



主人公の和歌が大学、就職・・そして
作家として悩んでいく姿が描かれるわけですが
背景にあるのは
祖母の姿。
祖母もまた作家だったわけです。

和歌が迷いながら作家の道に進んでいく過程は
興味深かったです。
尊敬していた
恋人仙太郎の姿が
年月と共に変わってくるのも
なるほどな・・・と思ったり。
仙太郎が変わったというよりも
和歌が変わってきたということなんでしょうね。

そもそも彼女は
就職なんて考えていなくて
このまま
なんとなく
仙太郎と結婚かな・・・という未来を
学生のときは考えていたわけですから。


でも
和歌が
小説を書くようになって
今まで、一緒にいることが当たり前だった
仙太郎との
関係が怪しくなってきます。



やはり、同じように、物をつくりだすという・・仕事を
選んでいるもの同士の暮らしは
難しいのかな・・・と思います。

生活というのは
ご飯食べたり
お掃除したり
そんな当たり前のことが、かかわってくるわけですからね。

掃除しないで部屋はそのまま。
仕事第一の和歌。
それを納得しているようで
どこか違和感を感じていた仙太郎。
そしてとどめは
子供だったのかな。


和歌が自分が妊娠したとわかったときの
対応は
私としては
う~~んと思う事多々でした。
入院していた
母親と
和歌が
後に口争いする原因も子供のことだったのも納得できます。
子供は和歌の
せいとは言わないまでも(後にダメになる)
やはりどこかで、妊娠を素直に喜べなかった和歌の
日常の過ごし方が
影響を及ぼしていたんじゃないのかと
思われるからです。


仙太郎がこのことをきかっけに
離れてしまうのも
致し方ないかな・・・・と思います


和歌にとっては
いろいろ辛い経験となりましたけれど
それも運命と受け取り
彼女は彼女なりに
正しいと思った道を
進んでいったら
いいのではないかな…と
読み終わったあと
思いました。

小説家という職業だけでなく
女性が
自分らしく生きるということをまず第一に考える場合
なにかを犠牲にしてしまうこともあるかもしれない・・・
でも
それはそれで
その人の人生なのだから
納得し、後悔しなければ
私はいいのではないのかな・・・と思いました。
ただ平凡を絵に描いたような
私の人生からすると
すっごく冒険的なことだと思うし
私はやはり
この和歌の母親と同じような
責め口調で
そういう人に向き合ってしまうかもしれないな・・・
とも思いました

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なくしたものたちの国     著   角田 光代  絵  松尾たいこ

なくしたものたちの国     著   角田 光代  絵  松尾たいこ





松尾さんの絵をもとにした、角田さんのファンタジックな物語。




感想


角田さんの作品は今年になって3冊目。でも今までとこれは違う趣き。
ファンタジックなお話・・。
好きだな・・・・こういうの。
最後に
角田さん、松尾さん、それぞれのあとがきがありましたが
それを読んだだけで、ウルウルきてしまいました。
あ~~私もそんな思いがあったのよ・・・・・って★


なくしたものは
きっとどこかにある・・・



生きていくのはつらいだけじゃない・・・
前向きになることが必要


「晴れた日のデートと、ゆきちゃんのこと」

主人公は成子。
成子は、子供のころ人間以外のものと話ができた。
その中でも、学校で飼っているヤギのゆきちゃんとは仲良し。
でもある日突然、その声が聞こえなくなってしまった。

ゆきちゃん・・かわいい。
私もなにかと話せるって思っていた時期あったよ。

「キスとミケ、それから海のこと」

電車の中で出会った5つ年下の銃一郎。
前世は母が飼っていたミケだという。


母と銃一郎の会話がなかなか良い。再会してうれしいはずなのに
なぜか、ちょっぴりせつなさも感じたな。


「なくした恋と、歩道橋のこと」

妻子ある彼との恋愛話。
ここででてくる・・生霊。
面白い発想よね。
生霊仲間がいるっていうのも驚き。
心理的にはわかるわ~~


「さようならと、こんにちはのこと」

電車の中に4歳の娘を置いてきてしまった成子。
やがて娘は遺失物管理庫にいると分かる。


このお話が一番つらかった・・・。
4歳の娘って・・・そうだったのね。


「なくしたものたちのこと」

誰もいない街にいる成子。
そこにはなくしたものが・・・。


また会いたいです・・・私も、なくしたものに。


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ひそやかな花園   著  角田光代

ひそやかな花園   著  角田光代



幼い頃、毎年サマーキャンプで一緒に過ごしていた7人。
ある日突然、キャンプはなくなった。
「あの集まりはいったい何だったのか?」
その後、何年かたち、
別々に人生を歩んでいた彼らは、
再会する機会に巡り合う。




感想


島本さんの作品と同時進行に読んでいたので
ここ何週間の読書生活は重苦しかったな・・・・・・。


幼いころキャンプに参加していた子供たち。
それがある日途中で、中止に。
あのキャンプはいったい何だったの?

ミステリータッチで描かれる物語。
こちらもやはり、一体どういう真相なの?という興味が湧いてきて
読まずにはいられない展開。
しかし、途中でその真相はわかり・・・


そうだったのね・・・・。


正直私は、
宗教がらみの関係だと推測していました。
こういう真相だったなんて。


成長した子供たちは
早くから真相を聞いていたもの
皆に出会ってから聞かされたものと・・・様々。
受け止め方もこれまた様々。


当然でしょうね。
性格それぞれ違いますから、受け止め方も違うのは。


こういう物語を読むと、やっぱり、じゃあ自分はどうなの?どう考えるの?って
考えてしまいますよね。

ただ、今の自分は普通に出産し、子供もいますので
どうして親たちがそういう行為にいたったのかというのが、
身近には感じにくいところがあります。

否定も肯定もできません。
それぞれの考えのもと、結論出して、行動したわけですから
それに関して意見はできないのですよね。


ただ、優秀な遺伝子をもらいたいという発想は
絶対わいてこないような気がします。
選べるという条件があるからそういう発想がでてくるんでしょうね。


この作品を読みながら
白石さんの「砂の上のあなた」の主人公を思いだしたり、
また映画だと
「ガタカ」ですかね。
優秀な遺伝子の話がありましたから。
そういう他のものも想像してしまいました。



登場人物は7人もいて
それぞれが描き分けされていますが、やはり整理していかないとわかりにくくなります。
しかし、いろんなケースがあり、
その後の人生も本当様々なのに、驚かされますよね。
ただ幼少期の印象をそのまま引きずっているところがあるので、
そこは面白く感じます。

気になった7人たちのも
現在の姿をちらりと。



雄一郎(自分の部屋に家出少女を泊める、泊め男、フリーター)

紗有美(アルバイト、、ネットカフェに通う毎日)

賢人(恋人由利子。広告代理店勤務、)

樹里(夫敦、デザイン事務所に勤務経験、いまフリーでイラストを描いている、子供が欲しいができないでいる・)

紀子(夫慎也、娘あゆみ、専業主婦)

弾(親が別荘の持ち主。心療内科に通う過去あり、幼いころ、紀子と結婚式を挙げる)


波留(ミュージシャン、目の病気を患っている)


皆の性格づけがきちんとされていて
どの人に関心が向くのかは
読者にゆだねられているって感じです。
どの人も興味深い人でした。
やっぱり、いらっとくるタイプとしては一番に
紗有美だと思います。


大人になって真相を知ってからの皆の出会い。それぞれが自分の人生に
いい風に影響を与えたとように思いますが
中でも
一番変化したと思われるのが
紗有美なのです。



親と子は
血がつながっていないとダメなのか。
家族はどうやって家族となれるのか。

突き詰めればそういうところに繋がっていくのだと思いますが・・・・。


「八日目の蝉」と同様、親子について考えたくなる物語でした。



ただ個人的な意見ですが
私がもしこういう方法で出産をしたら
こういう集まりのキャンプには参加しないと思う・・・
交流を持ちたいとは思わないな・・・。
そして、事実はその子にどうだろう・・
言うかな・・
最後まで言わないかもしれない・・・
そういうところまで決心してから
行動すると思うな。


まあ・・あくまでも仮定の話ということで。



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ツリーハウス   著  角田 光代

ツリーハウス   著  角田 光代


舞台は西新宿にある中華料理屋「翡翠飯店」。
そこで生活する、祖父母、両親、孫・・三世代にわたる物語。







感想



祖父、祖母の歴史を追って遠く満州へ。

満州のお話は正直ピンとこない部分はありましたが
祖父、祖母たちが引き揚げて
新宿に中華料理店をひらく、そこからの生活の日々はぐいぐい引き込まれて読みました。


祖父母には
子供もたくさんいたのですが
満州にいるときに何人かは死去。
それでも日本にきてからまた何人か産み、その子たちが
成長して様々な問題を起こす・・・


ドラマチックな家族と言えばそうだけれど、多くの家族が
なんらかの問題は抱えているはずです。
物語は様々な出来事をけっして大げさでなく
淡々と事実のみを重ねていっているだけなのですが
どこかで自分の家族の歴史も考えたりするようになったりして
夢中になって読みました。
自分という一人の人間って
突然現れたりするわけでなく
親がいてまたその親がいてと・・・
ず==とつながっているわけですよね。
だからやっぱり・・その歴史というのは知っておいた方がいいと思ったし
皆に少しでも記録として伝えておいてもいいんじゃないのかな・・・なんて思いました。

この物語の家族たち、それぞれの世代には
時代の波が大きく関わってきています。
戦争から始まって時代はどんどんと変化していき
その中で人々の意識も変わってきているのがこの家族を通して
みることもできるわけです、



物語は過去と現代が行き来していく感じです。
現代パートでは、おじいさんの死をきっかけに
孫の良嗣と、おじさんの大二郎(おばあさんの息子)を付き添いにして
おばあさん(ヤエ)が、自分のもう一つの故郷でもある満州へ旅行をするくだり。
その旅行のさなか、おばあさんは、昔の自分のことをいろいろ思いだし
物語は過去パートに随時うつっていくわけです。


そこで
おばあさん(ヤエ)はなぜ満州に渡ることになったのか
おじいさんと何がきかっけで出会い、結婚するはめになったのかという
出発点が・・・が語られます。


もちろん
日本に帰ってきてからの
自分たちの子供の成長記録も次々にです。




良嗣のおじさん、大二郎は
仕事もせずにぷらぷらしていますが、以前は教師であったこと。
教え子とのわけあり交際もあり、さらには、新興宗教にハマっていたという過去も明らかになり
驚くばかり。

こうやって一人一人の過去が明らかになる過程はミステリーのようです。



ここで整理しますね。三世代にわたるということで
多くの名前が出てきて少し、ややっこしいので。
まず、おばあさんの名前はヤエ。
おじいさんに名前は泰造です。

ヤエの子は
光一郎(2歳頃、死亡)、洋二郎(未熟児で生まれてすぐに死亡)、慎之介(良嗣の父親)、
大二郎、今日子、基三郎(のちに死亡)

占い師に言われていましたが、6人産んで半分になってしまうのです。


孫の良嗣は、慎之介の子です。次男ですね。

良嗣の父は慎之介。漫画家志望でしたが家を継ぎました。
奥さんは文江。大学出なんですよね。
この夫婦には子は3人。
基樹・早苗・良嗣です。


少しはわかりやすくなったかしら。



学生運動
浅間山荘事件
新興宗教
西口のバス放火事件、

あ・・・そういえば、そんなこともあったと
記憶をひも解くような思いでした。



題名の
ツリーハウス。
小説の中にも、良嗣が大木に作った秘密基地木の上の家として出てきます。


根っこをもたないような家ということですが
私は
この家族・・・素敵だな・・・と思いましたよ。
一見皆、ふらふらしていて・・・
肉親の情が薄いような気もするのですがそうじゃあないのですよね。
家族ってそんなに簡単に他人にはならないだろうし
どこかしら、やっぱりお互いを思いあっているんじゃあないのかな。
表面だってわからなくても・・


おばあさんが満州で
世話になった家族を探すのですが結局、探せないんですよ。
でもおばばさんは・・自らの思いは満州で精一杯吐き出してきた感じ。
だから、
ああいう風に日本に帰ってからも
身辺整理できたんじゃないのかな・・・って思いました。


淡々としている中にも
感動もあって
好きなお話でしたね。

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私たちには物語がある   著  角田光代

私たちには物語がある   著  角田光代


読書案内書・・・




感想


作家である
角田さんの書評集です。

最初の方は、角田さんの読書にまつわるエッセイが・・・
あとの方には
様々な作品の書評が載せられているという構成です。





感想    



読書にまつわるエッセイも面白かったです。
子供のころに読んだ本が最初はつまらなく感じたけれど
のちに読み返してみると
なんて面白いのだと再発見したという話。


太宰も川端も、読み始め当時はその良さがわからなかったが
のちのち、その素晴らしさがわかったということ。



私にも経験あります。
同じ本でも読む時期で受けとり方も理解良くもだいぶ
違ってきますものね。


後半の角田さんの書評。

私が読んだ本もあり
知らない本もあり・・でしたが
非常に参考になりました!!

メモ書きして、是非挑戦してみたいと本気で思いましたもの。


2010年は作者がデビューしてから
20年目だそう。
実に様々な本を読んでいます。勉強しています。
私も同じぐらいな人生だもの・・・笑
たくさん本を読まなくては。


あとがきに・・

「こんなにも世界にはたくさんの本がある。私はこれらの活字を追いながら、じつに膨大な、幸福な時間を過してきた。その幸福な時間が、この一冊には詰まっている。
けれど世界にはもっともっと本がある。本を読むことで、笑ったり泣いたり怒ったりざわざわしたりどきどきしたり
うっとりしたり、これだけゆたかに感情を揺さぶられてきたけれど、また別の方法でふれてくる本が~~
まだまだ多くあるのだろう。そう思うと、本当に途方もない気持ちになる。」(多少省略)


同感です!!!
私も本の世界で幸せな時間を過ごしたいわ


kakutasan 337

くまちゃん    著   角田光代

くまちゃん    著   角田光代


くまちゃん
アイドル
勝負恋愛
こうもり
浮き草
光の子
乙女相談室



7つの短編からなる恋愛小説。



感想   20代前半から30代半ばの男女たちのふられ小説です。
全部の章につながりがあります。
一章のくまちゃんの主人公が古平苑子・・23歳・
つきあう男性が
くまちゃんこと、持田秀之。
2章はその持田秀之27歳が主人公。付き合うのは岡崎ゆりえ・・28歳。
3章は、岡崎ゆりえ29歳が主人公。付き合うのが保土谷槇仁。
4章は保土谷槇仁、32歳が主人公。付き合うのは片田希麻子。
5章は片田希麻子、36歳が主人公。付き合うのは林久信。
6章は林久信が主人公で、相手は野坂文太。
7章は山里こずえ、36歳が主人公。でてくるのは2章に出てきたゆりえとおぼしき女性。


というぐあいの、バトンリレーのような短編小説です。
パターンは同じですが(最後に別れがくる。ちなみに最後の章だけは違う感じ)
なかなか面白いお話ばかりで
楽しんで読むことができました。

どの物語の主人公たちも
けっして、優等生タイプでなく、人生もがいているようなふわふわしたような
生き方しかできない不器用な感じの人たちばかり。
正直、そういう行為はしないだろう・・・
それやちゃったら、幻滅だよと
恋愛過程を見ながら、しょうがないね・・・・という思いも作品によっては感じておりました。

でも、人って面白いのね。
違う視点からみてみると、こんな一面があったのか・・・って気づくことが多いから。


そしてやっぱり、結末がふられるという形式であるからかもしれないけれど
付き合っている同士の、その恋愛温度が同じレベルではないのよね・
どっちか一方は熱い思いなんだけれど、
もう一人はトーンダウンした状態。
それでもなんとなく関係が成立しちゃうんだよね。
もちろん、相手の熱い思いに感化されて自分も盛り上がり
うまくいくパターンもあろうかと思うけれどね。
この小説では、みな、お別れになっちゃう・・・
タイミングというのもあるのかな・・・



くまちゃん

森に眠る魚     著   角田光代

森に眠る魚     著   角田光代


東京の文教地区の町で出会った5人の母親。
育児を通して「ママ友」として、日々親しくなっていく彼女。
しかし、子どもの進路を考える中で
その関係は微妙になっていく。


感想   数年前に実際に起こったお受験がらみの事件をモチーフにした今作。


この作品、結婚して子どもを育てるという経験をした人&している人なら
ひどく身につまされる内容かと思います。
実にリアルで生生しかったですね。とくに、彼女達の心理描写の部分で。
逆に、男性陣にとっては、ピン!!とこないところかもしれません。
女性という性がますます、理解しがたくなると感じるだろうし、
こういうめんどくさい関係なら、男性でよかったよ・・・・・・など思ってしまうのでは
ないでしょうか。
それほど、女性のいう私が言うのも変ですが
女性同士の人間関係は難しいのです。



冒頭で、まず、登場人物、5人の人物紹介がされます。
どこに住んでいて、どういう生活をしており、どういう価値観をもって暮らしているか。
また家族構成はどうなのかと、バトンリレーのように、紹介です。

5人もいっぺんに出てき、さらにはその背景までもを一瞬のうちに
整理しなくてはならないので、ちょっと大変な部分はありますが、
ここは主婦の底力の見せ所で(こういう名前覚えは主婦の方が一般的に早い気がして・・・笑)
パパパ~~~と情報整理したいところです。
がね・・・・、日々にぶくなっている自分なので、(自分のクラスのお母さんだって覚えなくては
いけないんだからね・・・・)
結局、読んでは戻り読んでは戻りと・・・やってしまいました・・・・笑

この5人には、やがて家族が増え、(それも似たような年齢の子たちばかりなんですもね)
それも合わせて覚えていくんですよ。

というものの、話にのめりこんでいくと(名前バッチリにもなるので)サクサク読めてきました。


<自分のためにもここでちょっと整理をします。>




繁田繭子・・・・アパート暮らしから、夫側の遺産分配での収入でマンション購入。
         江田かおりと同じ住人になる。
         華やかな生活に憧れる。
         金髪。真っ青のマニュキアと少々、派手。がさつなところあり。
         子守にお金をとるなどちゃっかり派。
         子育てはめんどくさそうだが、自分の子は可愛い様子。
         お菓子をやたら与えたり、ビデオみさせっぱなしとか、
         目先のことしか考えない子育て。部屋は汚く、だらしがない。
         人懐っこさで、最初は他の仲間から受け入れられたが
         やがて、マイナス部分が目に付くようになる。
         子ども→怜奈をモデルにという甘い話にのり
         サラ金から借金もする。

久野容子・・・息子、一俊(おとなしく引込みじあん)
        2人目妊娠するがのちに、流産。
        久野容子は幼稚園に入る前から夫に友人が出来ないとグチグチいっていたこともあり
        友だちを欲するタイプ。初めは千花にいい印象をもっていたが
        やがて本音をいえる瞳に、異常なまでに近づいていくようになる。
        受験に関しての千花の行動に反発を感じ、いろいろ影で噂するようになる。
        2人目流産で自分が皆と違う、おいていかれるような不安も感じる。


高原千花・・・息子雄太(しからない主義の子育てのため、かなり乱暴もの。)
        お友だちをいじめたりしても、息子は悪くないわ~~と
        言い切る母親。
        雑誌に出てくるような優雅な暮らしぶり。
        生活の基盤を、基準のようなものを、子育てや家事で忙しくなっても失いたくない
        そんな家にしたくないと感じている。(本文、100ページより)
        自由奔放な外国暮らしの妹がおり、自分と比較して、うらやましくも
        感じていたりする。
        後に二人目妊娠→桃子
        江田かおりに憧れ。かおりの子供のように受験させようと
        躍起になる。友だちに嘘をついてまでお教室を探したりする。
        

小林瞳・・・小学校受験経験あり。短大までの付属の一貫校に通っていたが、お嬢様学校で
       あるがゆえ、息苦しさも感じはじめ、やがて拒食症に。
       しかし、自分の経験上、私立の環境のよさを知り、受験もありかな・・・と
       思っている様子。
       すべてにおいて、自信をもつことができず、依存症的なところがある。
       拒食症入院していたとき、マザー・アース(慈善事業行うNPO方法人。
       キリスト教を母胎にした団体のようだが、いわゆる宗教系?の団体のよう)
       の活動をし、その後「風船の会」という(地球環境を考える団体。しかし
       母胎は結局、マザー・アース)会に入り活動を行っていた。
       そこで馬場好恵(瞳いわく、臆病で慎重で不器用で敏感な女性)と知り合い
       今も文通の仲。自分に似ている彼女の存在が次第に、疎ましくなる。
       夫はその団体で知り合う。(夫の仕事は宗教系。)
       息子は光太郎。のちに二人目、茜を出産。


江田かおり・・・娘、衿香(他の4人より子の年齢が上)私学に通う、上品で礼儀正しい子。
         しかし、後に登校拒否に。
         昔の職場の上司といまだ不倫をしている→田山大介(妻子持ちで、子どもは
         有名な大学までの一貫校の小学校に通っている)

5人の出会いは・・

① 久野容子と高原千花が幼稚園の書類を取りに来て、出会う。

② 繁田繭子は、引っ越してきたマンションで江田かおりと出会う。
繭子は江田かおりのエレガントな佇まい、ものの言い方からその後「マダム」と呼ぶように
なる。

③ 幼稚園の入園手続きの日、小林瞳は、久野容子に話しかける。
小林瞳は、高原千花とはすでに児童館で、出あっている。
3人とも同じ幼稚園入学とわかり、やがて親しくなる。


④ 小林瞳が二人目妊娠し、産婦人科で、繁田繭子と出会う。お互い連絡先を交換。

⑤ 高原千花も二人目妊娠。小林瞳の子(上も下も)繁田繭子の子と、同じ歳の出産。
   
⑥ 繁田繭子が、同マンションのマダムこと、江田かおりを他の3人に紹介。
  高原千花は、江田かおりの、暮らしぶりに憧れ、自分の求めている姿と思う。
  その影響からか受験を考える。


数年年月もたってのお話なので
なかなかまとめにくかったのですが、概要このよう↑内容です。

この内容を読んで
あ~~似たような人いるかも、私も似ているかも・・・・と思った人もいるかもしれませんね。
よく、教育情報のサイトなどを読んでいると、ご近所関係でのトラブル云々で
こういった人間関係、よくよく観られますもの。
だから、人ごとではないのですよね。


このお話で面白いのはやっぱり、人間ひとくくりで語れないということ。
完璧な人っていないんだな・・・・と思いました。
そして人間はやっぱり恐いです。

仲が良くでも疑心暗鬼になった途端、一変に崩れていく関係。
相手が自分と違うことが、新鮮に感じられたのに
一瞬のうちに嫌悪感として襲ってくる。

人間、もともと、だれがいい人で、誰が悪い人かなんて
判断しきれないと思うんです。
だからこの登場人物で誰が悪いって言うのはないのかも。
あとは自分の価値観と照らし合わせて、合う合わないの世界でしょ?

一般的に、繭子の、行動は、首をかしげるものだと感じるものの
(小林瞳の子の茜ちゃんを預かったとき、腕をひっぱって怪我させちゃうのですよ。
それも悪かったと思わないなんて非常意識!!場所代としてお金を取るのもどうかと)
もしかしたら、その行為を当たり前のように行っている人もいるわけで
そういう人にとっては、なんで~~と思うわけですよね。

価値観は、本当、各々別だということを、つくづく感じます。
その価値観が、家庭の教育観に繋がっていくわけだから、
日々の行動がそれぞれかみ合わなくてもそれはしかたがないのだと思います。
物事の感じ方を同じにしようと思うこと自体
無理なことですよね。

心をわって話したい
自分の気持をしってもらいという思いは
子育て中なら誰だってあるはず。
だけど、そうそう、私も~~と思って共感しあっているうちはいいです。
へ~~、そういう考え方もあるのね・・・と素直に頷いていられるうちなら
いいです。
でも、そのうちそうはいかなくなってくる・・・。

それは子どもの成長とともに、そうもいってられなくなるということ。
受験とか、やっぱり、そういう進路が絡んでくると、
あの頃の素直な反応が、微妙になってくるんですよ。



ここに登場してくる女性はすべて専業主婦ですよね。
これもまた、結構大きな部分でもあるかな。


見えている世界は
子ども・幼稚園・(学校関係)、そのママという実に狭い範囲なわけです。
そういう状況下だと、関心はすべて子どもで、流れ上、教育となるわけですよね。
子どもを否定されるというのは自分を否定されることにも繋がるわけで、
お話にもでてきましたけれど、
憤る親の気持ちも理解できないわけでもない・・・・。
子どもが絡むと親もまた非常にナーバスになるわけで、それは
しょうがないことなのかなと思ってしまいます。


働いていれば見えなかったことも、お家にいることで
見えてしまうこともいっぱいあるんですよね。
そりゃ、悩みなく、自分1人で生きていくとすっぱと思える人にとっては
なんの問題もないのですが、なかなかね・・それも。


じゃあ、価値観が同じだったら、友だちになれるかということ
これもまた難しい。同じなら同じでまた色々とね、問題はでてくるでしょう。


どうしたらこういう深い森に
自分は迷い込まないでいられるのか・・
やっぱり考えてしまいますよね。

きっと
距離感の取り方でしょうね。
ここをどうするか。
他の人は、江田かおりや、千花の生活を憧れていましたけど
距離感をうまくとって、上手に世渡りできるような人こそ
憧れるべき、存在かも・・・・なんて
思ったりします。江田かおりのように不倫相手のことを簡単に人に話すのもどうかと思うし、
さっさと勝手にその不倫相手にアポとって、受験話を聞き出す、千花もどうよ・・・と
思います。
もう、こんな状況↑になると、相手のこと考えずに、自分の気持のまま、突っ走っているって
感じでしょう?

思いやりとか相手のことも考えてと人と接しましょう・・・と
子どものころはよく、学校で言われますよね。
もちろん、それは非常に大事で、大人になっても心がけようと思っていますが、
親になって、子育てをしていく中で、ドロドロした環境に入り込んでいくと
そんな悠長なこと言ってられなくなったりするんですよね。
なぜなら、やっぱり、ずうずうしい人勝ちっていう場面に
いくらでも遭遇するから・・・・笑
いや~~、本当、自己中心的に生きている人って多いですよ・・・笑
もちろん、
ある程度、年齢いってくるとね、女性って、ずうずうしくもなっていき、
自己主張も活発になってくるのは当然かと。
それって、言葉を変えれば、子どもを育てていく、守っていく上での強さとも
言えるからね。

ベースにあるのは、相手に対する思いやり。
そこに、そこそこに、自分の意思の強さものせて、
状況をみて、ここは押すべきで、ここは控えるべきでという
判断をうま~く、やっていきたいものです。

まあ年齢取っていくうちに、
学生のような同じような感覚で、付き合いたい→ママ友に・・・
と思っても、うまくはいかないんじゃあないかと思います。
自分が背負っている物が大きくなっているので(家族等)、
難しいんですよね。



基本的には
まずは、人前で人の悪口&噂話を言わないこと。
自分の家庭の話はほどほどに・・・・。
つかず離れず・・・・ということがいいのではないかな・・・・・・笑

このつかず離れずが案外難しくって。
離れすぎるとこれまた、寂しいし、くっつきすぎると、あわわ~~になってしまう・・・笑
上手な距離感でお付き合いできればいいんじゃないでしょうか。


私などは、プライベートで
この小説のようにまで、深く付き合ったことはさすがにないのですよ。
幼稚園の頃は、お家に集まって、お食事したり(持ち寄りだったけれど、場所代はとらない・・よ)
交換ノ-ト回したり(子育て中の近況報告)と、まあ、人並みにはやりましたけれど、
それでも、ここまでは人には~~~ということはけっして言わなかったです。



また、この話の5人は
幼児教室まで一緒に見学ですよね。
あれもね・・・。
それは、基本的にはお1人がいいでしょうね。
感じ方はひとそれぞれなので、よくないでしょう。
なんでつるむかな・・・・・・それが疑問です。
そんなのささ~~と1人で行けばいいし、
別に隠すことないし、
普通に振舞っていればいいだけじゃないのかな。
学生時代にもよく、おトイレにつるんでいったりとか、ありがちでしたけれど
そもそも、私はそういう密なのは好きじゃあなかったですね。



彼女ら5人のようにあそこまで仲が良くなかったとしても、
相手を
妬んだり、ライバル視したり、比べたり
正直、自分で自分が嫌になるような感情に囚われることって多かれ、少なかれ
女性ってあるのではないかと思うんですよね。(ない人いたら、すみません、)
だから、その感情自体は否定しないですね、私は。
だって、しょうがないもの、感じてしまうのは。

でも、それをあからさまに相手には見せなければいいんじゃあないかな。
ときには、夫にぶちまけたり、1人で叫んだり・・、笑、心にそっと封じ込めたり。

本当は誰でも持っているんじゃない?
こういう感情・・・と
小説が語っているようで、
すごく恐ろしかったです。
見透かされているでね・・・・。


まあ、これを読んで、結婚、子育てに不安をもったら大変ですが、
そんな悪いことばかりではないですよ。家庭生活っと、
声を大にしていいたいです。・・・笑
もちろん、いい関係築ける人も当然いますので安心してください。

今回は、専業主婦&受験ママの、まさに、私かい?というような主人公たちに
複雑な、それでいてよし~~~★気をつけよう★と
自分自身、肝銘じながら、読み通しました。



本文63ページ   容子の心の中

「私ねえ、瞳さん」本当はこわかったの。幼稚園、小学校、中学高校と、いくのはこの子なのに、
私自身がもう一度くり返さなくてはならないような気になって、前よりはずっとうまくできると
思うんだけど、それでもやっぱりこわかったの。気の合わない人やどうしても好きになれない人、
あこがれてしまう人嫉妬してしまう人、そんな大勢のなかに生きているうち、そんなことは
私には関係ないと割り切ることができなくなってしまうことが、こわかった。手に入らない
ものをほしがったり、ほしくないものに焦がれたり、そういうこと、ねえ、瞳さんにも覚えがある?

本文125ページ

「あんまり根ほり葉ほり訊くのはマナー違反って雰囲気あるし。幼稚園のママたちを
見ていると、みんな華やかで裕福で都会的で、しあわせに育ってきた人って感じで、子どものことだっなんでもうまくいく自信を持っているっていうのかな・・・でも私はぜんぜんそういう人間じゃあ
ないってことを話したかったのよ。・・・以下省略」


↑で引用したのは個人的に心に残ったから。
そういう部分も自分にもあるからかな~~~。


ラストの描写が印象的でした。
主語は、彼女はのみ・・・になっていて、それぞれの心の闇を描きだしているのです。
誰が誰だかは読んでいればわかるのですが・・・
重い・・重い・・・感じで、こちらまで息苦しく感じてしまいました。

結局、物語は終っても
彼女達の人生は続く限り
心の闇はいつまた襲ってくるかもしれないってこと。
後味はあまりよくありませんが
読む価値は充分あるかと思いました。
 
morininemusu sakana

八日目の蝉

八日目の蝉  著  角田光代





感想   角田さんの新境地といわれる長編サスペンス。
実は角田さんの長編を読むのは初めてです。
(過去、児童書と短編のみ・・・)
読者ファンも多く、話題作もいくつかあったにも
かかわらず、なかなかきっかけがなく
ここまできてしまいました。
(どちらかとうと男性作家の方が優先なので・・・・)
でも読んでよかったです。
これをきかっけにもっと角田さんの本を読んでみようという
気持ちにもなりました。


面白かったです。
0章尾、1章、2章という構成になっております。
1章では誘拐犯の希和子が主人公で
逃走記録(薫の成長記録でもある・・)のようになっており
2章では、事件のその後、
成長した薫の近況が描かれている・・という
形でした。
やはり、一番、胸に迫ってきたのは
2章の薫に関してでしょうか・・。

サスペンスとありますが、単なるハラハラドキドキ感だけで終るのではなく現代の母親・子の関係&家族関係をも考えてみることが
できるとても深い作品になっていたと思います。
読む人が自分たちに当てはめて
いろいろなことを思い感じることがあるのではないでしょうか。
ただし、女性に関して。
この作品は男性については、どうしようもない
存在としてだけしか描かれていなかったように思います。
口ではうまいこと言っておりますが、結局のところ
ずるいですからね・・・。



与えられた運命をいかに生き抜くか・・・。


第1章での主人公、希和子は、不倫相手の男性の子を堕胎した
という過去をもっております。
希和子は犯罪者でもありますが、
同時に被害者でもあるのです。
男に振り回され、人生の大事な時を、棒に振ってしまったのですから。
同時に、本妻からは嫌がらせを受け、
傷つけられる言葉も沢山浴びせられます・・・。
つらい時期を過ごしていたのです。

でも、だからといって彼女の行為を正当化はできないのが
現実です。親から子どもを盗むことはどんなことがあっても
してはいけないのですよ・・・。
この家庭・・・夫婦に問題があったとしても(ダブル不倫をしていた)
赤ちゃんに何かしていたというわけではなかったですよね。
人並みに子には愛情は持っていたに違いありません。
たとえそれが他人からみたらそうではなくても、
夫婦は夫婦なりに子を愛おしく思っていたに違いないのです。
自分達夫婦の子ですもの・・。
薫が赤ちゃんのうちからひどい仕打ちを受けていた
わけでもないのです。
それを黙って盗んでしまったのですよ・・・。
ある家庭から・・・一番大切なものを。

希和子は本当の親以上に薫に関して愛情をもって育ててきたと
思います。
でも私は愛情の強さ云々より、
人の運命(薫の運命)を変えてしまった責任の方が
問題ではないかなと思えるのです。


2章を読むと
この薫の実母の姿が浮き彫りになってきます。
父親は(希和子の不倫相手ですね・・)
煮え切らない嫌なやつではありましたが、同時に
奥さんも、夫以外にも男を作っていたようでした・
あまり褒められた人物たちではないように感じます。
どっちもどっちの夫婦・・。
誘拐された薫が手元に戻ってからの
夫婦の姿をみていても
とても子に対して愛情を寄せて育て上げるという
能力があるようには感じられません。
終始、自分達の立場を考えようとしてしまう・・


家事も適当、部屋も汚くしてしまう、だらしない母。
でも、
この夫婦のありようは、誘拐という事件によって
そうなってしまった・・というところもあるのではないでしょうか。
彼ら夫婦の運命を変えたのは誘拐だったのです。

そのことがなければ、少なくとも、今よりは
ましな家庭を作れたかもしれません。
いや・・ダブル不倫をするような夫婦だもの、
同じこと・・じゃないか・・・と考える方も
いるかもしれないけれど、私はそうじゃないかもと
思う部分もあるのです。


子を生む前はどうしようもない人でも子を産んで変わることは
あるかもしれませんよね。
子を育てていく過程で親は成長し、学んでいくところが
あるはずだから。その学ぶ過程を、失ってしまった
からこそ、そこからこの夫婦はどんどん思ってもいなかった
方向に向かっていった気がします。


結局、
希和子も本来の母親も
ともに被害者でもあったと言えるかもしれません。
一番いけないのは男・・・・。


でもそんな男に振り回される女も
どこか愚かしい気がします。
愛しているから、振り回されるのかしら・・。
見極める力が欲しい・・・・。
自分を見失ってしまうのは悲しいことだと
思うけれど、そうなってしまうのが異性を愛することかも
しれないですよね。特に女の方がそういう傾向にありがち。


どうして子にこだわるのでしょう・。
それはやっぱり自分の中から生まれた命だからでしょうね・・。
希和子がこだわるのは生まれだすことができなかった命
だからでしょうね・・・。
子は可愛いですもの。
自分が愛情を注げば注ぐほど
返してくれます。



七日目に死を迎えるはずの蝉が八日目も生きていたら・・・・


題名から引き出される意味・・・。
薫の人生の選択に
誰もが心を動かされたと
思います。
希望を感じさせる結末で本当良かったと思います。
希和子との
すれ違いの場面はまるで映画のようでもありました。


とても後味の良い作品でした。

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