ミュンヘン (2005 アメリカ)
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出 エリック・バナ ( アヴナー)
ダニエル・クレイグ (スティーヴ)
キアラン・ハインズ ( カール)
マチュー・カソヴィッツ (ロバート)
ジェフリー・ラッシュ ( エフライム )
ハンス・ジシュラー ( ハンス)
ギラ・アルマゴール イヴァン・アタル
マリ=ジョゼ・クローズ マイケル・ロンズデール
マチュー・アマルリック モーリッツ・ブライブトロイ
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
メーレト・ベッカー
1972年のミュンヘン・オリンピックで実際に起きた事件の真相を、事件に関わった人々のコメントや、史実に基づいて映画化。
1972年、9月5日。
ミュンヘン・オリンピック開催中に、
「ブラック・セプテンバー(黒い九月)」というテロ集団による
イスラエル選手団襲撃事件が起こる。
人質となった選手11名は全員死。
この件でイスラエル機密情報機関“モサド”は、暗殺チームを編成、
首謀者11人を抹殺するよう指示する。
暗殺チームのリーダは、アヴナー。妊婦の妻を抱えている身だ。
そして彼の元に集められた仲間4人。
次々に人を殺し、任務を遂行する彼ら。
しかし、次第に自分たちの行いに疑問を感じ始めていく・・・。
感想 2時間44分。迫力ある映像の数々、漂ってくる緊張感・・・グイグイ見せ付けてくる力強さが作品全体を覆っていて、
上映時間の長さが気にならないほど一気に鑑賞できました。
今年初めての重厚感ある映画でした。
宣伝では感動超大作となっていますが、それとはまた違うと思います。なんでも感動と一言で片付けてしまう傾向がちょっと嫌ですね。
この作品で、涙は流せないでしょう。
というか、涙を流す余裕などもたせてくれないでしょう。
終始語りかけているような映画だったように思います。
何が正しいのか・・正しいことなどあるのか・・・って。
あまりにもむごい現実。そして暴力でしか解決を見出せない
という考えに、非常にむなしさを感じましたし、同時に人間の愚かさを
感じました。報復の繰り返しでは、何も生まれないし
逆に失うものが多いはず。
中東の問題については恥ずかしながら正直わからない部分が
多いです。本当はこの映画を見る前にある程度予習おいたほうが方がよかったかもしれません。
モサド、KGBと聞いても、ピン!!とくる頭の構造ではありませんでした。題材のミュンヘン事件もあまり記憶にありません。
(生まれてはいましたけれど・・小さかった・・・です。)
あの時代にそんなことも起こっていたのね・・その裏にはこんな事実が
隠されていたのね・・とずいぶん勉強させられ、同時に
考えさせられました。
民族の対立、宗教問題・・・など、中東が抱えている問題は
日本ではすんなり理解できるものではないのかもしれません。
個人の恨みからの復讐というには理解できやすいでしょうが、(むかしから日本にはあだ討ちってありますものね・・)
この映画の暗殺グループたちのように、直接的な被害者でないものが、見も知らない人を殺すという図式に、
馴染めないところはありますよね。
国家への忠誠心、愛国心のための任務。
罪のない人が殺されたのだから、それに対して自分達が結果を出しても
だれにも文句いわれない・・・自分達は正しいのだ・・・という
正義のための殺し・・・という感覚。
そこにはどこか英雄的なにおいも感じます。事実、映画の後半・・国に帰ったアヴナーは、皆に英雄扱いされますものね。
でも彼はその扱いに疑問を感じます。その時点でもうアヴナーは任務を引き受けたときの彼ではなくなっていたんですよね。
最終的には、暗殺という仕事に意味を見出せなくなっていたんでしょうね。この、最初と最後・・どんどん変化していくアヴナーの心理描写
および容貌の変化が見ものでした。
(後半のベットを裂いたり、電話機を分解したりする、狂気に満ちた
行動は・・凄まじかったです)
人間って安らぎを忘れてしまったら不幸だな・・って思いました。
人も殺したこともない、家庭的な料理の上手い(素晴らしい包丁さばき!!)平凡な人間のアヴナーだもの。
無意味な憎しみの中に巻き込まれて欲しくはなかったです。
暗殺を離れたときに妻、子にみせる彼の顔は優しげなんだよね~~~
さらにこの子供が可愛らしい!!。
もちろん、アヴナーばかりでなく、
暗殺者各々も・・心理的に追い詰められてきます。
この暗殺者グループ他の4人・・個性的な人ばかり。
しかも、地味目の配役。映画通なら知っていてもそうでなければ
いうメンバーですよね。実力重視の人選という感じで
好感もてました。
国も年代も経歴もそれぞれ違い、皆が人間臭くてとっても良かったです。なかでも、マチュー・カソヴィッツ、爆弾係の人・・・おもちゃ職人だったっけ?のキャラは、一風変わっていて(やや癒し系で)
見ていてホットする部分もありました。
また全員でお食事するシーンも、ホッとできる場面。
豪華な食事を度々するんですよね。女性がいなくても困らない世界!!
一方、情報の売買を行うルイ(犬を連れていた妖しい男)と
彼のボスで、大家族の長’パパ’。かなり謎でした。
どこの政府にもぞくさないっていっていたけれど、正体はいったい。
彼はアヴナーを親しみをこめて自分の住まいに案内します。
自分の利益になるから手を組んでいるけれど真の意味はわからない
ですよね。
そして一緒に料理をする2人。
彼の手を見て・・<料理人の手ではない暗殺者向けだ・・大きすぎる>
そんな言葉をかけられてしまうと余計、
悲しくなりますよね。アヴナーの背負った運命が。
(私も手が大きいので悲しくなったけど・・・・)
映画には8カ国が登場。
イスラエル、ローマ、パリ、アテネ・・・ニューヨーク他他。そんなに多くの国が・・と今さらながら驚き。場所が変わったのはわかっても、移動が激しかったので今どこにいるかわかりにくいところはありました。が、かろうじてストーリーの流れは把握できました。ホッ!
上記のニューヨークは最後の場面です。
ココでの会話も見所。
つめは伸びるから。切っていかなくては・・
そんなセリフが印象的でした。
ジョン・ウィリアムスの音楽を聞きながら
しばし余韻に浸りました。音楽もいいですよ。
私はこの映画をみてメビウスの輪を思い浮かべました。表と思っていても裏にも感じ・・自分はどっちだかそのうちわからなくなる・・
そして途切れることはない・・。ぐるぐる回っている・・
正しい行いなんて誰が判断するのか。
争い、暴力では何も解決にはならないんですよね。
主演のエリック・バナ。手足長かったですね。私は初対面。
以前の映画の印象がないぶん、新鮮な気持ちで観れました。