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ガタカ

ガタカ   (1997  アメリカ)

GATTACA

監督: アンドリュー・ニコル
製作: ダニー・デヴィート
マイケル・シャンバーグ
ステイシー・シェア
脚本: アンドリュー・ニコル
撮影: スワヴォミール・イジャック
プロダクションデ
ザイン: ヤン・ロールフス
音楽: マイケル・ナイマン
出演: イーサン・ホーク
ユマ・サーマン
アラン・アーキン
ジュード・ロウ
ローレン・ディーン
ゴア・ヴィダル
アーネスト・ボーグナイン
ザンダー・バークレイ
イライアス・コティーズ
ウナ・デーモン
エリザベス・デネヒー
マーヤ・ルドルフ
ブレア・アンダーウッド
メイソン・ギャンブル
トニー・シャルーブ
ジェイン・ブルック



近未来。
遺伝子の優劣においてのみ人間の才能を判断している社会。
遺伝子操作されずに、自然に生まれてきた
ヴィンセントは、寿命も短いとされていた。
彼には宇宙飛行士になるという夢があるのだが、その世界にいけるのは
遺伝子的に優秀なもの、のみ。
彼は夢をかなえるため、優秀な遺伝子を持つ人物になりすまそうと考える。


感想    久々にテレビで放映されていたので再見。

兄弟二人の海の泳ぎのシーン&音楽はいつ見てもいいですね。
(もちろん、それ以外にお見所はありますが)


今回、簡単に感想ですが・・・。

このヴィンセントは、遺伝子操作せずに、生まれた子。
両親は、彼に弟を・・・ということで、
作るのですが、弟は、遺伝子操作で生まれるんですね。


より優秀な遺伝子だけをピックアップして、子を誕生させるんです。
病気をする可能性があるか、
目が悪くないか・・・
太らないか・・・とか、
ありとあらゆる、細かな項目をチェックして。
より、素晴らしい子を誕生させようと試みます。

そして生まれた、弟。

ヴィンセントは弟との差を身にしみて感じるのです。
何をやっても自分より上な弟、両親の期待も弟の方にあるように感じる・・・。

ヴィンセントは、夢があるのですが、両親は、彼のもつ、遺伝子の質を考え
無理だと考えます。

でも、ヴィンセントは絶対に諦めたくなく・・・・って。


一方、優秀な遺伝子をもつゆえ、苦悩し、
いまや、自分の血液や尿を他人に売ることで生活を立てている男に
ジュード・ロウ。
ヴィンセントとは正反対の境遇の男で、彼がヴィンセントの夢に手を貸すことになります。





こういうテーマをみて、思うのですが
優秀な遺伝子を持った人が、必ずしも、幸せな生涯を送れるのか・・というと
そうではないですよね。

たしかに、芸術やスポーツの世界でも、かえるの子はかえる・・・で
期待もされたり、能力のよさを話題にされたりするけれど。
だからといって、のほほ~~んとしていただけで、
簡単に上の世界に登りつめることができるわけでもありませんよね。

潜在能力の上に常日頃の努力も加わらないと。

この映画って、少しアメリカン・ドリーム的なものがありますよね。
努力すれば夢は叶えられる・・・・って。

すごくストレートな映画だと思うのです。
兄弟のわだかまりも、理解できるところがありますし。
同性だとお互いにライバル視、してしまうところありますものね。

子どもって、
自分の良いところが似るのではなく、
え~~ココ同じなの~~~っていうようなところが似てしまいませんか。

だからこそ、ソックリ・・といわれると子は嫌がるけれど
親としては、それがどうであれ、ちょっぴりうれしい・・。
たとえ、劣性の部分だとしても親としては可愛いんですよ。
だから、この映画のように
選ぶという行為は、自然に反している行為でもあるんじゃあないかな

科学が進歩していけば、こういう選抜作業ってもしかしたら当たり前に
なってくるかもしれませんよね。
本当は生命の誕生に、余計なことをしない方がいいのだけどね。

あれ=映画の感想とずれてきたけどご勘弁。



SFといっても、余り小難しくなく、
しっとりとしている、良い映画ですね。
サスペンス部分は甘いですけど。

あ~~、何故、お二人は現実世界で、お別れしまったのでしょうね。
結婚した当時は見ていて、とってもお似合いだったと思っていたのに。

残念。

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愛を読むひと

愛を読むひと (2008 アメリカ・ドイツ)

THE READER

監督: スティーヴン・ダルドリー
製作: アンソニー・ミンゲラ
シドニー・ポラック
ドナ・ジグリオッティ
レッドモンド・モリス
製作総指揮: ボブ・ワインスタイン
ハーヴェイ・ワインスタイン
原作: ベルンハルト・シュリンク
『朗読者』(新潮社刊)
脚本: デヴィッド・ヘア
撮影: クリス・メンゲス
ロジャー・ディーキンス
プロダクションデ
ザイン: ブリジット・ブロシュ
衣装デザイン: アン・ロス
編集: クレア・シンプソン
音楽: ニコ・ムーリー
出演: ケイト・ウィンスレット   ( ハンナ・シュミッツ)
レイフ・ファインズ    (マイケル・バーグ )
デヴィッド・クロス    (青年時代のマイケル・バーグ )
レナ・オリン ローズ・メイザー/イラナ・メイザー
アレクサンドラ・マリア・ララ  ( 若き日のイラナ・メイザー)
ブルーノ・ガンツ  ( ロール教授 )


 ドイツ人作家ベルンハルト・シュリンクの
『朗読者』の映画化。

 1958年のドイツ。
15歳のマイケルは学校からの帰り道、具合が悪くなったところを1人の
女性に助けられた。
彼女はハンナ。大人の女性の魅力に心惹かれ、
いつしか2人は関係をもつようになる。
ハンナは、ある日、マイケルに、行為の前に朗読をして・・・と
頼み込む。いつしかそれは二人の日課となっていった。
ところがいつも以上に二人が言い争いをしたあと、
ハンナは突然、マイケルの前から姿を消してしまう。
8年後、法学生となったマイケルは、傍聴した法廷で
被告席に座るハンナを発見する。



感想    今回ストーリー、すごくネタばれです。  未見の方は
ごめんなさい。



原作は未読のまま(今、読書中・・もうすぐ終了)、映画鑑賞しました。
今回、2度鑑賞したのですが、その大きな理由は、レイフ堪能★・・・笑・・・に加えて
やっぱり、背景を知った上で(ハンナの過去の罪と抱えている秘密)
物語の流れを再確認したかったというのがあったからです。


物語は3つのパートから。
①  1958年。ハンナとマイケルの出会い→情事の日々。
②  1966年。法学生のマイケルが、被告人となってしまったハンナと再会。
③  1976年~服役しているハンナにテープを送り続けるマイケル。

冒頭に、1995年の現代のマイケル(娘と久々に再会しようとしているマイケル。妻とは離婚)が
登場し、①~③の時代を回想するという構成になっておりました。
このマイケルと娘の交流という部分は原作には描かれていないようですが
ラストにおいて、余韻が残る素敵な終り方に繋がる伏線になっていました。
(過去を引きずっていたマイケルが一歩前に進んだような、明るさを感じる終り方)


さて、冒頭、知的で物憂げな&几帳面さが漂う(卵をゆでてお皿に置くという単純作業の中にみえる
スマートさ、作ってください・・私にも★)レイフが登場。スーツ姿良いですね。
恋人がいたであろうベット後ををちらみして、やがて窓の外に目をやり、そこに15の自分をみつける。
思いは過去に・・(パート①へ)という流れが好きでした。このときの、横顔が美しいです。


パート①では、ヤング・マイケル君とハンナの出会いと別れ。
正直、ヤング・マイケル君には映画の前まではまったく興味はなかったのですが
(好みではなかった)、年上の女性に魅了され、心も、体も溺れていく様には
目を見張るものありましたね。(ケイト以上に体当たり演技)
彼女を一途に思う気持ちにはウルウルすることもありましたよ。
「君が女は初めてだよ。君なしではどうしていいかわからない。(だっけ?)僕を愛している?」を今にも泣きそうな顔で言われたら、たまりません。純すぎで・・・。
対して、恋愛のリードはするものの、時折感情的になるハンナに、いい感情がもてないところも
ありました。何もそこまで、怒らなくてもと。(これは彼女自身の秘密○○を隠すゆえ、
常に、気を張って生きていたからこそ、性格的にしょうがないのかなと、後から思いますけど)

私は女ですけれど、思春期の男の子にああいう状況設定されたら(バスタオルを渡すシーンに
ビックリ。。なんて大胆なんだ)、理性を保つの不可能だろうな・・って
思います。やりたい盛りだし。何故彼女はあんな若い子、誘ったのかな・・・っていうことも気になっていたんですけれど(多少分別あれば戸惑うかな・・・って)、彼女の過去を考えながら、、彼の若さと情熱と、知識、それら、もろもろを彼女自身も欲していたのかなって考えましたよ。
彼女が唯一、指導権握れるのはセックスなのかもしれなかっただろうし、ああいう秘密と過去ゆえ、同世代の男性とは付き合えなかったんでしょうね。
また、彼女の境遇からいって、一般的な道徳観も、多少、他の人とは違っていたのではないの
かなと想像。

パート②
ヤング・マイケル君は、ハンナとの突然の別れを経て、法学生となっています。
ここで、8年ぶりの再会を果たすのですが
「愛した人が戦争犯罪人」という重い事実にぶち当たるのです。
ナチの行為に加担していたということ。
望むも望まないも、そうするしか生きることができなかった彼女。
○○という秘密を抱えている彼女を考えると、当然、生活は貧しかったに
違いありません。
結局、その○○という秘密を隠すゆえに、他人の罪まで背負い込んで
より重い刑を負ってしまうのです。

ここから、マイケル(もう君は、はずします)の苦悩が始まるんです。
観ていて、つらかったです。
マイケルが心に受けた傷、そして彼しか知らない彼女の
秘密を語るべきかどうかの迷いに、心つぶされてしまいました。
朗読は・・・収容所の看守のときも、行われていたという事実。
彼女は、若い子(女性)を選んで、ベットの傍で語らせていたんです。自分と同じように。
そのとき、マイケルは自分と彼女らを重ねたところもあったかもしれません。
彼女は自分をあの頃(15の時)本当は どう思っていたのだろうか考えたのでは
ないだろうか。
突然、自分の前からいなくなってしまった彼女→それが○○を隠すためだと
理解して(職場にバレそうであった)、どうして自分に正直に言ってくれなかったのだろうかという思いが生じたのではないだろうか。かりに、自分を愛してくれていたとして、それを
捨て去る以上に、彼女にとっては○○という秘密は重かったということなんだと理解したんじゃないだろうか。自分が犯していない行為までも、認めるほどの秘密だもの。

ここでハンナは自分がかかわった行為については、ウソも偽りもなく正直に認めて
しまっていました。事実は事実として潔く認める態度。他の被告は、自分をいかに良くみせるかに
努力を惜しまないのに、彼女は、あまりにも、素のままで。
裁判長に尋ねる
「あなただったらどうしますか」の問いかけは、実に重い、課題を私たちに投げかけている
ようでした。

マイケルは、迷いに迷い、苦渋の選択をします。
映画では、ゼミの指導教授に、相談し(ブルーノ・ガンツ!ですよ)
法の正義にしたがい、彼女に会うべきだと助言をもらいます。

原作では、父親の助言の言葉が印象的でした。
「でもわたしは大人たちに対しても、他人がよいと思うことを自分自身がよいと思うことより
上位に置くべき理由はまったく認めないね」と  (本文、163ページ)

彼女の秘密を守ることは、彼女の尊厳を守ること。彼女の意志を尊重するためにも
マイケルは黙っているしかなかったのかもしれません。
この選択は、観た人にとっても、意見が分かれるところでしょうね。
本当にその行為は、良かったのだろうかと。
その結果、ハンナのその後の人生が決まってしまったのですから。
法廷でのマイケルの涙は、痛かったです。


パート③

ハンナの無期懲役が決まって数年。
同僚だった妻と結婚、離婚も経験したマイケル。
実家に久しぶりに戻ったマイケルは、ふと過去の書物に目を留め、
刑務所にいるハンナに朗読テープを送リはじめることを思いつきます。

どの場面でもそうですが、登場人物たちの行為の理由づけがはっきり説明されているわけでは
ないのです。その場その場の状況とそれに対応する、人物の表情、仕草から
その時々の感情を推し量ることをしなければならない映画です。(本も同じ感じ)
自分なりに勝手に解釈していますが、人によって多少違ってくるのではないのかな・・・と思っても
います。そこが好きでもあるのですが。

マイケルが、朗読をし始めた理由は、自分の中に消えなく残る
彼女への思いでしかなかったのではないのかなと思うのです。
でも、この思いって、少年の頃の一途な思いとは違うもの。

ハンナはいつも、朗読を求めていました。
それに答えてあげるのが、彼女にかかわった
マイケルの責任でもあり、使命でもあり、同時に
自分の息苦しさからの、解放でもあるのだと考えていたのでしょうか。
どこかに贖罪の意味もあったのかも。彼女の人生を決めてしまった自分の
選択に対しての。

どんな女性と付き合っても、ハンナを思い出し、
ハンナを思い出すことで、ハンナの罪も思い出す。
戦犯者を愛していたという事実が、いつでもマイケルにまとわりついていたに違いありません。
彼女は、貧しさゆえの不幸で、こういう結果になってしまったと理解したいと思っていても
やはり犯した罪の存在は消えるわけでないという思いが交差して・・・

過去に負った傷を引きづり、苦悩し続けるというレイフは、まさにはまり役。
見せ所でした。
朗読を始める中、生き生きとしはじめるマイケルの姿と(レイフの声を堪能)
それを受取る、ハンナの驚きと、戸惑いと、喜びの対比が見事でした。
やがて、ハンナは自分から字を学び始めて・・
ここまでの下りは特に感動でした。


でも、マイケルは、釈放までに一度も面会にはいかなかったのです。
文字を覚え、理解し、拙い手紙を書き始めたハンナに対して
一度も返事を書こうとはしなかったのです。
ハンナはマイケルの手紙を期待していたのにもかかわらず、彼は反応しなかったのですよ。
その、そっけなさは何でしょう。
一定の距離感を保ちたかったのは何故?
やはり、怖かったのかしら。リアルに存在するハンナそのものをみるのが・・。

釈放前の面会で、
「大人になったわね、坊や」(このときの、響きがせつなかった・・・。何十年たっていて
すでに年寄りなのに、坊やという、台詞を、はく彼女が、痛々しかったな。)
とつぶやくハンナ。

抱擁するわけでもなく、キスするわけでもなく、ハンナが懐かしそうに差し伸べた手も
自分の手を軽くかさねて、すぐに引き戻してしまうマイケル。

そして、あの「昔のことを思い出すかい?」というマイケルの台詞。
そのときのハンナの反応。意味の取り違い。
「刑務所内で学んだことは?」
「字を覚えたこと」(ニュアンスは違うかも)

この場面、とっても印象的でした。このあと、ハンナは○を決意しますが。
その理由も、ここから繋がるのではないのかな。
ハンナは、過去の罪だけのために○の決意したのではないのでしょう。
マイケルの中に、自分への思いが、違った形で存在していることに
気付いてしまったのではないかな。
そこに、若かり頃の、彼の情熱的な愛はなく・・・
マイケルは彼女の中に当然、老いを感じ取っただろうし
それに伴う、哀れみと、同情を感じたに違いないと思うのです。
そして、最後まで、戦犯という罪を許してはいなかったのではなかったのだろうかって。
ハンナは文字を学んだことを、評価して欲しかったけれど(それって、彼と同等の
世界に入り込んだということだし・・・)、
マイケルが求めたのは過去の罪への答えだったのは
結構心にきたんじゃあないのかな。ハンナは過去の日々を期待していたけど、
それが、過ぎ去った日々だと実感してしまったんじゃあないのかな。


まあ、よくわからないですけど・・・・・笑
本のほうはもうちょっと微妙で、
いろんな解釈ができますね。


輝いていた日々はもう戻らないと、恋愛の残酷さも感じた場面でもあったかな。


戦争が引き起こした悲劇、
無学だったという悲劇、
年齢差のある恋愛劇を絡め、いろんな部分に、思いめぐらすことが
できる、素晴らしい作品でした。


ドイツが舞台で、ドイツ映画ではないということは、気になりませんでした。
レイフ出演の作品ということに集中していたところもありましたから。
また、映画→原作ということで、事前の思い入れがあまりなかったのも
良かったのかもしれません。こうあるべきだという、イメージも
全然ありませんでした。もちろん、映画を見たら、嵌ってしまったくちですけど。
原作は、思ったより薄いんですよね。
それに文体も読みやすいですし。
それを、上手に脚本した手腕を高く評価したいです。

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良かった~~~♪


人間を完全にするもの

 それこそが愛だと
   
           出典 「たくらみと恋」フリードリヒ・シラー

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右上は前売りの特典、文庫型ノート。
後ろの絵も素敵。チェーホフですよね。犬を連れた奥さん。


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・・・・・・・米国では10代の少年と年上の女性という年齢差が物議を醸していますが。

 「少なくとも僕にとってはタブーじゃないよ。14歳の時に年上の女性の手引きで
童貞を失ったからね  (笑)」

     レイフ・ファインズ  インタビュー   パンフからの抜粋。


★↑そうですか・・・・笑。

昨日観てきました。明日、行けたらもう一度行きます。
感想は後ほど・・・

まなざしの長さをはかって   

まなざしの長さをはかって   (2007  イタリア)

La giusta distanza

監督: カルロ・マッツァクラティ
製作: ドメニコ・プロカッチ
脚本: ドリアーナ・レオンデフ
クラウディオ・ピエルサンティ
カルロ・マッツァクラティ
マルコ・パテネッロ
撮影: ルカ・ビガッツィ
プロダクションデ
ザイン: ジャンカルロ・バージリ
編集: パオロ・コッティニョーラ
出演: ジョヴァンニ・カポヴィッラ
ヴァレンティーナ・ロドヴィーニ
アメッド・へフィアン
ジュゼッペ・バッティストン

イタリアの田舎町に
ある女性が代理教員としてやってきた。
やがてある男性と恋に落ちて・・。






感想  この映画は、題名が好み、
パッケージの女優さんが、素敵・・
そして、知り合いのお友だちも結構みている・・・
以上に点からレンタルしてきました。お友だちが見ているといっても
感想は全然読んでいなかったので、内容については予備知識なしでした。


恋愛ドラマだと思ってみておりました。


語り手はジョバンニという、ジャーナリスト志望の
男の子。
彼が住んでいる田舎町に突然、代理教師として
マーラという女性がやってくるのです。
マーラはやがて、自動車工場で働く、ハッサンという男性と知り合い
恋愛関係に進展。

はは~~ん、やっぱり、思ったとおり。
途中までは、自分の予想と当たっている内容展開に
満足しながら、のんびりみておりました。

ジョバンニはこれからどのように二人にかかわっていくのかしらね。
この二人の恋愛の行方は不安定そうだけれど、どうなるのかしらね。
そんな期待をほのかにしながら、のんびりみておりました。

舞台になる田舎の街の風景も癒されるもので、安心して
見ていられる・・・そんな予感を感じていました。


ところが・・・・意外な展開になっていくのですよ、これ。
いや~~~、
まさか、まさか、そんな方向にいくなんて。

いい意味で裏切らた映画です。


単なるラブストーリーではないではないですか。
まったくもって違ったジャンル。
この少年が、自分の進むべき方向性をみつける
物語であったのです。

この急激な方向展開が
とっても面白かったです。

ネタバレしないでいうならば、
人は見かけによらないな・・・・ってことかな。

先入観をもって人は判断してはいけないってこと。

私は、まだまだ未熟者。
ハッサンがそうなの?って思ったときもあったし、
あの、おでぶちゃんだっけ?の人も
妖しいと思っていたり。迷わされました。


「まなざしの長さをはかって」という邦題の意味。

人と人との距離。
この距離感の取り方は難しいですよね。
近くても遠くても。
ハッサンと、マーラ、同じような距離だと感じていても
そうではなかったのかな。ズレあったんだろうね。

ジョバンニと彼らの距離感も興味深かったです。



未公開ですが、広い物でお勧めかも。

マナザシ9


左は、ハッサンでなく、おでぶちゃん・・・。

みきわめ検定   著  椰月 美智子

みきわめ検定     著   椰月 美智子

超短編集を含む短編集


「みきわめ検定」
「死」
「沢渡のお兄さん」
「六番ホーム」
「夏」
「と、言った。」
「川」
「彼女をとりまく風景」
「きのこ」
「クーリーズで」
「西瓜」


感想   作者の椰月さん自身があとがきで
「レイモンド・カーヴァーの短編が好き。
彼のやっちゃまった感が大好き。自分も同じようなものが書きたかった」と。



このレイモンド・カーヴァーの短編っていうものを私は知らなくって。
調べてみると色々な本が出ているんですね。
今度機会があったら是非読んでみて
どのように、この本が影響されているのか確かめてみたいです。

お話は、様々な事柄を題材に書かれていますが、
最初と最後のお話だけは、テーマが同じになっているようです。
女性が男性に見切りをつける瞬間・・・です・・・笑

表題の「みきわめ検定」は女性にしかわからない感覚ではないでしょうか。
理由を説明せよといっても難しですよね。
男性諸君は、きっといつまでも謎が残るコことでしょう。
でも女性としてはわかる、わかるということなんですよね。

私も、ひょんなことで、あ~~~もう私はこの人はダメ・・って
思ったことがあるので、理解できます。
恋の熱って高まるのも早いけど冷めるときは一気で恐いですね。

<みきわめ検定>は
「そろそろ今日あたり、キスのその先をすることに違いないと思う」という
なんとも、ドッキとするような一文から始まる物語。
是非、ご自分の目で確かめて、納得してみてください。

あと好きな短編は
<彼女をとりまく風景>かな。

日常生活で今まで考えもしなかったことをある日
ふっと考えてしまう。
考えてしまうとそれこそ、色々と思い描いてしまう・・・
日常って、角度をかえるといろんな見方ができるんですよね。


肩の凝らないお話ばかりですので、
気軽な感じに読むことが出来ると思います。

今まで児童小説中心でしたけれど、
こちらは大人向け。幅広く書かれているようですね。

ミキワメケンテイ

ターミネーター4

ターミネーター4  (2009  アメリカ)

TERMINATOR SALVATION

監督: マックG
製作: モリッツ・ボーマン
デレク・アンダーソン
ヴィクター・クビチェク
ジェフリー・シルヴァー
製作総指揮: ピーター・D・グレイヴス
ダン・リン
ジーン・オールグッド
ジョエル・B・マイケルズ
マリオ・F・カサール
アンドリュー・G・ヴァイナ
キャラクター創造: ジェームズ・キャメロン
ゲイル・アン・ハード
脚本: ジョン・ブランカトー
マイケル・フェリス
撮影: シェーン・ハールバット
視覚効果スーパー
バイザー: チャールズ・ギブソン
プロダクションデ
ザイン: マーティン・ラング
衣装デザイン: マイケル・ウィルキンソン
編集: コンラッド・バフ
音楽: ダニー・エルフマン
出演: クリスチャン・ベイル  ( ジョン・コナー )
サム・ワーシントン   (マーカス・ライト)
アントン・イェルチン   (カイル・リース)
ムーン・ブラッドグッド   (ブレア・ウィリアムズ)
コモン バーンズ
ブライス・ダラス・ハワード ( ケイト・コナー)
ジェーン・アレクサンダー  ( ヴァージニア)
ジェイダグレイス スター
ヘレナ・ボナム=カーター  ( セレナ・コーガン)
マイケル・アイアンサイド
イヴァン・グヴェラ
クリス・ブラウニング
ドリアン・ヌコノ
ベス・ベイリー
ヴィクター・ホー
バスター・リーヴス
ケヴィン・ウィギンズ
グレッグ・セラーノ
ブルース・マッキントッシュ
トレヴァ・エチエンヌ
ディラン・ケニン
マイケル・パパジョン
クリス・アシュワース
テリー・クルーズ
ローランド・キッキンジャー

 
 2018年。
“審判の日”を生き延びた人間たちは
抵抗軍として闘っていた。
ジョン・コナーもその一員。
ある日、ジョンはマーカス・ライトという謎の人物とあう。
彼の正体を知り驚く、ジョンだったが
彼がカイル・リースの居場所を知っていることから、信じることを決意。
マーカスをスカイネットへ送り込ませる。


感想   当初はパスするつもりだったのですが、先日の「ターミネーター2」のテレビ放映を
みてしまいまして、その勢いを引きづるような形で行ってきました。
まんまと宣伝に乗ったわけです★

1も2も、公開当時みて、確か2は、パンフ購入したのですよ。
今、懐かしいファーロング君を眺めながら、あの時、君は若かった(素敵だった)と
感慨深い気持ちでおります・・・笑
ということで、この4も(しかし、原題は4ではないのですよね・・・)
いろんな箇所に、1、2を観た人には「ほ~~、そう繋がるのかい!!」と思わせる場面が
用意されていて、うれしい気持ち一杯になりました。

(ちなみに、私は3を観ていません。テレビ放映の時も観ていなくて。
理由はご想像にお任せしますが・・・笑、この4では、3に関連するような
内容もあったのでしょうかね。そこだけは疑問です。)


1、2のときは、審判の日を阻止するためのお話で、一体のターミネーターと人間(サラやコナー)
との闘いでした。未来からきたターミネーターに、ドキドキした記憶があります。
本当恐かったのですよね。上半身だけになっても追ってくるようなしぶとさに
ゾゾゾ~~としました。また、タイムトラベル的な要素、未来から過去に
人がやってくる・・・というお話の面白さも、魅力的でしたね。
なんたって、未来から自分を守るために送られてきた
男とラブになちゃうって、当時はちょっぴり、憧れ?も感じたりしていましたから。
そういう、ふわふわしたお話ではないのですけど、女性としてはそこも大事だったり。

今回は舞台は未来、2018年。“審判の日”を生き延びた人間たちが描かれます。
未来ということだけは知っていたので、当然、カイル(ジョンの父親)が
どうやって、過去に送り込まれるのかな・・・というのが焦点なんだろうな・・・と
勝手に思っていましたが、ちょっと違っていましたね。


冒頭から死刑囚が登場し、意外な幕開け。
この死刑囚がのちに物語の重要な鍵を握る、マーカス・ライト。
彼を中心にして、コナーやカイルが絡んでいくという形です。

コナーはなぜか、奥さんもいるんですね・・・。


ジョン・コナーはところどころでアクションをみせてくれて
見せ場はあります。ただ、彼がどうやって指導者としての地位まで上り詰めていったのかは
わからないのです。(すでに中心的な人物になっている・・・・)
観ただけで、カリスマ性を持った指導者です◎・・・というには
う~~ん、微妙というところでしょうか。
指令を出すことの方が圧倒的に多かったですし、
後半のスカイネットへの侵入に関しても結局、カイル救出というかなり個人的な目的も
絡んでの行動なのですよね。
皆の(部下の)羨望を集める行動をした・・・というものが
、ガツンとあればまた別だったんですがね。
あの母親のメッセージを聞いているシーン、
まあ、過去とのつながりという点では、あそこでサラの声が入るのは懐かしいのですが、
よ~~く考えてみると、なんだか・・・、親にばかり頼っている感じにも思えなくもない。
母ちゃんどうしよう・・・みたいに思われて。
母は偉大だったのだからしょうがないけど。


やっぱり、最初から謎めいた過去のありそうな
マーカスの存在の方が気になってしまったし、魅力的に映りました。
ただこちらも、正体は最後にわかるものの、彼の過去の部分については
明確にされていない感じ。
死刑囚というのはわかっていたものの、あの博士との関係は?
キスもしているしさ~~、どのような経緯で犯罪を犯したのよ・・・とか
疑問も沢山あるんですよね。興味があるからこそ、知りたかったわ。
これは、次回までのお楽しみということですか。もう彼は関係なしかな。
でも、
コナーの部下のブレアを捨て身で助けてくれたマーカス。
(最近いい男はいなくなったって、ブレアも言っていましたけれど、
同感。ああいう守ってくれる系男は、魅力よね)
いい仕事、していましたよね。
1にも通じる、強い戦士という雰囲気で、惹かれました。
彼と、カイルとやりとりもなかなか面白かったしね。
カイルがまた、若々しくって、こんなおこちゃまだったのとビックリ。
どうやって、1のような男性に成長していくのでしょうか。

完全にコナーより、マーカスが物語の中心でした。

途中でああいう展開(彼の正体判明)になっても
じゃあ、気持ちを切り替えて・・マーカスは*というわけには
なりませんよね。
ブレアの気持ちもよくわかるわ。助けたくなる気持ちもうんうん・・・そうだよな~~~って。
彼女みかたを欺くために、マーカスを撃ったとき、どんな気持ちだったんだろうね。
そしてマーカスも。おお~~結構いい話。

それゆえ、最後の最後の
あのマーカスの決断には、すんなり納得いきませよね。何もマーカスが・・・って。
コナーのためにいい仕事したじゃない?
人間以上に人間らしいのにね~~。
ブレアももっと、ダメダメ、って主張すれば良かったのに。
な~~んて思ってしまいました。

驚きの展開でした。

さすがに未来の世界ということで、機械たちの、能力も数段UPしていましたし、
強大なロボットや、水中を動くロボット、バイクのロボット?など
様々なバージョンもありましたけれど、
ただ凄いね・・の一言になってしまったのは
すでに色々なものを見すぎてしまっているからなのかな。

個人的にはそんなに凄い機械たちや、大掛かりな対戦部分は
なくとも、物語の方に深みをつけてもらいたいと
思ってしまうところもありました。
でも未来だからあまり、しょぼくなってしまったらそれはそれでダメか。
比率としては難しいところですよね。

初めてターミネータを観たときのような
新鮮な驚き
それを今さら求めるのは無理かもしれないかな。
1と2を観たあの頃が、一番よかったのよねという
思いがど~~しても残ってしまうんですよね。
観た時の年齢というのもありますけどね。

お~~と、あと一つ、
ヘレナ・ボナム=カーター  。出番少なかったけれど、印象的でした。
最初も最後も恐い顔だったよ。

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ブラックサイト

ブラックサイト (2008  アメリカ)


UNTRACEABLE

監督: グレゴリー・ホブリット
製作: アンディ・コーエン
ホーク・コッチ
ゲイリー・ルチェッシ
スティーヴン・パール
トム・ローゼンバーグ
製作総指揮: ジェームズ・マクウェイド
エリック・リード
リチャード・ライト
ハーリー・タンネボーム
原案: ロバート・フィヴォレント
マーク・R・ブリンカー
脚本: ロバート・フィヴォレント
マーク・R・ブリンカー
アリソン・バーネット
撮影: アナスタス・ミコス
プロダクションデ
ザイン: ポール・イーズ
衣装デザイン: エリザベッタ・ベラルド
編集: デヴィッド・ローゼンブルーム
音楽: クリストファー・ヤング
出演: ダイアン・レイン   ( ジェニファー・マーシュ)
ビリー・バーク (エリック・ボックス )
コリン・ハンクス( グリフィン・ダウド)
ジョセフ・クロス  (オーウェン・ライリー)
メアリー・ベス・ハート  (ステラ・マーシュ)
ピーター・ルイス   (リチャード・ブルックス)
タイロン・ジョルダーノ   (ティム・ウィルクス)
パーラ・ヘイニー=ジャーディン (アニー・ヘイスキンス)
ティム・デザーン   (ハーバート・ミラー)
クリス・カズンズ (デヴィッド・ウィリアムズ)


警官だった夫を亡くしたあと
母親と娘と暮らしながら、FBI特別捜査官として働くジェニファー。
サイバー犯罪が専門な彼女はある殺人サイトに
遭遇する。
それは、公開殺人サイト。
そのサイトを見る人の数が増えることで
囚われている人の死が早まっていくという残忍なものだった。
一人目が犠牲になり、そのうち二人目が・・・。
捜査は行き詰まり、やがて犯人は彼女の身辺にも及んできた・・・。



感想   サスペンスとはわかっていたけれど、まさかこれほど、残酷だとはね・・・。
ちょっと驚きでした。
結局、事件は無事解決にはなるのだけれど、すっきり感があまりなかったのよね。
まさか彼も?という人が犠牲になってしまっていたので、
それがそれがショックで。
最後まで引きずってしまっていて、どよよ~~ん感がいつまでも
残ってしまっていたからかもしれないわ。
それと、今回の犯罪がネットを使ったものということで、
今後、どんどん増え続けていきそうな気がする・・・・という
不安感が胸いっぱいに広がってしまっていたから。

あ~~~後味は良くなかったです。

主演のダイアン・レインはFBI特別捜査官。
このところ、恋する主婦・・のイメージが多かったので
捜査官というイメージが逆に新鮮。ちょっとふけた感じ?
サイバー犯罪が専門ということで、頭脳で勝負の女性でした。
といっても銃は撃てそうだったし、後半では体も張っていたけど。

インターネットを使った犯罪の阻止というのを彼女たちは
色々試みていたけれど、ネットに詳しくない私は、
へ~~そうなの、そんなことできるのと、いう程度で
鑑賞。悪巧みを考える人がいれば
それを阻止する人もちゃんといるわけですよね。

彼女らはやがて
とある公開殺人サイトに到達。

これがまたすごい・・・。

最初はこの仕組みがわからず、ぼ~~~と見ていたけれど、
説明されるにつれてその全貌がわかり、背筋が凍ったわ。
つまり、アクセスが増えるにつれ
その画面に映る人の死が早まるってこと。


目の前で苦しみながら死に至るであろう人を、
平気でネットを通してみるということですよ。
自分が手を下しているという実感がないから
気軽な感じでみてしまう。
中にはこういった残酷なシーンを好んでみる人もいるわけ。
需要と供給がつりあってしまう・・・

また、そんな趣味はなくとも、
見ちゃダメというものに、好奇心がくすぐられて
結局、覘いてしまう人もいるのよね。


現代人の、いやらしさ、集団心理をたくみに利用とした
実に、不快な犯罪ですよね。


犯人は早い段階で登場してくるので、
誰が犯人かという推理楽しみはないけれど、
動機付けが、きちんとしているので、その意味をしっかり考えてみたいと
思わせる何かはあるかな。
これがただ、愉快犯だとしたら、ガッカリだったけれど、
納得できる理由があるから、
作品、作った価値もあろうかと思うのよね。
ただ、だからといって、犯罪の正当性には繋がらないけれどね。

映画全体
雨のシーンや地下室の場面が多く、うす暗い感じです。
男優さんには顔なじみはいなかったけれど、
観終わったあとチュックしたら、グリフィン(ダイアン・レインの同僚)は
コリン・ハンクスだったのですね。

パパが泣くよ・・・。


硫酸で溶ける皮膚とか、
頭が吹っ飛んだりとか衝撃映像の連続にはゲンナリ。

お口直しが必要だと、せつに思いました。


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きのうの神さま   著   西川美和

きのうの神さま   著   西川美和


5つの作品からなる
短編集。

「1938年のほたる」
「ありの行列」
「ノミの愛情」
「ディア・ドクター」
「満月の代弁者」





感想     もうすぐ、ディア・ドクターが公開の西川さん。
前回の「ゆれる」は映画はもちろん、小説も大変良かったので、
2作目となる新作小説も、早々と読んでみました。

あとがきによると・・・。
僻地の医療を題材とした映画を作りたいということで、取材を
始めたということ。
すると編集者の方に、取材の支援をするので同じような題材で小説を
書いてみませんか・・・という誘いがあったそうです。
それで今回の小説に至ったとか。
取材は映画の脚本の素材にもなったけれど、
映画の時間軸で語りきれなかった数々のエピソードや人々の生き方を
この本で甦らせたということでした。



小説は、5つの短編から構成されています。
関連性はあまりないのですが、どのお話も丁寧な心理描写と
舞台になる町の情景が美しいです。
前回の映像でも感じられたのですが、文章でも
随所に人物描写の鋭さがみられる作品でした。

人間、負の感情も色々と持ち合わせているわけですよね。
どの章の主人公も、出来事に直面するたびに
色々なことを考え、思ったりしているわけです。
それが実に人間くさく、面白かったです。

また、表紙の写真も素敵です。
これは逆向きなのかしら。
表紙をめくると、同じような写真が白黒であります。
これは表紙とは逆の写真。
なんとも不思議な構成です。


「1983年のほたる」
主人公は小学生の私。
田舎の村に住んでいる。
自分は人とは違うと思っているがよくわからない。
最近、受験のために遠くの塾にバスで行きだした。
村の中では一番だと思っていても外に出れば私なんてそんなに特別でもない。
友だちも村のことも、色々考える。
そんな私が帰るのは最終便のバス。
あるとき、そのバスの運転席、一之瀬時男という人に名前で声かけられる。
私は彼が苦手だった。


「ありの行列」
主人公は若い医師の男。
とある離島にある診療所の代診となった彼。
そこにいる老医師の診察に付き合い
小さな島の医療の現状を知る。


「ノミの愛情」
主人公は私。
もと看護師。
夫は市民病院に勤める小児心臓外科医。
非の打ちどころのない医師だが、
私にはいろいろと不満がある。


「ディア・ドクター」
父が倒れた。
父は大学病院の外科医だった。
入院した病院にあの人=兄は来るのだろか。
兄のことを思い出す私。



「満月の代弁者」

男は今日での僻地の医療現場を離れる。
彼の変わりに年配の新任医師はすでにやってきている。
引継ぎをするために一緒に、患者のもとを訪ねる男。
男は色々なことを新任医師に語る。



「ディア・ドクター」での兄弟と父親の関係。
「ノミの愛情」での妻と夫の関係が
面白かったです。

以下・・「ノミの愛情」の本文から

私の未知数はあの夫に全てやってしまった。
あの虚勢と誇りとを混同し続ける夫の、高潔な生業と、品行方正な人間性とを、
守るため、それが世界のため。
けれど未知数を放棄した代わりに、そんな完全無欠の男が家族に見せるだけのほころびを、
かつて私は確かに、舌の先でなめて喜んでいたではないか。
小さな秘密の急所に歯をあてて、大きな大きな象の背中に乗っているノミのような
気分だったではないか。

(本文、111より)

これは、家庭に入った主婦の立場からみれば
わかると言う思いと同時に、女性の恐さも感じるお話。
らせん階段をどんな思いで、磨くのか想像すると恐いです。
冒頭で、お隣でかっているレトリバーの犬、トーマス君が登場し、
彼(犬)の人生と自分を重ね合わせているところも、面白いです。


映画はどんな感じでしょうか。


キノウノカミサマ

ルート225  

ルート225  (2005  日本)


監督: 中村義洋
製作: 佐々木史朗
石川富康
川島晴男
プロデューサー: 佐藤美由紀
協力プロデューサ
ー: 荒井真理子
原作: 藤野千夜
『ルート225』(理論社/新潮文庫刊)
脚本: 林民夫
撮影: 小松高志
美術: 林千奈
衣裳: 宮本茉莉
編集: 森下博昭
音楽: 江藤直子
照明: 松岡泰彦
録音: 西岡正己
助監督: 平林克理
出演: 多部未華子 田中エリ子
岩田力 田中ダイゴ
崔洋一 富山のオジサン
梅沢昌代 富山のオバサン
田中要次 エビヅカの父
石田えり エリ子の母
嶋田久作 エリ子の父
石原裕太 マッチョ
小南千明 大久保ちゃん
枚田菜々子 シマちゃん
市川春樹 クマノイさん
小笠原翼 エビヅカ



弟ダイゴを迎えに行った14歳のエリコ。
帰り道に、突然、不思議な世界に迷いこんでしまった二人。
微妙に違うこの世界。
いつもと同じ風景なのに両親はいない・・死んだ友だちはいる・・
親友との関係もなんだか変だ・・
元の世界へ戻ろう!!
その方法を悪戦苦闘しながら考えるのだが・・・


感想   芥川賞作家・藤野千夜の同名小説を映画化。
お友だちのサイトで、良かったよ~~という声を聞き
早速レンタル。主演の多部未華子ちゃんは、ちらちらTVで見たことありますが
きちんと演技している姿を見たのはこれが初めて。
2005年の作品なので彼女も今よりず~~と、幼い感じですが
個性的な顔立ちは変わらず。ちょっときつめの印象ですが
声は意外と可愛いのよね。



で・・・・まず、映画の前に
原作を読みました。

↓理論社で2002年に出たもの、を読みました。
ルート理論者

新潮文庫でも出ていますがそちらは表紙が漫画チック。





作者は芥川賞作家、藤野千夜さん。以前、TEEN AGEで
読んだことありますけれど、ほとんど記憶になく結局、初読みという感じです。この方
トランスジェンダーだということです。ちょっと意外でした。


結論から言って、映画のほうが良かったです。
原作を忠実に映画化しているのですが、
細かく観てみると、ところどころうまくアレンジしているですよね。
観た人が、より感情移入できるように・・・。


原作では物足りなく感じる部分を、より膨らませて、物語として
仕上げているという印象です。


正直、原作は、読みながら、どこか、乗り切れない自分を感じていました。
素直に楽しんでいない、自分を感じていたんですね。
それは内容がつまらないというのとは全然違うのです。
むしろ、とっても興味深い話。
それなのに、なぜか乗れない・・・
エリコの友達大久保ちゃんとか、男友達マッチョの存在とか
死んだはずのクマノイさんとか、魅力的な人物たちが絡み合うお話は
けっしてつまらなくはないのに・・・

原作の文体があまり好みじゃあなかったのかもしれません。
主人公エリコが、自分自身の体験を語るという構成。

中2の彼女が見聞きしたこと、感じたことを
そのまま、彼女の言葉で、綴っているのです。
だから、言葉遣いもどっちかというと
悪いのよね・・・
エリコは「ていうか・・・」というのが口ぐせでしたし、
たまに、ちぇって舌打ちをする・・・
ヤバイ、ヤバイも連発。
今時の(といってもこの小説が書かれた時代というわけだけど)
中学生ってこういう会話をするのね・・・と、そう思えばそれはそれで面白いのでしょうが
逆に私ぐらいの年代からみると、う~~ん、気になるよ、その物言い・・という気持ちの方が
先にたってしまうんですよね。

またカッコ使って、補足したり、→使用したり、さまざまな表現方法使用です。

まるで自分のブログの文章のようなので、あまりいろいろ言いたくないけれど。

さらに、これは主人公の性格的なものなんだろうけれど、
覇気がないよね、彼女。まあ、いいか・・、しょうがないし、
別にいいけど・・みたいな、投げやりな感じ。

これは映画でもそんな感じではあるんだけれど、映画だと次第に
彼女の本来の気持ちというものが次第に出てくるんですよ。
(その点もあり映画のほうが自分の評価が上。)

たとえば、
映画でも、言葉で言えば、「ていうか・・・・」って言い方、エリコ使っているのです。
おじさんにも注意されていましたよね。
でも、それは、頻繁ではなかったので、それほど、気にならないの。
弟に暴言はいていても、こんなもんでしょ、中学生て、素直に思えたりするのです。
これは、多部さん演じていたからというのもあったのではないかな。

映画では、ダイオキシン8倍といたずらがきされたダイゴと一緒に
いじめっこのところに乗り込んでいくエリコの姿とか、
なかなか帰ってこないダイゴに不安になったエリコの姿とか
果ては、夢の中で、第3の別世界に入り込んで誰にも存在を認められない辛い状況に
陥るエリコの姿とか・・・さまざまなエリコの姿を見ることができるんです。
(これらは原作にないオリジナルの場面)

そういう場面をみると、たとえ、エリコが言葉が悪く、弟に冷たい人に見えても
それは本心でない自然とわかるわけです。
思春期特有の強がリと、家族に対する気恥ずかしさからくる反発心
そういった複雑な心境が入り乱れて
ちっぴり素直でないエリコというキャラが出来上がっていたんですよね。

そんなの原作でもわかるでしょ・・・といえば、そうなのですが
私は気づくことができなくて。そこまでの表現方法が文章中にはないので
(わりと淡々とした感じ)原作における、エリコっていう人物の本質がわからなかったですね。


あと付け加えれば、
最後。もとに戻るために、彼らはいろいろ考えだし、
迷い込んだ状況と同じ状況を作り出します。
今度こそ帰れる…そう思って
玄関のドアをあけたら…・出迎えたのは・・おばさん。
彼らは笑うしかない・・・・ここの展開、すごくいいです。
笑わなくてはならないという状況が、逆にリアルに感じてしまって。
(人間てあまりにも、しょうもない状況に陥ると泣くより
笑ってしまうのですよね)
これも原作にない、オリジナル。
原作はもっとシンプルです。
何度やってもダメだって・・・と簡単に表現しているだけ。

こうやって比べてみて
映画がいいわ・・・といったところで
やっぱり原作があってこその映画です。
原作の評価をなかなかできなかった私はまだまだ
深読みできていないのね・・・と痛感しました。


異次元に迷い込んだ2人の物語として
見るだけでなく、成長物語としてみることもできるこのお話。
題名のルート225の意味を考えると、色々考えることもできますよね。

どんな状況下でも
前向きに明るく生きようとするエリコ姉弟に
切なさ以上に勇気をもらったような気がしました。

ルート225エイガ

愛の勝利  

愛の勝利  <未>(2001  イギリス・イタリア)


THE TRIUMPH OF LOVE
IL TRIONFO DELL'AMORE[伊]

監督: クレア・ペプロー
製作: ベルナルド・ベルトルッチ
製作総指揮: マッシモ・コルテジ
ラインハルト・クルース
ジェレミー・トーマス
トーマス・シューリー
原作: ピエール・ド・マリヴォー
脚本: クレア・ペプロー
マリリン・ゴールディン
ベルナルド・ベルトルッチ
撮影: ファビオ・チャンチェッティ
音楽: ジェイソン・オズボーン
出演: ミラ・ソルヴィノ
ベン・キングズレー
フィオナ・ショウ
ジェイ・ロダン
イグナチオ・オリヴァ
レイチェル・スターリング

18世紀のヨーロッパ。
王女は、王位を父親から継承し、国を治めることになっているのだが
実は本来の王位継承者の青年が別にいると聞きつけ、様子をみにいく。
彼、アジスは、国を追放され隠遁生活を送っていた。
王女の父親は先代の王、アジスの父親から無理に王位を奪ったという経緯がある。
王女は本来の王位を王子に返そうと試みる。
しかし、ひとめアジスをみた、王女は彼に恋をしてしまい、
どうやって自分の恋心を伝えるか悩む。
一方、アジスは、王女を憎むように教え込まれて、恋なんてもってのほか
ついに彼女は、お供の女性と供に、男性に変装してアジスのもとへ近づいていくのだが…。




感想   舞台劇を映画化ということで、台詞回しや、お話の流れは
舞台の雰囲気そのままでした。全体的に軽めのキャラたち・・・・。
しかし、出演者の好演と、小粋な感じのする話に、面白さを感じ
終始楽しみながら鑑賞することができました。

普通だったら、こんなはずわないわ!!という展開なのですが
これは、舞台劇ということでしょうがないと納得。

皆がみな、一瞬のうちに恋愛体質に陥るところがなんとも楽しいです。
今は、恋に落ちる前に色々考えてしまう世の中だから
こういうテンポの良い恋愛って、ちょっと経験してみたいとさせ、思います。
でもかえって恋が冷めるのも早かったりして。


男装して忍び込む王女。彼女大変なんです。
アジス王子に近づくために
周囲の皆を騙し始めるのですが。
あちらでは、男性役で、こちらでは、女性役でと、相手によって、それぞれ別の異性の
魅力を振りまくのです。
この両方OKの使い分けが見どころ。
見ている私たちは、どちらも同じ女性にしか見えないよ、ただ言葉遣いが
違うだけだよ・・としか思えないのですが
そこはご愛嬌。

王子の教育指導者に携わっている哲学者の先生に、ベン・キングズレー が扮しているのですが
彼の豹変振りも見所なんですよね。
理性的な人物なので、恋になんて溺れない・・・と頑なに誓っていた彼が
王女の情熱的な行動についつい、信念がフラついていくさまが
笑いをもたらします。彼は男装していた王女をすぐさま、見破ってしまうのですよね。
「君は女性だろ。なんの企みがあってここへ侵入してきたのだ・・・・」と。

でもさすが王女。アジス目的とは口が裂けてもいえないものですから
「実はあなた様=ベン・キングズレーのこと、に一目惚れです。
女性だとわかると会ってくれないと男装して近づきました。でも、変装を見破るなんて
やっぱり、あなたは、見識があるかただわ・・・」と
彼を誘惑にはいるのですよね。
そんな言葉に、堅物キングスレーも、結局、おちていくのです。




一方の彼の妹。妹も兄と同じく、結婚もせず恋もせず、ひたすら王子に尽くしてきた人なので
よそ者の侵入者、王女に(男装をしているので男だと認識)、惑わされてしまいます。
妹も男装した王女にメロメロ状態。



なんだか誰が誰を追いかけているのか、複雑になってきてしまっていますが、
結局は、
納まるところに納まり、めでたしめでたしになるのです。



アジス王子は最初は、王女を男と思っているので
わりと気安く、体に障ったりしてきます。
そういうところ・・・ちょっとドキドキでした。弓矢の指導シーン。

アジス王子は冒頭ではターザンみたいに裸体をさらけ出して魅力をアピール。
ああいうのを、目にしてしまうとやっぱり、一目惚れもしてしまうのかな・・・・。



ラストは、演技者の歌あり、挨拶もあり。
舞台色は最後まで健在でした。

アイノショウリ


頭のうちどころが悪かった熊の話

頭のうちどころが悪かった熊の話     著  安東みきえ  絵 下和田サチヨ


動物を主人公にした7つの短編集。

「頭のうちどころが悪かった熊の話」
「いただきます」
「へびの恩返し」
「ないものねだりのカラス」
「池の中の王様」
「りっぱな牡鹿」
「お客さまはお月様」


感想  順番が逆になってしまいましたが、先日読んだアルマジロが面白かったので
第一弾のこれを読みました。

同じく、人生について考えてしまいたくなる事柄が
散りばめられております。
動物を主人公にすると、小難しくなりがちなテーマも
柔らかくなりますよね。皮肉めいた、終り方もあって、
なかなかどうして、充分大人の読者に対応できそうな内容です。

現代のイソップ童話・・とありましたけれど、
まさにそうです。
「いただきます」は、「小さな童話大賞」(毎日新聞社主催)受賞作でもあるそうです。

個人的に好きだったのは
「りっぱな牡鹿」

真剣に悩む牡鹿がおかしくもあるんだけれど、読み終わると
う~~ん、そうか・・・としみじみ考えてしまう内容です。

関連性のある物語もあるのでそこも楽しんでみるといいと思います。

「意味なんてもの、もともとないんだ。生きていくのに、意味なんていらないんだ。
ただ生きているだけでじゅうぶんなんだ」

  (115ページ、 「りっぱな牡鹿」より)

クマノハナシ

記憶のはばたき

記憶のはばたき  (2001  オーストラリア・アメリカ)

TILL HUMAN VOICES WAKE US


監督: マイケル・ペトローニ
製作: トーマス・アウグスバーガー
マシアス・エムケ
ディーン・マーフィ
ナイジェル・オデル
デヴィッド・レッドマン
製作総指揮: アンドリュー・ディーン
ボー・フリン
ヨーラン・ペルマン
ステファン・シムコウィッツ
ギャレス・ワイリー
脚本: マイケル・ペトローニ
撮影: ロジャー・ランサー
編集: ビル・マーフィ
出演: ガイ・ピアース サム
ヘレナ・ボナム=カーター ルビー
ブルック・ハーマン シルヴィ
リンドレイ・ジョイナー サム(少年時代)

精神分析医のサム・フランクスは
父親の死をきかっけに故郷の町、ジェノアに戻ってきた。
しかし、そこには、封じ込めた辛い過去が残っていた。
その過去ゆえ、サムはいまだに自分の感情を押さえ込んでいるのであった。
20年前。
彼が15歳の夏。寄宿舎学校から久々に町に戻った彼を幼なじみの
シルヴィは優しく出迎えてくれた。二人で交わした言葉遊び、ダンスパーティーでの夜。
お互いがお互いを意識し始めた矢先、ある事件が起こる・・・。



感想  とっても素敵な作品でした。幻想的で物悲しくって・・・・・・。
作品中でモチーフになるのが
シルヴィが好んで口ずさんでいた
T・Sエリオットの詩集。
その詩の世界を、そのまま映像にしたような、美しい風景の数々。
夜の湖、昆虫、月、星の輝き、そして水面に漂う二人。

音楽も耳に優しく、映像とマッチして
心地よかったです。


物語は前半と後半に分かれます。
ビデオパッケージにガイ様とヘレナが、登場していたので
てっきり、最初から彼らかしら~~と思っていたら、
まったく予期しない少年少女の登場。
でも、この若い二人がとっても良かったのです★
恋に気付くまでの二人の姿に、キュンとする思いを何度も感じました。
ああやって、みな、歩み寄っていったんだよね。
自分の気持にある日、突然気付く瞬間。

しかし、これから二人の未来が始まろうとしていたとき。
悲劇的な出来事が二人を襲うのです。

残酷でした。

前半はこの15歳のサムと幼なじみシルヴィの物語。


後半は、精神科医となったサムが父親の死をきかっけに故郷の町に数十年ぶりに
再び戻ってきて、不思議な女性ルビー と出会うという物語です。


サムにとって、事件が起こり
故郷を離れていた期間は、長く、苦しい日々だったに違いありません。
自分を責め続けていたのかもしれません。
心が晴れるなんてことは、なかったのかも。

そんな彼が出会ったルビーという女性。
彼女は何者でなぜ、この場所にいるのか・・・
話はミステリアスになっていきます。


ミステリアスといっても、そのミステリアスな部分を解明することが
この物語の本質ではないのでしょう。
ルビーというのはね、実はこうでああで・・・・というような
そういったことを、語り合うような話でもないのでしょう。



魂の解放っていうコピーもありましたけれど、
癒しの物語です。

主人公サムが、
再び訪れた地で、昔の自分を取り戻す、お話です。

一歩も前にも進めず、一歩も過去へも進めず、
どうしたらいいか、迷っていたサムのもとに
やっと心の安らぎが、訪れたのです。
彼がラストでツツツ~~と涙を流すシーンを観ながら
思わず私もツツツ~~となりました。
これは彼が観た、心象風景ともいえますが
もしかしたら
自分の身にもそういった瞬間、不思議な瞬間が訪れるのかもしれないな・・・・と
そんなことを考えました。大好きな人との別れは
耐え難い喪失感を伴いますもの。誰でも皆同じ心境かも。




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みみこ

  • Author:みみこ
  • レイフ・ファインズ好き
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