かあちゃん 著 重松 清
第一章 アゲイン
第二章 リセット
第三章 リピート
第四章 ジャンプ
第五章 トライ
第六章 ドロップ
第七章 リメンバー
第八章 アゲイン、アゲイン
母から子へ、子から母への思いが溢れた長編感動物語。
感想 ここのところ、年の初めは、重松作品というのが続いています。
題名どおり、母親に焦点を当てたお話ですが
そのお話はどれもバラエティーに飛んでおり、読み応えのある一冊でした。
お話は第一章から第八章まであり、
それぞれに関連性があります。
最初のお話は、交通事故で父親を亡くしてしまった息子ヒロシが主人公。
事故は二十六年前のことです。ヒロシも今は結婚し、東京で暮らしています。
しかし母親はその事故以来、笑うことを忘れ、苦労しながら
一人で主人公を育てる生活をしてきました。実はその事故で、一緒に同乗していた方もなくなってしまっていたのです。父親も被害者である・・・そう周りはいうのですが
ヒロシの母親は責任はすべて自分にあるといって、自分に厳しい生活を
強いてきました。
そんなある日、同乗してなくなった人の墓の前で、母親が倒れたという知らせが届き・・・
ヒロシの母親は立派です。その立派さがなぜにそこまで。。と思わなくもありません。
親戚がいうように、死んだ夫だけの責任ではないとも思われるからです。対向車がいけないようだ・・・。
でも、クルマに乗っていて、事故にあわせてしまったというのは事実ですもの。
やはり、誰かがその思いを、痛みを背負わなくてはいけないのかもしれません。
子ども、ヒロシにその苦しみを負わさないためにも
自分がすべてを引き受けようとしたのでしょう・・・
その生真面目さが、痛々しかったです。
どちらの家族にとっても不幸な出来事だったな・・・と思わずにはいられません。
この物語は第八章に続いていきます。
そちらの方がもっとグッと胸に迫ってくる展開になっています。
それ以降のお話は(第二章から・・)
舞台が中学校のいじめにうつります。
この第一章がどのように第二章からの物語にかかわってくるのかというのは
本を読んで是非、確かめてみてください。
うまく繋がっていきます。
いじめられて自殺を図った子、
その子と友だちだったのに、裏切って、いじめに加担してしまった子。
直接いじめはしていなかったけれど見て見ぬふりをしていた子。
いじめの張本人。
いじめっ子の幼なじみ。
担任の先生。
その担任と同僚の先生。
いじめを発端にしてかかわりのある、学校内の人々が
それぞれの物語の中心人物になって物語を進めていきます。
それぞれに言い分がある・・・。
いじめを仕向けたものにも、人には言えない事情、悩みがあったのです。
もちろん、だからいじめがいいということにはなりません。
誰しもが
加害者にも被害者にもなりゆる・・そういうった危なさをもちあわせているということです。
また、誰しもが
善悪はどういうことかと・・・わかっているのですが
一度流れに乗ってしまうと
引き返せないそんな恐ろしさがあるみたいですね。
どんどん、自分が意図しない方向に進んでいくようです。
心と体が一緒に行動しないような、それが中学生なんだな・・・と感じました。
また担任の先生が
生徒たちに、「心の対話」ノートを書かせるという内容があります。
子どもの本心を知るための試みだそうですが・・・
それがどういう意味を持っているか・・・。
結局、そんなもので生徒の本心は
計り知れないということも、わかりすぎるほどわかり・・・
読んでいて、こちら側も非常に勉強になりました。
鋭い小説だな・・・と。
そうだよな・・・・実際、生徒にしてみれば
そんな簡単に担任に心を開こうとはしないだろうし・・
ましてや、この担任はどれだけうそ臭いか・・(熱血ぶっているが教師としてはまだまだ器が小さい)
生徒たちは見抜いているのです。なかなか簡単に心の中には入っていけないでしょう。
でも、彼らも次第に大人になっていきます。
迷い、悩みながら成長していくのです。
でも、唯一忘れてはいけないのが
自分達が侵した過ちのことです。
いじめは・・・忘れてはならない、出来事なのです。
ここらへんは、「青い鳥」でも読んだような内容です。
小説の中にこんな箇所があります。
僕たちもみんな、潮だまりの中にいるのかもしれない。
ちっちゃくて、狭くて、窮屈で、外の世界の厳しさに比べればましかもしれないけれど、
やっぱり潮だまりの小さな海にだって、いろいろ弱肉強食の厳しいことはたくさんあって・・・やがて
僕たちも、そこを出て、広い海に旅立つのだろう。 (356ページ)
印象的でした。子どもたちは子どもたちで
狭い中で一生懸命、考え、努力していこうと常々思っているのですよね。
母親の存在・・・
全ての物語で登場してきます。
どんな人間にも母親がいます。
いじめらっれ子にもいじめっ子にも。
そのすべての母親が、自分の子を愛しているのです。
結構、泣けました・・・。
とんび、希望ヶ丘~と
父親と子のお話でしたが
これは母親と子のお話。
生命を誕生させる性ですもの
その存在は大きいです。
泣くものかと思っても泣かされるのは
なぜでしょうね・・・。中学生にも是非読ませたいですね。