ぼくのエリ 200歳の少女 (2008 スウェーデン)
LAT DEN RATTE KOMMA IN
LET THE RIGHT ONE IN
監督: トーマス・アルフレッドソン
原作: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
『モールス』(ハヤカワ文庫刊)
脚本: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
撮影: ホイテ・ヴァン・ホイテマ
美術: エヴァ・ノーレン
編集: トーマス・アルフレッドソン
ディノ・ヨンサーテル
音楽: ヨハン・セーデルクヴィスト
出演: カーレ・ヘーデブラント オスカー
リーナ・レアンデション エリ
ペール・ラグナー
舞台は ストックホルム郊外の小さな町。
母親と2人暮しの12歳のオスカー。学校ではいじめられ、悩みを打ち明けられる友達もいず、
孤独な身。そんなオスカーの家の隣に一人の少女が越してきた。
名前はエリ。だいたい12歳というこの女の子は、夜にならないと現れない。
しだいに、エリに惹かれるオスカー。
その頃、町では、血が抜きとられて殺害されるという恐ろしい事件が起こっていた。
感想
世界各国で数々の賞をとっている今作。やっと日本公開です。
東京では銀座のみということで、久々に遠征してきました・・・根性・・・笑
それだけの価値のある作品でしたよ。
良いですね・・・北欧ならではの、静謐な雰囲気が好きな人にはたまらないでしょう。私も好き★
ストックホルムの雪深い景色ばかりが映し出されますので、
この時期の鑑賞、暑い夏に観る、ミスマッチさも
印象的です。涼しげ・・・いや、この寒々しさが体にいい感じ~~笑
ホラーというジャンルですが(ある程度のグロイ描写もあり)
恋愛要素の方が大きいので、ホラーファン以外の方にも是非是非見てほしい作品です。
12歳の初恋・・・
大人への階段・・・
甘酸っぱいような息苦しい思い・・・
わりと淡々と描かれ、交わす言葉もあまり多くないのですが、
醸し出す雰囲気で、十分察することができます・・。
原作はヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト の「モールス」。
邦題とはまったく違うのですが、この、モールスは、オスカーとエリの
コミュニケーション手段の一つとして使われるモールス信号のことかな・・・と思います。
じゃあ、映画の原題は?というと
こちらは、LET THE RIGHT ONE IN。
正しいもの→THE RIGHT ONE を招きなさい・・・という感じなのかな。
そもそも、ヴァンパイアは相手の家に入るとき、「入れてくれ」と頼むようです。それで
相手が「いいよ・・・入っていいよ」と言わないと入れないとか・・・。
そんな言い伝えからこの題名が付いたようです。
映画でも、父親と思しき、男が入院する病院にエリが現れ
「入っていい?」と頼んでいますし、
少年オスカーの家に入る時も「いい?」と言っていますからね。
ここらへんの、ヴァンパイア独自のならわし?は知っていた方がより楽しめるのかなと思います。
また、オスカーが家に招き入れるということは・・・エリを受け入れるという意味にも
なりますので(吸血鬼だしね)そういうところの意味合いも原題にはあるのかな。
原作者はこの映画の脚本も担当していますので、原作の雰囲気を損なうことなく、良い意味で
映画の独自性を際立てさせ、いい出来になっているのかと思いますね。
エリとオスカー中心の物語にしている・・・
原作は未読ですが、原作との違いは(端折った部分)
いろいろあるようです。
今回、パンフ購入し、その端折った部分についても、きちんと理解しましたので、
自分としてはなるほど・・・・と大いに納得しております。
(ここでは書かないよ・・・・)
きっと、原作を読んでいる人といない人では、みかたが変わってくるような作品だと思います。
ということで、映画のみの感想・・(やっとかい・・・笑)
映画は、はっきり描かれない部分が多くあります。
それゆえ、想像力が働きますね。
意味ありげなシーンもあるのですが、一切親切な説明なし。
たとえば・・エリと父親とおぼしき男との関係(原作ではかなり不適切な関係のよう・・)
男はどうもヴァンパイアではない様子。人間だね。
人を殺し、その血を採集しようと試みるがことごとく失敗する・・。
エリに人を襲うようなことをしてほしくないんでしょうね。じゃあ、自分がと思うのだが
なんだか不器用で、情けない感じ。最初の殺人で、失敗したときにエリにどやされていた感じ
(声のみ聞こえる・・・)だから、見た目は大人・子供だけれど、完全にエリに支配されている(リードされている・・)関係のように感じました。まあ、エリは長く生きているから当然、だけどね・・笑
オスカーの家庭は
親が離婚しているのかな・・
でも父親とはたまに会うことができる関係のよう。
母親は身近にいるけれど、オスカーの気持ちはわからないみたい。
いじめられて帰ってきても、全然気づかないしね(親なら気付かないとね)
父親は、イケメンさんでした・・・笑
はっきりしなかったけれど、意味ありげな男友達がお家に来ると、オスカーをないがしろにしている感じ
だったので、どうやら、男の恋人がいるんじゃないかと推測(観た人、そう感じなかった?)
想像に頼る部分も多くそれもまた楽しいです。
孤独な少年だからこそ、エリは自分を理解してくれると感じたのだと思うし
(ヴァンパイアならではの孤独感に通じることと同じ思いか)
少年はエリによって励まされ、初めて自分の殻を破ることができたのだと思います。
人も殺す・・そんな非情な場面をみても、彼女を突き放すことができなかったのは
もはや、オスカーにとって、世界はエリのみでしか、なかったからなのかな。
「相手を殺してでも生き残りたいという思い・・・」エリはその強い思いがあったからこそ
200年もの間、生き続けてきたんでしょうね。
オスカーは彼女のそのパワーも、魅力の一つになっていたのだと思うわ。
自分にはないような強さが・・。彼がこれから先も生きるのに、必要だったのは
強さだったのだから。
ただ、2人の間には、変えられないものがあるの。
それは時間。永遠を与えられているのはエリだけだから。
オスカーはかつてエリと行動を共にしていた男と同様、やがて年をとってしまうのだから・・
それともオスカーはヴァンパイアの道をたどるのかしら。
どちらにしろ、
いずれ彼らは選択を迫られるかもしれないよね。
そんな未来を予想しながらのあのラストは、
幸せなのか、もの悲しいのか、わからない、複雑な心境に、観る者を
陥らせるの。
なんだか、言葉に表せないようなせつなさを感じるわ。
子役の2人。
オスカー少年は、金髪で、真っ白で透き通るような肌の持ち主。お肌もつるつる~~(当たり前)
少年なんだけれど、弱弱しくって、女性的な雰囲気の子供で
お人形さんのようで素敵でした。
対する、エリ。黒髪で、お目目が大きく、エキゾチックな大人びた顔立ちなのよね。
ただし、邦題ですでにわかるように、このエリはヴァンパイアだから、血がなくなったときは顔色も非常に悪く、
やつれ顔になるの。急に怖い感じの顔立ちにもなるわけ。元気な時は(血で満たされる)可愛くも感じるけどね。
その使い分けがなかなか良かったわ。血の涙も迫力あったし。
最後に二つ言わせてね。
一つは
グロイと思われる部分(ラスト一か所かな)。
考えてみれば、かなりハードなシーンですけれど、
同時に感動も覚えるシーンにもなっています。
演出的に本当綺麗に処理されていますので、←綺麗っていう表現では変かもしれないが
生々しさがあまり感じられません。苦手な人(←私でも、全然平気)でも
落ち着いて受け止めることができます。
もう一つは例のぼかし部分(鑑賞時に念押しされます。)
あれは、深い意味があるそうです。原作には記載されている模様。
いわゆるよくあるぼかしとは意味合いが違うのよね。
こういうところを曖昧にすると
鑑賞時の面白さも半減すると思うのですが・・・・。
彼女が女の子じゃなくでも、好き?と聞く場面も違って感じられますからね。
リメイクもすでに予告が出回っていますよね。
出演者が気になりますが
オリジナルと同じ雰囲気は出せないでしょうね~~。
比べる意味で鑑賞するかどうかは微妙です。