冷たい熱帯魚 (2010 日本)
COLDFISH
監督: 園子温
製作: 杉原晃史
プロデューサー: 千葉善紀
木村俊樹
ラインプロデュー
サー: 姫田伸也
脚本: 園子温
高橋ヨシキ
撮影: 木村信也
特殊造型: 西村喜廣
美術: 松塚隆史
衣裳: 荒木里江
編集: 伊藤潤一
音楽: 原田智英
VFX: 鹿角剛司
アクションデザイ
ン: 坂口拓
照明: 尾下栄治
録音: 小宮元
助監督: 吉田聡
出演: 吹越満 社本信行
でんでん 村田幸雄
黒沢あすか 村田愛子
神楽坂恵 社本妙子
梶原ひかり 社本美津子
渡辺哲 筒井高康
諏訪太朗 吉田
実際にあった“埼玉愛犬家殺人事件”をベースにした作品。
2009年1月。
小さな熱帯魚を営む社本夫妻には一人娘がいた。
その娘、美津子がある日、万引きで捕まる。
その場をうまくとりまとめてくれたのが、店長の知り合いという大きな熱帯魚オーナーの村田。
社本と同業者ということでその日のうちに店まで招待し、親睦を深める。
美津子ちゃんをうちの店で働かせないか・・・という誘いに始まり、
だんだんと村田のペースにのってしまう社本。しかし村田には
裏の顔があった・
感想
基本的にエログロはあまり好きじゃあないですし、
映画の感想ではいくつも、こんなに気持ち悪いのは・・・ダメです、と弱音はいているのですが
今回、この映画いってしまいました。
制作時から気になっていたし、どんな映画でもまず自分で観て
判断してみたいっていうのがあったから。
準備もなく突然のエログロはきついのですが、ここまでおおっぴらに言われている作品ですと
観る方も覚悟を決めることができるのですよね。
園子温監督作は、前作の「愛のむきだし」は未見。(長くてねなかなかお家で観れないの・・泣)
でも、「紀子の食卓」は観ているので、作風はなんとなくね・・・・わかっていたけれど、
凄かったです。
146分の長い映画。
しかし、長さは感じさせなく、一気に見ることができます。
まず冒頭からして勢いがあります。
冷凍食品を次々にかごに放り込み
素早い仕草で電子レンジにかける・・社本の後妻、妙子。
最終的に形になっているから凄いよね。うちなんぞは許されませ~~ん・・笑
その食卓風景からしてすでに、ただならぬ家族関係だと推測できる・・・。
この家族がどんな状況に巻き込まれるっていうの?
どうなるの?
湧きあがる好奇心。
そして登場のでんでん。
お~~~と、題名は物語が進んだ頃にバシンと出てくるの。インパクトありです。
で・・・・でんでん。
これがまた
人のよいおじさんに見える・・・。調子がよく面倒見がよく、そして明るく楽しい。
身近なところに一人はいますよね、きっと。
対する吹越さん演じる社本もこれまた身近に一人はいそうな、暗めの、意志の弱そうな、でもきっと優しいんだろうなと推測できるおじさん。
で・・・この2人の人間関係がこれから奇妙な形になってくる・・・。
実際に起こった猟奇殺人事件をベースにした本作。実際は犬ですが映画では熱帯魚に変更。
実際の事件をもとにした映画というのは今までもいくつかありましたよね。
でもそのどれとも違う切り口。
事件によってあらわになってくる
人間の欲とそれに伴う残忍性。ただただそれだけが、
これでもか、これでもかと描かれていきます。
そして、それに伴い、巻き込まれる形となる、小さな熱帯魚の店主、社本の家族の崩壊劇。
こちらも容赦なく、次々と悲惨なことに。
ここから先はもっとネタバレで。
具体的な描写もしますので知りたくない人はスルーしてください。
実際の事件をもとと言いながら、どこかこの映画の内容は
現実ばなれしているように感じます。
リアルな描写ではありますが、どこか面白おかしく感じてしまうの。
面白いっていうのも変だけれど、誇張しすぎているっていうのかな。
グロもエロも突き抜けてしまっているからかえって、違和感感じるのか。
ただ、普通こんな設定ないでしょ、というシーンもいくつかあるのは確か。
ここまで見せるんだぞ・・どうだ・・・ということをかなり、意識しているんだな・・っていうのが
ビシバシ伝わってきますね。
まずエロ部分。
私は実はこの映画、グロい部分よりエロイ部分の方が気持ち悪かったんですけどね。
たとえば、熱帯魚の奥様達(社本&村田の妻)は、巨乳でミニスカート。
普段着にしてもあまりにも挑発的なお姿・・・・笑。
これはもう・・最初から脱ぐんだろうな★・・と推測できる・・・。
期待感高まる人もいるのでしょうが、女性としては別に、なんの感情もわかず。
逆に女性側から見ると、<この映画の女性の存在意義は脱ぐためだけしかないのかい・・・とさえも
思ってしまってちょっと悲しかったり>という感覚。
村田一人の部屋に巨乳の奥さん一人。
急に豹変する村田。命令口調で暴力をふるいだす村田。
ここが初めて観る村田の裏の顔で、この変わりようはやっぱり、恐ろしい。
ああ~~人間、表面ではわからないことばかりだ、とくに調子のよい奴には気を付けろよ
という教訓にさえ思えます。それにしても奥さん無防備すぎ。
社本の奥さん、胸揉まれて(とにかくすごい胸)、嫌がるのでもなく、反対に、ノリノリになって
ぶって~~までいうのは、別路線の映画ですか?と勘ぐってしまいそうになる有様。
普通の感覚だと嫌がるのを無理やり・・になるのに、埋もれていた彼女の性癖が開花したみたいな
描かれ方はもはや変態路線では。
さらに、中盤。人殺しのお手伝いをしてしまった社本が、アリバイ工作のためにしこたま酒を飲んで
帰宅。そこで帰ってきた社本を待ち受けていたのは、なぜかシャワーを浴びている奥さん。
なにもシャワー浴びている設定にしなくても・・・笑。ここでもその巨乳は健在。
じゃあ、村田の奥さんは?というとこれまた相当に淫乱。
誰でもやってしまう感じ。レズでもあったな・・。
普段は村田同様、優しい語り口だから、その豹変ぶりには観ているこちらも驚く始末。
死体処理の手際もものすごく良い。おどおどしている社本にカツをいれるところなんて、凄味が
あってビビるよ。
絡みの方も濃厚で、ストリップっぽいこともやっていたかな。
顧問弁護士筒井とやるときも、運転手にもそのお楽しみのシーンをみせつけるなんて、こちらもかなりの、曲者。
(しかし筒井役の渡辺さん、悪役顔がめいいっぱい、いかされていますね)
黒沢さんは、「六月の蛇」以来だけれど、
実生活は素敵な奥様じゃあないですか。可愛いおこちゃまもいらして。(ブログ拝見)
そんな素の姿の方が何倍も驚きかもしれません。女優魂見事。
まあ・・そうやって、エロは続き・・あとは確認を。
次にグロ。
これは死体解体に他ならないが、全部で三回。
同じパターンの連続というのは、ややしつこい感じ。
殺してきって、殺してきって・・・はわかったから、もういいって!!という感じでした。
見せることはちゃんと見せている(切っている。。破片もあり・・)んだけれど、なにせ、軽い調子でこの村田と奥さんが作業するからね。
事の重大さを忘れてしまうところがありますよ。
ここが、現実離れしていると感じる大きな理由でもあるのよね。
ちょっくら、出掛けてくるよ?という事と同じノリで死体解体しちゃうんですよ。
最初は吉田さん。
お別れ時に、「元気でね・・・また会おうね~~」とあっけらかんに叫ぶ村田に唖然。
そしてその声が頭にこびりつきますね。
ドラム缶に火を入れて骨処理もするのですが、
なぜか醤油をかけるのかの不思議さ。燃えてしまうのになぜでしょうね。
真剣に考えるとおぞましさこの上もないのですが
観ている最中は、そこまでのことを考える余裕はなし。
ただただ、村田のテンポにひきづられて、何も考えずにみてしまうのです。
しかし今思えば、風呂場のシーンは毎回、画面全体血の海だし、やっぱり、多くの人は気分が悪くなるに違いない・・・・だろうと思います。
とくに、最後の風呂場では、処理途中風景の上半身まで写りこんでいて、わ~~~って感じになります。
見た私がいうのもなんだけれど、このシーンを、どういう気持ちでみんな見ているのって
そのことが心配になったりしました。
自分はあくまでも、映画好きで、何でも見ようという姿勢があるので
その流れに身をまかせて行動するわけで。こういう映画を観ても、自分をしっかりもっていられるっていう
自信はあるから観るわけ。でも、人によっていろいろでしょ?
いろんなこと考えちゃう人もいるでしょ?そう考えると、作品としての存在ってどうなの?って
思うところはあるかな。
そうそう。。。話は変わるけれど、これ、平日の昼間、シネコンで一人での鑑賞。
まわりは男性一人も多くて、ちょっと嫌な雰囲気だったな。意識しすぎ?でも実際
怖いよ・・・その場にいると・・・皆、笑いもなく、真剣にみて、出ていくわけだからね。
何より
最後まで見てもこの映画、こんなことしちゃあいけませんよ・・的な教訓なんてものはないわけよ。
むしろ、逆だからね~~。
で・・・戻って。
社本は村田に巻き込まれて犯罪に加担するの。それは、愛する妻、娘のため。
娘は前の奥さんの子供で、今の奥さん(若い)とは馴染まず、家庭的にギクシャクしているのよね。
そこに村田は漬け込んだ。
映画を見てみると、村田も以前は社本のいうように、おどおどしていたようじゃない?
どうやら、自分の父親は暴力振るっていたみたいで、よくあの、解体場所となったマリア&キリストの
山小屋に閉じ込められていたって言っていたっけ?
何があったの昔?やっぱり家庭環境悪によって、人格って形成されるの?
悪の伝授?
人間はもともと、欲望と悪の塊・・そういうものが潜在的に眠っているって言うことなのかな。
でもそれを押さえることができるから人間ていうことだよね。
一線を超えたらってどうなのか・・・といってもそんな状況普通はそうそうないし
考えるのもやっぱり嫌だし、
嘘でもいいから美しいものを見続けたいというのは普通人の多くが考えることだと思うけどね。
印象に残る
マーラーの曲。
印象に残った「ボディが透明になっちゃう」という言葉。
こういう映画が
高い評価をもって受け入れられるのはどうしてなのかな…と思います。
見たからわかるけれど、
だからなんなんだろう・・・と思うのよ。
ここまで描いて、それを受け取った方としては
何を得るんだろう。冷静に分析する人なんてそうそういないと思うし
振り返ってみたところで、その描写の凄さを語り合うだけになってしまいがちだと
思うんですよね。
教訓のある映画が好きだとは言わないけれど、
これを
映画という、娯楽として楽しむとはいうのは、やっぱりどうかと思うな・・・
確かに
いっきに見て
こうやって感想書いたんだから、楽しんだんだろうといえばそうなのかと自問自答してみるけれど
。いやいや・・楽しくないよ。
悲しいよ。
「人生って痛いんだよ・・」
なんてセリフをきいてしまって御覧。
実際そうだと感じている分
より、悲しくなるから。
ラストのバタバタした終わり方はイマイチ。
不自然さも残るしね。
それにあの娘のセリフ・・・・ききたくなかったよ。
希望がなくてもいいけど
ああいうセリフは気に入らないわよ。
いらいらしますね。
プラネタリウムにロマンス感じていた社本さんの姿が
一瞬ラストで頭をよぎったからかな・・・。
どちらかを選べと言ったら「紀子の食卓」の方が
テーマ的に面白かったです。