わたしを離さないで (2010 イギリス・アメリカ)
NEVER LET ME GO
監督: マーク・ロマネク
製作: アンドリュー・マクドナルド
アロン・ライヒ
製作総指揮: アレックス・ガーランド
カズオ・イシグロ
テッサ・ロス
原作: カズオ・イシグロ
『わたしを離さないで』(早川書房刊)
脚本: アレックス・ガーランド
撮影: アダム・キンメル
プロダクションデ
ザイン: マーク・ディグビー
衣装デザイン: レイチェル・フレミング
スティーヴン・ノーブル
編集: バーニー・ピリング
音楽: レイチェル・ポートマン
音楽監修: ランドール・ポスター
ジョージ・ドレイコリアス
出演: キャリー・マリガン キャシー
アンドリュー・ガーフィールド トミー
キーラ・ナイトレイ ルース
シャーロット・ランプリング エミリ先生
イゾベル・ミークル=スモール キャシー(子供時代)
チャーリー・ロウ トミー(子供時代)
エラ・パーネル ルース(子供時代)
サリー・ホーキンス ルーシー先生
デヴィッド・スターン
ナタリー・リシャール
アンドレア・ライズブロー
ドーナル・グリーソン
カズオ・イシグロの同名小説の映画化。
イギリスの田園地帯にある寄宿学校“ヘールシャム”。
徹底した管理が行われている謎めいた施設の中で
幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミー。
彼らは過酷な運命を背負っているのだが、静かにそれを受け入れていた。
18歳になったとき、彼らは、ヘールシャムを卒業し、
農場のコテージで共同生活を送ることになるのだが・・・・。
感想
DVD鑑賞になるだろうと諦めていたのですが、
なんとかギリギリで鑑賞。間に合って良かったです☆・・・。
原作は前に読んだことがあるので、ストーリーの大筋(真相を含む)はを知っていました。
だから最初から、彼らはそういう運命なんだよ・・という
思いが頭に中をちらちらかすめていて、一つ一つの言動すべてが、ひどくもの悲しいものにみえて
しかたがなかったです。
原作のときは、彼らの三角関係についてよりも、その運命的なものに
興味を惹かれてしまった印象があるのですが
映画の方は真相を知っている分、恋愛部分においてのせつなさを注目して観ることが
できた気がして、それは良かったのかな・・・と思います。
子供時代の
キャシーのトミーへの思い。
ルースのトミーへの思い。
子役の雰囲気がとても良くって、揺れる思いが素直に伝わってき、
また自分の青春時代の淡い思いもクロスして、とても良かったです。
やっぱり映像で観ると、ストレートに心にバシバシ響いてくるという感じがしますね。
原作読んだとき、
一番に思ったことは、選べる未来があることは幸せなことなんだな・・・・・・・でした。
今回、それを含め
またまた、いろいろ考え巡らしてしまったかな・・・という感じです。
映画の後半で
臓器提供の猶予をえるために
マダムのところに行く、キャシー
とトミーがいますよね。
愛し合っているという証拠をみせるため、芸術作品を持って行く彼ら。
でもそれは、噂でしかないこと。
彼らの運命は変えられない・・・。
そもそも、作品を集めていたのは、彼らに魂があるのかどうかということを知るためであるということ。
そのときマダムは
彼らに
「かわいそうに・・・助けてあげられなくてごめんね・・・」みたいなニュアンスで
同情の視線を送るのですよね。
は~~複雑な心境でしたね、そのシーン・
そのあと、トミーの慟哭シーンですからね。
観ているこちらも
どうしていいか・・・わからなくなってしまって、ただただ同じように叫びたい心境でした。
彼らの心情を理解してくれた人がいたとしても
彼らを救う事はできない・・・
また彼ら、クローン自身も
その運命から逃げ出すこともせず
結局受け入れてしまうしかない・・・
そうやって皆が
すでに構成されているシステムの中、
流されるまま・・・過ごしていく・・・
やるせない・・・
やるせない・・・・
終始、そういうムードが漂う映画なんですよね。
これはもう、かなしくてしょうがないとしか言えないですよね。
ただ、
それだけで
思いを完結してはいけないのかもしれないなとも・・・と思います。
トミー、 キャシー・・ともに
猶予を得たいと申し出たのは
心が通じ合う=愛する人に
巡り合えたから。
生を感じもっとさらに感じたいと願ったから。
猶予を申し出た・・・(本当だったらもっと、わがままいって、オリジナル同様、最後の命が燃え尽きるまで
生きたいという考えに及んでもいいのではと思うのだけれど、そこまでの発想には発展していかなかったですね)
たとえ、数年の命でものばしてもらいたいと思ったんでしょうね。
やっぱり、生きたいと思うその原動力になるのは
夢や希望なんでしょう。
トミーやキャシーも夢や希望をお互いの愛情を育む中で
当然持ち得ていたのだろうし。
だからこそ、今、ここにいる
私たちは、それが十分できる環境を幸せだと思い
まずは、生きなくてはいけないと思うな~~~
どんなことがあっても
自ら生に終了をうつことなく、与えられているであろうそれぞれの生の期間を
精一杯生きなくてはいけないと思うのです。
もうひとつやっぱり考えなくてはならないのが、
オリジナルのために犠牲になるクローンの存在。
ここの部分を考えると難しいよね。
多くの映画で扱われている問題で、観るたびに
嫌な気分になるよね。
最近では
「月に********」の主人公、サムさん。
あのときも感じたけれど
科学が進歩していく中できっと人間は
失っていくのものも増えていくのかもしれないよね。
自分の利益を求め過ぎて
犠牲になるものの大きさに気付きもしない・・・
幼少、ヘールシャム時代に
突然、先生からら運命を聞かされてしまいますよね。
それも淡々と聞き入れる・・・彼ら。
彼らにとって、生きるということはどういうことだったんだろうね。
生まれた時からきっと同じような仲間がいて
そこには親や兄弟はいず、もちろん家族という共同体は発生していないわけ。
そんな中でどのような価値観が備わってきたんだろう。
それでも、異性に対してのほのかな感情は湧きあがってくる・・
やっぱり、人格をもった一人の人間として、存在しているんだよね。
中でもキャシーは
介護人という仕事を選ぶ・・
それはクローンたちの
臓器提供の場に立ち会い
精神的な支えになること。
いうなれば、生死をもみ届けるわけです。
やがて、自分も同じ立場になるというのに・・・。
それを引き受ける心境ってどういうものなんだろうね。
私なら
たぶん、そういう仕事は選べないと思う、きっと。
その強さが
彼女の魅力でもあるんだろうね。
表題の
わたしを離さないで・・は
トミーからもらった、1本のカセットテープの歌。
「わたしを離さないで・・・」のメロディーが
2回ほど流れるけれど、
音で聞くのはやはりいい・・。
衝撃的な内容だけれど、
終始淡々として描かれます。
感情も皆抑え気味だしね。
こちらも静かに受け入れ考えてみたくなる物語。
牧歌的な風景が
かえってもの悲しい・・・
主演の3人がそれぞれに持ち味をいかして素晴らしい・・
キーラ・ナイトレイは病んだ時の顔が怖いくらい・・・。
アンドリュー・ガーフィールドは前回観たソーシャルとイメージが違うのでビックリ。
キャリー・マリガンは幼い顔なのに芯が強い女性役で見ごたえあり。
また本も読み返してみたいわ(忘れている部分も多いから)