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閉鎖病棟   著  箒木蓬生

閉鎖病棟   著  箒木蓬生


舞台はある精神科病棟。
そこには様々な重い過去を背負った人々が入院していた。
そんな彼らは彼らたちの世界で、明るく前向きに生きていた。
そんなある日、殺人事件が起きる・・



感想   お勧めされて読みました。
まず、まったく、予備知識なしでの読書でしたので純粋にどういう風に物語が進んでいくのだろう・・・という興味がありました。
後半にメインとなる人は絞られるものの、
全体を通してみると、群像劇になっているストーリーです。
誰かを引き立てるような人物の描き方はしておらず
どの方も、丁寧にその人柄が理解できるように描かれておりました。

誰さん、誰さんと、それぞれ、本名ではなく呼び名がついているのですが
それがまた、結構な人数なんですよ。
当然、その方々、それぞれには入院に至るまでの過去があります。

まず、冒頭で何人かの過去を紹介し、
物語の流れの中で、行きつ戻りつで再度、過去が紹介されます。
正直、整理していくのは大変でした。
読みながら、え~~この人は、前に紹介されていたよね?
どういう人だっけ・・・と、振り返りながら読んでおりました。(単に理解が足りないだけかも)


患者さんは、皆、今日や昨日入院という人ではないのですよ。
三十数年、入院したままの患者さんだって当然いるのです。
だから当然、過去を振り返るというと戦争中の話まで戻ったりします。
時代を感じさせるんですよね。

中盤までは、精神病棟に入院している人たちの日常が淡々と描かれます。
最後までこのまま病棟における人間間模様だけが描かれるのかな・・・と
思っていたら、衝撃的な事件が起こるのです。


ただ、それも、これ見逃しにクローズアップしたような描き方ではなかったかな。
事件が起こり、その成り行きも、静かに静かに描かれておりました。
それゆえ、しみじみとした思いを感じてしまったかな・・・


事件は抜きにしても、作者がお医者様ということで
病院生活自体はとってもリアルに描かれていたのではないかと思います。
患者さんたちの世界は、私たちの社会と同じような、喜怒哀楽があり、
生活風景も変わらなかったりするのね・・・と感じました。
もちろん、一般の人とは違う行動を起こしたりする人々も
何人かいるので、ある程度の制約もあったりするけれど、
懸命に生きているという様子は伺えました。
患者であるまえに、人間であることを認めて欲しい・・
充分な判断力を持っている人も当然要るのに
まだまだ家族であっても、その理解を得るのは難しい・・・のだなと感じました。
チュウさんはその典型的な状態で
家族は冷たかったですね。そんな中、敬吾さんと昭八さんの2人は家族の理解が得られて
本当に良かったと思います。




映画で「カッコ-の巣の上で」というのがありますがちょっとそれを連想して
しまうような内容です。


後半に起きる事件について・・
加害者は車椅子イスの年寄りの秀丸さん。
被害者は札付きの悪、重宗。

秀丸さんにはチュウさんという味方がいました。
ラストの秀丸さんとチュウさんの手紙のやりとりはジ~~ンときてしまいます。
患者さんという目線よりも
1人の人間と人間が心を交わしている、まさにその状態だった
からです。


秀丸さんは物事を冷静に判断していたように思います。
一時の感情の爆発で起こした行為ではなかったはず。
島崎さんは冒頭でも出てくる少女でしたが
まさか、こんな事件に巻き込まれるとは想像もしておりませんでした。
さらに、彼女の妊娠の相手を知ったときは、最低!!・・・と思いました。
そういう事情を知っていたからこそ、秀丸さんは行為に及んだ・・・


被害者の重宗。彼は薬の常習者で、病院仲間からも看護婦さんたちからも嫌われている
本当に手のつけようがない悪人です。
病院に入っているゆえ、悪いことをしても、患者ではしょうがないと、警察も動いてくれない
みたいです。
秀丸さんが、こうするしかないと判断したのもうなずけます。
でも秀丸さんには、大きな過去の罪があるのです。てんかんの病気をもっていたとは
いえ、母親とその内縁の夫、子ども2人を殺している身なんです(死刑宣告され、執行されたが
失敗し、その後、精神病院の院長のつてでこの病院へ)
その過去は、やっぱり、ひっかからないといえば嘘になりますね・・・。
その過去と島崎さんの件とはまったく別物です。
あの時代に比べ秀丸さんの体調もだいぶよくなっているし・・。
過去の事件を引き合いに出して判断して欲しくないとは思いますが
世間一般の目は厳しいだろな・・と感じました。
チュウさんや島崎さんは、きっと過去にこだわっていなかったんでしょうね。
今ある秀丸さんの姿に、親近感をもったはずです。


物語は島崎さん、チュウさんともに、前向きな方向で終ります。
やり直しは、またできるんだということ・・。


どういう視点で読むかで感想も大きく変わってきてしまう
物語だと思いますが、
見えていなかったものを見せてもらった・・・そんな
印象をもった作品となりました。
まだまだ自分の知らない世界があるんだな・・・ということ。

差別や偏見・・・・など、
難しい問題も絡んでいるお話だと思います。
なかなか厳しいですよね・・・世間の目は。
でも最後に待ち受ける人と人との温かい交流で
難しい事柄は、一瞬消えてしまうような感じではあります。

患者さんの目線で、ストレートに描いているということで
読む価値がある本だとと思います。
そして落ち着いた頃に、是非いろいろ考えて欲しいです。



お勧めありがとうございます~~~★
頑張ったかいがありました★。
またよろしくね~~~


閉鎖

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来ました~!

みみこさん、ご苦労様でした~!^^
結構読むの大変だったでしょ?
私も、みみこさんと同じ、初めのころは、何度も元に戻って、「え~~っと
この人は・・・?」って、何回もページめくっていました。


でも、みみこさんの感想を読んでいると、本当に深いところまで
いろいろ考えたんだなぁ・・・?って感心しました^^
この作者は、みみこさんが言っていたように、医者という立場から、
患者といえども、同じ人間、いやもっと言えば、普通の精神の人たちよりも
もっと純粋で・、人間的。って部分を描きたかったのですよね?


私は、あのちゅうさんと、秀丸さんの手紙のやり取りの部分で、
もうだめでした・・・この部分だけ、読み終わった後で、再度読んだのだけれど、
やっぱりウルウル来てしまいました・・
秀丸さんが、最初に刑務所に入っていたときには、毎日が怖くて怖くてたまらなかった。
「生きながら骨を抜かれたのも同然でした」(上手い表現だなぁ・・)
でも、その後の20年は、本当に楽しかった・・・
ちゅうさんや島崎さん、たくさんの人と出会えて・・って部分で、半分泣きかけました。
精神病の患者で有ろうとなかろうと、こんな真の友情に、本当に胸が熱くなりました・・


あの島崎さんの過去には、本当にびっくりしましたね?
最初、彼女が描かれ、まさか、ああいう形で後につながっているとは・・・
それがわかるまでが長かったけれど?ああいう手法は、作者の上手いところなのかな・・?


しまざきさんと秀丸さんの関係も、ほのぼのと心温まる所でしたね・・?
確かに、秀丸さんの過去の殺人は決して許せないものだけれど、
島崎さんの為に自分がやらなくてはならなかった殺人・・肯定は出来ないまでも、
気持ちは痛いほどわかりましたよ。秀丸さんがいなければ、島崎さんは、きっと生きては
いなかったのかもね・・・?


私は、とても印象に残る一冊でしたが、
5,6年前に読んで、花○の評価をつけていた旦那に、この本の事を
言うと、すっかり内容を忘れとりました・・・(汗))
こういうもったいない事が有るから?ブログって言うのはすごく貴重ですよね?
後で、何回も、感動を再生出来るから^^



さてさて、私は、latifa さんお勧めの「悪意」にやっと?!取り掛かりました^^
で、「青い鳥」を図書館で予約(実は予約したのは初めて)してきました。
こちらも、お二人のお勧め作品なので、とても楽しみにしています。


めっちゃ長くなりました^^;
じゃあまたね~~^^

ららさんへ


おはようございます~~
やっと感想書けました。来て下さってありがとうございます★
はい~~、お勧めにあったように最初は読むの大変でしたね。
沢山人が出てくるんだもの・・
それに呼び名でしょ?こっちは馴染みがないから
え~と誰だっけ?と戻る回数も多かったです。
でも、そのうち、それも楽しみの一つになったかな。


<普通の精神の人たちよりも
もっと純粋で・、人間的。って部分を描きたかったのですよね?>
そうよね・・・
最後の場面は、作者のメッセージとか意識しなくても
素直に感動できるところでしたよね。

ららさんが感動された、手紙文・・・
相手に対する思いやりであふれていたでしょ?
私もジ~~ンと来てしまいましたよ。
それまで、あまり秀丸さんやチュウさん、特に秀丸さんのほうかな・・・
の本音部分が語られる箇所がなかった分、
こんなに色々考えていたんだ・・・とハッ!!してしまったんですよね。

チュウさんとの出会いもはっきり覚えていて・・
さらに島崎さんのかかえているものも、しっかり把握して
心の中に入り込んでいたでしょ?
あれはもう彼の人柄そのものだと思うのですよ。

<こんな真の友情に、本当に胸が熱くなりました・・>

秀丸さんは壮絶な経験をしてそのあと、この病院に来たんですものね。
どんなに心細かったか・・
それを仲間が支えたんですよね。詳しい過去は知らなくとも
そこにいる秀丸さん、自身のよさに気付いてお付き合いしてくれた・・
こういうのって、やっぱり、先入観なしに人と付き合うことができる
人たちだからだとも思うんです。

<あの島崎さんの過去には、本当にびっくりしましたね?
最初、彼女が描かれ、まさか、ああいう形で後につながっているとは・・・>

そうそう・・私も驚いたわ。
最初彼女が出てきて、急にいなくなちゃったというか、語られる機会が
なかったでしょ?だからどうしたのかな・・・ってず~~と気になっていましたよ。
そのこともあって、最後まで早く 読みたいな・・・と思ったのかも。
彼女のね・・・妊娠の相手も驚きだけど
それに追い討ちをかけるように、嫌な出来事がふりかかったでしょ?
あれには凹んだわ。ひどいよ・・・可哀想すぎるよ・・・って。

<しまざきさんと秀丸さんの関係も、ほのぼのと心温まる所でしたね・・?>
はい。彼が居なかったら
絶対、島崎さん立ち直れなかったよね。
そう・・・死んじゃったかもよ.
だってあんなひどい仕打ちなんだもの。


いや・・私も、昔読んだ本の記憶は
断片的にしか覚えていないです。
たぶん、そのときは感動しても、時間が経つとまた違ってきたり。
それって、しょうがないよね。忘れてしまうことあるし。
感動したという記憶はあるものの、詳細は覚えていないのよね。

<こういうもったいない事が有るから?ブログって言うのはすごく貴重ですよね?
後で、何回も、感動を再生出来るから^^>
そうよね・・・。だから私もなるべく、感想は具体的に書いて
あとで読み返したりお話にでてきたりするときに、役立てるようにしているんですよ。
それと、前にもお話したかもしれないけど、
ららさんも本も映画も沢山ご覧になっていらっしゃるので
是非、ブログを・・・。あ・・・・でも、大変かな、やっぱり。

<私は、latifa さんお勧めの「悪意」にやっと?!取り掛かりました^^>

私もlatifaさんのところで見ましたよ。
読み応えあるお話みたいですよね・・・
<「青い鳥」を図書館で予約(実は予約したのは初めて)してきました。>

こちらは感動系のお話ですよね。
どちらも楽しみにしています。

今回はお勧め本当にありがとう・・
きっとお勧めされなかったら、手にとらない本だったわ・・

素敵な読書タイムを~~~ね★

ではまたです。

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