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シークレット・サンシャイン(2007)

シークレット・サンシャイン(2007)

SECRET SUNSHINE
密陽


監督: イ・チャンドン
製作: イ・チャンドン
原作: イ・チョンジュン
脚本: イ・チャンドン
撮影: チョ・ヨンギュ
音楽: クリスチャン・バッソ
出演: チョン・ドヨン イ・シネ
ソン・ガンホ キム・ジョンチャン
チョ・ヨンジン パク・ドソプ
キム・ヨンジェ イ・ミンギ
ソン・ジョンヨプ ジュン
ソン・ミリム チョンア
キム・ミヒャン キム執事
イ・ユンヒ カン長老
キム・ジョンス シン社長
キム・ミギョン 洋品店の女主人

シングルマザーのシネ。
夫を亡くし、息子ジュンと2人で、夫の故郷・密陽(ミリャン)に引っ越してきた。
そんな彼女に地元の小さな自動車修理工場の社長ジョンチャンは、
何かと世話をやく。
ある日、息子のジュンが誘拐される。
身代金として渡したものの、結局ジュンは遺体となって発見。
絶望の末に、薬局の女主人に勧められたキリスト教への入信を決断するシネだが…。




感想  ず~と観たかった一本でした。
主役のチョン・ドヨンがカンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いた作品・・・・
そのことだけ予備知識としてもっていたので
まずは確認してみようという、そんな程度の気持ちでした。
でも・・・予想以上に重たいテーマで、結構、悶々としてしまったかな。
いや・・・だからといって後味悪かったというわけではなく、
むしろ希望に満ちた感じでの締めくくりで
救いは感じられたのですがやっぱり、考えてみたくなる要素いっぱい。

宗教が絡んだ物語というのは興味があるところで
映画でも本でも色々読んだり観たりしたこともあるのですが
今までにない切り口で(面会場面から・・・の展開)
そうくるのか・・・・・と思わず、驚き。

「汝の敵を愛せ」という言葉を、クリアーするのは
かなり難しいことですよね。
私は特定の宗教を持たないから、余計そう感じるのかもしれないけれど。
あの時、あの場面で
ソン・ガンホ 扮する社長さんは
まっさきにこういっていましたよね。

「シネさん、聖人じゃあないのだからなにもそこまで・・・」って。
私もそうだよな・・・って感じていました。
絶対感情的に無理でしょ・・・って。
宗教関係者がみな集まって、行って来いよ~、頑張れ~~みたいな
励ましも、やっぱりそれが大きなハードルであるって
わかっていたからなんでしょうね。

信仰にのめり込んで、過信があったんじゃあないのかな。
そもそもシネって女性って自分が思い込んだら絶対間違いないみたいな
頑なところありましたものね。
夫はとうに自分たちから気持が離れていたみたいなのに、
いや・・彼は私たちを愛していたみたいに言い切るところあったし・・
彼女、加害者と会ったとき、
冷静に言葉を交わしていたのよね。
きっと、信仰を得て生まれ変わったのだから彼を受け入れられると途中までは
自信もあったはずだわ。
一見、成功したかに見えた面会。
でもシネはある事実をしってしまった・・・・
<自分が許す前に神が加害者を許していたということ>
なぜ神は自分の苦しみを理解してくれなかったのか。私が苦しんでいた時に
彼はとっくに神に許され、心穏やかに過ごしていた・・・
それがたまらなく許せなかったということなんですよね。神によってすでに許されてしまった人を
どうして私が許すことができるのか。
そこで、こんどは別の苦しみが出てきた・・・・
加害者への憎しみ以上に苦しい、神への不信感。
信じていたものに裏切られたという思い・・


神というものに対してここまで踏み込んでしまうのって、ともすれば
危険を伴うことかな・・・って思いました。
今までにない・・といったのはそのこと。
やっぱり、信仰をもっている人にとっては、こういう部分には
感じるものあったんじゃあないのかな。感想知りたい気分。
もちろん、そのこと自体(宗教云々)が、この映画の言わんとすることではないと思うけれど。

この映画って、シネばかりが目立つように感じますけれど
実はソン・ガンホの存在が重要なんですよね。
シネを支える人物として描かれている彼は、映画自体も陰で支えているようでした。
だってあのままシネが突っ走るままだったら、
それこそ、見ていて痛々しいだけで終わってしまうもの。


実際、ソン・ガンボが何か特別なことをしたというわけではなく。
彼女がどんな苦しいときでも、けっして見放さなかったということのみ。
こちらから見ているとこんなにわかりやすいアプローチをする彼が
ときに滑稽でときにもの物哀しくもあったわけだけれど、
一人の人を思う気持は本物であると、終始感じていたわ。
シネの弟に、「あなたは姉のタイプではない」とさりげなく厳しいことを
言われてもめげずに、つくしていた彼。
そもそも、相手の言葉に気づ付くような繊細な人間ではなかったけれど・・笑
だからこそ、最後まで彼女に付き添っていられたんだよね。
あんな過酷な状況になり、心を病んでいくすさまじい彼女を傍でみていたら
普通だったら、俺無理かも・・・って尻ごみしてしまうのに・・・。
いいよね・・・・彼。
シネが彼に惹かれるかどうかは、答えとして描かれてなかったけれど、
私としては願わくば・・・という思いはやっぱりあるかな・・・

でも恋愛関係以上に心地よい関係というのもあるかもしれないよね。
表題がそのまま、ソン・ガンホの存在につながっているというのも
なかなか深いわ・・。


<最初、「目に見えるものを信じ、目に見えないもには信じない。」そう言い切っていたシネ。
薬局のおばさんに、すべての日差しの中に神が存在すると諭されても
その意味が理解できずに、否定してきた彼女。
でも、自分が不幸に陥り神の愛を知り
その日差しの意味を理解し始める。神に愛されているという幸せを感じ始める>

私もね、↑の心境はよくわかるわ・・って思ったの。
だれでも、関心がなければ、神様がどうのこうの・・・と言われても、
すぐに入っていけないと思うのよね。
でも、なにかすがりたいものを求めていたり、自分が生きるうえで迷っていたりした場合は
その答えを見つけるためにも、そういう道(宗教に)入っていくのはありかもしれないって。
だからシネの行動の変化は納得できたの。
ただ、このとき感じたのは
あちらの国では宗教というと、祈ったり歌ったり、結構オーバーアクション的な行動を
するってこと。やはり私としてはちょっと異質な感じにも映ったかな。
あれが普通なのかな。私はよくわからないけれど、ああいう感じだとどうも
引いてしまうところある・・・・・・・。日本だとまた違うような気がするけれど・・。

何かにすがりたいとき、すがることで自分が救われるのなら
たとえそれが、目に見えないものであっても、いいと思う・・・・
自分自身が楽になるなら・・
否定はしないかな。
でも、目に見えないものばかり追いかけてはいけないときもあるんじゃあないのかな・・。
現実をみ、そばにいる人間自体をもっとみつめることも必要なんじゃあないのかな。
だって生きていくのに、人とのかかわりは不可欠なんだから。


<彼女はやがて信じてきたものに
失望を感じ、矛盾を感じ、失意の底に陥る。
その日差しに挑発的な態度を示し自分自身を
見失って・・・・>


目に見えないものを信じたことで
身近にいるものの存在価値に気付かされたのだ・・・・・そう考えたと
したら、彼女が信仰に携わったことは価値があることだと思うけれど。


人生を考えていく上で
またひとつ勉強したかな・・・っていう気分です。





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こんばんは

ご覧になったのですね。
イ・チャンドン監督の作品って,人間として生きる悲哀を
いつも他人とは一味もふた味も異なる視点でえぐるように描いてくれるけど
この作品もそんな感じでしたね。
観客は今まで感じたことのない衝撃に唖然としてしまいます・・・

シネの信仰はきっと哀しみから逃避するための手段でもあったのでしょう。
もちろん本人は気づいてはいなかったと思いますが。
入信というのはきっかけさえあれば結構たやすくできてしまう場合もありますが
信仰を維持すること,そして神を深く理解することは一朝一夕にはできないものです。
それぞれが山あり谷ありの道のりをたどりながら
時には神を忘れ,時には神に失望もしながら
それでも徐々に神との絆を固めてゆくものです。
シネのケースは高揚から絶望へとあまりにも急展開すぎましたよね。

シネは被害者である自分こそが,犯人を赦す資格があると感じていたのでしょう。
人間の罪を赦す権威は神にしかない,という教理は彼女には受け入れがたく
神が先に彼女に無断で犯人を赦していたことは,
彼女にとっては裏切り行為に思えたのでしょう。
それも無理のないことだと思います。

最初の動機は不純でも,やがて自然と水が満ちてくるように
いつのまにか信仰が生活の一部になっていたソン・ガンホ。
地味ではあるけど粘り強い彼の人柄を表したような信仰のあり方だと思いました。
シネもまた,彼の影響を受けて,
今度こそ地に足のついた信仰を持てる日が来るのかもしれませんね。
クリスチャンとしては,そう願ってしまいました。

ななさんへ

こんにちは。
今回もとっても深いものを感じさせる作品でしたね。
前作に比べてシンプルな作りだったと思いますが
それゆえリアルに響いてきました。

<シネの信仰はきっと哀しみから逃避するための手段でもあったのでしょう。>
そうですね。何かにすがりたいという気持ちよくわかります。

<信仰を維持すること,そして神を深く理解することは一朝一夕にはできないものです。
それぞれが山あり谷ありの道のりをたどりながら
時には神を忘れ,時には神に失望もしながら
それでも徐々に神との絆を固めてゆくものです。>

なるほど。ななさんの言葉はストレートに響いてきますわ。
やはり色々とお勉強されているからなのだと思います。
時に神に失望しながらも、それでも絆を深めていく・・

これって難しいことですよね。でもクリスチャンの方々は
みなそういう思いなんでしょうね。

<シネのケースは高揚から絶望へとあまりにも急展開すぎましたよね。>
そうですよね。

<神が先に彼女に無断で犯人を赦していたことは,
彼女にとっては裏切り行為に思えたのでしょう。
それも無理のないことだと思います。>

同感。

<ソン・ガンホ。
地味ではあるけど粘り強い彼の人柄を表したような信仰のあり方だと思いました。>

はい。私も彼の信仰のありかたに興味がありました。
いつのまにか、なくてはならないものになっていったというのが
いいですよね。

<シネもまた,彼の影響を受けて,
今度こそ地に足のついた信仰を持てる日が来るのかもしれませんね。
クリスチャンとしては,そう願ってしまいました>

はい。私も同じような流れを期待しています。


ななさんの感想素敵でした。
またいろいろ教えてくださいね。
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