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この胸に深々と突き刺さる矢を抜け    著  白石一文

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け    著  白石一文



主人公カワバタタケヒコ43歳。大手出版会社の編集長。
今彼が取材しているのは大物政治家Nのスキャンダル。
スクープ記事を出す前日、彼はグラビアアイドルとビジネス上の関係で寝る。
様々な引用文を用いながら
彼の職場での仕事、人間関係を絡めて、社会、経済、政治、セックス、死と、
熱い語りが一人称で綴られる。



感想    白石さんの新作。主人公のカワバタ(物語に出てくる人物はなぜかカタカナ表記)
の、主張は、そのまま作者の日頃考えていることに繋がるんでしょうね。
過去作品で色々と述べていたことの集大成のようにも感じますが・・・・。
正直、この主人公のように社会の一線でバリバリ働いているわけでもない
一主婦にとっては、経済のこと、政治のこと、宇宙のことなどなど、
難しく感じるところ多多ありでした。
セックス描写は、思いっきりハードで、それも冒頭からでしたから
気持ちよく読んでいけるのかと、不安もよぎっておりましたが
なんとか、今、上巻のみ、読み終わったところでホッと一息。


これは、女性には入りにくい世界なんじゃないのかな・・・(といつも白石さんの作品では
思っていますが・・・笑)と終始思いながら、今回も勉強させてもらいました。
ちなみにほとんど参考にはならない私の感想でしょう・・・笑

引用の多さが目立ちますが
それが直接物語には絡んではきません。
主人公が思いついたことをつらつらと語っていくのです。


マザーテレサが記した「貧しさ」と題する文章の引用。
ノーベル経済学賞を受賞したミルトン、フリードマンのプレイボーイ誌での
ロングインタビューの引用。
キング牧師のメンフィス演説の引用。
「もし世界が100人の村だったら」の主要部分。
仏陀の教養。
などなど。

彼には妻ミオの他にジュンナというセックスフレンドがいますが
若いグラビア女性リコとも関係をもっています。
彼は・・セックスは根源的な暴力だと言い切ります。



ネットカフェ難民、マック難民という現代の問題を語る上で
マスメディア人がいかに高給であるかを示します。
イチローや、さんま、タモリと身近な人物をも引き合いに出し、
格差社会の現実を訴えます。
出版業界の裏側。
政界とのつながり。
きれいごとだけでは済まされない世界も描かれます。


主人公タケヒコは31歳のとき結婚。
妻のミオは、東大准教授です。
11歳の長女がいますが
長男は8年前、生後3か月で亡くしています。
お互いの忙しい仕事のせいでもあったよう。
夫婦関係は表面上仲がいいのですが、形式だっており、夫婦生活はなし。
そして主人公は時折、死んだ長男の幻聴を聞きます。
また数年前に自分自身、胃がんにかかり、いまも治療中であるのです。




僕は必然の中で生きたいんです。中略・・
死ぬ最後の一瞬まで自分という主体性を失わずに生きていたい。そうなると、新しい生き方
を掴み取るしかないんです、いままでと違う僕だけの生き方です。そうやって考えに
考えて、僕は必然の中で生きようと決めたんです。
何かを選び取り、自分の力で作り上げていく人生が虚構だとわかった以上、僕は人生の
場面場面で自分にとって不必要なものを切り捨てていく生き方を選択するしかない。
未来にある理想の自己を目指して歩むのではなく、自己という現在状態をできるかぎり
保存し、継続していく人生を僕はこれから歩んでいかなくてはならない。
足し算ではなく引き算の人生です。必然の中に生きるというのはそういうことなんです。」
(上巻201ページ)



下巻からの展開はどうなのでしょうね・・・


 ↓強烈な表紙です。

 

矢を抜け
 
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お久しぶりです^^

みみこさん、こんにちは^^
どんな春休みをお過ごしだったのでしょうか・・・?
娘さんと、あの映画・・・(え・・・・と名前が・・最近凄くぼけてます^^;)あの
アンジェリーナの・・・見ましたか??
私は、この春休みは、札幌まで旅をしてきました。楽しかったです^^
(スキーは怖かったけどね?)


さてさて、この白石さんの本、読まれたのね?
(私は読んでないけど・・・)
やっぱり、いつものごとく、東大の人が出てきましたか?(笑)
私は、彼の作品、いくつか読んでるけれど、感動したときと、そうじゃなかったときの
差が結構あるような気がします。
重松さんもたまに目茶苦茶凄いセックス描写があるけれど、この人も
結構過激ですよね・・・?(流星ワゴンがそうなのだけれど。みみこさん読んだ?
この本、中学受験に失敗した男の子とその家族を描いた本なのだけれど、
彼の本の中で、かなり印象に残った本です)
セックス描写部分は、ちょっと・・・でしたが・・・


彼の本(白石さん)で、良い物を読んだときには、いつも崇高さを感じますよ。
でも、やっぱり、入り込むのに、好き嫌いが凄く出る作者ですよね?


私は、いま、渡邊淳一の古い本を読んでいます。
メトレス(愛人)と言う本。彼ってすごくHだけれど、本の中でのそういう描写は
結構押さえ気味で、その点は気に入っていますわ。
舞台が彼の故郷、札幌であることが多くて、内容的にもなんとなく惹かれる
作者の一人です。むかし読んだ「かりそめ」は、好きな人と一緒に読んだのよね?(笑)


で、いま角田さんの本「森の中の魚」(幼い子供を持つ母親同士の葛藤で、凄く暗いらしい)
を図書館で予約してるのだけれど、ぜんぜん連絡が来ませんわ。


あ、そうそう、みみこさん、ペネロペの映画見たのね?
関西ではぜんぜん見ないけど・・・もっと先なのかしら・・・?


家の息子は、明日が始業式です。
一年同様、楽しいクラスだったら良いなぁ・・・と願っています^-^


相変わらず長くなりました。じゃあまたね^^

ららさんへ


こんにちは。レス遅くなってごめんなさいね。
始業式はいかがでしたか。新しいクラスはどうだったでしょう・・・か。
うちもクラス替えでメンバーがかなり変わってしまいました。
でも楽しくやっているみたいです。


あ・・・話が前後しますが、私は、春休み、旅行に一回行きました。・・・近場。
それと映画の、チェンジリングですよね、あれは、時間が遅くなっていて
結局ボツ。ららさんは札幌まで・・・行かれたんですね。
いいですね・・・。北海道は好きなのですが、なかなかまとまった日にちがとれなくて。
楽しい春休みになってよかったですね。

で・・↑の白石作品。
そうなんです。出たんですよね。

<やっぱり、いつものごとく、東大の人が出てきましたか?(笑)>

主人公の奥様は東大で働くバリバリのキャリアウーマンですね。

<私は、彼の作品、いくつか読んでるけれど、感動したときと、そうじゃなかったときの
差が結構あるような気がします。>

どれも作者の生き方が反映されている作品ですよね。
哲学的な要素が強い時とそうでないときとがあるかな・・・。
え~~~と思う内容があったりするんだけれど、
それも含めて、追い続けていきたい方かな・・・って思います。

<重松さんもたまに目茶苦茶凄いセックス描写があるけれど、この人も
結構過激ですよね・・・?>

ですね・・・笑

<流星ワゴンがそうなのだけれど。みみこさん読んだ?
この本、中学受験に失敗した男の子とその家族を描いた本なのだけれど、
彼の本の中で、かなり印象に残った本です>

流星ワゴンは未読だわ。
でも、前に「疾走」を読んで、その描写にぶっ飛んだ・・・時があるので
予想はつきます・・・笑。↑流星ワゴンって中学受験がらみならね。
子どもも読む可能性がありそうな本だよね。
それで、過激な内容はまずいかも。


<彼の本(白石さん)で、良い物を読んだときには、いつも崇高さを感じますよ。
でも、やっぱり、入り込むのに、好き嫌いが凄く出る作者ですよね? >

そうそう!!・・・その崇高さね。
私ね、こういう風に、世の中のこととか、生きていることとかを
真剣に(たとえそれが皆にどうとらえられようとも)
語る、この人の、姿勢が好きなのかも。
私なんか凡人だから、普段一生懸命には考えていないんだけれど、
この方、皆が考えなければいけないけど、目をそむけてしまいがちなことに
真正面から向かっていくでしょ?それがすごいなって。


<私は、いま、渡邊淳一の古い本を読んでいます。>
まあ、そうなのね★

<メトレス(愛人)と言う本。>
はい。知っています。

<舞台が彼の故郷、札幌であることが多くて、内容的にもなんとなく惹かれる
作者の一人です。むかし読んだ「かりそめ」は、好きな人と一緒に読んだのよね?(笑)>

北海道舞台の作品は多いですよね。あと京都とか、軽井沢とか、鎌倉とか
地名もよくでてきますよね。

ららさんは渡辺さん、お好きなんですか?
私、実は好きでよく読むんですが、嫌いな方も多いので普段話題としては
取り上げないこと多いんですけど・・笑
お家にはハードカバーも文庫も沢山あるんですよね・・これが。
一時期購入で読んでいたので。今はお金ないので借りていますが。
ちなみに、メトレスも文庫で持っています★。かりそめは、ハードカバーであるな~~笑
でもかりそめを、好きな人と一緒に読むって、貴重な経験ですよね・・・


<で、いま角田さんの本「森の中の魚」(幼い子供を持つ母親同士の葛藤で、凄く暗いらしい)>
あ・・・私も予約している!!でもうちも全然連絡来ません。
人気なのよね。


<ペネロペの映画見たのね?>
はい。みました。
レンタルでこれ、あると思いますよ。もう出ているはず。

長くてごめんなさい。
また
これだ~~という感想があったら
教えてくださいね~~

再び・・・

みみこさん、こんにちは。再びやってまいりました^^


みみこさんが、渡辺淳一のファンだったとは?!!!
なんだか嬉しかったです^0^
前に、みみこさんのブログの読み物の中から、彼を探したときに
あまりなかったので、ファンだとは思ってなかったです。
そうですか・・・?
彼のこと、嫌いな人が多いのね?
私も、彼が好きと言う訳でもないのね?(笑)(いつも結構Hなことばかり
対談とかで言ってるから)でも、彼の作品は、なぜか好きで・・・
若かりしころ、ずいぶん読みましたわ^0^
どの作品も、いつも当たりはずれがなかったような気がします。
確か・・・
一番初めに読んだのが・・・「ひとひらの雪」だったかな・・・?
で、なぜか、また、最近懐かしくなって?
時々、読んだりしてるんですよ。


去年の暮れに読んだ「無影灯」も、上下巻一気に読みましたわ。
彼の作品って、最後悲しい展開が多いよね・・・?
でも、なぜか、読み終わったあと、清涼感が漂う感じで・・
舞台が北国って言うのが、また良いのだと思います。


みみこさんとは、白石さんファンのところも同じね?^-^
彼は、そこら辺の作家とは、かなり違う感じがしています。
(俗っぽくないって感じ)
渡辺さんとはまったく違った作風なんだけれど・・
彼の作品を読んだ後は、いつも「大作を読み終えたぜ~~!」という満足感で
一杯^^私は、「一瞬の光」を読んだのが最初だったけれど、「こんな凄い
作家がいるんだぁ・・・」と妙に感動をしたのを覚えています。


私が思うに、渡辺さんも、白石さんも、「ものすごく女心がわかってる・・・男なのに
なぜ?」って事。
きっと二人とも、女性とはずいぶんたくさんお付き合いされてこられたのでしょう(笑)



「エレジー」レンタルで出てるのね?
是非是非見てみます!!!


いつもいつも長くてごめんね?
じゃぁまた~~~





ららさんへ

こんにちは。
そうなんです。渡辺作品よく読んでいるんです。エッセイとかも結構ね。
嫌いな人というか・・・
ちょっと、こうあるべきだ・・・的な女性像が多いところが
鼻につくって言う人が多いんじゃあないかと思います。
皆、綺麗で、しとやかで、清楚。
着物姿も素敵で・・・・でも、付き合うとあら~~っていう大胆さがある・・・
なんだか男性の願望丸出しの女性像が、女性から見たら
う~~んって思う人、きっといると思うんですよね。

<彼が好きと言う訳でもないのね?(笑)(いつも結構Hなことばかり
対談とかで言ってるから)でも、彼の作品は、なぜか好きで・・・
若かりしころ、ずいぶん読みましたわ^0^>

はは~~、よく対談で言っていますね。いっぱい・・・笑

<去年の暮れに読んだ「無影灯」も、上下巻一気に読みましたわ。>

無影灯・・いいですよね。ドラマにも映画にもなっているけれど、
結構せつないお話でしたよね。

<彼の作品って、最後悲しい展開が多いよね・・・?
でも、なぜか、読み終わったあと、清涼感が漂う感じで・・
舞台が北国って言うのが、また良いのだと思います。>


あ~~多いですね。楽しくルンルンっていう展開ではないものね。

白石さん・・そう作風は違いますよね。
まあ、お二人とも
かなり独自路線を貫いていると思います。
好きなことを好きなように書いているような・・・

<「一瞬の光」を読んだのが最初だったけれど、「こんな凄い
作家がいるんだぁ・・・」と妙に感動をしたのを覚えています。>

私も★



「ものすごく女心がわかってる・・・男なのに
なぜ?」って事。
きっと二人とも、女性とはずいぶんたくさんお付き合いされてこられたのでしょう(笑)


はい。白石さんはどうかわかりませんが、渡辺さんは
そうでしょう・・・笑
私はね、渡辺さんの作品の、男性のしょうもないところが
好きなんですよ。エッチなところも含めてすべて。中年の男性が主人公が
多いでしょ?その実に人間らしい部分・・・・・・・・。社会的な立場が高い人や
頭脳明瞭な人が多いんだけど、皆、俗っぽい・・。所詮、男なんてこんなものよね・・と
思わせる部分があるのが読みたい理由かな。
彼の描く女性の行動は、毎回同じようなので、そこは、共感もてる人と、え~~
って思う人に分かれると思っているのですが、(私はえ~と思うときもあるんですけどね)
男性の行動が実に興味深いな・・・って。



<「エレジー」レンタルで出てるのね?>
あ・・・エレジーは、まだかも。

前のレスで、「ペネロピ」と書いてあったので。
それは
DVD出ているんですよ。


ちなみに、エレジーは面白いです。
基本的に年上の男性と若い女性の恋とか、不倫ものは
見ちゃいますね。
理由は色々あるんですが・・・笑



ではまたね。
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  • Author:みみこ
  • レイフ・ファインズ好き
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