fc2ブログ

ゼロの王国     著   鹿島田真希

ゼロの王国     著   鹿島田真希

吉田青年を巡る物語。




感想   鹿島田さんの作品は「六〇〇〇度の愛」に続いて2度目。
正直、私にとってはハードルの高い作家さんです。
一言でいえば、難しいのです。

今回、600ページにもおよぶ長編作品です。
見た途端、怖気づくくらいの厚さ・・・・笑。
持ち歩いて気軽に読書というには、まったくといってふさわしくない代物です。

内容はというと、これはかなり独特の世界。
全編会話劇で繰り広げられ、地の文はあまりありません。
舵取りとも思える人物が、作者とも言えますが、
各章の最初と最後に、語り掛けをします。


たとえば、こんな風に。

6章目(P.228)

「この物語に登場するわれらが主人公もその手のタイプの人間だ。  中略。
今回はそんなわれらが主人公の奔走ぶりを描いてみようと思う。物語の幕を開けよう。」

そして、その章の終りでは、

「その顛末を語る前に幕を閉じよう。」

表紙をみてもわかりますが、トランプをイメージしており、なかなかお洒落。
各章の数字も、スペードのエースから、キングまでという、懲りようです。
ゼロ

主人公は吉田カズヤ。
彼は某イベント会社で宛名書きのアルバイトをしている青年です。
その宛名書きのアルバイト先で出合ったのが、田中エリ。
やがて、イベント会社をやめ、結婚式場の宛名バイトで働く、吉田青年。
そこで、出会うのが10も年下の女子大生で佐藤ユキです。

吉田青年は、俗世間を超越したかのような、まるで仙人ような人物。
誰に対しても惜しみなく、同等の愛を与え、純粋で
清い心をもった人物。
物語は、ドストエフスキーの長編『白痴』を
ベースにしているそうですが(主人公吉田青年のキャラもそう・・)
肝心の物語を知らないので、何も語れないのは、残念です。

田中エリ、佐藤ユキという二人の女性と
やがて、エリに求婚をする藤原氏。ユキの婚約者である小森谷氏。その弟、瞬。
エリの主催するパーティーに集まる、神学生、俳優などなど。
個性的な人物が、吉田青年の物語に絡んでいきます。


吉田青年の語る、言葉の数々。饒舌なその言葉の中に
読者は何を感じとるのか。


そして、吉田青年は
あることに気付くのです。
より自然な人間らしい姿とは何かと。



吉田青年が、説く、単純な繰り返し作業の中に歓びを見出すということ・・。
とても印象的でした。

とにかく、とっつきにくい印象もある作品ですが、
物語の中に入り込めこんでしまえば、こっちのもの。
しばらく、出たくないな・・・と、思えるはず。
この王国を、吉田青年の行く末を
見ずにはいられなくなるのです。


一度では理解できないものもあるので
ゆっくり時間をかけて再度読むとまた良いかもしれませんね。



スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みみこ

  • Author:みみこ
  • レイフ・ファインズ好き
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク