日の名残り

日の名残り  (1993  イギリス)

THE REMAINS OF THE DAY


監督: ジェームズ・アイヴォリー
製作: マイク・ニコルズ
イスマイル・マーチャント
ジョン・キャリー
製作総指揮: ポール・ブラッドリー
原作: カズオ・イシグロ
脚本: ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
撮影: トニー・ピアース=ロバーツ
音楽: リチャード・ロビンズ
出演: アンソニー・ホプキンス
エマ・トンプソン
ジェームズ・フォックス
クリストファー・リーヴ
ピーター・ヴォーン
ヒュー・グラント
ミシェル・ロンズデール
レナ・ヘディ
ベン・チャップリン

日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作の映画化。
侯爵(J・フォックス)に使える一人の執事の物語。




感想  今頃ですが鑑賞です。
私の持っているDVDの一本にこの映画の予告が入っておりまして
毎度毎度見ていたのですっかり自分がこの映画を観た気でおりました。

しかし、きちんと観て見ないとダメですね。
ラブストーリー、と漠然と思っていたのですが(もちろん、それもありましたが)
それ以上に背景には様々なものが描かれていて
予想以上深み味のある作品でした。


原作はK.イシグロのブッカー賞受賞作。
原作は未読です。(今、読書中)
原作が素晴らしいのは、間違いはないでしょう。
それを崩さずに映画化するというのは
かなりのプレシャーがあろうかと思います。
しかし、映画の出来も素晴らしかったです。
これぞ、名作。
人生も終りにさしかかったとき、主人公の執事は
きっと何ともいえない
寂寥感を感じたことでしょう。
そのときになって、初めて色々なものが見えてきた・・・
あの頃は気付きもしなかったこと。
執事という職務に人生を捧げ
品位を保つということを一番に考えていたあの頃。
そして失ったものはたくさんあったということ。

彼の思いに
見ている私も
胸が締め付けられるようでした。
だれでも多かれ、少なかれ、後悔してしまう出来事は多々あるからかな・・・。

映画は
主役のホプキンス&エマの
魅力と好演もあって
原作と同じように感動できるものに仕上がっていたのではないかと思います。
(と、原作を読む前から言い切っていますが・・・)



前半から
職務に忠実な彼の姿をまざまざと見せ付けられます。
父親との仕事場でのやりとり・・
父親もまた、彼と同様、執事という仕事にプライドをもって、従事してきたようです。
しかし、悲しいかな・・・・、年には勝てず・、様々な問題を起こします。

それを認めたくないものの、結果として公爵に粗相を指摘され
やはり父には警告を出さねばならない、主人公。
父親に
「あなたは掃除番をしてください」という指示。
ここには
心の葛藤も相当あったことでしょう。
自分も父親と同じ仕事をしている身。
第一線をはずされることは
その人の存在そのものを否定したことにもつながるからです。



父親が、自分が転んだ場所の、石畳を懸命に直している姿がありましたが
そこからも、感じるものが色々ありました。
老いの悲しさかな。


そして、中盤。
女中頭のエマとの心の交流が描かれます。
あきらかに、エマは、主人公にアプローチをしているように思われるのに
それを気付かないふりをする主人公。

相手の気持ちがわかるのに、それに対する答えも何も示さないというのは
、何も気付いていない以上に
残酷なさまであろうかと思います。


自分の心内を隠してまでも
従事しなけらばならない、仕事というのは果たして何の意味があるのでしょう。
それが当時の美徳であり
いわゆる品位というものだったのでしょう。

そして、主人公が使える公爵の
政治的な過ちもまた、同じような意味合いであろうかと思います。
本質的なものを見間違えていたのでしょうから。


主人公が、恋愛小説を読んでいたというくだり。
エマとの絡みもあり
非常にハラハラするシーンでした。


微妙な間が印象的でした。

またラスト・・・。
この映画は
回想映画となっているのですが。
今は別の人の妻となっている(結局離婚したが)
エマと久々の対面をする主人公が登場します。

最後まで
本心を口にだそうとはしない主人公。

彼の人生そのものに
哀れみを感じてしまいました。


人生一度きりなのに
何故どんなに遅くなったとしても
無駄とわかっていても
胸のうちを明らかにして欲しかったなと思いましたけれど。



特典映像も
豊富で
本当に見てよかったと思える一本でした。

クリストファー・リーヴの演技も良かったです。彼のその後を考えるとつくづく残念ですね。




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カズオ・イシグロ!!

先日、「お気に入り作品」としてちょっとご紹介致しただけでしたのに、早速観て下さり感激です~☆
でも、「ブライズヘッド」がお好きでしたら、きっとこちらもお気に召して戴けるのでは、と・・・。 「期待外れ」に終わらず、ホッと致しました。
カズオ・イシグロの作品も、J.アイヴォリー監督作品も、そして英国も大好きな私としてはこれ以上望めない程ベスト・マッチのフィルムだったのです。

劇作家・ハロルド・ピンターが映画化の権利を持っていた為に、同じくピンター脚本作品・「フランス軍中尉の女」の主演ペア、アイアンズ&ストリープに当初、出演オファーが出たのだと思いますが、アイアンズ贔屓の私が見ても、ホプキンス&トンプソン以上のキャスティングは無かったように思われます。 今なら・・・、むしろ、ダーリントン卿役を彼に演ってもらいたいっ、とか。(汗)

小説と映画を比べてみると、ストーリーの短縮以外にも、屋敷の新しいオーナーの設定や、借りた車の車種(ダイムラー→フォード)、ユダヤ人スタッフの名前、ラスト・シーン等、細かい部分で変更もありましたが、原作の世界を大切にして映像化されていたと思います。

みみこ様も先日お書きになっていましたが、「わたしを離さないで」も、マーク・ロマネク監督、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリング出演で映画化されるようですし、こちらも楽しみですね♪
そういえば、レイフが出演していた「上海の伯爵夫人」の脚本も彼でしたよね。

最近、新作の短編集「夜想曲集」も発売されましたね。
今のところ、気にはなりつつ、私は未読なのですが、それぞれ音楽にまつわるお話のようですし、みみこ様もお読みになるのでしょうか・・・??

こんばんは

天変地異の予感を感じる不穏な夏ももう終わりますね・・・
でもインフルエンザの脅威は確実に・・・・とまだまだ気は許せないです。
9月になってお互いに夏の疲れが出ませんように・・・・。

さてさてこの映画,大好きなんです。記事は書いてませんが・・・。
アイヴォリー監督の作品はみんな好きですが
「モーリス」とこれが一番好きかな。

今では英国貴族社会の遺物ともなっている
「執事」のお仕事とその生きざま・・・。
あの誇り高さとストイックさは日本の武士道を思い浮かべてしまいました。
プライベートでも感情を徹底的に押し隠した
黒子のような生き方を貫いたホプキンスの人生を思うと
なぜか切なくて哀しくなるのです。
エマとホプキンスのプラトニック・ラブの演技が秀逸でしたね。

Aramisさんへ


こちらにも、ありがとうございます。
紹介していただいたことで、よし~~見るぞ~~という決意が
湧いてきました。やっぱり、何かきっかけがないと
ダメなんですよね。でも押さえておいて良かったわ。
やはり映画ファンということなら、いい作品はきちんと押さえておくべきですよね。
そうですよね。英国映画好き、アイヴォリー好き、そして原作者もとなれば
はずせませんよね。


アイアンズ&メリルーへの、オファーの話は、特典映像で
聞きましたよ。
しかし、メリルはアメリカ人ですよね。
また雰囲気が違ってきますよね。
ダーリントン卿役ですね。いいですね。渋みがあって。

原作の違い・・・まあ、詳細に覚えていらっしゃるのですね。
原作のファンの方からの評価も概ね印象が良いと
きいているので
映画化成功例の作品ですよね。


わたしを離さないで・・・の映画化も楽しみですよね。
上海の伯爵夫人の脚本家の方と同じなんですね。
知らなかったわ。
色々期待してしまいますね。

そして、新作の本のお話。
そうですね、出ましたね。
私も挑戦したいところですが
図書館の予約はかなり入っていますので
読むまでに時間がかかりそうです。



そうそう、この「日の名残り」を借りて
お店に返したあと、
無性にイギリス映画が見たくなり
唯一家にある
「眺めのいい部屋」と「ゴスフォード・パーク」を
再見してしまいました。
いつみても面白いですね。

ななさんへ


こんにちは。
夏休みいかがお過ごしでしたか。
インフルエンザ・・・これからですよね。
お互い気をつけたいですね。


ななさんもアイヴォリー作品、お好きでしたよね。
モーリスも、印象的な映画でしたものね。

執事・・に武士道・・・なるほど。
そういえば、そういう感じですよね。
今の若者が見たら、
なぜそこまで・・・・・と思いがちですが。
ホプキンスの人生・・・物悲しいですよね。
そうしなければならない生き方しかできないなんて・・・・
う~~~ん。

エマが泣いているのに、優しい言葉もかけず
仕事の業務だけを報告する彼に
「おまえはなんて、空気の読めないヤツなんだ!!」と
あのシーンでは
ちょっとムッとしてしまいましたよ。


プラトニックラブ・・・・うんうん。
お互いの芸達者な方なので
見応えがありましたよね。
ホプキンスは、レクターさんも演じていたり・・
幅は広いわ。

日の名残り

みみこさん、おはようございます♪

日の名残り・・・ご覧になったのですね。
この映画、私も好きなのです。

寡黙で、仕事に忠実な執事役のアンソニー・ホプキンス・・。
彼の幅広い演技力に思わず脱帽でした。

自分の気持ちをストレートに出せないもどかしさ。。
そのなんとも言えないもどかしさが
観ている私達の心をくすぐって・・・。

「眺めのいい部屋」もいい映画ですよね。
再見したくなってしまったわぁ(*^_^*)

みみこ様、
お返事、有難うございます。

>原作のファンの方からの評価も概ね印象が良いと きいているので 、映画化成功例の作品ですよね。

そうですね♪
映画「情愛と友情」のあまりの脚色ぶりには文句タラタラ・・・(冷や汗)だった私ですが、「日の名残り」映画版に対しては及第点以上を差し上げたいっ☆
アイヴォリー監督やミンゲラ監督の文芸物は、原作好きの方も安心して観ていられると思います。

>「眺めのいい部屋」と「ゴスフォード・パーク」を 再見してしまいました。
いつみても面白いですね。

お~♪、「眺めのいい部屋」と「ゴスフォード・パーク」、私も両方とも所持して居りますょ。
どちらも大好きで、時折引っ張り出して来ては見ています。
そういえば、「日の名残り」のダーリントン邸外観と、「ゴスフォード・パーク」の屋敷、ロケ地は同じような気が・・・。

cahoさんへ


こんにちは。
レスが大変遅くなってしまいました。順番もずれてしまってごめんなさい。
日の名残り・・・cahoさんもお好きなんですね。
うれしい・・
評判良かったのに、長い間観ないでおりました。
今頃ですが観て良かった★
アンソニー・ホプキンス・・・お似合いでしたよね。
寡黙も時にはいいんですけどね・・言わなきゃ、わからないこと
色々ありますものね。
<自分の気持をストレートに出せないもどかしさ・・>
そうそう、そうですよね。
当事者にとっては、それは簡単なことではないですものね。

眺め~もいいですよね。
凄い髪型のヘレナも出てきますがあの頃は可愛かったですよね。

Aramisさんへ


こんにちは。レス大変遅くなってしまいごめんなさい。
順番も違ってしまいすみません。
時々、こうやって抜けているところもありますが
懲りずにお願いします・・。

文芸作品の映画化・・当たり外れもありますよね。
長い小説だとまずはどう脚本を仕上げるかも
映画の出来にかかわってくるかと思いますよね。
映画と原作は別物という考え方もありますし、
知らなければそれはそれで満足できるばあいもあると思いますけど・・・。
でも原作知っていると、いろいろ思うこと出てきますよね。

Aramisさんも
↑2つのDVD所有されているのですね。うれしい~~
お仲間ですね。。。★

ゴスフォードのあの屋敷は・・同じなのですね。
パンフ所有しているのでどこかに詳細書いてあるかしら。
ちょっとみてみよう~~。
眺めは~~アイボリー作品ですものね。
実はサンズ、昔好きだったので、しばらく追っていた時期があります。
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