身の上話    著   佐藤正午

身の上話    著   佐藤正午



物語は語り手の妻、ミチルの身の上話から始まる。
23歳の古川ミチル・・彼女は「土手の柳は風まかせ」みたいなところがある
あぶなっかしい女性。
田舎町で書店勤務。付き合っている男性は2歳年上、上林久太郎。
しかし書店に出入りする東京の大手出版社、社員、豊増一樹という男とも
交際をし始める。いわゆる二股である。
その事実を打ち明けていたのは同僚の初山さんのみ。
ある日、ミチルは書店の昼休みに、仕事場を抜けて歯医者に行こうとしていた。
実は出張に来ている豊増さんが東京に帰るということで密かに空港まで見送ろうという
企みもあったのである。
そんなこととは知らずに、同僚の立石さんと沢田主任は、ついでに・・・ということで
サマージャンボ宝くじのお使いを彼女に頼んできた。
空港との間を往復するシャトルバスのバスターミナル場で早速宝くじを買い
豊増を、快く見送ってあげようと思ったミチルだが・・・。
豊増の、ほんの一言から、ミチルの気がかわり、一緒にバスへ。そしてそのまま
羽田行きの飛行機に便乗。彼女は東京へと旅立ってしまう・・・
ミチルの波乱の人生がそこから始まる・・・




感想     佐藤さんの新作。
「5」・「アンダーリポート」と読んできましたが、
今回の新作は、他の2作よりも、読みやすい作品であると思います。
佐藤さんの作品を初めて読む方でも
絶対面白く感じるはずです。
話のテンポが速く、予想もしない状況に物語が進んでいくので
ページを読む手が押さえられませんね。
もう、先が知りたくて知りたくて、たまらなくなるような内容なんですよね。
「ジャンプ」のような失踪ものではありますが、
描かれている世界は違っております。


ジャンルわけとしては難しいところでしょうか。
恋人を追って東京へというと、アバンチュール的な恋愛話を想像しがちですが
そんな甘い世界ではありません。
何気なく、描かれている出来事があとあとになって大きな出来事へと発展していくのです。
まず、宝くじ。
ただのお使いごとだからと、思ってはいけません。
購入時に枚数を間違えてしまった・・・・ちっぽけな出来事だと読み飛ばしてはいけません。
すべてに意味があるのです。

東京でお金に困ってきたミチルを救ったのは
この宝くじです。
なんと、2億円の当りくじだと判明・・
2億ですよ、2億・・・★
それから物語は思ってもみない方向に転がりだします。
ここで、高額当選者だけがもらうことのできる
本というのが紹介されます。
「その日から読む本」です。
知る人ぞ知る本なんだそうです。こんな本あるんですね。興味深かったです。




東京でのミチルは、豊増さんだけを頼っていたわけではありません。
所詮奥さんのいる身の豊増さんなので、全面的に頼るわけにはいかないのです。
とりあえず、幼なじみで東京にいる竹井輝夫とアポをとり、同居人として
転がり込みます。そして竹井君の恋人、高倉さんと、新に知り合いにもなるのです。


登場人物は皆、
個性的な分、読みながら、読み手の中で、生き生きと姿を現してきます。
細かな部分でいえば、現実味を伴わない
行動をする人物もいたり(フライパンで●●ってちょっとコメディぽいよね)、
出来事もあったりするわけですが
そういった部分が気にならなくなるほど、起こりゆる状況ののインパクトが
大きいのです。

唯一いい人だと思えるのは初山さんだけでしょうか。
とんでもない行動を起こすミチルを、最後まで
見守っているのですから。
もちろん、このミチルは、共感もてる子ではありません。
むしろ反発でしょうね。
優柔不断な生き方、仕事や恋人ついての甘さも、正直いら・・ときます。
しかし、
それでも事の成り行きが知りたくて、そんなミチルの行く末を、もういいや~~~~と
放り出すことはできなかったのです。


そして、一番気になるのは
実はミチルの身の上を語る・・・あなた。
そう、語り手である、あなた・・・なのです。
冒頭の感じから、ミチルの夫であるのはすぐ推測できます。

しかし、待てど暮らせどなかなか、このミチルの夫となる人物はなかなか登場しません。
もしかして、すでに登場してきた人物が夫であるのか・・・そういう企みのある
小説かと思うのですが、
そうではないのです。
最後に、ようやく、登場なのです。
でも、じゃあ、この夫は何故ミチルのことを語る必要があるのでしょう・・・


誰に向かってミチルの身の上話をするのでしょう。
そして、この身の上話の
意味するところは・・



最後の最後で、う~ん、なるほどと納得。

ちなみに、ミステリーでもありますが、
本格ミステリーではありませんので、そういう方面の期待はしない方がいいかと。


心憎い小説だったな・・と思わずにはいられない印象をもつと思います。
それと、濃縮の小説です。中身は濃いです。


楽しんでくださいね。そうそう、ところどころで
あと一日という意味合いの時に、「今日いちんち・・」という表記をしていました。
一日の意味を強調しているんでしょうか。こうひらがなで書かれると
しっかり目に焼きつきますよね。

minouebanashi.jpg


↑表紙は後ろ姿のミチルを連想させる女の子。
でもちゃんと裏表紙には、真正面の姿です。
これも面白いです。

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