悪党 著 薬丸 岳
悪党 著 薬丸 岳
主人公は佐伯修一。彼は元警官だったが、不祥事を起こし失職。今は「ホープ探偵事務所」で探偵の仕事を
している。所長は木暮。木暮も12年前までは県警で働いていた同業者だったが、佐伯が警察官になったときは
すでに辞めていたので面識はなかった。
ある日、初老の夫婦から人探しを依頼される。自分たちの息子を殺して少年院に入った、坂上洋一の出所後の様子を
調べて欲しいと。さらに、見つかった折には、坂上を許せるか許せないか、その判断材料を
探して欲しいと・・・。
調査に中で判断に迷う佐伯。実は、彼自身もかつて身内を殺された犯罪被害者遺族だったからだ。
感想
薬丸さんの新作。
今回は、今までとはちょっと違う構成。
一話完結の7つからなる連作短編集です。
そのすべての主人公に探偵佐伯。彼が依頼される事件の加害者の調査過程で
繰り広がられる人間模様を、彼自身がどう感じ、どう迷い、どう苦しんでいくのか・・・が
語られています。初の一人称小説です。
今まで長編小説で、ぐ~~と唸らせるものばかりを読んできたもので
今回の手法には正直あれ~~と思うところもありましたが、
よくよく読み進めていけば、各章の中では、佐伯自身の事件の背景も小出しに描かれていたり、
さらには、最初の章で登場する坂上&その恋人の遠藤りさが
物語の最後まで絡んできたりと、面白く見せる要因をところどころに散りばめさせており
短編でもさすがだな・・・と思わせます。
そしていつもどおり、
あなたならどうする・・・という重い課題を、どの章でも、読み手に投げかけます。
期待通りの出来栄えでした。
基本的には依頼された事件は一話完結です。
様々な犯罪形態が語られます。
幼児虐待や、詐欺事件、強盗殺人事件などなど。
その事件一つ一つとってみても充分物語が始まりそうな題材です。
犯罪被害者遺族は
何をもって、犯罪者を許そうと思えるのか・・・。
そもそも、許すということはどういうことか。
まっとうに生活をしていればいいのか・・・。
どのような誠意を見せればいいのか。
また、犯罪者は、どうやって罪を償えばいいのか。
一度罪を犯してしまった人はどうやっても、更生できないのか・・
憎しみに炎は消せないのか。
印象的なのは・・・
第三章の『形見』の犯罪者の、身内の心理・・・・。
結構きつかったです。
「あなたはひとりではない」
と最後に加害者の身内が、語りかけ部分では
涙ぐみそうになりました・・・。
第四章の「盲目」の意外な結末。
「あなたはずるい人間だ」
この言葉も忘れられません。
加害者はどうやって被害者に罪滅ぼしをするのか。
この章のお話では、やっぱり私も↑のセリフと同様な言葉を
相手に投げかけてしまうと思います。
第5章の「慟哭」・・・所長の正体に驚き。
それまで嫌な印象だった所長の別の面がみえて意外。
「自己満足ですね」・・・調査依頼者の弁護士に向かって
所長が発する言葉です。
たとえ、犯罪者がその後更生したとしても、被害者の心は癒されない・・・
それを痛感した章でもありました。
第六章の「帰郷」・・・調査過程で知り合ったキャバ嬢、冬実の過去。
冬美の過去には驚きです。
正直、ここまで主人公に絡んでくるとは思いませんでした。
そして、同時に描かれる佐伯の家族。
主人公、佐伯が実家の父を訪れ
そこで父が発する言葉・・・
「いつでも笑っていいんだぞ。おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
辛い・・・辛いです。
父親の気持ちが痛いほどわかります。
第7章の「今際」・・・・この章では最初に出てきた坂上という青年が再び登場します。
彼は被害者の家族によって、刺され、
今は半身不随の身です。きかっけは佐伯の言葉でもあるのですが。
その坂上が、面会に来た佐伯の発する言葉です。
「だけど、悪党は自分が奪って分だけ大切な何かを失ってしまうこともちゃんとわかっている。
それでも悪いことをしてしまうのが悪党なんだよ」
「死に際にでも、自分が奪ってきたものと失ってきたものを天秤にかけてみるさ」
加害者の心理ですよね。
これも複雑です。
そしてエピローグ。
救いがあります。
幸せがみえます。
佐伯が本心から笑顔を取り戻せる、予感を感じます。
冬実も幸せになって欲しいわ・・

主人公は佐伯修一。彼は元警官だったが、不祥事を起こし失職。今は「ホープ探偵事務所」で探偵の仕事を
している。所長は木暮。木暮も12年前までは県警で働いていた同業者だったが、佐伯が警察官になったときは
すでに辞めていたので面識はなかった。
ある日、初老の夫婦から人探しを依頼される。自分たちの息子を殺して少年院に入った、坂上洋一の出所後の様子を
調べて欲しいと。さらに、見つかった折には、坂上を許せるか許せないか、その判断材料を
探して欲しいと・・・。
調査に中で判断に迷う佐伯。実は、彼自身もかつて身内を殺された犯罪被害者遺族だったからだ。
感想
薬丸さんの新作。
今回は、今までとはちょっと違う構成。
一話完結の7つからなる連作短編集です。
そのすべての主人公に探偵佐伯。彼が依頼される事件の加害者の調査過程で
繰り広がられる人間模様を、彼自身がどう感じ、どう迷い、どう苦しんでいくのか・・・が
語られています。初の一人称小説です。
今まで長編小説で、ぐ~~と唸らせるものばかりを読んできたもので
今回の手法には正直あれ~~と思うところもありましたが、
よくよく読み進めていけば、各章の中では、佐伯自身の事件の背景も小出しに描かれていたり、
さらには、最初の章で登場する坂上&その恋人の遠藤りさが
物語の最後まで絡んできたりと、面白く見せる要因をところどころに散りばめさせており
短編でもさすがだな・・・と思わせます。
そしていつもどおり、
あなたならどうする・・・という重い課題を、どの章でも、読み手に投げかけます。
期待通りの出来栄えでした。
基本的には依頼された事件は一話完結です。
様々な犯罪形態が語られます。
幼児虐待や、詐欺事件、強盗殺人事件などなど。
その事件一つ一つとってみても充分物語が始まりそうな題材です。
犯罪被害者遺族は
何をもって、犯罪者を許そうと思えるのか・・・。
そもそも、許すということはどういうことか。
まっとうに生活をしていればいいのか・・・。
どのような誠意を見せればいいのか。
また、犯罪者は、どうやって罪を償えばいいのか。
一度罪を犯してしまった人はどうやっても、更生できないのか・・
憎しみに炎は消せないのか。
印象的なのは・・・
第三章の『形見』の犯罪者の、身内の心理・・・・。
結構きつかったです。
「あなたはひとりではない」
と最後に加害者の身内が、語りかけ部分では
涙ぐみそうになりました・・・。
第四章の「盲目」の意外な結末。
「あなたはずるい人間だ」
この言葉も忘れられません。
加害者はどうやって被害者に罪滅ぼしをするのか。
この章のお話では、やっぱり私も↑のセリフと同様な言葉を
相手に投げかけてしまうと思います。
第5章の「慟哭」・・・所長の正体に驚き。
それまで嫌な印象だった所長の別の面がみえて意外。
「自己満足ですね」・・・調査依頼者の弁護士に向かって
所長が発する言葉です。
たとえ、犯罪者がその後更生したとしても、被害者の心は癒されない・・・
それを痛感した章でもありました。
第六章の「帰郷」・・・調査過程で知り合ったキャバ嬢、冬実の過去。
冬美の過去には驚きです。
正直、ここまで主人公に絡んでくるとは思いませんでした。
そして、同時に描かれる佐伯の家族。
主人公、佐伯が実家の父を訪れ
そこで父が発する言葉・・・
「いつでも笑っていいんだぞ。おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
辛い・・・辛いです。
父親の気持ちが痛いほどわかります。
第7章の「今際」・・・・この章では最初に出てきた坂上という青年が再び登場します。
彼は被害者の家族によって、刺され、
今は半身不随の身です。きかっけは佐伯の言葉でもあるのですが。
その坂上が、面会に来た佐伯の発する言葉です。
「だけど、悪党は自分が奪って分だけ大切な何かを失ってしまうこともちゃんとわかっている。
それでも悪いことをしてしまうのが悪党なんだよ」
「死に際にでも、自分が奪ってきたものと失ってきたものを天秤にかけてみるさ」
加害者の心理ですよね。
これも複雑です。
そしてエピローグ。
救いがあります。
幸せがみえます。
佐伯が本心から笑顔を取り戻せる、予感を感じます。
冬実も幸せになって欲しいわ・・

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