ヘヴン    著  川上 未映子

ヘヴン    著  川上 未映子


斜視が理由でいじめられている"僕"。
汚い、臭いという理由でいじめられている‘コジマ‘
ある日、僕はそのコジマから一通の手紙をもらう。
「わたしたちは仲間です」



感想   


「ヘヴン」にかんしては、本を読む前に
いろいろ前知識を入れてしまいました。
トップランナーで、著者の人となりを知り
エッセイの方も先に読んでしまったので(最終章はまだ・・)
どういうテーマで、この作品を作り上げたのかというのを知ってしまって
いたのです。

善と悪についてですよね。

でも、だからといって、すべての内容について
理解できたかというとNOです。
正直、難しいです。
やっぱり、ところどころ作者がどういう意味合いで設定したのかしらという部分がありましたし
わからないところも多かったです。

たとえば、
百瀬と二ノ宮の関係。
僕が隠れたトイレで交わされた、二ノ宮と誰かの会話(P。25)
この相手は誰だったのでしょう。
百瀬?意味ありげな会話でしたが、
こういう部分を入れることで意味することは何なんでしょう。

たとえば
百瀬は体育をよく見学していました。
そういえば、本の後半で僕が百瀬と偶然出会ったのは病院。
百瀬はなぜ病院にいたのでしょう。
意味はなかったのでしょうか。


まあ・・・他にもいろいろありますが。


この本は
いじめに関しての話ですが、それだけがこのお話の言わんとするようなことではないようです。
あくまでも設定がいじめ・・・だということで
そこに作者の哲学的なものの見方が
入れこまれているようですね。
登場人物それぞれの言い回しには
作者自身の思いを投影しているのではないのかな・・・と思っています。


一般的ないじめに関する本とはちょっと方向性が違っています。
先日読んだ重松さんの「十字架」の、いじめをテーマにした
お話とは全然違いますね。
だから、この小説をいじめ小説というだけで読んでしまう
と違和感感じるところもあるのだと思います。


「ヘヴン」は、
いじめの内容がかなり悲惨でした。

サッカーボール見立てたゲームにしろ、
チョーク食べさせるにしろ
ラストの公園の一件にしろ、
想像するのもおぞましい光景ばかりです。

そういう行為、実際はどうなんでしょう。
もはや、いじめというより、犯罪に近い感じ。
あるのかもしれませんね。

いじめの行為は実際もと思わせますが
物語の登場人物、3人、僕、百瀬、コジマについては
リアリティもって存在しているだろうかと考えると
疑問です。
(僕は一番身近に考えられるでしょう。)
問題は
百瀬、コジマです。
彼らは正反対の形で登場し
独自の考え方を持って
このいじめをとらえています。
ここまで論理的な子供はいないだろうと思えます。
コジマのように悟ったような考え方の子供はいないでしょう。
汚い恰好をするのは、別れた父を忘れないため。
お父さんと一緒に暮らしたことのしるしのようなものなんだ・・ということを
考えるコジマ。
実際、いないでしょう・・。ちょっと病んでいる感じですらありますから。
でも、現実にいるってことが大事ではなく
きっと、この物語の中でコジマの存在が意味するものを理解する・・っていうことが大事なんでしょうね。


コジマは言います・・すべてのことには意味があると。
私たちが、みなにいじめられているのも意味があると。
これを耐えなきゃあたどりつけない
何かがあるんだと・・・。
僕の斜視も、斜視があるから、こういう状況、仲間になりえたのだから
意味があると考えているようです。

対する
僕・・・。
自分の目を好きだよって言ってくれた、コジマに
次第に心が惹かれるようです。
友情なのか、それ以上のものか。
しかし、コジマの考えについていけない自分もいるよう・
コジマはどんどん強くなっていきます。
いじめられている、自分たちは弱いのでなく、
本当は一番強いんだ・・・
その"強さ"こそが"正義"なのだ、と理解しているから・・・。


ある時僕は
体育館でサッカーボールに見たてられ、ひどいいじめをうけます。

それから、一人
死について考えてみるのです。

死ぬってどういうことなんだろう。ただ、眠ったままなだけなんじゃあないのか。
眠っていたことは朝がきて目覚めればわかる。
でも朝が永遠にこなければ、眠ったままということ自体にさえ、気付かないんだ。
だったら、当人だって自分が死んだということに気づかない。死ぬ人は誰も死ねないんじゃあないのか。

P、153~の死への思い・・・
これは川上さんの思いでもあるのかな・・・・。
僕に語らせて、やはり、自分の思いをぶつけているような気がします。
でも、すごっく、ガツンときた部分です。

そして、
百瀬。
彼の話は強烈です。
百瀬の言い分に
どこか納得してしまう部分があり、そもそも、悪ってなんだるう、
善ってなんだろう・・・と考えてしまうような部分でもあります。
いままでいじめは、善=いじめられるもの
悪=いじめるもの・・という図式でとらえていたのに・・。
百瀬の考えだと
いじめは欲求の結果であって、そこに善悪は存在しないと
いうことなのだから・・・。
それに、皆がおなじように理解できる世界は存在しない・・・と。


なんで、きみは僕に暴力をふるうんだ。誰にもそんな権利はないという僕に・・

「権利があるから、人ってなにかをするわけではないだろ。したいからするんだよ。」(p・165)

「無意味だってことには賛成できるけれど、そんなの無意味だから、いいんだろ。」

「ただそのなかでも傾向見たいみたいなのはあってさ、たまたまそのときにやりたいことっていうのが
でてくるじゃないか。
欲求っていうのかな、そういうのがたまたまでてくるだろ?
省略・・・君が置かれている状況っていうのは、そういうたまたまが一致した単なるけっかなんだと思うよ。」
(P.169)


嫌な奴ですよね、百瀬。
これが、まかり通る世の中だから
差別があり
いじめも生じるのかな・・・。

そんな理屈こねた言い回しをして
いじめを肯定する考え方はいやだ・・・わ。
百瀬にうまく
反論できないけれど・・

人間はやっぱり、
道徳的な部分で厳守していかなくてはならないものがあるんだから・・・
それまでも否定してしまったら
社会生活なんて成立しないではないのかと思います。
だから、ダメなものはダメ
いじめもダメなんです。
百瀬の言い分には太刀打ちはできないけど・・・。






コジマは
僕が斜視を治すと聞かされ
急に態度を変えます。

コジマと
僕は
それぞれの世界を生きることになります。


どうしてそんなにコジマが目にこだわるのか。
そこまで、コジマの世界に
僕を、引きづり込まなくてもいいのではないのか・・・。
わかりませんね~~


この物語で
一番せつなかったのは
コジマとの、別れが生じてしまったことです。


この本は、わからないことが多く
どこか釈然としないものを抱えての読後感でしたが
最後の場面は
なぜか、いいようのない感情に
つつまれます。
とくにラスト2行・・・。



コジマとの別れが
とても悲しいです・・・
僕とコジマの日々が戻ってこないのが
無性に悲しいです。
それだけでも
感じとれたら
いいのではないかとさえ思います。

あくぁかみへヴん



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神様のしるし~『ヘヴン』

 クラスでいじめの標的となっている14歳の「僕」は、ある日短い手紙を受け取 る。 「わたしたちは仲間です」  それは「僕」と同じように...

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みみこさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございました。
この小説、「いじめ」がテーマというよりも、いじめを媒介にした善悪のせめぎ合いだとか、いじめられる側(特に僕)の心理について描かれた小説だという気がします。
思春期特有の「仲間意識」だとか、潔癖さだとか、他にもいろいろあると思いますが。
『トップランナー』だったと思うのですが、とにかくあのラストシーン、並木道の場面を書きたかった、と川上さんはおっしゃっていたと思います。
あの場面の描写は本当に素晴らしかったですね。。何度も読み返しました。
極論すれば、「僕」をあの場所に連れて行く、ただそれだけのために書かれた小説、とも言えるかもしれません。

ところで『ブライト・スター』ご覧になったんですね。。
いいな~。。私も観たい。。なんとか時間を作りたいです。

真紅さんへ


期待して待っていただけはあり
読み応えありました。
本のページも真っ白なのね。
<善悪のせめぎ合いだとか、いじめられる側(特に僕)の心理について描かれた小説だという気がします。 >

そうですね。
僕のようにいじめられた経験がないからわからないのだけれど、
こういう心情なのかもしれませんね。

<『トップランナー』だったと思うのですが、とにかくあのラストシーン、並木道の場面を書きたかった、と川上さんはおっしゃっていたと思います。
あの場面の描写は本当に素晴らしかったですね。。何度も読み返しました。
極論すれば、「僕」をあの場所に連れて行く、ただそれだけのために書かれた小説、とも言えるかもしれません。 >


なるほど・・・
確かに最終場面は印象に残りますよね。
映像が目に浮かぶような気がしましたもの。
ヘヴンという絵は結局見れずじまいでしたが、
あの美術館の絵たちも興味深かったです。

<『ブライト・スター』ご覧になったんですね。。
いいな~。。私も観たい。。なんとか時間を作りたいです>


是非~~
「告白」とは違った感情を得られますので、お勧め・・・・・♪

みみこさん~こんばんは!
びっくり。昨日「モンスター」を途中まで読んで、なんか・・・安っぽい感じがして、途中までで挫折しちゃったの。百田さんはボックス!が良かったので、期待したんだけど・・・
みみこさんのレビュー読んでしまった^^、気になるけど・・、続きどうしようかな・・・

ところで、これ。
上に真紅さんが来てるねー^^ 私の回りでは、かなり評判が良かったんだけど、私はこれ、好きじゃなかったんだ。
イジメのシーンの酷さを描く小説は、もう読みたく無い・・・ってのが一つと、なんか、、コジマという女の子がサッパリ解らなかったの・・。

>汚い恰好をするのは、別れた父を忘れないため。
お父さんと一緒に暮らしたことのしるしのようなものなんだ・・ということを
考えるコジマ。
実際、いないでしょう・・。ちょっと病んでいる感じですらありますから。

ここだよー。
みみこさんの言うとおり、
>でも、現実にいるってことが大事ではなく
きっと、この物語の中でコジマの存在が意味するものを理解する・・っていうことが大事なんでしょうね。
 そうなんだろうね。でもやっぱり私は違和感というか、ありえん~って思っちゃったんだよな。
これだったら、十字架の方が、ずっとずっと私は好きというか、読む価値が(自分なりに)あったよ。

http://blog.goo.ne.jp/latifa/e/66ed6281fe2c189f1c6d453630456de8

latifaさんへ


こんにちは。
遅くなってごめんね。
latifaさんもモンスター手にとっていたのね。
<・・安っぽい感じがして、途中までで挫折しちゃったの>


わかるわ~~
ちょっと、う~んという部分は私にもあったし。
感想でいろいろ書いたけれど、
気分的に不快なところもあったからね~~

<百田さんはボックス!が良かったので、期待したんだけど・・・>

ボックスは、未読なんだけれど、
ボクシングの・・・青春物なのよね?
私は、別の百田作品読んでいて(ハチ・・のお話)
同じく、それが面白かったので「モンスター」にいったの。
系統の違うお話ばかり次々と発表するよね。
とりあえず、今回は最後まで読んだのだけれど。
続けるパワーがあれば是非・・・。



そして「ヘヴン」ね。確か
latifaさんはかなり早い段階でこれ読んでいたよね・・・
予備知識あまりない状態だったのでは。
いじめについても、凄いとわかって手にとって見るのと
何も知らないで読んでみるとでは
感想も違ってきたりするよね。心構えがあるかないかということ・・・。
あと、
これって、
いじめを題材にしていてもちょっと独特な感じだよね・・・
コジマにしろ、百瀬にしろ、論理的に
物事かたっているし、世界観しっかりもっているしね。
ついていくのが大変って気がするわ・・
私は、作者の・・・こういう気持ちでこの作品書いたの・・・・・・というのを知ってから
この本に入ったので、
ああ~~、だからこういう風に登場人物設定したのね・・・と
思える部分がいくつかあったのね。
だからそんなに、いや・・・っていう印象はなかったの。


< そうなんだろうね。でもやっぱり私は違和感というか、ありえん~って思っちゃったんだよな。>

コジマね・・・
普通この年でこういう考え持つ人ってリアルではいないよね。
そこは確かに違和感感じると思うよ。


<十字架の方が、ずっとずっと私は好きというか、読む価値が(自分なりに)あったよ。>


わかるよ・・。
十字架の方が誰が読んでもわかりやすいし
心に素直に響いてくるものね・・・。

あとで伺うね
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