月と蟹 著  道尾秀介

月と蟹 著  道尾秀介


父を亡くし母と祖父と暮らす慎一。
ある日、同級生の春也と「ヤドカミ様」遊びを思いつく。
ヤドカリを神様に見立て願い事を託すのだ。
2人だけの秘密の遊びだったが、真一は
そのうち、母のない少女・鳴海(なるみ)を誘い始める。
最初は怪訝な顔をしていた春也だったが次第に打ち解け
やがて、自分以上に親しくなってしまう。
様々な思いを抱えて、物語は進んでいく・・。





感想


「光媒の花」に続いての道尾作品。
面白かったです・・・これ。

いつも同様、暗くじめりとした世界。
これっという大きな出来事はありません。
分類としては「ラットマン」や「カラスの親指」のように大きく物語が動いてどんでん返し・・
というものではなかったけれど、
こういうのも好きです。



主役が小学校5年生の男の子ということ・・(それも回想シーンではなくリアルタイムのお話)
舞台が鎌倉周辺・・・(好きな場所)ということが
私のツボをくすぐったのかもしれないです…・・笑


この小説の道尾さんのコメントをどこかで読んだとき、なぜ小学校5年生にするのかというのが
ありました。
4年でもなく、6年でもない理由。
なるほど・・・・と感心しましたよ。
私は女で、子供も女ばかりでどうしても
男の子・・というものを、身近に感じたことがないわけです。
当然、小学校男児の微妙な心の変化も、手に取るようにわかっているわけでもないのですよね。
それがこの物語を読みながら
そうなのね・・・・そんなこと考えているのね・・・と
新たな刺激をもらってしまう・・・。
女の子とまた違った感情の変化に、唸ってしまうところがあるんです。
知って良かったって、思えたところも多々あるし。
物語全体が緊張感みなぎっていたので、
結構、入り込んで読んでしまいました。
と・・・同時に、男の子の育て方も大変ね。。。と思ったり。




主人公が小学生なので当然学校生活&家庭生活がクローズUPされてきています。
母親に感じる異性の影、父親の虐待を感じさせる家庭環境、そしていじめにも似た
心ない手紙の数々。
彼らに日常はけっして、幸福に満たされているものではないのです。
理不尽な世界ばかりに取り囲まれて、
そもそもその世界を作ってしまったのは
大人の身勝手さゆえ・・・なんですよね。



小学生の心を描いた作品だと、いつも、重松さんの作品を思い出したりしてしまうのですが、
道尾さんの描く、子供の世界というのははやはり・・・他のどの方とも違った
作品に仕上がりますね。教訓じみた話には絶対なっていないの。
神秘的で、曖昧で、じめり感があるよね・・。笑
(けっして、重松さんの話が教訓じみたというわけでなく、どういったらいいのかな・・あ・・
試験問題に出そうな正統派の作品ということなの。重松作品って。)
面白いですよね。


子供特有の世界として
秘密の遊び場が出てくるんですよね。
そこでは、ヤドガリをあぶり、ヤドガリを殻から引き出す。傍で観ていたら
きっと嫌悪感を覚えてしまうような行為・・・・うぎゃ~~です。
願いをかなえてくれる神様の存在、それを敬うことで
彼らは現実逃避ができていたのかもしれないよね。
そして、救いにもなっていた・・・。
面白いことに、
大人の私たちからすれば、主人公真一の母親が異性と付き合うことにそんなに嫌悪感を感じないのに
この子供の行為には、どこか残酷さ&嫌悪感を感じてしまう。
でも子供のとっては、この生き物を使った儀式は残酷さというものとは無縁のもので
当然嫌悪感をもつことはない・・途中から入った女の子も当然同じような感覚。
彼らにとっては、母親、もしくは父親の情事の方が、胸が痛くなるほどの
苦しみであり、悩みであり、嫌悪感に繋がっているということ。



そうよね・・・子供の目線からはそうなんだ。
親はこれくらいという思いで行っていた行為でも
子供にとっては、精神的な痛手となっているんだな・・・・って。



母親に感じる嫌悪感それは嫉妬感からくるもので
同時に
男の子2人、女の子1人の関係でも嫉妬感が湧いてくる・・。
子供たちだけの関係でも
複雑な感情が湧いてくるの。



難しいな・・・・・この年頃って。



真一のもとに届けられていた手紙の主が判明したときはびっくり。
そうだったんだ・・・・ショックだったな。
また真一が合鍵を盗んで母親と付き合っている男性のクルマに忍び込むシーン。
その行動力にさらに驚き。
そこまでやるのね・・・。




最後はこれまた、驚くような行為をしてしまう真一。


ジャンル分けはあまりしないという作者ですが、
今回は文芸書的な趣があるかなと思いました☆
巷のコメントで賞狙い・・という感想がありましたね。そうかな・・そんな風には思わなっかったけれど。
いつも彼のブログ覗いていますけど、
ちょっとムッとしていましたよね。
私もそこまでいうことないな・・・と思ったわ。
結果として幸運がついてきたら良いけどね。



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