アンダスタンド・メイビー上・下 著 島本 理生
アンダスタンド・メイビー 著 島本 理生
茨城県内の学園都市には母親と2人で住む藤枝黒江(くろえ)。
中学生時に遊びに行った東京の書店で一冊の写真集と巡り合う。
著者の浦賀仁のファンレターを送った彼女は、やがて弟子にしてくれるという彼の言葉を心に
刻みこんでいた。
そんな頃、彼女の中学校に、酒井彌生という男の子が転校生としてやってくる。
素朴な彼に惹かれる黒江。
しかし彼女は忌まわしい過去を引きずっているため、大切なものを見失い、
結果、危険な恋に走ってしまう・・・
感想
島本さんのデビュー10周年記念書き下ろし作品。
一気読みでした。
先が知りたくて、知りたくて、途中でやめることなど、とてもできませんでした。
重苦しい事実が、次から次へと迫ってくるのでへこむことも多かったです。
でも、途中で放り出しちゃあいけないし、真正面から向かわなくてはと
思わずにはいられない・・・。
やはり最終的な着地をみたい、知りたいという願望が強かったし、
なにより、主人公、黒江に、とにかく幸せになってもらいたという気持ちがあったのです。
上巻は黒江の中学校3年→高校進学してからのお話。
母親との関係はぎくしゃくして、家庭的には恵まれていない感じ。
過去に何があったのかは上巻でははっきり描かれていませんでしたが、
中盤にでてくる、幼児期の写真・・・という箇所から、もしかしたら・・・いつものあのパターンなのかしら
と想像できました(下巻ではっきりして。やはり当たりでした・・・・泣)
上巻では学生時代の黒江の交流関係がメイン。
仲の良い中学時代の男女の友達・・・紗由ちゃん、四条君、怜ちゃん、転校生の酒井君。
酒井君とは接するたびに魅力がわかってきて、黒江の気持ちが揺れぎ出すの。
とってもいい感じだったのに・・・・
高校時代ではそれぞれの進路が別になって、
また別の人間関係が繰り広げられるの。
黒江の前にも新たな男性が現れて・・・。
上巻は少女漫画的なストーリーだけれど、文章は素敵なので気にならず読めてしまいます。
黒江を取り巻く男性は、どうみても、口だけの男でしょ・・・と思える(賢治君)男もいて
黒江~~~・・・・、なぜ、そこまで男を見る目がないのか、自分をしっかり持てていないのかな・・・と
女性の身からしてみればいらいらしてしまうことも多々ありました。
彌生君のあとに出会った、羽場先輩はいわゆる不良少年なんだけれど、
放任主義の母親がいたから彼もこんなに荒れた生活に陥ってしまったんじゃあないのかなと
同情する部分もあって、私は基本、いいやつだな・・・と思っていました。
前の彼女に対する羽場先輩の思いも普通の感情だと思ったしね。
でもやっぱり、黒江としては、彼を信じてあげることができなかったし
不安だったんだろうね。彌生君のときも、最終的に自分の苦悩を打ち明けることができなく
悲しい結末を迎えてしまったし。
恋ってなかなか一筋縄ではいかないわ。
あ・・・・それにしても賢治よ。なんてやつ。
そして下巻に。
波乱万丈な茨城での生活とは一転、東京での生活は一見落ち着いているようには
みえるものの、
写真家浦賀仁との同居生活という奇妙なもの。
不思議なことに、ここには男女関係は存在しないの。
浦賀さんと黒江はあくまでも、師匠と弟子という関係なわけなのね。
それに浦賀さんには
過去の傷があって、恋とか、そういうものには縁遠い世界にもはやいるって感じです。
魅力的ですよ、浦賀さんは。
写真家ということで、芸術的なものの見方に
筋が通っている。
そんな彼が保護者のように彼女を見守っているのが素敵に感じたわ。
そしてこの東京での生活に慣れたある日、故郷に戻って再会したのが
彌生君。
さらに大人になっていたわ。落ち着きさにも磨きがかかって。
でも黒江の求める
神様にはなれなかった・・・・。
同級生だものね。彼女のすべてを包み込み、寛容でい続けるには、負担が大きすぎるのかもしれないと
思ったわ。
母親おもいだし、気もきくけど、やっぱり、一人の同世代の男の子だしね。
下巻の中盤以降は
上巻に出てきた幼児期の写真の意味・・
父親の存在・・
母親の秘密・・・
次から次への明らかになって、もう駄目~~状態。
いままでの島本さんの作品でテーマになってきたもののオンパレード。
でも、いままではただそうだった・・・というような結果論だけしか、描かれていなかったものが
今回はどうしてそういう行為に親が走ってしまったのか・・・・
背景が丁寧に詳細に描かれたような気がして
いろいろな場面でそうだったのね・・・・と納得できたところもありました。
ページ数をきちんとさいて描かれている分、
読み手の考えるべきことが多くなったような気がします。
それにしても
父親に会うという勇気は凄いな・・・。
ラストは希望をもった終わり方。
黒江は進むのです。前へ前へと・・
過去を振り切って。
「どうか私だけの神様になって。私を許して。」
この部分を読んだら
自然と涙が出てきたわ。
つらかったんだろうな・・・・・って思って。
全体的に暗い話ですが
前作に比べれば
格段に良いです。前作は読みにくくって・・・。
次回も期待したいです。


茨城県内の学園都市には母親と2人で住む藤枝黒江(くろえ)。
中学生時に遊びに行った東京の書店で一冊の写真集と巡り合う。
著者の浦賀仁のファンレターを送った彼女は、やがて弟子にしてくれるという彼の言葉を心に
刻みこんでいた。
そんな頃、彼女の中学校に、酒井彌生という男の子が転校生としてやってくる。
素朴な彼に惹かれる黒江。
しかし彼女は忌まわしい過去を引きずっているため、大切なものを見失い、
結果、危険な恋に走ってしまう・・・
感想
島本さんのデビュー10周年記念書き下ろし作品。
一気読みでした。
先が知りたくて、知りたくて、途中でやめることなど、とてもできませんでした。
重苦しい事実が、次から次へと迫ってくるのでへこむことも多かったです。
でも、途中で放り出しちゃあいけないし、真正面から向かわなくてはと
思わずにはいられない・・・。
やはり最終的な着地をみたい、知りたいという願望が強かったし、
なにより、主人公、黒江に、とにかく幸せになってもらいたという気持ちがあったのです。
上巻は黒江の中学校3年→高校進学してからのお話。
母親との関係はぎくしゃくして、家庭的には恵まれていない感じ。
過去に何があったのかは上巻でははっきり描かれていませんでしたが、
中盤にでてくる、幼児期の写真・・・という箇所から、もしかしたら・・・いつものあのパターンなのかしら
と想像できました(下巻ではっきりして。やはり当たりでした・・・・泣)
上巻では学生時代の黒江の交流関係がメイン。
仲の良い中学時代の男女の友達・・・紗由ちゃん、四条君、怜ちゃん、転校生の酒井君。
酒井君とは接するたびに魅力がわかってきて、黒江の気持ちが揺れぎ出すの。
とってもいい感じだったのに・・・・
高校時代ではそれぞれの進路が別になって、
また別の人間関係が繰り広げられるの。
黒江の前にも新たな男性が現れて・・・。
上巻は少女漫画的なストーリーだけれど、文章は素敵なので気にならず読めてしまいます。
黒江を取り巻く男性は、どうみても、口だけの男でしょ・・・と思える(賢治君)男もいて
黒江~~~・・・・、なぜ、そこまで男を見る目がないのか、自分をしっかり持てていないのかな・・・と
女性の身からしてみればいらいらしてしまうことも多々ありました。
彌生君のあとに出会った、羽場先輩はいわゆる不良少年なんだけれど、
放任主義の母親がいたから彼もこんなに荒れた生活に陥ってしまったんじゃあないのかなと
同情する部分もあって、私は基本、いいやつだな・・・と思っていました。
前の彼女に対する羽場先輩の思いも普通の感情だと思ったしね。
でもやっぱり、黒江としては、彼を信じてあげることができなかったし
不安だったんだろうね。彌生君のときも、最終的に自分の苦悩を打ち明けることができなく
悲しい結末を迎えてしまったし。
恋ってなかなか一筋縄ではいかないわ。
あ・・・・それにしても賢治よ。なんてやつ。
そして下巻に。
波乱万丈な茨城での生活とは一転、東京での生活は一見落ち着いているようには
みえるものの、
写真家浦賀仁との同居生活という奇妙なもの。
不思議なことに、ここには男女関係は存在しないの。
浦賀さんと黒江はあくまでも、師匠と弟子という関係なわけなのね。
それに浦賀さんには
過去の傷があって、恋とか、そういうものには縁遠い世界にもはやいるって感じです。
魅力的ですよ、浦賀さんは。
写真家ということで、芸術的なものの見方に
筋が通っている。
そんな彼が保護者のように彼女を見守っているのが素敵に感じたわ。
そしてこの東京での生活に慣れたある日、故郷に戻って再会したのが
彌生君。
さらに大人になっていたわ。落ち着きさにも磨きがかかって。
でも黒江の求める
神様にはなれなかった・・・・。
同級生だものね。彼女のすべてを包み込み、寛容でい続けるには、負担が大きすぎるのかもしれないと
思ったわ。
母親おもいだし、気もきくけど、やっぱり、一人の同世代の男の子だしね。
下巻の中盤以降は
上巻に出てきた幼児期の写真の意味・・
父親の存在・・
母親の秘密・・・
次から次への明らかになって、もう駄目~~状態。
いままでの島本さんの作品でテーマになってきたもののオンパレード。
でも、いままではただそうだった・・・というような結果論だけしか、描かれていなかったものが
今回はどうしてそういう行為に親が走ってしまったのか・・・・
背景が丁寧に詳細に描かれたような気がして
いろいろな場面でそうだったのね・・・・と納得できたところもありました。
ページ数をきちんとさいて描かれている分、
読み手の考えるべきことが多くなったような気がします。
それにしても
父親に会うという勇気は凄いな・・・。
ラストは希望をもった終わり方。
黒江は進むのです。前へ前へと・・
過去を振り切って。
「どうか私だけの神様になって。私を許して。」
この部分を読んだら
自然と涙が出てきたわ。
つらかったんだろうな・・・・・って思って。
全体的に暗い話ですが
前作に比べれば
格段に良いです。前作は読みにくくって・・・。
次回も期待したいです。


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