翼    著   白石  一文

翼    著   白石  一文



田宮里江子はキャリアウーマン。
仕事途中に具合が悪くなり、職場近くのクリニックで
長谷川岳志と再会した。
岳志は医師で、里江子の親友・聖子の夫でもあった。
夫婦には二人の子どもがいる。
彼とはある思い出があった。
里江子が学生時代、聖子から恋人として紹介された岳志。当時里江子は21岳志は27だ。
初対面の翌日、里江子は岳志から
「僕と結婚してください」「今日聖子とは別れます」と明言される。
あまりにも唐突で驚く里江子。
「きみと僕とだったら別れる別れないの喧嘩には絶対にならない。一目見た瞬間にそう感じたんだ」・・
聖子との関係も考え、里江子は何の応えもせず、そのまま・・・
もちろん、2人、岳志と里江子は深い付き合いもなく、そのまま別れ。
岳志は聖子と予定通り結婚。
結婚した二人は渡米。
就職した里江子は仕事で忙しくしていた。
そんな2人の久しぶりの再会。
あのころとまったく変わっていなかった岳志。
それどころか、ボクの相手はあなただと
確信を深めたと言われてしまう。




感想

白石さんの新作。テーマ競作小説。
6人の作家たちが「死様」をテーマにして書いています。



男女の結びつきが描かれていますが
その中でもちゃんとテーマである死・・・そこから発展して
どう我々は生きていくべきかまでが問いかけられて
今回もずど~~んと心に響く小説になっていました。

男女がでてきますが、
恋愛にありがちな、濃いめのラブシーンはありません。

縁や運命・・・に重点を置いて
男女の結びつきを考えているみたいです。


そういうのもありかと…思わせるだけの説得力はあります。


自分の直観を信じて生きたい・・・・


それが生きていくうえでの
エネルギーになるのかもしれません。



色々な人物が出てくるのですが
当然万人が共感できる考えばかりをもっているわけではありません。
私だって、
この彼氏、岳志の考え方にやっぱり戸惑うこともあると感じたし
田宮里江子の弟伸也の元奥さんの考え→子供について
など、う~んと思うことはありました。


ただ、これだけ、自分の生き方、選択に自信を持って
他者に意見できるだけの、人物がうらやましく感じます。



今回も小説良かったです。
ありきたりではなくまさに白石さん独自の視点で考えさせられました。


小説の中に出てくる
徳岡孝夫の「妻の肖像」という本も興味深かったです。

そして一番印象に残った部分を
自分なりに書きだしてみました。原文通りでなくまとめた感じで。


田宮里江子には元上司、城山という方がいた。
尊敬していた人物だがある日突然会社をやめ、そのことは江里子の疑問でもあった。
会社の坂巻とうまくいかないのは、里江子が城山の息のかかった
部下だったということに理由があるのか。そもそも城山と坂巻はどういう関係があるのか
(それは小説の中で明らかになるが・・・)


田宮里江子は城山が会社を辞める前に2人で
バーで過ごした時に、交わした会話を思い出していた。


城山が言う
「人は死んだらどうなるか」
「完全な無」と答える江里子。
彼女は死は「記憶の消滅」と思っていた。
さらに・・
人の死は関係者全員の死をもって完全な無になる、という。

つまり、
自分が完全に死ぬためには自分のことを知っている人が死に絶える必要がある。
つまり自分は自分と、自分の関係者全員がなくなった瞬間に完全に死んでしまうのだ。
それが完全な無であるのだ。


自分という人間が存在したことを誰一人覚えていなくなったらそれこそ自分が生まれてきたことが
まるまるなかったことになってしまう。
だから自分が生きた証を残すため、日記や本や、銅像などを飾って
完全な無に飲み込ま輝るのを避けたいからではないか。

自分のことを最も深く理解できるのは決して自分自身とは限らない。
だとすると自分という人間を最大限に把握している別の人がいて、もしもその人が消滅すれば
「自分というデータ」のまさに中枢部分が失われることになる。

それは自分自身の死よりもさらに致命的な死とはいえないだろうか?


バーでの会話にしては重いです。


そしていつもながら小説にこうやって、生と死を絡めてくるところは
興味深いです。


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死と記憶との関係について~『翼』

 浜松光学の課長代理として法人営業に携わる田宮里江子は、長谷川岳志と 十年ぶりに再会する。里江子の親友・聖子の恋人だった岳志は、里江子に初め て会った翌日、唐突にプロポーズしてきたのだった。 ...

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残暑お見舞い申し上げます

みみこさん、こんにちは! この本、私も早速読みました。
相変わらず白石さんですね(笑)。この独特の理屈っぽさ・・・。
岳志のキャラクターにはちょっと疑問符もつきますよね。。
あんなに唐突にプロポーズされても戸惑う女性がほとんどだろうし。
直感に従う、っていうのもなかなか勇気が要ることですよね。

でも、子どもについての記述は私が常々、薄々感じてたことでした。
お子さんのいない御夫婦のほうが夫婦仲がいい、って思いませんか?
自分の周りはそうなんですよね。。
子どもができたら、夫婦の関係って変わってしまいますよね。
それは当然のことで別に悪いことじゃないんだけど・・・。う~ん

こういう、考えさせられる作風にハマってます。
これからも白石さんの作品読んでいきたいです。

真紅さんへ


こんにちは。
今日も暑いですね~~

白石さん、新作もやっぱりいいですよね★

<この独特の理屈っぽさ・・・。>

うんうん…笑


<あんなに唐突にプロポーズされても戸惑う女性がほとんどだろうし。
直感に従う、っていうのもなかなか勇気が要ることですよね。>

ですよね~~
奥さんの言い分も、わかりますし。
妻側からしたって、夫の申し出には困ってしまいますよね・・・。

<お子さんのいない御夫婦のほうが夫婦仲がいい、って思いませんか?
自分の周りはそうなんですよね。。>

そうかもしれませんね・・・
やっぱり相手個人をしっかりみているからでしょうね。
どうしても夫婦になると
子供の話ばかりなってお互いをしっかり見つめることができなくなりますからね。
それは、プラスでもマイナスでもありますけど・・・♪

<こういう、考えさせられる作風にハマってます。>

私も~♪
薄っぺらな感じじゃないところが良いですわ。

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