幻影の星    著  白石 一文

幻影の星    著  白石 一文



奇妙な体験をした2人の男女のお話。

(あらすじは感想にも・・)



感想  




 震災後に書かれた作品。当初は自然をテーマにした作品を・・・と思っていたそうですが
震災を経験し、そのテーマで書くことをやめてしまったとか。
<「自然との親和性」どころじゃなかった。>といっておりました(インタビュー読みました)

その結果、被災地にご本人が行き、そこで感じたことをそのまま小説にということで
こういった作品が仕上がったそうです。

1月に観た園監督の映画もそうですが、
今だから発信したい・・・・という思いが書き手&作り手にはあるのかもしれませんね。



で・・・小説ですが、初読みだとやはり厳しいかも。
こういう作品書く人だからとわかっていれば、素直に受け止められる(理解できるとはまた別)
かもしれませんが、そうでないと、なんなの・・・・と、投げ出してしまいそうになるかも
しれませんね。

結局のところ、ストーリーとしては、面白い・・・という話ではないと思うし。
冒頭に、SFチックな事件が起こり、その件をめぐっていろいろ話は繋がっていくけど
最終的に、その謎が解明されていき、すっきりするという風にはなっていないのよね。
もちろん、過去作品読んでいれば
単なるミステリーで終わるわけはないだろうなと察しがつくので
まあ・・・こんな感じでもありでしょ・・・・と納得できるけどね。




物語だけど
物語ではないような・・・そういう小説。

作者の感じていることを、そのまま、主人公がかわりに語っているという・・・そういう世界観。
そして、語っていることが、正直、小難しい。
平易な言葉で表現されているものの、読み手が、考えて、突き詰めていこうとすると
ちょっと、苦しくなるような感じ。
哲学的な語りが・・・これもみよがしに、沢山。あと引用文献等も多し。
でも、個人的にはそういう部分は好きなので
私はついていきました・・・・・★

今回の主人公はエリートではなく
専門学校卒で某会社に引き抜かれ、東京で契約社員からの出発。母親は若い男性と結婚しているので
故郷(長崎)へはあまり帰っていない。
付き合っている人は会社の同僚。彼女は結婚経験があるのだが、セックス恐怖症とかで、正式なセックスは
していない関係(妙な感じ…笑)
そんな彼の元にある日、母親から電話がある。
彼の名前の入ったバーバリーの青いコートが届けられたと。
地元に帰ってきているのかと・・・。
彼は最近帰っていないのに、なぜ自分のコートが長崎にあるのか。
第一、その青いコートは今手元にあるのに・・・・???。もう一人の自分がいるのか


一方、諫早で会社員をしながら夜はスナックで働く女性も登場し、同じような経験をする。
携帯電話がある場所でみつかるのである。本物とコピーの2つの携帯が手元にある。
どうして・・・・。
この女性は、ある社長と不倫関係にもある。またこの社長が変態で、まあ・・いろいろ彼女に迫る…笑。
(どうしてこう、白石さんの作品は、いわゆる、正統派でない性描写になるのか、そこのところは
いまだ、解せないな・・・女性的にはうん?)

最終、同じような奇妙な体験をした2人は再会しあうという話の流れになっています。


さて、引用文献多しの部分ですが。
よく作者の作品にはそういったもの出てくるんですが毎回
私は、調べたりするんですよね。
そういった本があるのか・・映像があるのか・・・ってね。
今回も「世界平和はナマコとともに」という東工大の本川達雄さんの作品が引き合いに出されていたので
調べてみました。面白そうです・・・・ね。

また、隕石の話。NHKスペシャルで巨大隕石が追突した映像とかね。
たしかに、こういうものみると、感じるものがいろいろ出てくると思うな・・・。


梅枝母智夫の「どうせ絶滅の星」という文章も面白かったので、食い入るように読んでしまったしね・
(これは架空でしょう・・ふざけた名前だし・・・・笑)
他にも、
いろいろ理屈っぽいことが書かれていてやっぱり、
好みがわかれるかな・・・というところ。


死ぬことの意味・・
生きることの意味。
そういうこと沢山読みますと気が滅入ることもあります。
159~60ページあたりで、死について延々と語ってあり
そこの部分は複雑な心境で読みました。
<死こそがすべてなのだ。人は生きて生きて生きるのでなく、
死んで死んで死ぬ。人は生きることを運命づけられた存在ではなく、死ぬことを運命づけられた存在なのだ。>
(159)

<時間の罠にかかった僕たちは、生を言祝ぐあまり、死の偉大さ、死の真実の意味、死の底深さや美しさをすっかり忘れてしまっている。死という永遠こそが束の間の生を約束してくれていること、死こそが生の
母体であることを僕たちはいつの間にか見失ってしまっているのだ。>

思わず考え込んでしまうでしょ?いろいろ思い巡らせるのは私だけか・・・・笑
こういうところは落ち込むようなことでなく
本来のありようを知り
逆に、生の意味を考えさせるのではないか・・・そういう風に思いました。


<時間の存在さえ否定できれば僕たちは死によって
また生まれる前の世界へ帰ることができるのだ・・・>
(95)

この箇所も印象的でしたね。

この小説のキーワードは、イリュージョン。
現実って自分が思っているものがすべてだとは限らないかも・・・とさえ
思えてきてしまいますね。
今が幻影なら、どこかでまた死んだ人がいる世界があるのかもしれないとか・・・
ルルドも
再び登場したし・・・・。
まあ・・・哲学的なことは
答えの出ないものですからね。どう考えても良いということで。



毎度毎度、白石作品ではそうやって、考え抜いているので
今回も興味深かったです。





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みみこさん、こちらにもお邪魔です~。
この小説、相変わらずの白石節ではありましたが、ちょっと「迷い」というか、白石さんご自身も消化しきれていない部分があるんじゃないかな。。と感じてしまいました。
正直、まだテーマとして時期尚早だったんじゃないかな? と私は思います。
やはり、あれだけたくさんの人命が失われた災害だったので、なかなか一年じゃね。。
復興もまだまだだし、瓦礫処理とか難問山積ですよね。。
とは言うものの、白石さんの小説はもちろんこれからもチェックしていきたいと思ってます♪

真紅さんへ


こんにちは。
世之介と同時期に読んだので
どうしても比べてしまうところあって・・・。
入り込みやすいのはやっぱり世之介の方なんだよね。
白石さん・・迷いが・・・・
なるほど・・・。
震災を受けて何か表現しなければという、思いみたいなのは
すっごく、感じとれましたけど。
SFじみた設定なので、ついてこれない人も多いかな・・・と思いました。
でも次回も読もうかな・・・・笑
また、お付き合いお願いしますね。
あ・・・川上さんの作品も真紅さんのところを参考にして
徐々に手を出しているんですよ。
またよろしくね♪

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