アジアンタムブルー
アジアンタムブルー 著 大崎善生
最愛の人葉子が亡くなってから・・
僕はいつもデパートの屋上で空を見つめる。
彼女を亡くした喪失感から抜け出せるのは
いつの日か・・・。思い出すのは自分自身の過去。
そこにはいくつもの死の影が隠されていた・・
感想 パイロット・フィッシュの文体に惹かれて
こちらの作品にも手を出しました。
結論から言うと・・私はこちらの作品の方が好きです。
最愛の人を看取る・・・主人公。
彼の中には、死というものが大きくのしかかっていきます。
世界中で愛を叫ぶ~を思い起こさせる内容ですが・・私はそちらの方を
まったく読んでいないので、この手の内容としては新鮮な気持で
読むことができました。
前半は主人公が送ってきた人生を振り返るお話。
その中で、どんな人物と出合って、どういった生き様、死に様を
目にしていたかが描かれます。もちろん、その中には最愛の人
葉子との出会いも、描かれていくわけです。
後半は葉子との最後の日々・・ニースでの生活がメイン。
つまり尊厳死ともいうべき、納得のいく死を迎えてあげる・・
という2人だけの世界が描かれます。
パイロット~を読むとわかりますが、ほとんど続編かと思える
キャラの設定です。アダルト雑誌の編集者、名前までもが
同じ、人間関係も一部重複しますが、まったくの別ストーリーと
なっています。
単純に、何故そこまで、SM雑誌とか、アダルト関係のお仕事に
拘るのか・・・それも2本続けて・・・ちょっとわからないところでもありますが。性的なお仕事といえども、そこに携わっている
女性達はただエロさだけを求めているというわけではないって
ことかしら。彼女らも、それにかかわる人間も特別視される
人々ではなく・・疑問や悩みをもつ、なんら変わりのない人間として
描きたかったのかしら。また死ということがテーマゆえ、
生きる実感として一番感じるのが・・・性だという意味での
対比かしら。そんなことを悶々と感じながら読み進めて
いきました。
彼が葉子を失ってから行き続けるデパートというのが
吉祥寺。そもそも中央線沿線には非常に馴染みがあるので、
すんなりその世界に入っていけました。懐かしいのよ。
彼が出会う女性・・・美術部の先輩にしろ、夫を失った女性にしろ・・
とても印象的ですよね。彼になんらかの影響を及ぼして
挙句の果て、風のように去っていく・・・・・。
まさに・・・人生色々って感じ。
お仕事柄、当然アダルト世界の描写が多いけれど、
そんなの気になりませんでした。
一番気に入っているのはね・・・彼の死生観。
死というものを・・・どのように考えていたのか・・・
また失ってしまった人の喪失感をどのように自分の中で
処理していったか・・・その描写に非常に惹かれました。
私は・・死がどんなものか幼少の頃から非常に興味があり、
いつも考えても理解できないものとして感じていました。
ここは主人子が中学生の頃悩んだ・・・と書いてある部分と
同じ心境だったんですよね。
そして主人公はあるコラムを読むことで、精神的な安定を
覚えます。
引用されるのは一編のコラム
<中国の古い言い伝え。千年に一度空から天女が降りてきて、
三千畳敷きの岩を羽衣で一掃きする。そしてその岩が摩擦してなくなるまでの時間を永遠という。
宇宙が無限である意味はただ一つ。膨張をつづけているというに
他ならない。>
今まで、漠然としか見えてこない永遠というものが、少しだけ正体を見せてくれた内容です。言葉にするとこういう意味合いなんだな。
そしてそこから発展して、直接的に死の意味はわからなくても、
永遠の意味を知ることで、死のイメージから、マイナス的なものを
排除できたような気がします。永遠がある限り、死は恐れるだけの
ものではないと・・・。それで終りではないような気がしたから。
う~~~ん、説明しづらいのですけれど、
目先だけでのことでなく、大きな時間間隔で物事を考えると
気持が楽になるっていうことかな。
痛みを感じたことがあり、生きることに不安を感じた時には
ちょっと手をとってみてほしい本だと思いました。
描かれる世界に入っていけない人には、
ダメかもしれませんけどね・・
私は好きでした。
後半の葉子の死については、かなり綺麗な感じの描かれ方です。
ほとんど理想的な死かな。周りの人々も皆温かいし。
ある意味、そういう境地に陥ることができる、状況が
うらやましかったです。もっと、現実は厳しいだろうしね。
優しい人であり続ければ、死ぬことは怖くないといった葉子。
希望に満ちたラストが心地良かったですね。
題名のアジアンタム・・・は本を読む中で確認してみてくださいね。

最愛の人葉子が亡くなってから・・
僕はいつもデパートの屋上で空を見つめる。
彼女を亡くした喪失感から抜け出せるのは
いつの日か・・・。思い出すのは自分自身の過去。
そこにはいくつもの死の影が隠されていた・・
感想 パイロット・フィッシュの文体に惹かれて
こちらの作品にも手を出しました。
結論から言うと・・私はこちらの作品の方が好きです。
最愛の人を看取る・・・主人公。
彼の中には、死というものが大きくのしかかっていきます。
世界中で愛を叫ぶ~を思い起こさせる内容ですが・・私はそちらの方を
まったく読んでいないので、この手の内容としては新鮮な気持で
読むことができました。
前半は主人公が送ってきた人生を振り返るお話。
その中で、どんな人物と出合って、どういった生き様、死に様を
目にしていたかが描かれます。もちろん、その中には最愛の人
葉子との出会いも、描かれていくわけです。
後半は葉子との最後の日々・・ニースでの生活がメイン。
つまり尊厳死ともいうべき、納得のいく死を迎えてあげる・・
という2人だけの世界が描かれます。
パイロット~を読むとわかりますが、ほとんど続編かと思える
キャラの設定です。アダルト雑誌の編集者、名前までもが
同じ、人間関係も一部重複しますが、まったくの別ストーリーと
なっています。
単純に、何故そこまで、SM雑誌とか、アダルト関係のお仕事に
拘るのか・・・それも2本続けて・・・ちょっとわからないところでもありますが。性的なお仕事といえども、そこに携わっている
女性達はただエロさだけを求めているというわけではないって
ことかしら。彼女らも、それにかかわる人間も特別視される
人々ではなく・・疑問や悩みをもつ、なんら変わりのない人間として
描きたかったのかしら。また死ということがテーマゆえ、
生きる実感として一番感じるのが・・・性だという意味での
対比かしら。そんなことを悶々と感じながら読み進めて
いきました。
彼が葉子を失ってから行き続けるデパートというのが
吉祥寺。そもそも中央線沿線には非常に馴染みがあるので、
すんなりその世界に入っていけました。懐かしいのよ。
彼が出会う女性・・・美術部の先輩にしろ、夫を失った女性にしろ・・
とても印象的ですよね。彼になんらかの影響を及ぼして
挙句の果て、風のように去っていく・・・・・。
まさに・・・人生色々って感じ。
お仕事柄、当然アダルト世界の描写が多いけれど、
そんなの気になりませんでした。
一番気に入っているのはね・・・彼の死生観。
死というものを・・・どのように考えていたのか・・・
また失ってしまった人の喪失感をどのように自分の中で
処理していったか・・・その描写に非常に惹かれました。
私は・・死がどんなものか幼少の頃から非常に興味があり、
いつも考えても理解できないものとして感じていました。
ここは主人子が中学生の頃悩んだ・・・と書いてある部分と
同じ心境だったんですよね。
そして主人公はあるコラムを読むことで、精神的な安定を
覚えます。
引用されるのは一編のコラム
<中国の古い言い伝え。千年に一度空から天女が降りてきて、
三千畳敷きの岩を羽衣で一掃きする。そしてその岩が摩擦してなくなるまでの時間を永遠という。
宇宙が無限である意味はただ一つ。膨張をつづけているというに
他ならない。>
今まで、漠然としか見えてこない永遠というものが、少しだけ正体を見せてくれた内容です。言葉にするとこういう意味合いなんだな。
そしてそこから発展して、直接的に死の意味はわからなくても、
永遠の意味を知ることで、死のイメージから、マイナス的なものを
排除できたような気がします。永遠がある限り、死は恐れるだけの
ものではないと・・・。それで終りではないような気がしたから。
う~~~ん、説明しづらいのですけれど、
目先だけでのことでなく、大きな時間間隔で物事を考えると
気持が楽になるっていうことかな。
痛みを感じたことがあり、生きることに不安を感じた時には
ちょっと手をとってみてほしい本だと思いました。
描かれる世界に入っていけない人には、
ダメかもしれませんけどね・・
私は好きでした。
後半の葉子の死については、かなり綺麗な感じの描かれ方です。
ほとんど理想的な死かな。周りの人々も皆温かいし。
ある意味、そういう境地に陥ることができる、状況が
うらやましかったです。もっと、現実は厳しいだろうしね。
優しい人であり続ければ、死ぬことは怖くないといった葉子。
希望に満ちたラストが心地良かったですね。
題名のアジアンタム・・・は本を読む中で確認してみてくださいね。

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