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ぼくたちのムッシュ・ラザール   

ぼくたちのムッシュ・ラザール   (2011  カナダ)

MONSIEUR LAZHAR



監督: フィリップ・ファラルドー
製作: リュック・デリー
キム・マクロー
原作戯曲: エヴリン・ドゥ・ラ・シェネリエール
脚本: フィリップ・ファラルドー
撮影: ロナルド・プラント
編集: ステファヌ・ラフルール
音楽: マルタン・レオン
出演: フェラグ バシール・ラザール
ソフィー・ネリッセ アリス
エミリアン・ネロン シモン
ブリジット・プパール クレール
ダニエル・プルール ヴィアンクール校長
ルイ・シャンパーニュ
ジュール・フィリップ



第84回アカデミー賞で外国語映画賞ノミネート作品。
カナダ、モントリオールの小学校。
ある朝、教室で担任の女性教師が首を吊って死んでいた。
偶然その姿をみてしまった
シモンとアリス。
学校側は後任の教員として
募集広告を見てやってきたというアルジェリア系移民の男性、バシール・ラザールを採用。
彼の授業はやや時代遅れで
戸惑いをみせる生徒たちもいたが真摯に接するラザール先生に
いつしか、馴染むようになっていった。
子供たちはそれぞれ死について心を悩ませていたが学校は上辺だけの対処の仕方。
ラザールはそんな子どもたちをなんとか救ってあげたいと思っていたが
とうの彼も心に深い闇をもっていた・・・



感想

2012年のアカデミー賞の外国語映画賞ノミネート作品って
☆別離 アスガル・ファルハーディー イラン
☆闇を生きる男 ミヒャエル・ロスカム ベルギー
☆He'arat Shulayim ヨセフ・シダー イスラエル
☆ソハの地下水道 アニエスカ・ホランド ポーランド
☆ぼくたちのムッシュ・ラザール
だそうで・・・・。(この中で別離が賞をとりました。)
他をまだチェックしていないのだけど、
↑もさすがノミネートされただけあります!!
この作品、良かったですよ。
地味映画としても推薦したいわ~~。
ほとんど教育現場が舞台で
起こりゆる問題もいまの日本とかぶる部分があり、タイムリーな時期に見たこともあって
余計心にずしんときました。
教育いうものは、どういうものか、ちょっと考えてしまいますね。
教育者の人にも観てもらいたい・・・。
キャッチコピーの➪いちばん大事なことは、教科書には載ってない
これ、星の王子様のセリフみたいで
印象的ですね。

映画自体は
とても地味です。
教師の自殺というセンセーショナルな話題から始まりますが、
そのあとは、その事件を受けての周りの人々の反応を淡々と描くのみ。
大人たちはどうにかして、この問題を早めに何事もなかったように片付けたいと願う・・・
一方の子どもたちは、そんな大人たちの反応を敏感に感じ
あえて、その問題を口にしようとはせず、かえって
苦しみを苦しみのまま、抱えてしまっている様子。
そんな子供たちの心を少しでも楽にしてあげたいと
思うのが、このラザール先生。
なぜなら
大好きな人を失ってしまうという辛い経験を
彼もまた背負っていたから・・・。

だからといって
ハリウッドによくあるような
心に傷を負った子供たちを
主人公である代用教員が、なんとかしてくれて、めでたしめでたし~~~ということになったりしません。
すぐさま、結論が導かれるわけではないんですね。



結局のところ
何一つ、問題がはっきり解決したということにはなっていないのです。
でも少しでもこの先生の影響力があったと信じたい・・・
彼と接した子供たちは
自分たちの力で前に進んで行けるかもしれないという
希望がみえる、
そういうお話の流れになっていたんじゃないのかなと思いました。


こちらが受け止めなければならない問題はとても大きく
観終わったあとの余韻の深さは半端なかったです。
ユーモラスな部分もあるので
堅苦しくはないんだけど、
後半にむかっていくにつれて、
次々と新たな事実がわかり、ラストでガツンときてしまったという感じです。

そしてラストシーンが素晴らしい・・・・。
思わず、泣いてしまいました・・・・。

やっぱり映画はラストシーン、大切ですよね。


なぜ担任の先生は自殺したのか。
この理由はわかりません。
シモンは、自分がその原因であると思いこみ、
相当苦しんでいたようです。
担任の先生はシモンのことをどう思っていたのか。
シモンの話から私たちは、少しばかり想像力を働かせなければいけません。
シモンを贔屓していたからか、
抱擁したことでシモンになじられ、学校側から様々な憶測をぶつけられて落ち込んでいたのか。
はたまた、学校内の問題だけでなく家庭内で問題を抱えていたのか。
(夫は妻の遺品をとりに来ないということから、この担任先生と夫との関係はどんなものなのか謎)
理由は観る人が想像力を働かせるしかないのです。
そもそも理由など、考えてもわからないものかもしれませんね。
死そのものが、暴力であるという
少女の意見もありましたが、なるほどな・・と思います。


一方
ラザール先生もまた、誰にも言えない秘密を抱え、悲しみを乗り越えられずにいるのです。
ラザール先生は
母国アルジェリアで家族を亡くしていました。
(実は先生という職業は妻であり、彼自身はお店の経営者。教師19年の肩書はなしでした・・)
彼は愛している人を亡くしたという経験があるから
子供たちの心に寄り添いたいと願ったのかもしれません。


そんな先生ですが、
隠していた事実が学校に明らかになり
とうとう・・・・悲しい結末が。

観る人はどういう展開になるのか想像ができます。
子供たちにその事実をさりげなく説明する先生。
ある話をします。
オリーブとさなぎというラザール先生が話してくれる寓話。
その意味は観ている人もどういうものか感じとれます。
そして
生徒の一人
聡明なアリスも同じように感じとるのです。

ここからが・・・・グッとくるの。


抱擁は禁止だと言われた学校。
肉体的な接触を一切避ける事。
暴力とみなされるような行為はすべて禁止。
教師としてはやりにくい状態でしょう。
どこまでが問題視される行為かという線引きがね、難しいと思うの。
生徒と教師の関係は
なかなか難しい状態になっているのでしょう。
これは日本でもそうだよね。
どこまで立ち入っていいのか・・。



カナダ映画ですが、台詞は
全部フランス語。
ケベック州の公用語はフランス語だそうですね。
ちなみに
制作者の
リュック・デリーとキム・マックルーは『灼熱の魂』に続けて、二年連続でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされているんだそうで。
そうなんだ!!・・・とこの事実にも驚き。

苦しい時は
吐きだすこと。
先生も生徒も同じ。
まずは人間として大事なことを忘れないでほしいな・




子供が可愛すぎ↓
lmusshubani-ruazhar_03.jpg
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「ぼくたちのムッシュ・ラザール」 感想

フランス舞台と思いきや、カナダのモントリオールのお話でした。

ぼくたちのムッシュ・ラザール(2011年カナダ)

カナダの小学校が舞台。 生徒が登校してきた朝、担任の先生が教室で死んでいた。 動揺する子供たち。 代わりにやってきた先生は、アルジェリア移民のラザール。 前の先生とは違うや

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後でじわりと迫る作品

おはようございます。

随分前に劇場鑑賞し、記憶も薄れてますが、
みみこさんの感想を読み、またよみがえりました^^

ラスト、私は「え?これで終わり?」でした。
予告でとても感動していたので
自分の中で最初からプレイバックしたほどでした^^;
時間が短いせいもあり、余計にそう思いましたが、
丁寧に物語の方向を導くよりも
観た人に考えさせるああゆう描き方は好きです。

でも時間がたつにつれ、
他のサイトでいろんな意見を聞くたび、
徐々に考えさせられることがじわじわ押し寄せてきた作品でした。

家庭にあっても、教育現場にあっても、
子供の心を受け止めて、
子供には言葉では伝えきれないから、
ちゃんと抱きしめて思いを伝えることは大切だと思いました。

今の学校現場は昔と違っていて、
ほんとに大変だと思います。
いろんなことを制限するならば
学校という場はいらないような気すらします。
勉強を教える場と、社会性を教える場は別でとか・・。

子供が「現役」でなくなった私には
アバウトで理想的なことしか言えませんが、
昨今のニュースを見るたび「何かヘンだよ」と感じてしまいます。


(久々に映画鑑賞してきます。名作「八月の鯨」です。スクリーンで観るのが楽しみです)

Mamさんへ


こんにちは。
おお~~Mamさん劇場鑑賞されていたのですね。
公開時もあまり宣伝しなかったのではないでしょうか。
(私が知らなかっただけか・・・・)
私は公開すら全然気づいていませんでした・・
でもさすがノミネート作品ですね。
良かったです。


そうですね・・・・ラストはえ・・って感じもしますよね
こういう、え・・・!!って終わるラストって
意外と多いですよね
その分、あとから
じわじわくるのですが・・。

<丁寧に物語の方向を導くよりも
観た人に考えさせるああゆう描き方は好きです。>

私も・・・。



<徐々に考えさせられることがじわじわ押し寄せてきた作品でした。>

そうですよね。
いろんな意見出てきそうですよね
とくに教育問題だし


<今の学校現場は昔と違っていて、
ほんとに大変だと思います。
いろんなことを制限するならば
学校という場はいらないような気すらします。
勉強を教える場と、社会性を教える場は別でとか・・。>


そうですよね・・・
いろんな人が満足できる教育現場っていうのは
なかなか難しいと思いますし・・・。

最近は子供や親の感覚が
昔とは少し違ってきているように感じますので
教師も大変かも・・と思います。
まあ・・教師自体もいろいろいると思いますが・・・・笑


「八月の鯨」・・・・
UPされましたね
関東でも
この間、宣伝していました。
実は私…ビデオでも観たことないんですよ。
名作だと聞いているのですが
なかなか機会がなくって。
主人公がお年を召した方なので
私もいろいろ思うことが出てきそうな作品・・・
最近、人生を考えるような作品をみると
より・・・
身近に感じるようになりました。
恋愛映画も良いけど
やっぱりドラマ性のある作品は見ごたえがありますよね~~~



やっと

みみこさん~こんにちは!
やっと進学先が決まったよー。
結局、国立は前期後期ともダメだったんだ・・・残念・・・。
2回とも同じところを受けてダメだったから、もうしょうがないー。
長かったわぁ・・

ところで、この映画。
なんだかんだで、簡単に感想アップしちゃった。
私は見た直後は、アッサリ目な、特に印象に残る映画じゃないな・・・って
思ったんだけど、暫く経ってから、もしかしたら、なんだかんだで、後に残る作品かも・・・と思ったりもしたので(^^ゞ

>リュック・デリーとキム・マックルーは『灼熱の魂』に続けて、二年連続でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされているんだそうで。

そうなんだー。灼熱~は未見なの。
今度見てみるつもりなので、楽しみ!

latifaさんへ


こんにちは。
レス遅くなってごめんね。
受験お疲れ様です。
色々頑張って本当に偉いわ・・。
最後ま諦めずに挑戦したっていうことに価値があると思うよ。
進学先で是非是非楽しく充実した大学生活送ってほしいわ・・・
latifaさんも学校始まるまで娘さんとゆっくりね・・。
あ・・といっても入学式は大学って早いのかな・・・。
映画もこれからは自由に観れるね。


で・・これ。
確かにアッサリだよね
でも私は意外とズワ~~ンと来たかな。
教師系の映画は好きなので。
あと、子供が可愛いから・・・・笑

灼熱の方は
こんなにあっさりじゃあないのよ。
もっと重くて、衝撃的。
あまり予備知識いれずに
チェックしてみてね。

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