どれくらいの愛情 著 白石一文

どれくらいの愛情 著 白石一文


「20年後の私へ」
「たとえ真実を知っても彼は」
「ダーウィンの法則」
「どれくらいの愛情」
3本の中篇に書き下ろしの長編一本(最後のお話)
を併せた作品集。

白石作品・・7作目です。
残り2作(不自由な心&すぐそばの彼方が未読)もいつか
読もうと思っております。それほど、気に入っている作家さんなのです。女性にはどちらかというと好まれないかもしれませんが
私は好き。共感しない主人公がいても白石ワールドが好き
なのです。

白石さんはデビュー以来大体年に1作のペースで作品を発表してきたのですが今回↑の4作と、別本の「もしも、私があなただったら」を
たして5編。ほぼ一年の間に続けざまに書き、発表してきたようです。

あとがきにもあるように、描きたかったのは
「目に見えない確かさ」だとか。
そういえば、今までの作品でも、「運命」とか「神」「お告げ」など
神秘的なことが書かれていましたね。

こういった神秘的な部分は
好みが分かれるところでもあるのではないかなと
思っております。
非科学的なことを信じるというわけではありませんが
作品に表れる、言葉の数々には、やはり頷きたくなることが多く
読み入ってしまいますね。

一貫して自己というものの存在を追求していく姿勢に
いつもひきつけられるからなのだと思います。


一番気に入っているのは
最初の
「20年後の私へ」
考えさせられるものとしては
最後の
「どれくらいの愛情」というところでしょうか。


「20年後の私へ」・・
  学生時はスチュワーデス志望であった岬だが
結局、今は航空会社の営業推進本部勤務。
あるパーティで3年前に別れた元夫と出会う。
夫への未練はないのだが、その当時の記憶が蘇ってくる。
そんな彼女だが現在、お見合い相手の男性と付き合い、
結婚を意識している。そしてある日、プロポーズを受けるのだが・・


  ★キーワードは、「手紙」と「映画」。
映画も好きなので、主人公の岬に同僚の安西晴夫がレンタルしてあげる
映画はすべて鑑賞しておりました。
だからなのか・・この安西のキャラには感情移入できました。
こういう作品をセレクトできる男性っていいじゃない・・という評価。
ちなみに妻夫木聡に似ているのも気になりますね・・笑
岬は渋めのルックスが好みだそうですが、私も同じです。
ただし、私は、そんなに面食いではありませんね。
普段、白石作品の男性には色々ケチをつける(いや・・共感できなかったりするということですね)が、このお話では
そんな思いはなかったです。
もちろん、主人公の岬も同様。ミーハーのところもありますがが許せます。
表題どおり、二十年前の“私”が書いた手紙が
不意に届いて、彼女の心の中に何かが
生まれる・・というようなストーリーなのですが。

この手紙に私、感動してしまいました。
年齢的にもダブル部分があったのかもしれませんが
自分が過去の自分によって励まされるという図式は素直に心に
響きますね。

「だから、あなたは決して1人ではありません。
1人だと思ったときは、二十年前のこの私を、いまから一年後の私を、
二年後の私を、三年後の私を・・どうか思い出して下さい。
そういうたくさんの私を決して忘れないでください。
そして、そんなあなたのそばには、きっとあなたのことを
心から愛してくれる人がいるはずです。私はそのことだけは絶対に
信じています。」(本文より)

誰かを幸せにすること・・
そんな思いを2人が同時に感じたら
いい関係が築けるのだと思います。



「たとえ真実を知っても彼は」・・・
出版社に勤める男が主人公
なので、私にとってはかけ離れた世界ね・・と
感じました。読む分には面白いのですが実際問題として
これはないでしょう・・・と感じずにはいられません。
そして、こんな複雑な人間関係の当事者なら
イヤですね。人間不信に陥ってしまいそう。
この真実を許せるものなのか・・・・本当に。そこが疑問です。




「ダーウィンの法則」・・
本当に好きな人は絶対に放しては
いけないのですよね。肌と肌があうという大事なコミュニケーションを
もっと大切にしなくてはいけないとも思いました.
ちょっとエッチっぽいところが気になりましたが、それはいつものことですよね。

「人間の究極の進化というのはきっと死ぬってことだと思う」(本文より)でも大切なのは進化じゃないのですよね。
死ぬことを考えるのではなく、今生きている自分のことを
考えるのです。
一度しかない人生なのだからい大切な人に愛情を捧げながら
生きるということなのです。
それが不倫でも・・と思う気持ちはありますが
ここでは不倫というカタチは問題ではないのかもしれませんね。
困難さを感じても諦めないという
メッセージを感じ取ればいいのではないかと思います。





「どれくらいの愛情」・・・
舞台は博多。そして博多弁で語られる物語です。今までも福岡を舞台にした作品はあったのですが
博多弁を語らせたのはこの作品が初めてのようです。
それゆえ、
博多の街がよりリアルに感じられます。
生き生きとした人間模様に思えます。

これも他の作品と同じく男女の恋愛物語ですが
ちょっと謎めいたところもあり、真実が明らかにさせるところでは
そうだったのか・・・と思うところがあります。
江原さんではないのですが、予言ができる
先生も登場してくるので
これは、受け付けない人もいるでしょう。
存在自体を認められない人は入っていきずらいでしょうね。
信じるかどうかは別にしても
先生の語る言葉には
素直に響くものがありましたよ。

「自分のことを心配してくれる存在も大事だが、それと同時かそれ以上にこうして自分に心配をかけてくれる存在が大切なのだ」(本文より)
確かにそうですよね。
人は皆そういう状況にならないと気付かないことが多いのですよね。


ラストで
主人公の正平と先生とで言葉のいい争いがあります。
正平の結婚を邪魔したのは先生のお告げが原因ではないかと
彼が詰め寄るのです。
先生の言葉は重いです。
私も初めは正平の言い分をもっともだと聞いておりました。
でも、先生の言い分も納得できる自分がいるのです。
信じる信じまいの次元を超えて
なるほど・・・と唸らされます。

「自らの運命を変えるだけの強い意志がなかった。
誰にしろ、自分に与えられた運命を自分の力で変えることができるように作られているし、その方法も知っている。」(本文より)

「絶望した側が、戦いに勝つことがよくある・・」
ヴォルテールの言葉。


絶望は希望の種。

宗教っぽいし哲学的。

最後の作品はとくに白石ワールド全開で
どっぷり嵌ってしまいました。

ラストの正平の言葉は
男らしくて好きです。
博多弁がきいておりました。


正平はぜんざい屋の経営者。
甘い食べ物は大好きなので
そんなことにも興味持ちながら読んでおりました。


やはり好みは分かれる作品ですが
好きな人は嵌る作風かと思います。



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「どれくらいの愛情」白石一文

 【愛情を注いで注がれて・・・】白石氏の小説は自ら好んでよく読む。 中編・長編を交えての4編を集めた本書「どれくらいの愛情」 どの話も何か胸にツンとくるものがあって、素直な気持ちになれた。 ・20年後の私へ ・たとえ真実を知っても彼は ・ダーウィ....

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お久しぶりです!

みみこさん、こんにちはー!
TB&コメントをありがとうございました。
この白石作品、またしても本気で泣きましたわ(T_T) ヤラレっぱなしのような気がします。
主人公が嫌いな人間を描いていても、作品自体は全く嫌いじゃなかったり・・不思議な感覚ですよね。
白石作品、未読本がまだありますので今後も追っかけていきます!

あゆきちさんへ

こんにちは~ こちらこそ、コメント&TBありがとうございます。
白石作品は苦手な方も多いので
同じような感想をもっていてうれしくなりましたわ。
いいよね~~~私もヤラれています・・笑
私もボチボチ追いかけますわ。
またゆきちさんの感想参考にして色々読んでいきたいです。
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