fc2ブログ

空白の叫び   下  貫井徳朗

空白の叫び   下  貫井徳朗


少年院でであった3人。
出所してからそれぞれの別の生活空間で
過ごしていたが・・、
彼らの更生への道は険しかった。
様々ないやがらせ、思うように行かない現実・・
やがて彼らの心には新たな闇が生まれてくる。
3人は再び連絡を取り合い、
ある事件を起こそうと企む・・・。


感想   さて・・・下巻の展開。
少々、現実離れしているところも感じられましたが
こちらも一気読みできるパワーをもった作品となって
おりました。

上巻から気づいていましたが
3人のキャラたちは(特に2人・・)かなり
一般年齢より大人びた考えをもっております。
それが正しいかどうかというよりも、
一本筋が通っているということですよね。
一番年相応に感じるのは
神原でしょう・・。
でも、この神原こそが一番の悪人として描かれているところが
やりきれないところかもしれません。
彼の考え方ですね・・
ただただ自分の都合のいい風に、自分勝手にしか
事をとらえないところが、腹立しく感じるのです。
自分を正当化する・・
自分に不利益なことをすぐに排除する・・
どっちつかずに優柔不断・・・
自分のプラスになる方にしかつかない・・
つまり・・根本的に人を信じない・・

何故・・彼はこうなってしまったのでしょうね。
罪を犯す前は、そんなこと・・微塵も感じ得なかったのに。
院での生活がそうさせたのか・・
いや・・そもそも、根っこの部分でそういう気質が
あったのか・・。
少年院出、3人中では一番家庭環境に同情の余地がありました。
殺人理由も・・・理解できると言い切るまではいかなくても
多少は、くみとってあげたい感情もあります。
だからこそ、その後の彼・・(少年院を出てから・・)
の姿にはただただ幻滅を覚えるだけでした。
恐いと思いましたよ・・
こういう一見心根が優しいと思える子が
変貌していくと・・・。
家庭環境?・・院生活・・?その後の社会環境・・・?
多少なりとも因果関係があるにしろ・・
最終的な部分では、
持って生まれたものの力・・・が関係しているのではないか。。
・・と思ってしまう自分ですね。


ミステリータッチで謎が謎を呼ぶ展開は
面白いです。
色んな人物達がこの3人にかかわり
様々なドラマが展開されるのです。
殺人という目に見える大きな罪以外にも
社会の中には沢山の悪が潜んでいます。
でも・・すべて3人の起こした罪が
出発点であるように感じます。
罪を犯さなければ、その後の人生でこれほどまでに
つらい現実が襲ってきたりはしなかったのだから・・。

興味深い展開ですと、ただストーリーを追うだけに集中してしまい
肝心なものに目を向けないでお終いにしてしまう
ところがありがちですよね。この物語もそんなところが
あるのですが
やはり、テーマがテーマなだけに
きちんと、・・なぜ罪を犯すのか・・・か
なぜ、再犯してしまうのか・・というところを
押さえていきたいですね。

後半、久野の罪を問いただす理恵の父親。
重い言葉が続きます・・。被害者側の気持ちが一番如実に感じる
文章で心が痛みますね。
神原の幼馴染の佳津音の気持ち。最後まで純粋に
彼を信じていましたね。彼の本質も知らずに・・
哀れにも感じてしまいました。

久野を最後まで苦しめた瘴気・・・

瘴気・・・て何?<熱病を起こさせるという山川の毒気>だとか。
毒気・・・ね・・。
どうして心に住み着いてしまうのか・・
もっていても、上手に処理できる人も
いるのに・・。残念な結果ですね。

ともかく・・この3人は当然の報いを受けます。
その点では後味が悪いということはありませんが
ただ・・やっぱり・・
この手の話はどんより・・感を覚えてしまいますね。

sakebi2.jpg

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みみこ

  • Author:みみこ
  • レイフ・ファインズ好き
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク