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慟哭   著  貫井徳朗

慟哭     著・・・貫井徳朗




感想・・貫井さんのデビュー作です。
私は、「空白の叫び」に続いての2作目です。

あまり情報を入れずに読んだので
最後の展開には、素直に驚きを感じました。
当時話題作にもなってというのも大いに頷けます。
実に良くできた物語構成になっているので・・・感心もしました。
たぶん、この物語の読みどころは、衝撃の結末ということにも
なるのでしょうが、
私が一番、興味深く感じたのは描かれている新興宗教の
部分でありました。
どのようにして、人は嵌っていくのか・・・。
心に大きな痛みを抱えている人にとっては
何か拠り所になるものを見つけたいという欲求は
当然のことだと思います。
それがどういった実態のものか・・・
冷静な判断を出来るのは、健全な精神を持ち続けているときだけかもしれません。

皆がみな・・・そうだ・・・・正しいと思える価値観の中に
身をゆだねていれば、自分も染まってしまうのは
時間の問題かもしれませんね。
自分の中に欠落した部分があればなおさら・・・。

考えさせられます。
宗教をルポした記者の言葉も、真実味があって
読み応えありました。


もちろん、物語は宗教云々のことだけではありません。

もう一つの事柄。
幼児誘拐殺人事件についてです。

簡単に内容を説明しますと・・

新興宗教に嵌る松本という男のお話と
幼児誘拐事件を担当するエリートコースを走る佐伯警視査一課長の
話が交互に語られます。
佐伯は妻の父親が警視庁長官、自分も相当の地位のあるものの隠し子ということで、様々な嫉妬、中傷に苦しめられます。
家庭的な温かさを知らずに生きてきた男です。
一方の松本は心に暗い影を落とした男。
その心の傷を癒すために、新興宗教に救いを求めて行くのです。
その2人の人生がある事件をきかっけにどうかかわっていくのか。


先日は映画でゾディアックを見、その警察にゲームをしかけるような態度に恐ろしさを感じたばかりですが
この物語も同じような展開で、思わず、こんな物語ばかり続けて
触れてしまう自分に悲しくなったりもしました。
最終的な結末も
すべてがすっきり・・・という形ではない、映画と同じような
ものでした。
物語は重いです。
そういえば、「闇の底」も幼児が犯罪の対象でした。
こんな事件ばかりでは、気分も沈みますが・・・、
現実ではもっとひどいことも日常で起こっていますよね。
一体、どんな世の中になっているのか・・。


読み終ったあと、
慟哭という意味をあらためて
考えてしまいます。
そして、ゲンナリします・・。
本当に人間はそんなことできるのでしょうか・・・。



人の心は・・・どうやったら救われるのか・・。


あまり細か述べると
読書の楽しみが半減しますので
やめますが、
一気に読める作品です。


「夜想」も予約しているので手に入るのを
楽しみにしています。たぶん、重いとは思いますが
それだけ、集中力を保つことができ
ると期待しております。


doukou.jpg

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