八日目の蝉
八日目の蝉 著 角田光代
感想 角田さんの新境地といわれる長編サスペンス。
実は角田さんの長編を読むのは初めてです。
(過去、児童書と短編のみ・・・)
読者ファンも多く、話題作もいくつかあったにも
かかわらず、なかなかきっかけがなく
ここまできてしまいました。
(どちらかとうと男性作家の方が優先なので・・・・)
でも読んでよかったです。
これをきかっけにもっと角田さんの本を読んでみようという
気持ちにもなりました。
面白かったです。
0章尾、1章、2章という構成になっております。
1章では誘拐犯の希和子が主人公で
逃走記録(薫の成長記録でもある・・)のようになっており
2章では、事件のその後、
成長した薫の近況が描かれている・・という
形でした。
やはり、一番、胸に迫ってきたのは
2章の薫に関してでしょうか・・。
サスペンスとありますが、単なるハラハラドキドキ感だけで終るのではなく現代の母親・子の関係&家族関係をも考えてみることが
できるとても深い作品になっていたと思います。
読む人が自分たちに当てはめて
いろいろなことを思い感じることがあるのではないでしょうか。
ただし、女性に関して。
この作品は男性については、どうしようもない
存在としてだけしか描かれていなかったように思います。
口ではうまいこと言っておりますが、結局のところ
ずるいですからね・・・。
与えられた運命をいかに生き抜くか・・・。
第1章での主人公、希和子は、不倫相手の男性の子を堕胎した
という過去をもっております。
希和子は犯罪者でもありますが、
同時に被害者でもあるのです。
男に振り回され、人生の大事な時を、棒に振ってしまったのですから。
同時に、本妻からは嫌がらせを受け、
傷つけられる言葉も沢山浴びせられます・・・。
つらい時期を過ごしていたのです。
でも、だからといって彼女の行為を正当化はできないのが
現実です。親から子どもを盗むことはどんなことがあっても
してはいけないのですよ・・・。
この家庭・・・夫婦に問題があったとしても(ダブル不倫をしていた)
赤ちゃんに何かしていたというわけではなかったですよね。
人並みに子には愛情は持っていたに違いありません。
たとえそれが他人からみたらそうではなくても、
夫婦は夫婦なりに子を愛おしく思っていたに違いないのです。
自分達夫婦の子ですもの・・。
薫が赤ちゃんのうちからひどい仕打ちを受けていた
わけでもないのです。
それを黙って盗んでしまったのですよ・・・。
ある家庭から・・・一番大切なものを。
希和子は本当の親以上に薫に関して愛情をもって育ててきたと
思います。
でも私は愛情の強さ云々より、
人の運命(薫の運命)を変えてしまった責任の方が
問題ではないかなと思えるのです。
2章を読むと
この薫の実母の姿が浮き彫りになってきます。
父親は(希和子の不倫相手ですね・・)
煮え切らない嫌なやつではありましたが、同時に
奥さんも、夫以外にも男を作っていたようでした・
あまり褒められた人物たちではないように感じます。
どっちもどっちの夫婦・・。
誘拐された薫が手元に戻ってからの
夫婦の姿をみていても
とても子に対して愛情を寄せて育て上げるという
能力があるようには感じられません。
終始、自分達の立場を考えようとしてしまう・・
家事も適当、部屋も汚くしてしまう、だらしない母。
でも、
この夫婦のありようは、誘拐という事件によって
そうなってしまった・・というところもあるのではないでしょうか。
彼ら夫婦の運命を変えたのは誘拐だったのです。
そのことがなければ、少なくとも、今よりは
ましな家庭を作れたかもしれません。
いや・・ダブル不倫をするような夫婦だもの、
同じこと・・じゃないか・・・と考える方も
いるかもしれないけれど、私はそうじゃないかもと
思う部分もあるのです。
子を生む前はどうしようもない人でも子を産んで変わることは
あるかもしれませんよね。
子を育てていく過程で親は成長し、学んでいくところが
あるはずだから。その学ぶ過程を、失ってしまった
からこそ、そこからこの夫婦はどんどん思ってもいなかった
方向に向かっていった気がします。
結局、
希和子も本来の母親も
ともに被害者でもあったと言えるかもしれません。
一番いけないのは男・・・・。
でもそんな男に振り回される女も
どこか愚かしい気がします。
愛しているから、振り回されるのかしら・・。
見極める力が欲しい・・・・。
自分を見失ってしまうのは悲しいことだと
思うけれど、そうなってしまうのが異性を愛することかも
しれないですよね。特に女の方がそういう傾向にありがち。
どうして子にこだわるのでしょう・。
それはやっぱり自分の中から生まれた命だからでしょうね・・。
希和子がこだわるのは生まれだすことができなかった命
だからでしょうね・・・。
子は可愛いですもの。
自分が愛情を注げば注ぐほど
返してくれます。
七日目に死を迎えるはずの蝉が八日目も生きていたら・・・・
題名から引き出される意味・・・。
薫の人生の選択に
誰もが心を動かされたと
思います。
希望を感じさせる結末で本当良かったと思います。
希和子との
すれ違いの場面はまるで映画のようでもありました。
とても後味の良い作品でした。

感想 角田さんの新境地といわれる長編サスペンス。
実は角田さんの長編を読むのは初めてです。
(過去、児童書と短編のみ・・・)
読者ファンも多く、話題作もいくつかあったにも
かかわらず、なかなかきっかけがなく
ここまできてしまいました。
(どちらかとうと男性作家の方が優先なので・・・・)
でも読んでよかったです。
これをきかっけにもっと角田さんの本を読んでみようという
気持ちにもなりました。
面白かったです。
0章尾、1章、2章という構成になっております。
1章では誘拐犯の希和子が主人公で
逃走記録(薫の成長記録でもある・・)のようになっており
2章では、事件のその後、
成長した薫の近況が描かれている・・という
形でした。
やはり、一番、胸に迫ってきたのは
2章の薫に関してでしょうか・・。
サスペンスとありますが、単なるハラハラドキドキ感だけで終るのではなく現代の母親・子の関係&家族関係をも考えてみることが
できるとても深い作品になっていたと思います。
読む人が自分たちに当てはめて
いろいろなことを思い感じることがあるのではないでしょうか。
ただし、女性に関して。
この作品は男性については、どうしようもない
存在としてだけしか描かれていなかったように思います。
口ではうまいこと言っておりますが、結局のところ
ずるいですからね・・・。
与えられた運命をいかに生き抜くか・・・。
第1章での主人公、希和子は、不倫相手の男性の子を堕胎した
という過去をもっております。
希和子は犯罪者でもありますが、
同時に被害者でもあるのです。
男に振り回され、人生の大事な時を、棒に振ってしまったのですから。
同時に、本妻からは嫌がらせを受け、
傷つけられる言葉も沢山浴びせられます・・・。
つらい時期を過ごしていたのです。
でも、だからといって彼女の行為を正当化はできないのが
現実です。親から子どもを盗むことはどんなことがあっても
してはいけないのですよ・・・。
この家庭・・・夫婦に問題があったとしても(ダブル不倫をしていた)
赤ちゃんに何かしていたというわけではなかったですよね。
人並みに子には愛情は持っていたに違いありません。
たとえそれが他人からみたらそうではなくても、
夫婦は夫婦なりに子を愛おしく思っていたに違いないのです。
自分達夫婦の子ですもの・・。
薫が赤ちゃんのうちからひどい仕打ちを受けていた
わけでもないのです。
それを黙って盗んでしまったのですよ・・・。
ある家庭から・・・一番大切なものを。
希和子は本当の親以上に薫に関して愛情をもって育ててきたと
思います。
でも私は愛情の強さ云々より、
人の運命(薫の運命)を変えてしまった責任の方が
問題ではないかなと思えるのです。
2章を読むと
この薫の実母の姿が浮き彫りになってきます。
父親は(希和子の不倫相手ですね・・)
煮え切らない嫌なやつではありましたが、同時に
奥さんも、夫以外にも男を作っていたようでした・
あまり褒められた人物たちではないように感じます。
どっちもどっちの夫婦・・。
誘拐された薫が手元に戻ってからの
夫婦の姿をみていても
とても子に対して愛情を寄せて育て上げるという
能力があるようには感じられません。
終始、自分達の立場を考えようとしてしまう・・
家事も適当、部屋も汚くしてしまう、だらしない母。
でも、
この夫婦のありようは、誘拐という事件によって
そうなってしまった・・というところもあるのではないでしょうか。
彼ら夫婦の運命を変えたのは誘拐だったのです。
そのことがなければ、少なくとも、今よりは
ましな家庭を作れたかもしれません。
いや・・ダブル不倫をするような夫婦だもの、
同じこと・・じゃないか・・・と考える方も
いるかもしれないけれど、私はそうじゃないかもと
思う部分もあるのです。
子を生む前はどうしようもない人でも子を産んで変わることは
あるかもしれませんよね。
子を育てていく過程で親は成長し、学んでいくところが
あるはずだから。その学ぶ過程を、失ってしまった
からこそ、そこからこの夫婦はどんどん思ってもいなかった
方向に向かっていった気がします。
結局、
希和子も本来の母親も
ともに被害者でもあったと言えるかもしれません。
一番いけないのは男・・・・。
でもそんな男に振り回される女も
どこか愚かしい気がします。
愛しているから、振り回されるのかしら・・。
見極める力が欲しい・・・・。
自分を見失ってしまうのは悲しいことだと
思うけれど、そうなってしまうのが異性を愛することかも
しれないですよね。特に女の方がそういう傾向にありがち。
どうして子にこだわるのでしょう・。
それはやっぱり自分の中から生まれた命だからでしょうね・・。
希和子がこだわるのは生まれだすことができなかった命
だからでしょうね・・・。
子は可愛いですもの。
自分が愛情を注げば注ぐほど
返してくれます。
七日目に死を迎えるはずの蝉が八日目も生きていたら・・・・
題名から引き出される意味・・・。
薫の人生の選択に
誰もが心を動かされたと
思います。
希望を感じさせる結末で本当良かったと思います。
希和子との
すれ違いの場面はまるで映画のようでもありました。
とても後味の良い作品でした。

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